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幼馴染の意地  作者: ヤマネコ
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中学生(38)


鳴海「……ここは」


目が覚めたが、そこはいつも自分が寝ている部屋ではなかった。部屋には写真が貼られていないが、沢山のモニターが宙に浮いており、液晶には映像が流れている。そこには自分が映っており、何かを食べている、何かを書いている、歩いている、走っている、寝ている、誰かと話をしているなどと、自分を客観的に見ることが出来た。それらの映像を見て、これは自分の軌跡なんだと思う。手を伸ばしてみようとするが、全く動かすことが出来ない。十字架に張り付けられているように、両手を水平に伸ばして手首に何かを付けられ固定されている。足首にも何か重りがあり、簡単に動かすことが出来ない。


鳴海「……もうダメなのかな……」

???「あーダメだねー」


声がした方向を見ると、いつの間にか1人の女性が鳴海の近くに立っていた。彼女はチュッパチャプスを手に持っており、舐めては口から離してと味わっていた。鳴海を見る目は愚かなものを見る目だ。その女性の顔を見て、なぜ自分がここにいるのかを思い出す


鳴海「……久しぶりね。いや、そうでもないか」

???「あーそうだな。一応お前のことは監視させてもらっていたよ。それにしてもなんだよあれは? 好きならもっとアタックすれば良かったのに。なんでわざわざ相手から手を出させようとするのかねー?」

鳴海「うるさい。私には私の考えがあるの。それよりもこうなっているってことは」

???「あぁ、時間切れだな」

鳴海「そう、なら早く消しなさい。どうせ私は中学生までしか持たないようにされているわけだし」

???「本来ならそうするつもりだったんだが、少し予定を変える」

鳴海「どういうこと?」

???「確かに時間切れだし、どうやってかお守りも手に入れて契約期間を勝手に延ばしているし、お前のやった罰はもう覆すことが出来ない。だからお前の大切な健也君は食べられたな」

鳴海「……は? どういうこと?」

???「何も知らないのか?」

鳴海「え、何を」


何を聞かれているのか分からず、戸惑っていると、女性は舌打ちをした後に、鳴海の額を触る。何をされるのか分からなかったが、もう何をされても自分が消えることに変わりが無いことを理解している鳴海は、そこまで慌てることはなく、素直に彼女の行動を受け入れる。


鳴海「っ!!」


突然頭の中をぐちゃぐちゃにされているような不快感が出てきた。まるでボールの中にあるのをミキサーでかき混ぜるように、ぐちゃぐちゃにされ続ける。強烈な吐き気に襲われるが、食事をあまり摂っていなかったせいか、胃液しか出てこない


???「……お前、友達は選んだ方が良いぞ。まぁ、もうそんな話関係ないけどな」

鳴海「うえぇぇ、ゴッホゴッホ」

???「さてと、じゃあお前には綺麗さっぱりいなくなってもらう。さよなら、鳴海」


女性が鳴海に手をかざすと、突然女性の後ろにある扉が勢いよく開けられる


鳴海「……」

???「待って。その人はもう少しだけ待って」

???「仕事だから、それじゃあ」

???「だから待てっての」


女性の手を無理やり取る


???「何だ」

???「ねぇ鳴海。本当に健也君の隣からいなくなる気?」

???「その健也はあれに食べられたんだろ? 隣にいるどころじゃないだろ」

???「だからさ、死ぬときくらいは隣にいさせても良いんじゃない?」

???「……まさか心中させる気か? お前はもう少しまともだと思っていたんだけどな」


イラついた女性は、銜えていた飴を舐め切ったのか、新しいチュッパチャプスを取り出して袋を剥がして口に入れる


???「まさそんなに飴を……もう、何度言ったら分かるの?」

???「っさい。それよりもなんださっきの発言は。どういう意味だ?」

???「消える時くらいは、鳴海のままで過ごさせてあげれば? ってことだよ。今すぐの必要はないでしょ?」

???「逃げられたら面倒だろ。それにこいつの傍にはあのよく分からない奴もいるし、あまり野放しにしたくないぞ」

???「ならその子から見えないようにすれば問題ないでしょ?」

???「……あー。そういうこと?」

鳴海「その必要はないわ……今すぐ私を殺しなさい。もう死んでいてもおかしくないし」

???「じゃあ健也君はどうなるの? 鳴海が小さい時から縛り続けてきたのに、今になってポイ捨てするの? 契約の時にも健也君のことを執着していたじゃない」

鳴海「別に……あの人じゃなくても良かったんだよ。ただ隣にいてくれる存在が欲しかった」

???「っは、笑わせる」

鳴海「アンタがそう言うの?」

???「黙れ」


飴を舐めていた女性は、鳴海の一言でイラついたのか、胃がある所を殴る。強い力で殴られた鳴海は、口から胃液が出てくるが、それでもかまわずに飴を舐めている女性を挑発しようとするが、もう1人の女性が間に割って入ってきた


