【コラボ配信】ガーディアンボス戦! 魔法少女コンビで横浜中華街ダンジョンを攻略するよ~!【雪姫ちゃんと】3
例の大岩だが、落としているのは“ロックンロールラット”というモンスターだ。
通称岩ネズミ。
このモンスターは山道に面する崖に巣穴を作り、群れで住み着いている。
そして数体で力を合わせて大岩を作り出し、目の前の山道を転がすことで、自分たちの住居に近付く敵を追い払っている。
山道を登ってきた俺たちは、その岩ネズミの棲み処のそばまでやってきていた。
「あれがロックンロールラットのコロニーですか」
「だねー。なんかマンションみたいだよね。壁に穴がたくさん開いてて」
「ああ、確かに」
崖にいくつも穴が空いており、そこに数体ずつ岩ネズミがいるのが見える。
ああして高所から大岩を作っては落とし続けていたんだろう。
〔マジで力業で登り切った……〕
〔この可愛さでとんでもないパワープレイを繰り広げてて草〕
〔魔王にさらわれても魔王ぶっ飛ばして自力で戻ってくるタイプのお姫様〕
「ヒバナさん、どうします? 崖ごとコロニーを壊しますか?」
俺のスキルの一つに【地形破壊】というものがある。壁なら【一撃必殺】の発動も狙えるので、わりと現実的な案だと思う。
〔ヒェッ〕
〔岩ネズミさん終了のお知らせ〕
〔可愛いのに言ってることがずっと物騒なんだよなあ〕
配信をやっている以上テンポは大事だ。下手を打って入口からやり直しになるくらいなら、強引にでも道を開けた方がいいと思う。
しかしヒバナは首を横に振った。
「ううん、もっといい方法があるよ!」
「もっといい方法? あ、さっき言ってた“とっておきの道”ですか?」
「そう! うまくできるかわかんないけど……雪姫ちゃんのことおんぶしてもいい?」
「? いいですよ。今日はスカートがこの前より長いですから」
<紅兎綿のスカート>はひざ丈だ。これなら後ろからパンツが見える事態にはならないだろう。まあどっちにしろスパッツは履いてるんだが。
「よーし!」
俺を背負ったヒバナが何を思ったのか岩ネズミの巣の真下まで走っていく。
え? これ大丈夫か? というかヒバナは何をする気だ!?
「このまま巣に思いっきり攻撃しちゃおっかな~~~~!」
岩ネズミたちに向かってわざとらしく挑発するヒバナ。それさっきしないって言ってなかったか?
『『『!? ぢゅううううう!』』』
自分たちの巣が脅かされると感じた岩ネズミが、迎撃のために大量の大岩を作り出す。壁面に空いた巣穴――言い換えれば大岩の排出口でもあるそれらは、低い位置でも地上三メートル程度。高い位置では十メートル近くまである。
それらの穴から大岩が大量に降り注いだ。
ちょっ、待て待て待て! 死ぬだろこれ!
〔ばなちゃん!?〕
〔絵に描いたような自殺行為なんだけど!?〕
視聴者も混乱している。そりゃそうだろう。
「雪姫ちゃんしっかり捕まっててね!」
「え? きゃあっ!?」
「せぇのっ――!」
俺を背負ったヒバナが急加速。
崖に激突する寸前思いっきり跳び、崖を足場にさらにジャンプをした。
魔力体の敏捷の高さのせいか数メートルの高さにまで達する。普通ならここから落ちるだけだが、ヒバナは信じられないことをした。
「ここでこれを踏んでもう一回ジャンプっ!」
岩ネズミが降らせた大岩の一つを足場に、さらに上に跳んだのだ。
〔!?!?!?!?〕
〔ばなちゃん多段ジャンプしてね!?〕
〔雪姫ちゃん背負ってとんでもない大道芸始めてて草ァ!〕
「次はこれっ! で、こうきて、こう!」
「わああああ」
大岩を真下に蹴飛ばすようにして跳び、次の足場まで到達する。その繰り返しでヒバナはどんどん高度を稼いでいく。踏める岩がなくなったところで呪文を詠唱。
「炎神フラムよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは形なき爆ぜる具足、【ボムグリーブ】!」
ドンッ、ドウッ!
