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幼馴染の意地  作者: ヤマネコ
8/43

中学生(6)

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鳴海から指定された時間と集合場所に集まると既に3人は来ていた。鳴海と愛奈はなぜかリュックサックを背負っており、吉良は手ぶらだ。健也も手ぶらだ。3人に適当に挨拶して何をするのかを聞いてみると


鳴海「この先にお祭りがあるんだよ。そこに行こうと思うの」

健也「お祭り? お金そこまで持ってきてないよ?」


鳴海からお金は持ってこなくても良いと聞いていたが、一応千円ほど持ってきていた。しかしお祭りという言葉を聞くと、屋台が並んでおり、金魚すくいや射的とかを想像してしまい、千円程度ではあまり楽しめなさそうな気がする。健也がそんなことを考えていると、鳴海は健也の、愛奈は吉良の腕を掴んで歩くことになった。


健也「なぁ、鳴海」

鳴海「何―」

健也「そのリュックサックは何? 何が入っているの?」

鳴海「お祭りだからねー。軽く食べられる物とか、座ることが出来る敷物とか、水筒とかそんな感じ」

健也「へー、言ってくれたら俺も準備したのに」

鳴海「私と愛奈が準備したかったからねー。気にしなくても大丈夫だよ~」

健也「そう言われても…」


気にしてしまうものは気にしてしまうものだ。試しに吉良の方を振り向くと、愛奈と話をしている。雰囲気的に楽しそうな感じだ。自分だけ少し暗く考えるのもグループの雰囲気を壊しかねないなと思い、鳴海達のリュックサックのことは考えないようにした。それから歩くこと10分程度、神社がある場所に出た。


健也「ここって神社あったんだな」

鳴海「あまり人は来ないみたいだけどねー。でも今日はほら」

健也「あぁ、確かに人は結構いるな。あれ? でも屋台とか出てないぞ?」

鳴海「準備中なんじゃないかな?」

健也「あれ? いつ始まるの?」

鳴海「もうそろそろかな」

健也「もう始まるのに準備中? 何かトラブルでもあったのか」

鳴海「かもしれないねー。人が思ったよりも来ているからじゃないかな?」

健也「そういうものか?」

鳴海「そういうものじゃないの?」

健也「そうなのかー」


神社に来ているのは比較的10代後半から20代前半くらいの男女だ。男女2人で来ている人もいれば、健也達みたいに集団で来ている人達もいる。鳴海は健也の腕を引っ張ったまま「受付」と書かれたテントに近づく。


受付「ようこそ、くじをどうぞ」

鳴海「はーい」

受付「5番ですね」

鳴海「分かりました」

受付「写真撮りますねー」

健也「え、なんで」

受付「そうしないと参加出来ないからですよ。あ、インターネットとかに流しはしませんよ? この祭りが終わったらちゃんと消しますから安心してください」

健也「は、はー?」

鳴海「ほら、行こう」

健也「え、あぁ」


受付から離れて近くにある席に座ることに、前を見ると吉良達も受付を終えたようで健也達の方に近づいてくるのだが、どうも吉良の様子がおかしい。顔は暗くてはっきりと見えないが、なんか歩いているというよりは愛奈に鞭を打たれて歩かされているような感じがする。あの2人…いつのまにそういう仲に…


吉良「健也~、健也~」

健也「え、ちょっと? どうしたの?」


何故か泣き出しそうな…というか半泣きじゃねーか。本当に何があったんだろうか? 愛奈の方を見てみるが、半泣きの吉良を見て嬉しそうに笑っている。なんやこいつ


健也「どうしたの、吉良?」

吉良「うぅぅ、今すぐ、今すぐ逃げようけんやぁぁぁ」

健也「逃げる? どこに? どうして?」

吉良「いやだ~帰る~」

健也「……」


愛奈の方を見てみるが、なぜか鳴海とハイタッチしている。おめーら何友人が半泣きしているのにハイタッチしてるねん…まさか吉良は「友人」として見られていないのか!??


目の前には顔をうつむかせて泣いている男1人とハイタッチしている女2人


どっちの味方になるかって? そんなの…言われなくても決まっているだろ? 


