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20 少人数のチーム戦闘訓練 

「バルダサーレ-NO.3、ティート-NO.6、イカリオ-NO.7、カテドラル-NO.8、搭乗完了! クラノス通信機、解放使用! 出動まで5・4・3・2・1 ……GOッ!!」

 初めて少人数チームでの模擬戦闘訓練に少し緊張感が漂いながらも、警戒を怠らず、それぞれがアクリルドーム型の荒地へと出たのであった。すると司令室から、

「ファエル、敵の出現を予測し、直ちに告げよ!」

「Yes, sir!」

 ファエルはすぐさま集中をし、敵の位置を探った。その時はすぐにやって来た。

「テオの左後方より出現あり!」

 空間を移動している気配を感じ、すぐさま俺は声を上げた。

「これは……空間移動型だっ!! 気をつけろッッ」

 予測通り、イカリオ-NO.7の左後方にバーサーカーが出現した。その姿は手足が長く、頭には無数の蛇のような帯がウヨウヨと漂い、全体がブラウン系のレトロブラウン色とレトロ色の間のような色合いをしていて、大きな真っ黒い瞳が気色の悪さと不気味さに拍車をかけていた。

 出現したや否や、長い腕を乱暴に振り回し、テオは素早くスキルを発動させた。

「フォッシュヴァール!」

 防御壁が生成され、イカリオ-NO.7は無事であるかのように思えた。……が、バーサーカーの太く大きな腕が防御壁を一撃で破壊してしまったのだった。

「「「テオっ!」」」

 イカリオ-NO.7はその長い腕の攻撃を受けてしまい、強烈な威力でもって投げ飛ばされ、バーサーカーはまた地中へと潜ったのだった。

 テオのレゾナンスレートはDランクである為、強度がなく、脆いのであろうと思われたが、その威力からすると、通常の強さよりは上げた設定となっていると感じた俺はすぐさま、

「ファエル! すぐにテオの回復を……」

「ッ、……うるっせぇ、カオルッッ! 俺は大丈夫だ!! 無様に投げ飛ばされて、怪我をしてザマァみろと思ったんだろうが、俺は何ともない! 余計な言うなッ」

「はぁっ?! 誰もそんな事言ってないし、思ってもないわよっ! 何なの、コイツ!!」

 またもや、憎たらしい減らず口を叩くテオに、ファエルは怒りで返答したのであった。しかし、

「ファエル、集中を切らすな! 次だ!! テオの周りに集まり、フォーメーションを整えて迎撃するんだ」

「っ、分かった!」

 俺の声掛けでファエルは冷静さを取り戻したようだった。すぐにイカリオ-NO.7の元へ集まり、背中合わせのフォーメーションを組み、迎撃に備えた。すると、

「……ウッ、(ツウ)……」

 その苦痛な声に反応し見てみると、イカリオ-NO.7は投げ飛ばされた衝撃で肩を脱臼、中にいるテオにもかなりの激痛があるようだった。その様を見て、ファエルは、

「肩がッッ! ヒール!!」

 ファエルはすぐさまスキルを発動させ、イカリオ-NO.7の回復を行うのだった。すると眩い光線がイカリオ-NO.7の肩に放たれ、脱臼していた肩が元に戻っていくのであった。初めて目にした凄まじい回復力に俺は驚きを隠せず、

「凄い……」

 バルダサーレ-NO.3の癒しの威力に魅せられ、神を見たかの様な神々しいその姿に見惚れてしまい、敵の察知を一瞬、忘れてしまっていた。すると、

「カオルッッ、前だ!!」

 クイルの叫び声で振り向くと、俺の目の前にそのバーサーカーが立っていた。攻撃を仕掛ける訳でもなく、ただ不気味に首を傾げる動作をした。次の瞬間、凄まじい速さで頭にあった蛇のような無数の帯がカテドラル-NO.8の頭部に巻き付いてきた。この戦闘は後に記録されていた音声映像を見て、俺は知ったのだった。


 ボディに打撃はなく、頭と首がミシミシと音を立てて、ジワジワと潰されていくような感覚と痛みを感じていた。

「グァアアアー!!」

 あまりの痛みに俺は叫び声を上げ、カテドラル-NO.8も同時に苦痛の咆哮を上げた。クイルは瞬時にスキルを発動し、

「リース!」

 光弓が生成され、連投で光矢を放った。だが、回避能力も上げられていて、乱れ飛ぶ光矢は掠りもしなかった。ヤツはカテドラル-NO.8を乱雑に持ったまま、回避を続けながらも締め付けているようだった。

「ブォオオオーッ」

 カテドラル-NO.8への締め付けが徐々に強くなっていき、尋常でない頭の痛さに絶叫し、それとともにカテドラル-NO.8もまた咆哮したのだった。ミシミシと締め付ける音だけが辺りには鳴り響き、その光景は蛇が獲物を捕獲し、締め殺す様によく似ていた。全員がなす術がなく、立ち尽くしていると、バルダサーレ-NO.3が突如として走り出し、その最中に飛び込んで行ったのだった。

