26 変化
すぐにアイオン-NO.4を中心に、ティート-NO.6の背後にカテドラル-NO.8、セラフ-NO.1、サンドロー-NO.5が陣形を整えた。ジリジリとした膠着状態が続いていたが、その隙を見て、1体のバーサーカーが地中に潜ってしまった。すぐに、リアの掛け声を皮切りに、
「ティーブンッッ!」
「リース!」
「シャイン!」
「ジェネレーション!」
各サーヴァントはスキルを発動させ、残り7体のバーサーカーが地中へ潜ろうとしていた所を何とか止める事ができ、すぐさま攻撃に掛かった。
光剣、光矢2本が飛ぶまでは何とか3秒の時止めの間にセッレ細胞の破壊は成功したが、槍を生成したサンドロー-NO.5はバーサーカーの体に一撃のみとなり、その後、不気味な咆哮を上げながら地中に潜り、逃してしまった。
「逃したッッ、悪い!」
カイルが言うと、リアが、
「大丈夫! 残り5体になったわ。ケルビーニ-NO.2はどう?」
「あと……少し……」
「ダメだ、ファエルッ! そこを離れろ!! 真下ッッ」
俺の言葉に反応して、スキル発動を止め、すぐさまケルビーニ-NO.2を抱え、右横へと高く跳躍したのだった。すると、4体のバーサーカーが現れ、逃げ遅れたイカリオ-NO.7を糸で捕まえたのだった。
セラフ-NO.1は光剣を振り翳し、攻撃はせずに糸を切りながら、イカリオ-NO.7の拘束を解くだけに留めたのだった。
「いくわよっ! ティーブンッッ!」
そのスキル発動を機に、ティート-NO.6は光矢3連打ちをおこない仕留め、残り1体はセラフ-NO.1の光剣によってセッレ細胞を破壊されたのであった。これで残り1体となった。
「イカリオ-NO.7は、ケルビーニ-NO.2の近くに防御壁を!」
リアの指示の元、ケルビーニ-NO.2の防御と回復に専念させたのだった。
「リア、この後はスキルを使うなッッ! 使用過多になる!!」
ニコライが言うと、リアは、
「分かってるわ……だけど……」
その時だった。
バシゥューッッ!!
変な音がした方を見ると、サンドロー-NO.5が地中から出てきた槍によって、腹を突き抜かれてしまったのだった。
―― 何故バーサーカーが、サンドロー-NO.5の槍をッッ?! ――
「ブォオオオー!」
サンドロー-NO.5は激しい咆哮を上げたのだった。槍はすぐさま地中へと潜ったのだった。ケルビーニ-NO.2の回復もほぼ完了していた為、バルダサーレ-NO.3は急ぎサンドロー-NO.5の元へ駆けつけたのだった。激しく突かれ、義血が止めどなく流れ出ている。間に合うか厳しい状況だ。
バルダサーレ-NO.3は直ちにスキルを発動させ、修復にかかり、イカリオ-NO.7も遠隔より2体のサーヴァント周辺に防御壁を生成するのであった。しかし、慌てたニコライは、
「待てッッ! ヤツは地中から攻撃をしてくるんだ。防御壁で囲んでしまったら、位置が把握されて真下から攻撃が来るんじゃ……」
言葉を言い終える前に、残り1体のバーサーカーが真下から槍を突き出したのだった。
「ツウっ……」
ニコライの言葉に反応して、跳躍準備に掛かっていたファエルの脚に槍が掠ってしまったが、何とか攻撃を逃れる事が出来たのであった。しかし、傷は深く抉れ、義血が流れていた。慌てたクイルは、
「ファエルッッ!」
「うるっっさい、クイル兄! これくらい何ともないッ。サンドロー-NO.5の回復を優先させる。カイルに呼び掛けても反応がないの。このままでは危ない! お願い、みんなの力を貸してッ」
すぐさまニコライは、
「カオル! バルダサーレ-NO.3の元へ行き、察知能力で敵の位置を把握して、2人を守ってくれ。 リアは背後からサンドロー-NO.5を抱え、跳躍出来るよう補助をしろっ! テオ、お前はカオルの指示を聞き、すぐさま防御壁が生成できる準備をしとけ! 時間稼ぎを頼む」
「「「「Yes, sir!」」」」
「それから、ヤツらの糸には複製プログラムがあるんだ! 〝光〟以外はOHC戦闘スキルの使用はせずに……」
「サンドロー-NO.5の真下斜め方向から攻撃ありッ!」
俺が言葉を放つと、即座に反応し、
カテドラル-NO.8はバルダサーレ-NO.3を、アイオン-NO.4はサンドロー-NO.5を抱え右横へ、イカリオ-NO.7は真上へと跳躍した。その通りに糸と槍が高く突き上げるように出現したのだった。
俺の言葉に反応し動いていたセラフ-NO.1は、その場所に向かって、光剣を振り翳した。すると、糸と槍はドロドロと溶けたのであった。だが、出現したのは糸と複製した槍のみで本体は地中に隠れたままであり、仕留める事は出来なかった。
「何なのッ! 堂々と出て来て、戦いなさいよッッ」
レティは悔し紛れの言葉を吐く。すると、
「……だ、だれが……い、いくもんか……」
「え、何て?! ちょっと、誰よッ! ふざけた事言ってんの。クイル?!」
「お、俺じゃねーよ!」
「じゃあ、誰が……。 ッ?!」