健也「吉良、逃げるぞ!」

吉良「!」


吉良の手を握って走り出そうとした



鳴海「けん君」

健也「はい」

鳴海「何してるの?」

健也「すいません、なんでもないです」


いつかの時のように、少し空気がぴりついており、健也が口答えすればするほど後で面倒になるときの言い方だ。心は逃げようと叫んでいるも、足は地面にくっついてしまったかのように動かすことが出来ない。まるで鳴海の犬だ。鳴海が健也に「止まれ」と言えば止まり、「お手」と言えばお手をしてしまうような…いつのまにか健也は鳴海に逆らうことが出来なくなっていた。




















健也「なんだそういうことか」

吉良「…」

愛奈「吉良大丈夫だよ、ここの肝試しは初心者の人でも参加しやすいってあるし」

吉良「初心者でも参加しやすい肝試しってなんだよ」


健也に抱き着きながら顔を上げない吉良

吉良が健也に抱き着いているのが気に入らないのか、健也を睨みながら吉良を優しい声で説得する表情と声が一致していない愛奈

そんなやり取りを眺めて楽しそうにしている鳴海

なんでさっき逃げないで大人しく鳴海の言う事を従ってしまったのかなと自問自答している健也の4人。しばらく待っていると、順番が回ってきて吉良と愛奈は受付の人に何かを渡された後に奥に消えていった。それから少しして健也と鳴海の番になる。


受付「これを。もし迷子になった時はそのボタンを押してください。位置情報がこっちに送られるので、押した後はその場で大人しくしてください」

鳴海「はい! 分かりましたー」

健也「……はい」

鳴海「ほらほら、行くよけん君~」

健也「はい」

鳴海「……」

健也「え、どうしたの?」

鳴海「……」


鳴海と目が合う。いつ見ても可愛い顔をしている


健也「あーはい、そういうことね」


鳴海の目を見つめながら健也から手を握る。すると鳴海は嬉しそうに手を握って指示された道を並んで歩くことに


健也「それにしても肝試しならそう言ってくれれば良かったのに。吉良マジで怖がっていたぞ」

鳴海「吉良君が怖いの苦手で、それを克服するのに丁度いいんじゃないかって愛奈ちゃんが言っていてね」

健也「それでもしっかり話すべきだったと思うぞ。半泣きとは言え、人には見られたくないところを見られたと思っているかもしれないから」

鳴海「うん、そこは謝るよ。これが終わった後に」

健也「しっかり謝れよ?」

鳴海「……うん。謝るよ。今回は私達が悪かったし」

健也「ったく…てあれ? どうしたの?」


突然鳴海は健也から手を放す。今まで鳴海から放すことはあるにはあるが、それでも健也から放すときが8~9割だ。


鳴海「いや、なんとなくそうしようかなって。特に理由はないよ」

健也「そうか、転ばないように気を付けてね」

鳴海「うん」


【うぼわああぁああああぁあ!】


物陰から顔にメイクをした大男が、両手を上げて奇声を発しながら健也達を脅かすが


健也「え」

鳴海「うわ」


【……】


大男は想像していた反応を見られなかったのか、隠れて練習していたのに脅かしが全く効かなかったのか、肩を落として出てきた場所に戻って行ってしまった


健也「鳴海全然驚いていねーじゃん」

鳴海「考えごとしていたから。そういうけん君こそあまり驚いていないじゃん」

健也「吉良大丈夫かなって思ってたら来たから……。あんなに怖がっていたし……」

鳴海「あー、でも愛奈ちゃんいるし」

健也「その愛奈さんがちゃんと吉良のことを守ってあげているか不安で」

鳴海「愛奈ちゃんなら平気じゃないかなー。吉良君も男だし平気じゃないかな~」

健也「男だろうが女だろうが、怖いものは怖いんだ。耐性のある人はない人を守るのに男も女も関係ないだろ」

鳴海「……そうだね」

健也「?」


少し落ち込んだような声色だったが、近くの草むらがゴソゴソと音を立てると


【おんどりゃああああああぁぁあ!】


健也「……だから鳴海。俺を守ってくれ」

鳴海「はいはい。あ、そういえば途中でリタイアできるけどどうする?」

健也「出来るのか!?」

鳴海「だってそんなに膝を震わせていたらねー。ってあれ吉良君達じゃないの?」

健也「え」


前を見ると、確かに見慣れた2人がいた。1人は地面にへたり込んでおり、もう1人はへたり込んでいる1人を説得しているようだが、上手くいっていないようだ。


鳴海「愛奈ちゃーん」

愛奈「ああ、鳴海」

吉良「!? 健也~!!!」

健也「うおぉ!? 吉良?」

吉良「けんやぁぁぁ~!」


吉良は立ち上がり、健也に飛び抱き着く。思わず後ろに頭から倒れそうになるが、鳴海が健也の腕を痛いくらいに引っ張ってくれたので倒れることはなく、受け止めることが出来た。


