中学生(39)
総合評価PT100を目指しています
鳴海「ほら、そこ間違えているよ。ここはこっちの文法」
健也「え、あぁ、本当だ」
鳴海「あと5分で小テストするからね」
健也「はいはい」
鳴海「はいは一回」
健也「ハイ」
夏休みに入って数日。鳴海は健也家に泊まっており、今は2人で受験勉強をしている。健也が聞いた話では、鳴海は夏休みまでしかいないが、健也自身は夏休みが終わっても受験が残っている。場合によっては健也も夏休みで消えるかもしれないが、それでももし続いた場合のことを考えると、勉強を疎かにするわけにはいかなかった
健也は夏休みに勉強をしないで鳴海と遊ぶことしか考えていなかったが、鳴海がそれを嫌がった。自分の都合で健也の受験を潰すのは嫌だ、メリハリを付けてくれる方が自分も気楽に遊べるからという理由だった。最初はそれでも遊ぼうと提案したが、鳴海が折れなかったので、健也から折れるしかなかったということだ
健也も全ての日を鳴海と遊ぶと言っても、頭の片隅で受験勉強のことを思い出してしまうことはなんとなく分かっていたので、受け入れることが出来た。今日はこの小テストを終えたら、明日の遊園地の行く準備をするところだ。チケットも既に手に入れているので、後はどこに行くかを2人で決めることに。
その前に小テストだ
鳴海「じゃあ30分以内ね。はいスタート」
健也「……」
鳴海から渡された問題集を見て、問題を解いていく。パッと見では出来ないかもと思ったところがあるが、それでも落ち着いて問題を見て、1つずつどんな問題かを確認して行けば、解ける問題もある。ただ問題なのは時間配分だ。いくらゆっくりと解いても、時間制限があるので、どこにどれだけの時間を使うかを決めないと、取れるところが取れないこともある。この小テストはそういう確認を含めている
鳴海「……」
鳴海は健也が問題を解いている間に家事を済ませる。現在健也家には健也母はいないので、家事は2人でしなければならない。鳴海も受験勉強をするが、それはあくまで健也の受験のサポートをすることが目的で、自分の受験のことは考えていないし、考える必要が無くなった。なぜなら鳴海は夏休みでいなくなる。健也は鳴海がいなくなるということを「謎の女性達」から聞いているので、それは本当の事だと思った。最初は健也も信じることが出来なかったが、記憶喪失前と後のことを詳細に当てられ、嫌でも信じるしかないことを沢山言われたので、鳴海がいなくなるというのは間違いないのだろう。実際鳴海もそれを肯定している
健也「……」
集中……集中しないと
鳴海のことで頭がいっぱいになりそうになるが、それでもこれは自分の受験。真剣にやらないと意味がない。ただ問題集の解答を覚えても意味が無いのだ。どうしてこの公式(文法・単語)なのかを理解しないと引っ掛け問題に引っかかる。問題によっては、そこで躓くと、後の問題全てを間違えてしまう危険性を孕んでいるので、真剣にやらないと意味がない。問題に集中してシャープペンシルを走らせる
健也が問題を解いている間に、鳴海は洗濯物を取り込んで畳んでいる。健也から少し離れたところでしているので、自分の衣服や下着を見られることはないが、それでも恥ずかしい物は恥ずかしい。洗濯物を分ければ良いのではないかという意見もあるが、水道代の事を考えると無理には言えない。しかも、自分がここにいられるのは結構強引な方法でいることが出来ているので、それをすること自体が申し訳なかった。
一緒に洗濯をしているということは、もちろん健也の私服や下着も出てくるという事で。最初は健也の下着を見たときは、何とも言えない羞恥心があったが、今ではただの布だと思って片付けることが出来るようになっていた。慣れとは恐ろしいものだ
鳴海「……これがお嫁さんになったけど、夫の洗濯物を片付ける面倒という感覚なのかな」
一緒に暮らすとは言え、もう1人追加で洗濯物を洗う・畳む面倒を少しながらも感じる。それが幼馴染の健也であっても、ある物量自体は変わらないので、労力がかかる。これがもし人の下着を見て興奮するような人だったら楽しい時間と化すのだろう。