???「はいはい、アンタも挑発されたくらいでそんなに怒らないの」

???「っち」

鳴海「っ!」

???「だから殴るな」

???「うるさい」


頬を思いっきり殴られる。鳴海は反撃しようにも両手足を拘束されているので、回避も受け流しもすることが出来ない


???「あーそうだな、お前みたいなやつは直ぐにここで殺すよりも、一緒にいたあいつを巻き込んで心中させた方が幸せかもなー」

鳴海「別に、好きにすれば?」

???「はー、愛しの健也君が可哀そうだな~? 簡単に死なれても面白くないしな」

???「……」

???「っ! 何するんだ!」

???「私がやるから、もう休んで」

???「…っち」


飴を舐めていた女性は鳴海に悪態をつきながら部屋を出て行く。残ったのは鳴海と1人の女性だ


???「そういうわけで、鳴海。あんたは本心から健也君を好きになって消えてもらう」

鳴海「……別にあの男のことはいいでしょ」

???「そう言いながらも、頭では納得しているでしょ? もともとそういう契約何だから」

鳴海「……」

???「何なら心中するのもありだと思うけどね。あの男も、完全にあいつらに目を付けられているし、食べられているからねー、まぁ鳴海の行動次第ではあいつらからの追跡を免れるように動いてはあるけど?」

鳴海「食べられたってあの怪物達のこと?」

???「そんなところ。あれに食べられると本当に面倒だからさー。とりあえずちゃんと責任は取りなさいよ?」

鳴海「……」

???「どの道鳴海は助からない。健也君は生きてはいけるでしょうけど、それでもこのままだと今までの彼じゃなくなるだろうし……。でも、もしかしたら今までの健也君に戻せるかもしれない。鳴海の行動次第でね」

鳴海「……はぁ」

???「鳴海から望んだことでしょ? 今更なしだなんて言わせないし、無理だから」

鳴海「何度も言わなくても分かっているっての。それよりこれを外してくれない?」

???「着いたら外れているよ。じゃあねー」


その女性も部屋から出て行き、鳴海は1人となった。床には何か模様が描かれており、それを見て溜息をつく


鳴海「本心から好きになる……か……」


その模様が少しずつ光っているのを見て、これまでの自分を思い出す


鳴海「自分で言うのもなんだけど……最低な女だね」


健也でなくても良かった。ただ偶然健也を選んだ。それがどういうわけか、思ったよりも関係が長く続いて、それなりに楽しい時間を過ごすことが出来た。最初はそこまでじゃなかったのに、いつの間にか馴染んでいた。


しかも勝手に契約の内容に関わるようにしてしまったし……。このまま1人で消えると思っていたのに、また彼と会うとか……一体どんな顔をすればいいのやら。


視界が光に包まれた










鳴海「……」


身体を起こすと、時期は中学生3年生の前期試験を終えて、夏休みに入っている。試験を受けた覚えがないが、おそらく私が受けてくれたのだろう。部屋を見渡すと、貼られていた写真が全て無くなっており、縫いぐるみも無い。ベッド・タンス・机しかなく、他には何もない。洗面所の方に行き、鏡で自分の姿を確認すると、おでこに額の傷があった。スマホを取り出して見ると、メールはほとんど来ていない。自分から送信した内容もあるが、最初はそれを見てピンとこなかった内容がほとんどだが、そう言えばこんなの送ったな程度には思い出す。適当に返信をして、何をしようかと迷う


健也に会いに行くか、それとも他の誰かに会いに行くか。食べられたと言っている割には、メールもしているので、少なくとも意思疎通が出来る程度ではあるらしいが、それでも会いに行く気持ちが揺らいでいた。


鳴海「でも会わないと始まらないよね」


溜息をついて外出用の服に着替えて、健也家に向かった。








健也家の前に着くが、何やら人混みが出来ていた。何が起きているのだろうかと、人ごみの間から健也家を見ると、何と健也家の壁には缶スプレーで悪戯されているような形跡があった。健也はそれを消そうと、モップでゴシゴシと擦って消そうとしているが、消すのに苦労しているようだ。


