最後はみんなで大泣きした(6)
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これで私の復讐は終わった。
ダンジョンを戻る道中、
六人の死体はすべて、アイテムボックスに回収した。
突然一人残らず消えた『金色の六翼』について、
冒険者ギルドがどう対応したのかは分からない。
私は、その日のうちに街を出たのだから・・・。
――家に戻ると、父と母が待っていた。
話は客間でする事になった。
部屋には私と、向かいに座る両親、
そして、一頭の幼竜だけ・・・。
一族の者は誰もいない。
「問題なく終わったようだな・・・」
開口一番、父の言った言葉がそれだった。
「はい・・・」
私は静かに答えた・・・。
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あの日、ダンジョンの下層で、
兄ニコルの亡骸を守っていた幼竜から、
その最期を聞かされた時・・・、
私は、『金色の六翼』への復讐を決意した。
だが、それは私の個人的なわがままだ。
父や母はもちろん、
一族の者に迷惑はかけられない。
兄の亡骸をアイテムボックスに納め、
私は幼竜を腕に抱いて、一旦家に戻った。
父と母に兄の亡骸を見せ、
幼竜と共に兄の死を語った。
そして私は、『金色の六翼』への復讐の意志を伝え、
その実行の前に私を勘当するように言った。
――そうすれば、一族に飛び火する事はないだろうと・・・。
私のほうも、
ただただ、能力の優劣で人を判断する・・・、
そんな一族に対して、何の未練もなかった。
――父は了承しなかった。
「金はいくらでも用意してやるから、
一族の名が出ない方法で復讐しろ」
と言って・・・。
不本意だったが、
冷静に考えると確かに、
五人もの冒険者を消すには、それなりの手段が必要だ。
そのためにはやはり、金がいる・・・。
私は、父の条件を受け入れた。
だが、私の考える復讐計画は、
なかなか父に認められなかった。
「方法がずさんだ」、
「それでは足がつく」、
「返り討ちに遭うのがオチだ」、
そう却下され続けた。
まさか、私に復讐をやめさせようというわけでは・・・、
と何度も疑った・・・。
――ようやく父に認められる計画が出来たのは、
ひと月後だった。
――私は街に戻り、計画の準備に取り掛かり始めた。
必要な金は、すべて父が出してくれた。
街の領主を介して、
『金色の六翼』への依頼・・・。
それも父がやってくれた。
(らしくない・・・)
私はそう思った・・・。
だが、そのおかげで私は、
こうして兄ニコルの無念を晴らす事ができた。
その時、私の中で一つの疑問が浮かんだ・・・。
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「お父さん、一つ聞きたい事があります」
私は、対面に座る父に言った。
父は表情一つ変えず、
「何だ?」
と促した。
「あのミノタウロス王・・・、
あれは、あなたのしわざですか?」
そう、あれは明らかにおかしかった。
あれだけの巨体を誇るミノタウロスの王・・・。
その接近に誰一人気づかなかった事・・・。
そして、ウーゴをあれほど無慈悲に殺しておきながら、
私と、縛られているライラには見向きもせずに消えていった事・・・。
あのミノタウロスがもし、誰かが従属化したものだとしたら・・・。
「あの怪物に、あれほど冷静で的確な行動をさせられる従魔士を、
私は他に知りません・・・」
私がそこまで言うと、
父は目をそらさずに答えた。
「そうだ。
あれは私がやった」
「もしかして、ずっと見張っていたんですか?
ダンジョンの中でもずっと・・・」
「ああ」
「・・・」
私は唖然とした。
だが、同時に腑に落ちる事もあった。
考えてみれば、
あの復讐は思い通りに進みすぎていた。
私がある程度、従属化の力で抑えていたとはいえ、
ダンジョン内で他の魔物にまったく出くわさなかったなんて・・・。
「結局、私はあなたの手のひらで踊らされていたわけですか・・・」
「シオン!」
私の言葉をとがめたのは父ではなく、
その隣に座っていた母だった。
「お前の失敗は、一族の名に泥を塗る事になる。
監視は当然の事だ」
父は、冷静にそう言った。
「・・・」
「ピィ・・・」
何も言えない私の手を幼竜が、
慰めるようになめてきた。
「なら・・・」
私は口を開いた。
「それなら何故、
あなたはウーゴを殺したんですか?
あの時点で、私にミスはなかったのに・・・」
「あの男は・・・、あの中で一番の実力者だった。
お前が返り討ちになる前に対処したまでだ」
そんな説明では、
私は納得できなかった。
「ウーゴは完全に無防備だったんですよ?
私に背を向けて、ライラしか眼中になかった。
あの状況で失敗などするはずがないでしょう!?」
声を荒げて、父を問い詰めた。
父の目が、怒ったように鋭くなる。
だが、私は目をそらさない。
そのまま、私たち父子はにらみ合った。
――が、やがて父は諦めたように言った。
「あの男なのだろう?
ニコルにとどめを刺したのは・・・」
「え・・・?」
私は一瞬、聞き間違えかと思った。
今、父は何と言った?
つまり、
父がウーゴを殺したのは、
彼がニコルの命を奪ったから・・・?
「どうして・・・?
だって、あなたは・・・、
他の連中と同じようにニコルを・・・、兄さんを冷遇して・・・。
兄さんが家を出ていった時も・・・、何も言わず・・・。
兄さんが死んだ時も・・・、家を動こうとしなかったのに・・・」
私は混乱した。
父は静かに口を開いた。
「我々は代々、優秀な従魔士の一族として、貴族に期待をかけられ続けてきた。
優秀な者は、そこから一族の代表として貴族の前にも立つ事になる」
「・・・」
私は黙って、父の話を聞く。
「そんな中で、我が子可愛さに才能のない者を前に出したら、
貴族の我々を見る目はどうなるか・・・。
才能のない者も優秀な者と同等に扱う・・・、
それが許されるほど、我々は自由ではないのだ」
「・・・」
「たとえ当主である私でも、
いや・・・それだからこそ、才能の感じられなかったニコルを、
お前や優秀な親族より可愛がってはいけなかった。
一族全体のためにも、私にはニコルを冷遇する義務があった。
だが、それでも・・・」
歯を食いしばるように父は言った。
「駄目だな・・・。
あいつは・・・、私の息子なんだ・・・」
「父さん・・・」
私は、初めて父の本音を聞いた気がした。
いつの間にか、
私は涙を流していた。
母はもっと前から・・・。
そして父からも・・・、
やがて絞り出すような嗚咽が聴こえてきた・・・。
「ピィ・・・」
幼竜も悲し気に声を鳴らした・・・。
『最後は皆で大泣きした』。
ニコルを・・・、
私たちの大切な家族を想って・・・。
【THE END】
《あとがき》
これで完結です!
いや~、何とか後付けでつじつまを合わせ・・・、
いえいえ、伏線を回収し終える事ができました!
本当は最終話は、
分割せずに一話にまとめたかったのですが、
そうなるとかなりの文量になってしまうので、
仕方なく分けて掲載・・・。
せっかくのオチのインパクトが薄れてしまったかも・・・。
ま、今さら言っても仕方ありません。
何はともあれ、
最後までお付き合いくださった皆様に、
この場を借りてお礼を申し上げます!
それでは、また次の作品で!
あ、できれば最後の最後に、
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我妻 クリス




