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【コラボ配信】ガーディアンボス戦! 横浜中華街ダンジョンを攻略するぞ~!【雪姫ちゃんと】

「みなさんっ、こん爆破――――!!!!」


 ドォン!


 一瞬の静寂、そして爆発音とともに熱波が吹き荒れる。

 炎と爆風を背景に一人の少女が配信用ドローンに元気よく挨拶をする。


「おはようございますみなさん、ダンジョン配信者のヒバナです! 今日は横浜中華街ダンジョンで攻略配信をやっていきます!」


〔ばなちゃん! こん爆破ー!〕

〔始まったああああああああ〕

〔こん爆破ー!!!!〕

〔こん爆破ァ!〕

〔今日は一段と派手な爆発だったな〕

〔爆発ソムリエいて草〕

〔こん爆破(挨拶)〕


「今日はこの子と一緒にやっていきます! 挨拶どうぞっ!」


「え、ええと、みなさんこんにちは。新人ダンジョン配信者の雪姫です。クラスは氷属性の魔術師です。よろしくお願いします」


 脇に待機していた俺にドローンが向いたので、挨拶をする。


 前回はうちのチャンネルでの配信だったので、今回は配信枠はヒバナに任せている。配信画面を操作しているのはヒバナのお父さんとのこと。


 他人の枠で配信に参加するのは不慣れなので緊張する。

 刀子さんの時は実質俺が進行みたいな感じだったので、あんまり人のチャンネルって感じがしなかったんだよな。


〔雪姫ちゃん!〕

〔雪姫ちゃんだぁあああああああ〕

〔姫は今日も可愛いな〕

〔生きる目の保養〕

〔見てるだけで幸せになれる存在〕

〔童話の世界から出てきたお姫様かと思った〕

〔天使! 天使!〕

〔ぎゃわいいいいいいいい〕


「ふふ、みなさん。確かにヒバナさんは可愛いですけど、そんなに可愛いとばかりコメントされたらヒバナさんが困ってしまいますよ」


「え? いやこれ雪姫ちゃんに言ってるやつじゃ――」


「いいえ、これはヒバナさん宛てです。今日の配信はヒバナさんのチャンネルなんですからそうに決まっています」


〔ばなちゃんに押し付けようとしてて草〕

〔まあばなちゃんも可愛いから〕

〔自慢の娘たちです〕

〔うちの子が可愛いのは当然〕


 なんかすっかりヒバナのところの視聴者もうちの視聴者のノリに汚染されている気がする。やつらはゾンビウイルスのキャリアか何かか?


〔こんにちは!〕

〔配信初めて見る~〕

〔二人とも可愛いですね! チャンネル登録させていただきました!〕


 一方でまだ毒に侵されていない普通の視聴者もかなりの数いる。

 今日の配信の内容からして、新規視聴者が多いのは妥当だろう。彼らがまともなまま帰ってくれることを信じたい。


 チャンネル主ということで、今回はヒバナが配信を進めていく。


「それじゃ今日の配信について説明するよ! この横浜中華街ダンジョン真ん中にある火山――そこに新しく現れたボス部屋に行って、新規ガーディアンボスと戦います!」


〔うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお〕

〔きたきたきたきた〕

〔いよいよか〕

〔盛り上がってまいりました!〕

〔雪姫ちゃん、ここまで三分の二ガーディアンが新規というバグ〕

〔同接三十万人は草〕

〔耐えてくれサーバー!〕

〔しかもまだまだ増えている模様〕

〔Twisterトレンドワード、十位まで全部この配信のことだからなぁ……〕

〔やばすぎるww〕


 一気に加速するコメント欄。まだボス部屋にも入っていないというのに高額ゴールドチャットがばんばん飛んできている。


 同時接続使者三十万人って……リーテルシア様とのコラボの時並みなんだが。


 あの頃とは俺のチャンネル登録者数も随分違うとはいえ、とんでもない注目度だ。


「TwisterのDМで『一緒に行きたいです』って言ってくれた人がたくさんいたんだけど、その人たちにはごめん! 今日はあたしと雪姫ちゃんの二人で頑張ります! ……やっぱり二人で頑張ってキーボス倒したから、ガーディアンボスも二人でやりたいねって話をしたんだ。ね、雪姫ちゃん」


「はい。もしかしたら負けてしまうかもしれませんけど、悔いのないほうを選びました」


〔それでいいと思う!〕

〔ハイエナとか気にする必要なし〕

〔二人でもぎ取ったんだから二人の気持ちが優先でいい〕

〔よかった。百合の間に挟まるやつはいなかったんだ!〕

〔魔法少女コンビがまた見られて幸せ〕


「ただ、今日絶対に倒すぞーってわけでもなくて、ひとまず一回戦ってみようかなって。一週間の間、負けるまではあたしたちがガーディアンボスに優先的に挑戦できるみたいだから、厳しそうなら一回逃げて作戦立てるね!」