周囲の人たちの会話に耳を傾ける


「これでもう何軒目だっけな」

「もう数えていないよ」

「はぁ、しかし幼稚な悪戯だねー」

「本当ですよ。一体誰なんでしょうねこれは」


鳴海「あの、何があったんですか?」


「なんだい嬢ちゃん」


鳴海「いや、何か騒ぎになっているので、気になって」


「最近人の家に悪戯をする奴がいるみたいなんだよ。警察も動いてくれてはいるんだが、犯人が捕まらないらしい」


鳴海「悪戯?」


「放火、金品の窃盗、傷害事件、性的暴行、壁を壊すとか」


鳴海「……いつからですか?」


「いつからだったけ?」

「確か2週間か、3週間くらい前じゃなかったか?」


鳴海「そうなんですか……」


「嬢ちゃんも気を付けなよ」


そう言って周囲の人達は散り散りになって行った。健也は周囲の声や視線に気付いているだろうが、気にしないようにしてモップをゴシゴシと擦っている


鳴海「……」


何度か深呼吸を繰り返して落ち着きを取り戻す。誰の仕業か見当がつかないが、それでも健也に話しかけなければならない。話すと言っても、一体何を話せばいいのだろうか……。考えても分からない以上、素直に話しかけるしかないと判断した鳴海は健也に近づく


鳴海「ねぇ」

健也「? あれ、鳴海じゃん」


鳴海……鳴海さんじゃなくて鳴海……やはり彼ももう思い出しているのか?


鳴海「どうしたのそれ」

健也「誰かにやられたみたいだ、お母さんが警察に被害届を出しに行ってくれた」

鳴海「そうなんだ……手伝うよ」

健也「良いのか」

鳴海「2人でやった方が早いでしょ」

健也「おう頼むわ」


健也家に置かれているモップを取り、健也の近くに置いてあるバケツにモップを付けて、ゴシゴシと擦り始めるが


健也「やっぱりそっちも思い出しているんだな」

鳴海「え」

健也「俺モップがどこにあるとか教えていないよな。前に3人が遊びに来た時はそういうことは何も教えていないのに、すぐにモップの場所が分かるなんて……そういうことだろ?」

鳴海「……そうね。私も思い出したよ。けんくん」

健也「その呼び方……本当なんだな。それじゃあいくつか質問に答えてもらいたいんだが」

鳴海「何」

健也「鳴海って何者なの?」

鳴海「……人間でしょ」

健也「どこにでもいるような人間って意味か?」

鳴海「そうよ。私はどこにでもいる女の中の1人。何も特別なことはないわ」

健也「……」

鳴海「消えないねこれ」

健也「あぁ、お母さん滅茶苦茶キレているからな。正直俺達だけでも消すことが出来ない」

鳴海「……そうね」


鳴海はこのスプレーは普通には消せるものではないことを理解している。書かれている文字は蛇のようにのたくっているが、それはある言語だ。そしてその言語は呪文のようなもので、清掃業者を呼んでも消すことが出来ない。しかし健也にそれを説明しても、自ら余計に危険な目に合わせてしまうだけだ。そう思った鳴海は特に何も言わなかった


鳴海「けん君。1つお願いがあるの」

健也「何」


健也の顔色は悪い。自分の家に被害が来ているのだから、そんな顔をするのも当たり前だが、それを抜きにしても暗い。良く見ると、首元に五角形のような物が描かれている。それを見て内心驚く。普通はそんなものは付かない、健也はそういうものを付けるような人ではないと鳴海は思っているが、もしかしたら自分のことが関係してグレているのかもしれない


鳴海「温泉旅行に行かない?」


健也はブラシを動かす手を止めて、鳴海に振り返る。その表情は驚きに包まれていた


健也「2人きりで?」

鳴海「そう、2人きり。あの時はけん君寝落ちしたでしょ」

健也「したな。でもそれで2人きりになるのは」

鳴海「もう一度2人きりで行きたい」

健也「……変なの。前の鳴海ならニコニコとして言っているだろうに、なんで今の鳴海はそんな余裕のなさそうな感じなんだ?」

鳴海「……」


自分ではニコニコとした顔をしていたつもりだが、バレていたようだ。前なら騙せていたのに、見抜かれている。そのことに鳴海は驚き、つい真顔になってしまった。健也はその鳴海の反応を見て、何か深刻そうな顔をしている