泣き顔が完全に女の子にしか見えない


だが男だ


声も女の子に聞こえるし体格も小さいから女の子にしか見えない


だが男だ


愛奈「健也。吉良と一緒にリタイアしてくれないかな? 結構キツイみたいで」

吉良「けんやぁあぁぁぁー!」

健也「うん。吉良大丈夫だから。分かった」


吉良の背中を優しく撫でると、それに甘えるように健也にギュッと抱き着く吉良。愛奈の方を見てみる。こんなところを見ると基本的に不機嫌になる愛奈だが、今回は気まずそうに健也を見て素直にお願いして来た。このままだと吉良は気絶する可能性もあるので、吉良と一緒にリタイアすることに。


この肝試しは男女ペアで参加しなければならないが、近くにいたスタッフに確認するとリタイアして残った人同士で組むことが出来るようだ。全員リタイアして楽しんでもらえないよりは、余った人同士で組んで楽しんでもらった方が良いという運営側の方針らしい。


スタッフに何か話している女子2人を横目に見ながら吉良の背中を撫でつつリタイア用の通路を歩き、明るい場所に出てきた。そこには屋台もやっており、軽い食事も出来るようだ。


健也「吉良、何か食べるか? 俺千円持ってきているから何か買おうか?」

吉良「何があるの?」

健也「見てみないと分からないけど、何かあるでしょ」

吉良「……僕も行く」

健也「そこで座って待っていていいぞ」

吉良「暗いところ1人で座って待つよりは一緒にいたい」

健也「分かった。一緒に行こうか」

吉良「うん!」


2人で明るくガヤガヤしている屋台を回る。焼きそばのソースの匂い、タコ焼きを焼いている音、金魚すくいや射的に夢中になっている人達、暗いところから明るく人が沢山いる場所に来たからか、吉良もだんだん暗い表情から明るい表情になっていき、健也と楽しくお祭りを回った。


吉良はお金をもってこなくてもいいと言われたので持ってきていないようだ。何か買うなら健也の千円しか使うことが出来なかったが


健也「焼きそばとかどう?」

吉良「あーいいね。でもたこ焼きとかどう?」

健也「悪くない。迷うなこれ」

吉良「あ、綿あめだって。どう?」

健也「綿あめなら、あぁでもコロッケもあるし、串カツも……」

吉良「迷うね~!」

健也「あははっ! そうだな!」

吉良「はい、健也。あ~ん」

健也「これ上手いな! はい吉良」

吉良「えへへ」


2つ買うのではなく、1つ買ってそれを2人で分け合いながら食べる


お金を使って沢山買って食べるのではなく、少ないお金で何を食べるか吟味して、それで意見をぶつけ合いながらも一緒に食べるというのも悪くない。なんせ一緒に食べるので


「美味しいねー」


という会話で終わることなく、相手の好き嫌いも分かってまたお互いの理解が進んでいく。また「一緒の物を食べている」という感覚が2つ買って食べるよりも強いので「一緒に来ている」という感覚も強くなる。相手のことを理解していくという感覚に男2人はすっかり楽しい気分になり、女子2人のことをすっかりと忘れながらお祭りを堪能していった。



すっかりとお祭りもお開きムードになり、楽しさのあまり、スマホの存在自体を忘れていたが、時間確認の為にスマホを取り出すと着信が5件ほど来ていた。しかも最後に来たのは10分前だ。グループメールも確認すると


