特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する
「婚約を白紙に戻したい、ですか」
「ああ。ルリアと私の赤い糸が繋がっていると、ルリアが言ったんだ」
「ごめんなさい、ナタリアお姉様。私は病弱で部屋のお外になかなか出られなくて、今まで自分の赤い糸が誰に繋がっているかわからなくて…」
私はナタリア。公爵家の長女で、第二王子であるアルフォンス殿下の婚約者。
妹のルリアは、人の運命の相手が分かる特殊能力を持つものの体が弱くてあまり外に出られない。
しかしそういう能力持ちは希少。そしてその妹がそう証言するのなら、私とアルフォンス殿下は結ばれることはないのだろう。
「お話は分かりました。どうか、妹とお幸せに」
運命の相手と結ばれるなら、その方が幸せだろう。名残惜しいけれど、既に親しげな二人の様子を見て諦めもついた。
「妹と第二王子殿下が新たに婚約したのはいいけれど、そうなるとこの家を継ぐのは私のお婿さんになる」
妹が第二王子であるアルフォンス殿下に嫁ぐから。第一王子であるカイル殿下はとある魔女の呪いを受けていて王位を継承出来ない。アルフォンス殿下が王太子となられる予定なので、妹は将来の王妃となる。
身体の弱い妹が心配だったけど、運命の相手であるアルフォンス殿下と婚約を結んでから確実に良くなってきているので、このまま行けば結婚までには大丈夫になるはず。
元々特殊能力を持たないと思われている私はあまり歓迎されていなかったので、これで良かったのだろう。
「でもまさか、そのお婿さんとなる新しい婚約者が義兄になるはずだった第一王子殿下だなんて」
王家からの懇願でそのような流れになった。そして私は覚悟を決めた。
「妹を守るため、特殊能力を持たないふりをしていたけれど。運命の相手が見つかって結ばれて、妹は確実に体調が良くなっている。もう妹のために毎日毎時間〝祝福を与える能力〟を使う必要はない」
そう。私にも実は特殊能力はあった。むしろ妹より有力な能力。祝福を与える能力。でも、これを公表してしまえば自分に使って欲しいという人が雪崩れ込んで来て、妹に使えなくなってしまうため誰にも言えなかったのだ。
「妹は私の能力が無ければいつ死んでもおかしくなかった。でも運命の相手である第二王子殿下と結ばれてからは祝福が要らなくなった。これからはたくさんの人を救えるはず」
手始めに、魔女の呪いを受けた第一王子殿下を解放して差し上げよう。
「…というわけで、祝福の力を使っていいですか?第一王子殿下」
「むしろこちらからお願いしたい」
「わかりました」
私は特殊能力を最大解放して、第一王子殿下に祝福を与える。すると、呪いの証だった刺青が消えて、醜い豚とカエルのキメラの様だった第一王子殿下が生まれ変わった。第二王子殿下以上に美しい儚げな美人となった。
「こ、これは私か…?」
刺青が消えたか確認するため、姿見を見た第一王子殿下は絶句。そして、私を見てお礼を言おうとしてまた絶句した。私が口から血を吐いて倒れたから。
「…っ!誰か!医者を呼べ!」
第一王子殿下の叫びに、呆然とした使用人達がやっと動き出した。
「ううん…ここは…」
「そなたの部屋だ」
「第一王子殿下」
「私の呪いを解くためとは言え、無茶をしたものだ。一週間は安静にして、その後身体を動かすリハビリが始まるそうだぞ?」
「そうですか」
第一王子殿下は私の頭を撫でる。
「本当にありがとう。おかげで私は呪いから解放された」
「よかったです」
「そなたを生涯をかけて幸せにすると誓う」
「ありがとうございます」
ちゃんと会ってからたった数時間だけれど、すっかりと私達は仲良くなっていた。
私を妹と違って役立たずだと思っていた人々は、私が第一王子殿下を救ったことに驚いていた。そして私をちやほやするようになった。気分はあまりよくはない。病弱なのが私だったらよかったのにと言っていた人達ばかりだったから。
そしてなんと誰とも赤い糸が繋がっていなかった私と義兄が、いつのまにか赤い糸で繋がっていた。妹が驚愕しつつも報告してくれた。
その妹がどうして能力を隠していたのかと聞くので正直に答えると、実は私が妹を守るために力を隠していたと知り困惑する妹。
「周りの全てが手のひらを返してきて、なんだか逆に不安になります」
「そなたは私が守る。安心しろ」
「ありがとうございます。ところで、これからは妹に毎日能力を使う必要はありませんから、その分だけ毎日国自体に祝福を与えていいでしょうか?」
「もちろんだ。よろしく頼む」
そして私は、次は国民達のために能力を毎日妹に使っていた分だけ解放した。瀕死の人間を生かすほどの力だが、全国民に対してなので効果は薄まる。それでも国民達も怪我や病気が良くなったり金回りが良くなったりと効果が現れる。
そしてこれに関して、私の能力のおかげだと王家が大々的に宣伝した。今まで私を特殊能力がない妃で大丈夫なのかと言っていて、第二王子殿下と私の婚約解消を喜び、妹が新たな婚約者になったのを歓迎していた国民達が、手のひらをくるりと返して熱烈に歓迎してくる。やっぱり気分は良くないけれど、まあよかったのだろう。
「第一王子殿下が王太子に?」
「ああ、そういうことになった。君の今までの王太子妃教育も、無駄にはならないということだ」
「それは良かったです」
「私は君さえ隣にいればなんでもいいんだがな」
「ふふ、ありがとうございます」
第一王子殿下がうちの婿養子に入るはずが、第一王子殿下が王太子になることが決まった。呪いも解けて、一応可能性があると王太子教育もきちんとこなしていて、運命の赤い糸で繋がる私と婚約しているため、わざわざ第二王子殿下に王位を譲る必要がなくなったから。
元婚約者だった第二王子が私を手元に置いておけばと悔しがっているらしい。妹も悔しがっていたけれど、私の能力で生かされていたと知っているので諦めてくれた。
今まで冷遇されてきていきなり周りからちやほやされるのは逆にちょっと怖いけれど、それでも笑顔で人々に祝福を与え続ける。それが自分の役目だと信じて。