健也「あの2人に聞いたんだ。飴を舐めている女性と背の高い女性」

鳴海「!?」


その反応で健也はまた何か考えるような顔をした。鳴海はしまったと思ったが、もう遅い。健也にドンドン自分のことを暴かれているような感覚、それが怖かったと同時に少し楽でもあった。自分の口から説明する必要が無い……自分から言える勇気が無かったことでもある。そしてその内容は彼に対しては必ず話さないといけないと今までの生活で感じていたものだ


健也「大体のことはあの2人から聞いている。だけど鳴海。お前の口から直接聞きたい」

鳴海「……」

健也「……」

鳴海「それは温泉旅行に付き合ってくれるなら話すよ。ちゃんとね」

健也「約束出来る?」

鳴海「するよ。私が約束を破ったことがある?」

健也「遊園地に行くときに熱を出して来なかった」


(第9部、中学生7のこと)


鳴海「……そうね。破ったことあったわ」

健也「でもあれは鳴海が自分から破ったわけじゃないんだろ? だから無しにしてあげる」

鳴海「でも覚えているのね。そこまで」

健也「鳴海といた時間は大切だからな。忘れていないよ」

鳴海「愛奈と楽しくしてきたんでしょ? ちゃんと聞いているよ? 鏡の館で、器用に全ての鏡に体当たりをかましたって」

健也「違う、あれは俺からぶつかったんじゃない。鏡が俺にぶつかってきたんだ」

鳴海「あははは! そうだね、そういう見方もあるね」

健也「……」

鳴海「何~? そんなに見つめて」

健也「やっぱり鳴海はそうやって笑っている顔は可愛いな」

鳴海「んなっ……このセクハラー!」

健也「いて、おいやめろって」

鳴海「この女たらしめ~」

健也「俺がいつたらしになったよ?」

鳴海「璃子さん」

健也「いや、あれは違うだろう?」

鳴海「璃子さんから話を聞いたよ? コンタクトを探してくれたとか、一緒に学校見学をしたとか、あーんまでしたとか」

健也「おい、一発ずつ突くな」


璃子から聞いた内容を言うたびに、鳴海は健也の身体に体当たりをするが、健也は避けないで全てを受け入れる。全く痛くない、くすぐったいくらいだ。当たる時、鳴海の髪の毛の匂いがふわりと漂い、こんな時でも「良い匂いだな」と思ってしまう。いつも一緒に寝ていたから嗅いでしまうことが多かったのに、それすら忘れていたことを思い出して笑ってしまう


鳴海「何笑ってんのー。私結構嫉妬深いんだよー? 分かっているかな~?」

健也「そうなのか?」

鳴海「そうなんですー。これだけ長くいてもそれに気付いていなかったのかなー?」

健也「あぁ。鳴海以外の女子とそこまで仲良くしたこと無かったしな」

鳴海「……愛奈は」

健也「愛奈は違うだろ」

鳴海「璃子さん」

健也「璃子さんは違うだろ」

鳴海「……」

健也「何だよその顔は、信用できないの?」

鳴海「女関係に関しては信用できない」

健也「バッサリ言うな」

鳴海「事実でしょ?」


事実なのだろうか? もしそうなら女友達が何人もいる奴ら全員信用できないと言っているようなものだが


健也の心を読んだのか、鳴海は


鳴海「他の男はどうでも良いんだよ。けん君がそうかそうじゃないか、そこが大事」

健也「俺はどうなの?」

鳴海「女たらし」

健也「じゃありません」

鳴海「あります」


話をしているとお母さんが帰って来た。お母さんは鳴海を見ると


健也母「あら、健也、そちらの子は?」

鳴海「……」

健也「俺の幼馴染だよ」

健也母「あら、健也に幼馴染なんかいたかしら? あなたお名前は?」

鳴海「鳴海です」

健也母「鳴海さん……初めて聞くわね……まぁいいか、よろしくね。健也の母です。ごめんなさいね、こんなことを手伝わせて」

鳴海「いえ、私も暇だったので」

健也母「そう、良かったら家に入って頂戴。お礼にケーキ上げるわ」

鳴海「いや、その」

健也「上がって行けよ。一緒にケーキでも食べよう」

鳴海「……あの」

健也母「遠慮しないで。さっ、上がって頂戴~」


鳴海は健也母に連れていかれ家の中に入って行った。健也の足元には鳴海が持っていたモップが落ちていて、それを拾って元の場所に戻す。家に入る前にもう一度、壁に描かれているスプレーを見ると、誰かがいる気配がした