二度の爆発によってさらに飛び、高さ十メートル以上はある崖の上まで登り切る。
おんぶしていた俺を下ろしてヒバナが言った。
「到ちゃーく! どう、すっごいショートカットできたでしょ?」
「そ、そうですね……」
らせん状の山道を何周もしてたどり着くような場所に俺たちはいる。確かに近道と言えば近道だが、これは絶対に人間向けのルートではないだろう。
〔ばなちゃんやべええええええええ〕
〔【悲報】ばなちゃんも人間を卒業していた〕
〔人外十段ジャンプ〕
〔雪姫ちゃん背負って十連ジャンプとか重力仕事してなさすぎでは?〕
〔さすがに何かスキル使ってるとは思うが、それにしたってやばい〕
〔この子マリオかよww〕
〔ずっと動きがバトル系アニメのそれなんだよな〕
「ねえねえ雪姫ちゃん、どう!?」
「ど、どうとは」
「どうかな!?」
目をキラキラさせて詰め寄ってくるヒバナ。何かを期待する小型犬の幻覚がヒバナの後ろに見える。
もしかして……
「すごかったですよ。あんなことができるなんてびっくりしました」
「やったー! 雪姫ちゃんに褒められた!」
万歳して喜ぶヒバナ。それだけでは嬉しさを表現しきれなかったのか、その場でくるくる回る。
「えへへー、実は雪姫ちゃんに見てほしくて昨日こっそり練習したんだよね。褒めてもらえて嬉しい~」
「……まったくもう、そんなことで無茶したら駄目ですよ。褒めてほしかったらいくらでも褒めますから」
「もっと褒めてくれるの?」
「え? えっと……たくさん練習したんですね。偉いです。頑張りましたね」
「にひひ。撫でられちゃった~」
なんだかヒバナに期待されていた気がしたので頭を撫でてみる。ヒバナは俺の手に髪をぐりぐりとこすりつけるようにしてきた。甘えたがりだなー。
〔ぐぁああああああああああ!〕
〔がはっ!?〕
〔か、かわ、かわわわわわわ〕
〔はい見えた。おてんば妹としっかり者の姉の姉妹が見えた〕
〔なんか俺、変なんだけど……なんか……すごい気持ち悪いこと言うけど、この二人が娘みたいに見えてきて……変なこと言ってるのはわかってるけど……〕
〔実は俺も……なんか父性みたいなものが……〕
〔? 何が変なんだ?〕
〔この子たちのパパになるなんて普通のことだろ?〕
〔また沼に落ちた人が増えたか〕
〔ようこそこちら側へ〕
「よーし、満足! 行こ、雪姫ちゃん!」
「はい。気を引き締めていきましょう」
色々あったがヒバナのおかげで大幅に時間短縮ができたのは確かだ。
どんどん行こう。
▽
同時刻、須々木崎邸にて。
「うぉがぎはぐぐぐぐぐげががが」
「……どうしよう。月音君が人の言葉を忘れてしまった。雪姫君がヒバナ君を妹のように甘やかすからこんなことに」
ソファに並んで雪人の配信を見ている月音と茜の二人だが、あまりに仲睦まじい雪人とヒバナに月音が嫉妬で我を忘れつつある。
「よしよし月音君。雪姫君が焼いていった手作りクッキーをお食べ」
「……はっ!」
「我に返ったようだね」
「うう……お兄ちゃんがばなちゃんのお姉ちゃんになってる……この胸のモヤモヤは何……!?」
「私は一人っ子だからその気持ちはよくわからないな。とりあえず、雪姫君が戻ったら存分にスキンシップをするといい」
「……しばらく茜さん抱っこしててもいい?」
「はいはい、月音君がそれで気が済むなら構わないよ。膝をあけたまえ」
「やったー! ジェネリックお兄ちゃん、ゲットだぜ!」
「やれやれ」
荒ぶる月音を鎮めるために膝の上に座る茜。一緒に過ごす時間が長くなってきたことで、何だかんだ仲良くなっている二人である。
「そろそろボス部屋が近いよ。ちゃんと見ておいた方がいい」
「はーい」
二人は引き続き雪姫とヒバナの配信を視聴するのだった。