鳴海「……ふぅ、これで終わりっと……」
洗濯物を全て畳、自分用と健也用に分ける。リビングに戻ると、健也は真剣な様子で問題を解いていた。集中力を乱さないように物音を立てないように歩いて、問題集に手を伸ばす。次健也に当てるテストの範囲を考えるためだ。健也のどこが苦手で、どこが出来るのかを分析して問題を作る・用意するのも鳴海の仕事だ
健也「終わったよ」
鳴海「はい、じゃあ採点してねー」
健也に答案用紙を渡す。鳴海が確認するよりも、まずは解いた自分が確認することが大事だ。健也は鳴海から答案用紙を受け取って、自分の書いた回答に○×を付けていく。最初は〇の連続だったが、途中から×が出てきて、それからは〇や×が出たり出なかったりしていた
健也「20問中、12問正解だったよ」
鳴海「間違えた原因の確認ね」
健也「うん」
健也は教科書や、参考書を取り出して、間違えた問題に出てきた公式(文法・単語)を見て、間違えた公式と正解の公式の違いを確認していく。これが思ったよりも時間のかかる作業だが、それでも確実に出来るようにするためには、間違えた場所を1つずつ確認していくしかない。その場で「まぁいいか」と流して後回しにしても、出来は不安定のままだからだ。不安定を安定にしようかとするが、また投げ出すという時間を繰り返すのを合わせるのと、この確認する時間を比較すれば、最終的にこの確認する時間の方が短く安定するということだ
鳴海「何か軽食作る?」
健也「お願い」
鳴海「はい」
健也は顔を上げないで返事をする。鳴海はおにぎりを作ることにした。
鳴海「はい」
健也「サンキュー」
丁度健也も確認を終えたようで、持っていた教科書類を閉じておにぎりを取ろうとするが
鳴海「手を洗ってきなさい」
健也「ハイ」
立ち上がると同時に、お腹が鳴った。それも結構大きな音だったので、鳴海に聞かれていないかと恥ずかしくなったが、鳴海は何も聞こえなかったふりをしてくれた。いくら鳴海相手でも、お腹の音を聞かれるのは恥ずかしいので、健也は真顔になったつもり(実際は顔真っ赤)で手を洗い、鳴海が作ってくれたおにぎりを食した
健也「少ししょっぱいな」
鳴海「疲れた時はしょっぱい方が良いかなって」
健也「水くれ」
鳴海「はいこれ」
健也「サンキュー」
おにぎり2つ食べて、満腹感を得ると横になる
鳴海「今日はここまでにしようか」
健也「あぁ、もう勉強したくない」
鳴海「お疲れさまでした~」
健也「本当にお疲れだー。ビールを持ってこーい」
鳴海「はい、社長」
健也「鳴海君ねぇ……それは水だよ?」
鳴海「何を言っているんですか社長。これは炭酸水ですよ?」
健也「ビールだと言っただろうが我はぁー?」
鳴海「社長―」
健也「なんだこれ、あはは」
鳴海「なんでしょうね社長?」
健也「まだ続けるんかい」
鳴海「じゃあ明日の遊園地の予定立てよう~」
健也「おう、良いぞ」
行き当たりばったりなのも悪くないかもしれないが、場合によっては順番待ちのラッシュでグダグダになる。回り方次第で体力の消耗を抑え楽しむ時間を増やすなどと準備も大切だ。特に遊園地は周りの雰囲気も高まっているので、ただそこにいるだけでも体力が削られる。出来る限り余計に歩かないようにしたいというのは2人も一緒だったので、遊園地のパンフレットやホームページを見て話し合うことに
鳴海「分刻みとかやめてよね」
健也「やるわけない。そんなの疲れそうだしな」
鳴海「あ、このアトラクションとかどうかな?」
健也「楽しそうだけど、人多そうだよね。空いている時間帯とかないかな」
鳴海「あ、この書き込みを見ると、お昼ごろが空いているって」
健也「お昼は大抵人がいないような……いや、逆に昼時を狙ってくる人も沢山いそうだな」
鳴海「このイベントショー見たいなー」
健也「あ、ならこのアトラクションを経由して行けば良いんじゃない?」
鳴海「そうだね。あ、でも並んでいたら見られない可能性も……」