健也「さっきの話の続きですけど」


姿は見えないが、それでもいる感じがしたので話しかける。傍から見たら1人でブツブツ何かを話しているようにしか見えないだろう。


健也「鳴海は夏休みまでしか持たないんですよね?」

???「あぁ。最大でな。それよりも早くなるかもしれないが、夏休みの最終日。ここが最大だ」

健也「……それで俺はどうなるんですか?」

???「さぁね。少なくても、今までみたいに日常を送ることは出来ると思うよ?」

健也「そこに鳴海は」

???「言わなくても分かるだろ」

健也「……」

???「まぁ、方法はなくはないよ?」

健也「というと?」

???「夏休みを永遠に続ける方法があるにはある。お前と鳴海だけの時間は永遠に夏休みだけとなり、そこには2人きりの世界と変わらない。だけどこれはお勧めしない。絶対にどっちか、いや両方の精神が崩壊するし、間違いなく狂気に陥る」

健也「それでも2人でいられるんですよね?」

???「いること自体は出来るが、それでも精神が崩壊していたら意味ないと思うけどな。自殺も心中も出来なくなる。例えば、お前は夏休みの宿題をいくら片付けても、最終日になったら初日に戻る。そして全てやり直しになって、何回も片付けても強制的にやり直しになるし、季節も夏に固定されて、春・秋・冬も来ない。お前の大好きなアニメも、その時までに作られた同じ作品しか見られなくて、これから作られる作品を見ることも出来ない。街で起こるイベントも全て同じもので何も代わり映えもしない。天気は多少の誤差があるだろうが、ほぼ確定で同じ日に同じ天気になる。耐えられるか?」

健也「……やけに丁寧に教えてくれますね。どういうつもりなんですか」


そう言うと、そいつは少し間を空けて


???「今回は色々イレギュラーなことが起きすぎていてね。こういう助言もするつもりはなかったけど。お前には色々聞かせてもらったし、そのお礼だと思っておけ」

健也「……こちらこそ、ありがとうございます」

???「やっぱ変わっているなお前。普通なら怒鳴ったり、取り乱したりすると思っていたが、そこまで冷静だとは」

健也「それをしても鳴海の時間は延びないですし、そちらも延ばす気はないんでしょう?」

???「あぁ、元々は今日までいられること自体おかしいからな。お前がお守りとか受け取っていたからだろうが……。まぁ、悔いのないようにしなよ。じゃあな、最後の日に会おう」


そう言うと気配はなくなった。誰か分からないが、何者かは見当が付いている。しかし、それを他の者にいう気はない。言ったところで、その言われた人に悪影響が出るだけだ。余計に被害者を出すだけだろう


健也「……戻るか」


持っていたモップを片付けて家の中に入ると、鳴海と健也母は既にケーキを食べていた。健也も手洗いうがいをして、空いている席に座り、一緒にケーキを食べる。健也母は鳴海にあれこれと何かを聞いていて、鳴海はそれに答えている。時々健也に話題を振られるが、鳴海をターゲットにしているようだ


健也母「うちの健也と仲良く出来ているのかしら?」

鳴海「はい、仲良しですよ」

健也母「良かったー、うちの馬鹿息子は女の子のこと全く話さないから心配していたのよねー」

鳴海「そうなんですかー?」

健也母「そうなのよー、アニメの女の子を見てニヤニヤしていて、将来心配だわ~。あ、そうだ、鳴海ちゃんが健也を貰ってくれないかしらー」

健也「おい」

鳴海「あはは、もし出来たらそうしたいですねー」

健也母「あら、おばさん泣けてきたわ。うぅぅ……こんないい子がいたなんて」

健也「……」

鳴海「美味しいですこのケーキ」

健也母「そうでしょう? ショッピングモールのケーキ屋さんのなの。前に健也が買ってきてくれてねー、あれ、なんでそこで買ったの健也?」

健也「本当に気まぐれだよ。何となくだ」

健也母「その時ケーキが3つあった気がしたけど……あれ、健也が2つ食べたの?」

健也「そうだったかな? 覚えていないよ」

鳴海「……」

健也母「あら、記憶があやふやだわ……年を取ると物忘れがひどくなるって本当なのね。怖いわー」

健也「ご馳走様」

鳴海「私もご馳走様です」

健也母「お粗末様―」


2人で食器を台所に置いていく


健也母「あ、そうだ。鳴海ちゃん、良かったらこの家に夏休み中泊っていかない? おばさん仕事の関係で夏休みほとんど家に戻れないのよ。健也は放っておいたらカップ絵とか食べていそうだから……その鳴海ちゃんが良ければ……」