鳴海『連絡したけど出ないので先に愛奈ちゃんと帰ります。2人とも今日はごめんね。また違うことで遊ぼうね』

愛奈『吉良と健也本当にごめん。今度は2人が誘ってくれると嬉しいかな』


健也「だそうだ」

吉良「すっかりあの2人のこと忘れていたよ。もう9時前になるね。僕も帰らないと流石にまずい」

健也「俺も帰る。途中まで道一緒だよな?」

吉良「そうだね。一緒に来てくれる?」

健也「いいよ。しかしあの2人……何がしたかったんだろうな」

吉良「ねー。あ、そうだ。今度は僕達があの2人をびっくりさせない?」

健也「あー、そうだね。お返しって意味じゃありかもな」

吉良「鳴海さんって何が苦手なの?」

健也「え、鳴海? そうだなー」


あれ? 鳴海って何が苦手なんだろう? 勉強も運動も比較的出来るし、怖い物も今回の件で少しは耐性があるから無理だし(無理にやれば自滅してしまう可能性が高い)、嫌いな食べ物も……一緒にご飯も食べるけど何かを残していることは体調が悪いと言っている時くらいで残している物に偏りないし……う~ん?


吉良「なさそう?」

健也「そう……だな。何が苦手なんだろう? 愛奈さんは?」

吉良「愛奈は男が嫌いだね。僕と健也は大丈夫みたいだけど」

健也「男嫌いか、それはあまり突きたくないなー」

吉良「だねー。もっとこう、安全にびっくりさせることが出来るものってないかなー」

健也「クラッカーとか?」

吉良「あれ片付け面倒なんだよね。出来れば後始末の残らないものが……」

健也「注文多いですねぇぇ!」

吉良「あはは! そういえばなんで屋台は準備出来ていなかったのかな」

健也「雰囲気づくりじゃないか? 始まる前から明るくしていたら雰囲気壊しかねないし」

吉良「愛奈達の持っていたリュックサックの中身は何だったのかな~」

健也「鳴海の話だと水筒とかお弁当とか敷物とからしいよ」

吉良「へー、でも愛奈の方を何か機械がぶつかるような音が聞こえたけどね」

健也「機械がぶつかる?」

吉良「こう、ガチャガチャって音がしたんだよ。そこまで大きい音じゃないから健也は気付かなかったみたいだけど」

健也「気付かなかった」



そんな会話をしていると、近くを歩いていた男女グループを見つける。彼らも健也達と同じで肝試しに参加していた連中だ。近くに来たので会話も少し聞こえてくる


男A「その話マジか?」

男B「マジだってば!!」

女A「いやー初心者用だし少しでもハードルを下げようとしていたんじゃないの?」

男C「個人的にあの子達が一番怖かったんだけどね」

女B「そうだよ! 男Bが脅かして来た人を脅かし返したら、突然何かが割れた音も聞こえてきたし」

男A「仕掛けじゃないの? ほら、録音したのを流しているとか?」

女B「それが運営はそんなものを用意していないって言っているのよ! それに死体袋も用意していないのに、実際に遭ったって言っている証言も複数あるのよ?」

男B「死体袋を馬鹿にしたら……うぅ……マジで夢に出そうだ」

男A「何があったの」

男C「お前も死体にしてやろうか!」

男A「え、なに突然」

男B「っひ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

男A「え」

男C「今のセリフを言われて、何かを引きずる音と、顔の無い小学生くらいの背丈の何かが出てきてゆっくりと近づいてきた」

男B「ひぃぃぃぃ!」


健也「……」

吉良「……」


男女グループの話をこれ以上聞かないように、急ぎ足でそのグループから距離を取る。


健也「吉良」

吉良「なに健也」

健也「あれが初心者向けなら、俺達もう何も参加出来ねーな」

吉良「そうだね…それにしても」


2人並びながら顔を見合わせて


健也・吉良「「怖すぎる」」


その後吉良と別れて家に帰った。家に帰ると「帰って来た」と強く感じた。今まで何気なく開け閉めしていた玄関の扉がこんなに有難い存在だったとは……。


ありがとう我が家、ありがとう扉、ありがとう吉良


お風呂と歯磨きを済ませて布団にもぐると、知らないうちに疲れが溜まっていたようで一気に睡魔がやって来た。抵抗もむなしく、いつの間にか目を瞑ってしまい、瞑ってしまった目を何度も開けようと抵抗するが、瞑ってしまう回数が増えると抵抗するのも辛くなったので部屋の電気を消して眠った。



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