健也「あ、そっか。なら見た後に乗った方が良いかもな」
鳴海「けん君は乗りたいもの無いの? 鏡の館?」
健也「あ、いいね。今度は一度も当たらないで見せてやるよ」
鳴海「わー、それは楽しみだなー」
健也「何で棒読み何ですかね?」
鳴海「ぶつかるだろうなーって」
健也「なんでそんなに信用無いのかなー」
鳴海「けん君だから?」
健也「なるほど、とでも言うと思ったか」
鳴海「それと、あとこのマスコットキャラクター可愛いね」
健也「それと?」
鳴海「はいはい」
健也「何か俺が悪いみたいな雰囲気出さないでくれませんかねー? コーヒーカップとかどうよ」
鳴海「良いね、じゃあそれも入れて考えようか」
こうして2人で準備を整えて、明日に備えた
次の日
健也「ここでまた熱で倒れたとか言ったら笑いそうだな」
鳴海「今回は一緒に来たからその心配はないでしょう? ほら、見えてきたよ」
鳴海と一緒に入場口と通る。人が沢山いて、みな楽しそうにしている。パンフレットを見て、ここはどうだとか指を指して楽しそうに話しており、中にはげんなりしている人達もいた。無理やり来させられたか、人ごみに酔ったかのどっちかだろう。開園と同時に、お土産コーナーにガチダッシュしている人達がいた
鳴海「あんなにガチで走っているけど、相方引いているよね?」
健也「引いているな」
置いていかれた相方達は、何とも言えない表情をしているが、少なくとも嬉しいとか、楽しいとかそういう感情を抱いているわけではなさそうなのが分かった。鳴海と一緒に園内に入って、決めていたルートでアトラクションを楽しむ。途中に予定外の順番待ちなどがあったが、それでも予備のプランを用意していたので、そこまで体力・気力を疲労しないで動くことが出来た
健也「休憩する?」
鳴海「うん、私トイレ行ってくるね」
健也「あ、俺も。あそこのベンチで待ち合わせようか」
鳴海「分かった」
用を足してベンチの方に戻るが、鳴海はまだ戻っていなかった。鳴海を待つ暇つぶしに周囲の人達を見ていると、自分達と同い年位の女子グループがいた。全員顔が可愛くて、スタイルも中々いい感じだ。お近づきにはなりたくないが、遠くから見ている分には良いかなと思い、その女の子たちを見ていると
健也「いでっ!」
突然頬をギュッと引っ張られる。激痛が走り、頬を手で擦っていると、横には不機嫌そうな顔をしていた鳴海がいた
鳴海「他の女に見とれていたでしょ」
健也「違うよ。見とれていないから」
鳴海「ほんと?」
健也「本当」
鳴海「あ、あの人パンチラしてる」
健也「え!」
勢いよく鳴海が指さした方向を見るが、振り返った瞬間に罠だと気付いた。しかし鳴海は健也の反応よりも早く反応した。もう一度健也の頬を抓る。しかもさっきよりも強く、長い時間抓っていた
健也「痛いよ!」
鳴海「見とれていたじゃない」
健也「ち、違うよ。今のは、その」
鳴海「その?」
健也「事件かと思いまして……」
鳴海は頬をぷくぅーと膨らませた後に、ふんと不機嫌そうに顔をそむけた
健也「わ、悪かったよー。ほら、次行こうか、ね?」
鳴海「じゃあ鏡の館行こうね~?」
健也「はい」
2人で鏡の館に到着。前と同じように入り口に入って、健也が先頭で歩き始める
健也「鳴海さん」
鳴海「何かな」
健也「先頭を歩いても良いんですよ?」
鳴海「えー、私は後ろから歩くから、けん君は先頭で歩いてねー?」
健也「……」
拒否権は無いようです。なら黙秘権だ
鳴海「黙秘も無しだよ」
健也「ぐぅ」
鳴海「ほら、無傷で行くんでしょ? がんばれー」
背中をグイグイと押されてしまう。これでは逃げることが出来ない。仕方なく先頭を歩く健也。しかしその歩幅は小さい
鳴海「もう少し早く行けないの?」
健也「何言ってんだ。これは早いだろう?」
鳴海「……ふーん。まぁ、そっちでも面白そうだから良いよ?」
健也「見ていろ、俺はあの時とは違う」
大きく一歩を踏み出した
健也「っぶ!」
鳴海「…」
健也「違う、今のは準備運動だから」
鳴海「そうなの? じゃあ次行こうかー」