鳴海「……良いんですか?」

健也母「良いのよー、鳴海ちゃんなら信用できるし。どうかしら?」

鳴海「その……」

健也「俺はいて欲しいぞ。泊まらないか?」

鳴海「……うん、泊まる」

健也母「良かった、これで安心だわ」


それから3人で話をしていたが、鳴海が着替えや生活に必要な物を取ると言ったので、健也も付いていくことに


鳴海「……ありがとうね」

健也「何が」

鳴海「分かっているくせに」

健也「別に、俺がこうしたいからこうしただけだよ」

鳴海「ありがとう」

健也「何度も言うな。ほれ、さっさと行くぞー」



鳴海家から、鳴海の生活に必要なものを詰め込んだスーツケースを健也家まで運ぶ


健也家に戻ると、健也母がやけに慌てていた。外はもう暗く、時間も午後8時だった


健也「どうしたの、そんなに慌てて」

健也母「集合日勘違いしていたの。もう行かないともしかしたら遅刻するかもしれない。かなり早くなったけど、鳴海ちゃん、健也をよろしくね」

鳴海「はい、任せてください」


健也母は乱暴に玄関の扉を開けて出て行った。健也がしっかりと戸締りをすると、鳴海と2人きりになる。


健也「懐かしいな」

鳴海「だねー。こっちの方が我が家って感じがするよ」

健也「よくあんな何も無いところで生活出来たな。退屈じゃなかったのか?」

鳴海「退屈ではなかったかなー」

健也「大したものだなー。俺は耐えられる自信が無いぞ」

鳴海「アニメとゲームがあれば問題ないんじゃないの?」

健也「あと食事だな」

鳴海「どうせカップ麵とかでしょ?」

健也「馬鹿にするなよ?」

鳴海「けん君を馬鹿にしているから大丈夫」

健也「それ大丈夫じゃないやつだ」

鳴海「ほら、夕食を作るから、けん君は適当にしていてね」


鳴海から声がかかるまで部屋でゴロゴロしていると、ご飯が出来たと声がしてきた。台所に集まり、2人でご飯を食べる


健也「上手いな」

鳴海「けん君も料理出来た方が良いよ絶対」

健也「そのうちな」

鳴海「いつですかねそれは」

健也「未来」

鳴海「範囲広すぎだよね~」


2人でテレビを見ながらそんな会話をしてご飯を食べる。それからお風呂に入ってもう寝る時間となった。健也の部屋に布団を敷くと、鳴海は当然のように横になる


健也「もう少しズレてくれ」

鳴海「私はここだったでしょ」

健也「あれ、そうだっけ? もう少しスペースあったような」

鳴海「それ、遠回しに私が太ったって言っているの?」

健也「違う。そうか、身体が大きくなったからか。痛い、何するんだ」

鳴海「やっぱり太ったって言っているじゃん!」

健也「言ってねーだろ!」

鳴海「女子言葉では同じことなのー」

健也「はいはい、ほら、電気消すぞー」


電気を消して、布団の中に包むと、鳴海が話しかけてきた


鳴海「あのさ、本当に良かったの?」

健也「何が」

鳴海「私の為にここまでして……私、けん君が思っている以上にひどい女だと自分でも思うよ」

健也「確かに鳴海は酷い女かもな」

鳴海「……」

健也「だけど、俺が一緒にいたいと思ったのは鳴海だ」

鳴海「……」

健也「鳴海。温泉旅行の話だが、他にも提案があるんだ」

鳴海「何」

健也「遊園地も行こう。結局鳴海とは行けていなかったしな。後は一緒にピクニックに行ったり、どこかに遊びに行くのも良いな」

鳴海「……良いの?」

健也「俺は鳴海と遊びに行きたい」

鳴海「……ほんっと、そういう風に言うのはずるいと思うよ?」

健也「で、どうなんだ」

鳴海「…うん、私もけん君と色々な場所に行きたいかな」

健也「じゃあ決まりだな。今日はもう寝よう」

鳴海「そうだね。お休み」

健也「……」

鳴海「あ……もうっ、仕方ないなー」


健也は鳴海の手を握ると、鳴海は少し驚いたようだが、振り払うようなことはしないで、ギュッと握り返す。数分後には2人とも寝息を立てていた



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