「ファエル! やめろッッ!!」

 クイルの静止も聞かず、長い腕の攻撃を交わしながらカテドラル-NO.8の背後に立った。

「ヒールッッ!」

 カテドラル-NO.8の背中を支えるように回復を促すのだった。自分が光矢を持って攻撃に行ってもクイルのスキルが消滅してしまうだけで、他人のスキルは扱えない。ならば、自分のスキルを使える最大限の方法を考え、行動に移したと後にファエルが言っていた。

「ファエルッ、危険だからっ……」

「そんな事言ってる暇があるんなら、クイル兄が光矢を射続けなさいよッッ! 思考を停止するなッ、このっ、バカ兄貴ッ!!」

 口汚い我が妹だと、初めてファエルに怒鳴られたクイルはショックだったと後に言っていたが、言われた通りに迅速に行動に移した。

 だが、またしても俊敏に動き回り、なかなか光矢は当たらない。動き回る度にバルダサーレ-NO.3は振り落とされそうになり、攻撃も交わしながらも俺の背後にピタリと付き、カテドラル-NO.8の腰辺りからスキルを持続的に使い続けた。カテドラル-NO.8は荒々しく振り回され、しがみついていたバルダサーレ-NO.3も一緒に振り回されていた。

「キャア!! 何してんのってッ! 早く射抜きなさいよ。何のために弓道の訓練してんのよッッ」

「こっちだって真剣にやってんだってッ! 速いんだよ、アイツ!!」

 すると、

 キシャッッ!!

「アガァぁッ!!」

 回復力よりも攻撃力の方が(まさ)ってしまい、その咆哮を最後にカテドラル-NO.8の体は力なく緩んだのだった。

「カオルッッ、カオルッー!」

 作動メインシステムが潰されたようで、カオルからの返答もなく、生死の状態も分からない。衝撃的な光景にカテドラル-NO.8の腰にしがみついていたバルダサーレ-NO.3は目の前が歪み始め、倒れ掛けそうになったその時、

「フォッシュヴァールッッ!」

 ド、ド、ド、ドダァアアーン!!

 一瞬の隙をついて、回復したイカリオ-NO.7がスキルを発動。幾重もの防御壁が生成され、そのうちの一つがバーサーカーの頭部に命中し、無数の帯が緩み、カテドラル-NO.8を引き離す事に成功したのだった。

 バルダサーレ-NO.3はカテドラル-NO.8とともに、地面に叩きつけられたのだが、すぐさまバルダサーレ-NO.3は体勢を立て直し、バーサーカーの脚にしがみつきにいったのだった。

「クイル兄ッ! 頭部ッ!! 頭部中央の奥にあるセッレ細胞を破壊してッッ」

 しがみついたバルダサーレ-NO.3に向かって、バーサーカーの長い腕が振り下ろされていた。

 クイルはファエルの言葉通り、冷静にそして渾身の力を込めて光矢を放ち、バーサーカーの頭部に命中させた。セッレ細胞の破壊に成功したのであった。

 バルダサーレ-NO.3の頭を目掛けて、振り下ろされていた腕は止まり、その原型を留めたまま停止をしたのだった。


 クイルもテオも安堵の息をついたが、バルダサーレ-NO.3はすぐさまカテドラル-NO.8の側へと駆け寄って行き、回復スキルを施しながら名前を呼び続けた。

「カオルッ、カオルッッ! 返事をしてッッ。ねぇ!! カオルッ」

 しかし、呼び掛けに反応しない俺。意識を無くしてしまっていた……。不安が募り取り乱していくファエルに司令室から、

「ファエル、落ち着くんだ! 生命反応はちゃんとある。お前が回復スキルを施してくれていたお陰だ!! 強烈な痛みに気絶してしまい、今は意識を失っているだけだろう。だから落ち着け、ファエル!!」

 ロルフ師匠のひと言で我に返り、冷静さを取り戻していった。〝生命反応はちゃんとある〟その言葉に、ファエルは安堵から意識を失い、バルダサーレ-NO.3は力なくその場に倒れてしまうのだった。

「ファエルッッ!!」

 突然の出来事に焦ったクイルはすぐさまバルダサーレ-NO.3を抱え、

「俺はこのまま帰還します! カオルは回収チームに任せますので、お願いしますッ。テオッッ、悪い! 先に戻る!!」

 スキルの使用過多で倒れたと思われたバルダサーレ-NO.3を抱え、急ぎ帰還するクイルであった。妹とはいえ、義理の、いや他人の子に何故そこまで焦るのか、そう思いながら頭を捻ったと後にテオも言っていた。確かに……不思議な関係に思えた。


 回収チームにより緊急解除され、俺は助け出されたが、顔は青白く生気のない顔をしていたのだった。すぐに回復室へと運ばれたのだが、数日の間、目を覚ます事はなかった為、治癒室へと移されたのだった。

読んで頂き、ありがとうございます!

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