健也「あぁ……がぁ!」
鳴海「……」
健也「違う、今のはコリオリの力が働いたんだ」
鳴海「こんなところでコリオリの力とか働かないでしょうに」
健也「違う違う、今までのはそう、これから起きる回避劇を盛り上げるためにぎゃぁ!」
鳴海「…………」
健也「今のは地盤が揺れたからな」
鳴海「そうなんだ、なら仕方ないね」
健也「そうそう、今のは不可抗力っにゃぁ!」
鳴海「……………」
健也「今鏡の場所が入れ替わったんだよ!」
健也の見苦しい言い訳を聞いている鳴海は、お腹を抱えて笑いそうになっているが、こらえて我慢している。しかしそれが余計に笑えてきたのだろうか
鳴海「あははははは!」
健也「笑うな! 笑うなごふっ!」
その後鳴海が笑いながらも先頭を歩いてくれたので、大人しく健也は付いていくことにした
鳴海と健也は2人で鏡の館を出た後に、近くにいた人達が
「ねぇ、知っている? あの鏡の館で大笑いが聞こえたらしいよ」
「それ、あそこってホラーだっけ?」
「違うでしょ、多分中で誰かが笑っていたんでしょ?」
「なんで笑ってんの?」
「楽しいからだろう」
と話していた。しかしこの会話は2人には聞こえなかったので、2人は何事もなく次の場所に向かって歩き出した
鳴海「あ、あのマスコットキャラクター!」
健也「鳴海が話をしていた奴だな」
鳴海「可愛いよねー」
健也「そうかー?」
鳴海「あれ、可愛くない?」
健也「やべぇ! 超かわいいんですけど!」
マスコットキャラクターが出たときに、相方が嬉しそうな感じだったら、自分も合わせることが大事。
鳴海「……」
鳴海は少し引いていた
健也「あぁ、確かに可愛いな」
鳴海「でしょ? 写真とか撮れないかなー」
健也「あぁ、列に並べば撮れるみたいだな。並ぶか?」
鳴海「並ぶ!」
鳴海はウキウキで列に並ぼうとしているので、健也も横に付いていって並ぶ。マスコットキャラクターは、両手をブンブンと振って、近づいてきたお客さんの肩や腰に手を回して写真を撮っている。
健也「あのマスコットキャラクターって何て名前なんだ?」
鳴海「奇跡君」
健也「え、奇跡?」
鳴海「そう、その奇跡」
健也「へー、何か凄いな」
マスコットキャラクターの名前で「奇跡君」とは……、遊園地は愛奈と来た時以来だが、その時はマスコットキャラクターなんていなかった。この2年少しでマスコットキャラクターが出来たということだろうが、中々付けないような名前をしている。マスコットキャラクターの印象とか、あだ名とかなら「奇跡君」もわかるが、マスコットキャラクターの名前が奇跡君とは……
健也「奇跡って、何かこの遊園地で奇跡が起きたのか?」
鳴海「この遊園地、廃園の危機だったんだよ。それでどうしようかとなってマスコットキャラクターを作って、それで運営したらお客さんが沢山来るようになったんだって」
健也「そうなのか」
廃園の危機? やはり施設の維持費とかで資金難になっているのだろうか? ここは比較的大きい遊園地なので、アトラクションを動かす電力、飲食店の数や種類を幅広くそろえるのもお金がかかるし、ゴミや汚れのある場所を掃除する清掃員を野雇うにも金がかかる、アトラクションのメンテナンスに広告費を考えると年間億単位のお金がかかりそうな気がする
鳴海と適当に話をして盛り上がっていると、鳴海達の番が来た。鳴海はマスコットキャラクターにギュッと抱き着いて、写真を撮ってもらっている。キャストの人も接客スマイルで写真をパシャパシャと撮っている
鳴海「けん君も来なよー」
健也「はいはい」
鳴海とは反対方向に近づいて、写真を撮ってもらう。キャストには看板を持っている人がいて、その看板には「どんな迷いも解決する奇跡を授ける奇跡君」と書いてあった。とても胡散臭いが、マスコットキャラクターなんてそんなものだろう
マスコットキャラクター「……」
健也「?」
マスコットキャラクターは健也の顔を見ている。何だろうと思っていると、撮影時間が終わったようで、強制的に次の人となった。鳴海は満足げに撮ってもらった写真を見て、気分がアゲアゲになっている。