〔うんうん〕

〔初見殺しにいいようにやられるくらいなら、逃げてしっかり作戦立てたほうがいいと思う!〕

〔ばなちゃんの隣に初見殺しを初回チャレンジで屠ったお方がいるんですが……笑〕

〔まあ引くべき時は引くのも実力よ〕


 好意的な意見が並んでいるが、ちょこちょこ俺たちの慎重なスタンスに反発するようなコメントもある。


 神保町ダンジョンの時もあったが、おそらく初回攻略特典を狙う他のEランク探索者たちの書き込みだろう。


 このあたりはスルーするように事前にヒバナと取り決めている。

 さすがにこれだけ視聴者が多いと、完全なコントロールなんてできないからな。


 幸いヒバナはうまく配信の舵取りをしてくれている。


「説明はこんなところかな? それじゃ前置きも終わったところで……れっつごー!」


「……お、おーっ!」


 ヒバナに合わせて拳を天に掲げる。

 ……慣れない仕草だからちょっと恥ずかしいな、これ。


 目指すはダンジョン中心部の火山の頂上。そこにガーディアンボスの部屋があるらしい。


 俺とヒバナは横浜中華街ダンジョンを移動し始めた。





 横浜中華街ダンジョンの中心部にある火山だが、基本的に上れるルートは二通りある。


 一つはシンプルに急な傾斜を上っていくルート。

 登頂までの時間は短いが滑落の危険があるうえ、翼竜型のモンスターに襲われるリスクがあるため危険。


 もう一つは火山をらせん状に上る山道を進むルート。

 こっちも簡単ではないし、時間もかかるが、比較的安全。


 今回俺とヒバナが選んだのは後者だ。

 火山のふもとまでやってきた俺たちの前には、山肌を添うように上っていく坂道が続いている。


「ここから上るんですよね」


「うん。案内は任せて! あたしよくこの火山に採取に来てるから、とっておきのルートを知ってるんだ~」


「そうなんですか? 私は火山は初めてなので、頼もしいです」


 一応協会の映像で予習はしているが、それだけで悠々踏破とはいかないだろうからな。


〔っていうか雪姫ちゃん、その靴で登山できるんか……?〕

〔ヒール高いからなぁ……〕


 視聴者から心配するようなコメントが流れてくる。

 俺はにやりと笑った。


「ふふん、大丈夫です。実は今日のために新しい防具を一通り揃えておきました」


〔え?〕

〔マジ!?〕

〔このタイミングで!?〕

〔雪姫ちゃん新衣装きたあああああ!!〕


 <薄氷のピンヒールパンプス>を履いたまま登山はさすがに無謀。

 しかし靴だけ変えると見た目的によろしくない。

 これが配信である以上は外見にも気を遣うべき、とは月音の言葉だ。


 というわけで今回、道中用の新たな装備を用意してきた。


「あ、でも先に行っておきますけど普通のやつですよ。ボス部屋までの道中用の、身軽さや持久力重視のものです」


「えー、気になる! 見せて見せて!」


「それじゃあ……【コンバート】!」


 ヒバナの声にこたえるように俺は呪文を唱えた。


 コンバートリングには着ている防具の他に、もう一種類まで全身ぶんの装備を格納することができる機能がある。これまで俺は適当に初期装備を放り込んでいたが、今回それと新装備を入れ替えた。


 全身が光に包まれ換装が行われる。

 ヒールがなくなったことで俺は一瞬だけ宙に浮いたのち、着地する。


「こんな感じです」


 その場でくるりと回って全身をドローンに見せる。


 <白兎綿(しろとめん)のブラウス>、<(べに)兎綿のスカート>、<見習い魔女のローブ> 、<一角兎のファーブーツ>というわりとスタンダードな防具――というか服だ。


 それぞれ敏捷強化や精神力消費の減少などの効果がついている。


 いつモンスターが襲い掛かってくるかわからない道中では、攻撃力より回避力や持久力が大事という考えだ。


 ちなみに東京中の協会支部から服を取り寄せまくって揃えたのは月音である。デザインも含めて全部任せていたのでちょっと不安だったが、思っていた以上にまともだった。


 月音いわく、「お兄ちゃんは正統派ロリだから奇抜なことはしなくていいの!」とのこと。


 正統派ロリってなんだよ。

 ちなみにコンセプトは“魔法学園の女子生徒”らしい。


「おおーっ! 似合ってるね!」


「ありがとうございます、ヒバナさん」


 褒めてくれるヒバナにお礼を言う。なんだかくすぐったいな。


「でも何でうさぎ耳? それもマジックアイテム?」


 ……は? うさぎ耳って何だ?


〔ファッ!?〕

〔雪姫ちゃんそれは可愛すぎない!?〕

〔普通の服です(うさ耳カチューシャ)〕

〔不意打ちなんて卑怯だ!〕

〔かんわいいいいいい〕

〔寂しがり雪姫ちゃんを想像したら健康になった〕

〔長く留守番させてごめんね〕

〔にんじんを食べさせてあげるよ〕

〔幻覚見えるやついて草〕


 ――まさか。

 俺は慌てて頭の上に手をやると、自分のミスに気付いた。慌ててそこにあった<一角兎のカチューシャ>を外す。


「こ、これは違うんです! つき――お姉ちゃんがいたずらで取り寄せたもので、マジック効果が優秀だから一度試しただけで……!」


 このアイテム、ジャンプ力に高い補正がつくんだよな。同じ効果のブーツと合わせれば、そのうち何かの役に立つんじゃないかと一度試していたのだ。まさかつけた状態のままコンバートリングに保存されていたとは……!


「とにかく違うんです! 思ったより自分に似合っていてちょっと嬉しかったとか、そういうことでもなくて!」


〔語るに落ちてて草〕

〔鏡見てニマニマしてる雪姫ちゃん想像して萌え死んだ〕

〔なんでそんなに可愛い? 俺たちの心臓をどうしたいのかな??〕

〔もこもこパーカーと合わせて自宅配信してほしい〕

〔こんなにあざといのに嘘っぽくない不思議〕

〔初見です! この子っていつもこんなにドジなんですか?〕

〔火の玉ストレートはやめてさしあげろ!〕

〔そこが可愛いところだろうが!〕


 視聴者たちが水を得た魚のようになっている。は、恥ずかしすぎる……

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