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読了後の『君』の夜2

 作者:ジョセフィーネ・剛田


 作品名:『踏んでください聖女様! 足の加護なんてみっともないと婚約破棄された聖女のわたくしは、隣国の王子とラブラブしますわ』 



 ――読了。

 ★ ⌂ (; ・`д・´)


「なめんな……」

 読了後、『君』はつぶやいた。


 あとがきを見てはっきりと分かった。


 作者のジョセフィーネ・剛田……、

 こいつは男だ……。


 それもおそらく中年の!


 でなければ、こんな寒いあとがきなんか書くわけがない。


 何が『感謝感激雨あられ』だ。


 何が『ばっはは~い』だ!


 何が『ジョセフィーネ・剛田』だ!!



 P・Nから勝手に、作者は女の子と妄想していた『君』は激しく憤った。


 ふざけんな、こっちは貴重な睡眠時間を削って、最後まで読んでやったんだぞ。


 明日だって……いや、今日だって仕事に行かなきゃだというのに……、

 自分は中年オヤジの駄文に夜通し付き合わされたのか!



『君』の作者に対する激しい怒り……、

 それはここまでの妄想に対する恥ずかしさからくるものだった。


 作者が女の子だと妄想する『君』……。


 各話ごとに、自分の年も考えずくだけた文体のコメントを送る『君』……。


 そのうち、作者(女の子)から可愛らしい返信コメントをもらえるのでは……と、

 ひそかに期待した『君』……。



 そして遂に作者(女の子)から、

「一度お会いできませんか?」

 なんていう連絡が来て、待ち合わせ場所にはちょっと気弱な感じの文学系少女が……。


 何度か会っている内に、


「親と喧嘩してしまったんです……。

 だから、帰りづらくて……」


「う~ん、じゃあ今夜はウチに泊まってく?」


「いいんですか?」


「ああ、一応来客用の布団もあるし」


「わたしは……、一緒の布団でもいいですけど……」


「そう?(下心など全くないふりをしつつ)

 じゃあ、とりあえず二つ敷いて、寒かったら一緒に寝ようか」


「はい……、お世話になります」



 なんて展開に……、

 などと閲覧そっちのけで妄想たくましくし続ける『君』……。


 あとがきを見て目が覚めた『君』は、

 あまりの恥ずかしさに悶えそうになった。


 もはやその意識を、別の方向に向けてやり過ごすしかなかったのだ……。



(だが……、

 このオチはなかなかだな。

 まさか主人公たちが全員児童や成人前だったとは……。 

 婚約破棄してきた王子の身勝手さや、主人公の大人げなさや口の悪さも、その伏線だったというわけか。

 子供ゆえの感情まかせの行動……。

 てっきり、こういう作品にありがちなノリやご都合主義かと思ったら……やられたな。

 文章でキャラの年齢を錯覚させる叙述トリックか。

 うん、なかなかなかなか……)

 と、怒りがしぼんできてしまった後は、

 作品の考察をする事で必死に妄想から逃れようとする『君』……。


 だが、君は逃げられない。


 いいトシこいて、まるで中学生のような恥ずかしい妄想をしてしまった事実からは。


 そして、そんな妄想をしてしまうほどの空虚な現実から逃避するため、

 再びスマホを片手に心地よい物語を求めるであろう事実からは。


 そう、

『君』はまだ……、


 この沼から抜け出せない……。 



【昔日の婚約破棄編 完】

 そして『君』は逃げられない。


 最後まで読み切った作品には、

 沢山の『いいね』や『コメント』はもちろん、『スター』に『レビュー』をもって作品を評価するものだ、という自分の中にあるルールからも。


 心優しい『君』は、作者のためにもそのルールから逃げられない……。

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