鳴海「~♪」
健也「嬉しそうだな」
鳴海「そりゃ、奇跡君に会えたからねー。そろそろお昼にしようか」
健也「そうだな」
遊園地にある飲食店はどれも値段が高い。味はそこらのチェーン店と変わらないよな気がするが、なんでこんなに高いんだ。遊園地で食べるからか(推理)。
鳴海と相談したら、別にお店で食べる必要は無いと考えが一致したので、お弁当を持ってきていた。以前の愛奈と全く同じ場所でレジャーシートを敷いて、2人でご飯を食べる
鳴海「今他の女のこと考えたでしょ」
健也「考えたけど、愛奈だから」
鳴海「愛奈だから?」
健也「セーフ」
鳴海「ではありません。そんなけん君はご飯抜き」
健也「ちょ、それは勘弁」
鳴海「冗談だよ~」
目が笑っていないが、健也の分のお弁当を渡してくれたので、ありがたくいただく健也
健也「上手いな」
鳴海「それは良かった~。はい、あーん」
健也「……」
鳴海「あーん」
健也「あーん」
素直に鳴海が差し出して来たご飯を食べると、今度は鳴海が目を閉じて口を開けている。健也は自分のお弁当から適当におかずを選んで鳴海の口の中に入れると、鳴海は嬉しそうに食べていた
健也「次はあのアトラクションか…少し休むか」
鳴海「ありがとう」
鳴海は少し疲れていたようで、外でも楽な体勢になっている。鳴海と一緒にご飯を食べ終えると、鳴海は眠そうに目を擦っていた
健也「眠いか?」
鳴海「少しだけ…」
健也「寝るか?」
鳴海「じゃあ少し。後で起こして欲しいかなー」
健也「あぁ、分かった」
鳴海「お願いね~」
鳴海は健也の近くに横になって直ぐに寝息を立てた。2年前、愛奈と来た時も、健也が寝落ちして愛奈が見張ってくれていたことを思い出す。愛奈はこういう気持ちだったのだろうか…
健也「っ!」
そんなことを考えていると、手を抓られる。何かと思い見ると、鳴海が目を瞑ったまま健也の手を抓っていた。剥がそうとするが、鳴海の力が強く剥がせない
健也「ごめんって、悪かったよ」
鳴海「……」
鳴海は目を閉じたまま健也の手から手を放す。数分後寝息を立て始めた。夏とはいえ、薄着で寝ていたら風邪を引いてしまいかねない。園内を歩き回ったからか少し汗を掻いているので、身体を冷やしてしまうと思った健也は、鞄に入れていた薄いパーカーを鳴海の身体の上に乗せる。
健也「……」
何か悪戯しようかな…前にもこんなことを考えたような気がする
相方が寝ているとやることが無くて暇だ。スマホでも触って何か時間を潰そうかなと思っていると、遠くで男女2人組が仲良さげに手を繋いでいたが、健也達と同じようにレジャーシートを敷いて、ご飯を食べさせ合っている。いわゆる「あーん」だ。さっきまで自分達がやっていたことだが、知らない人たちが自分と同じことをしているところを見ると、なんだか恥ずかしかった。男女達は幸せそうに「あーん」を繰り返していて、時々頬にキスをしていた。あの女の子も可愛いな
健也「いでっ」
また手を抓られる。鳴海を見ると、鳴海は目を開けていて、少し不機嫌そうだったが、すぐに元気になる。そろそろ予定していたイベントショーが始まる時間だ。2人で急いでお弁当やらレジャーシートを片付けて、イベントショーが行われる場所に向かう。既に人が沢山いて、最前線は陣取られていた。鳴海と健也の体格はまだ中学生なので、そこまで体格も大きくもなく、少し見にくい。どこか他に場所が無いかと思っていると、少し遠くの方にはまだ最前列の隙間があり、そこなら近くで見ることが出来そうだ。鳴海にそのことを伝えると、健也の手を握って走り出す。こういう場所取りは早い者勝ちだ。なんとかその隙間を勝ち取ると同時に、何やら大音量で音楽が流れ始め、沢山の乗り物が道を徐行していた。乗り物の上には、この遊園地に出てくるキャラクターが乗っており、大きく両手を振ってアピールしている
わーわーわーわー
周囲はとても賑やかになっており、鳴海もその中の1人だ。楽しそうに鳴海も手を振っているところを見て、今日は一緒に来られて良かったなと早いタイミングだが思った。