周りを見渡していたレティは少し離れた場所に6つの黒々とした瞳と頭だけを出したバーサーカーを見つけたのだった。
「アイツかッ! なるほど、アイツも言葉を話せるのね……。ふざけた事をッッ……」
レティも知能と言葉を話すところは見て理解はしていたが、自分の言葉に反応するとは思ってもいなかったようだった。
「お前……、攻撃を止めなさい!」
「こ……ころす。……おれ、そいつに……さ、さされた。……いたい……いたい……。……な、なかま、しんだ。……ゆるさない」
「先に仕掛けてきたのはあんたたちじゃないッッ」
「ひ、ひとは……ころ、す。……ば、ばかなやつ……ばかり。や、……やくにたたない。……よわい。い、いらない……」
「はぁ?! お前らに言われたくないッ! 人は尊いものよ。 弱くもないし、あんたたちより、よっぽど賢いわよッ!!」
「お、おまえたち……なかま、だいじしない。……に、にくみ……あう。……おろか、……おろかな……い、いきもの。……いらない……いらない……」
「戯言をぉおおー!」
レティは怒りに任せ、その場に向かい、光剣を振り下ろしたが、すぐに地中へと潜り、地を抉っただけであった。歯を食いしばり、怒りで肩を振るわせていたレティに、ニコライは、
「敵の挑発に軽々しく乗るんじゃない、レティ……。冷静を保て……」
「だって、アイツッッ! ……申し訳、ありませんでした」
「こういうのも作戦なんだろう……。……なら、こちらも仕掛けるぞっ!」
「地中に潜ってるヤツをどうやって……」
テオが言うと、
「ファエル! サンドロー-NO.5の回復状況はッ?!」
「とりあえず義血は止めた!」
「なら、アイオン-NO.4に任せ、お前は察知に切り替えろッ! リア、テオはファエルの指示に従え」
「「Yes, sir!」」
「カオル! お前はレティの光剣を握れ!! 〝光〟を放ち、地中から追い出し、仕留めるんだッ! 急げッ」
直ちにセラフ-NO.1の元へ向かって走っていたカテドラル-NO.8に、
「ダメッ! 足元にッッ」
ファエルが叫ぶと、槍ではなく、黒々とした太く長い脚を突き上げてきた。
「グァアアアー!」
カテドラル-NO.8は咆哮を上げたのだった。大腿部を串刺しにされてしまい、すぐに、
スガガガァーンッッ!!
そのまま投げ飛ばされてしまったのだった。すぐさまセラフ-NO.1はカテドラル-NO.8の元へ駆け寄って行った。義血が止めどなく、出ていた。その様を見てレティは、
「ファエルッ……」
「やめろッッ! カイルがまだだ!! 光剣を渡せっ」
「だってッッ」
「うるせぇ! しばらくは保つはずだ。光剣を早くっ!!」
言われた通りにオズオズと光剣を渡そうとすると、レティに俺は、
「片足だけでの跳躍は無理だから、……レティ。敵が出現したら、そこへ俺を投げてくれッ。一撃で仕留めるッッ」
「分かった!」
「アイツ……アイツの言葉は許しちゃいけない……」
すると、義血によってなのか、カテドラル-NO.8の瞳が真紅色に変わったかのように見えたと後にレティは言っていた。次の瞬間、カテドラル-NO.8は光剣を握り、眩い〝光〟を放ったのだった。
地中から苦しみと怒りに満ちた咆哮を上げながら、バーサーカーが飛び出してきた。セラフ-NO.1は即座にその方向へカテドラル-NO.8を投げたのであった。
光剣は見事な弧を描き、残り1体のバーサーカーは崩れ行くように粉砕し、消滅したのであった。
「「やったッッ!」」
ニコライとクイルはその凄まじい太刀筋に惚れ惚れしたと後に話をしてくれた。しかし、片脚で着地し転がったカテドラル-NO.8には異変が起こっていた。俺はその時の記憶が……ない。これもまた記録した音声映像によって、自身に起こった事を確認した時に知ったのだった。
「ゴガァガガガガガアアーッ! グォオオオーッッ!!」
苦しみの咆哮を上げ、地を這いながら悶え動き、カテドラル-NO.8の瞳は徐々に鮮やかな真紅色に染まっていった。大腿部の痛みからなのか、何かの苦しさからなのか、どちらが思い出せなかったが、激しくのたうち、動き回るカテドラル-NO.8。
その様子を目の当たりし、なす術なく困惑するスゥント・キリーギルのメンバー。真紅色の瞳に変化したサーヴァントを見るのも初めての事だったからだ。
「あ……あれは、……なに……」
レティは恐ろしさに身動きが取れず、やっと声を絞り出していた。
苦しむ姿に突き動かされたバルダサーレ-NO.3は、カテドラル-NO.8の元へと脚を引き摺りながら向かい、悶え苦しむカテドラル-NO.8に覆い被さり、
「ヒィレミセ! ヒ マ ヒテリオセ!!」
またしても異国の言葉を放ったのだった。
その言葉を聞いたカテドラル-NO.8は、のたうち回るのを止め、瞳も鮮やかな真紅色から通常の瞳へと変化を遂げ、気絶するようにグッタリと倒れ、動かなくなってしまったのだった。
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