パレードも終わる。空はまた明るいが、数時間もすれば暗くなるだろう。方角によっては暗くなっている所もあった。帰る時間を考えると、あと1つくらいしかアトラクションに乗れない。欲張ればまだ乗れるが、電車の人ごみや時間を考えるとそうとも言っていられない。
最後に乗るアトラクションは決めていて、しかも多くの人が選ぶ場所だった。順番が回ってきて、小さな扉をくぐって中にある椅子に座って向かい合う。扉が閉められると、ゆっくりと高い場所に昇って行くのが分かった。その景色も広く見えて、さっきまで歩いていた場所が全て小さく見える。
そう、観覧車だ
鳴海「……」
健也「……高いな」
鳴海「うん、とても高い」
健也「さっきまであそこにいたんだよな」
鳴海「だねー。とても小さく見える」
健也「今日はありがとうな」
鳴海「それはこっちが言うセリフじゃないかなー?」
健也「俺も言うセリフだ。だからおかしくない」
鳴海「…ふふ、そうだね。今日はありがとうね。楽しかったよ」
健也「そうか、楽しんでくれたら良かった」
鳴海「けん君は?」
健也「俺も楽しかったよ」
鳴海「そっか、良かった」
健也「あぁ」
鳴海「……」
健也「……」
2人は見つめ合う。空は青空から茜色になり、少しずつだが、暗くなっている場所も増えてきた。暗くなっている場所は鳴海の背中側で、健也の背中側はまだ明るい。健也の座っている方には夕焼けの光が当たるが、鳴海の座っている所は光が届かなくて、陰になっている。観覧車は下から上に移動し、上から下にゆっくりと進むが、鳴海が座っていた場所はずっと陰があり、光が当たることはなかった
2人一緒に健也家に帰ると、鳴海は自分が思っている以上に疲れていたようで、健也家に着くと、玄関で少し座り込んでしまった
健也「大丈夫か?」
鳴海「あはは…少し疲れているみたい」
健也「夜ご飯は俺が作る。少しなら作れるようになったから安心してくれ」
鳴海「ほんとかなー」
健也「俺を信じて…」
鳴海「はいはい、じゃあ任せようかな。私は部屋で休んでいるよ。ご飯お願いね」
健也「あいよ」
鳴海が部屋に戻ったのを確認した後に、さっそくお風呂の準備とご飯を作る準備を始めた。
作ったのはご飯とお味噌汁と魚だ。と言っても魚は冷凍の魚を温めただけで、お味噌汁も味は鳴海に劣ってしまう。食卓を除菌して、ランチョンマットを2枚敷いて、箸と料理を置く。鳴海を呼ぶ前に、お風呂を掃除してお湯を張る。食べ終わったころにはお湯が完全に貼られているだろう
健也「鳴海、ご飯だぞー」
鳴海「う、うん。今行くよー」
健也「おう、待っているわー」
食卓で待つと、鳴海がやって来た。少し汗を掻いているようだが、気にしないで2人で食事を摂る。いつものようにテレビを付けながら2人で食べて、時々テレビの内容でああだこうだ言って食べる。先に鳴海にお風呂に入って貰って、その間に健也は食器を洗う
調理器具と使ったお皿や箸などの食器を全て洗い終わると、鳴海がパジャマ姿になっていた。
鳴海「……」
健也「眠そうだな」
鳴海「あれ、あぁ、寝てたのか」
健也「そこまでとは…今日はもう寝るか?」
鳴海「うん、私は先に寝るね。けん君、お休みー」
健也「おう、お休み」
鳴海は健也の部屋に入って行くと、布団の上に乗った音が聞こえた。自分が普段過ごしている音だから、自分の部屋に何かしていると事前に知っていれば、物音からどこで何をしているのか大雑把だが分かる。すぐに布団の上に乗ってから音がしなくなったということは、もう寝たのかもしれない
健也「……俺も今日は寝るか」
少しだけ単語の確認をしようかと思ったが、それをする気力もなく、お風呂に入って歯磨き・髪の毛を乾かす・戸締りなどを済ませ、寝ている鳴海の横に身体を横にする
鳴海「zzz」
健也「鳴海、お休み」
鳴海の手を握って健也も眠った
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