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幼馴染の意地  作者: ヤマネコ
34/43

中学生(32)


鳴海「それで、何で私まで付いてこないといけないわけ?」

愛奈「一応鳴海も見ておいた方が良いかなって思って」

鳴海「この学校って、確か健也君が受験するところでしょ? 愛奈もここにするの?」

愛奈「そのつもりだよ」

鳴海「……」

愛奈「どうしたの?」

鳴海「なんでここなの?」

愛奈「家から近いし、健也がいるから?」

鳴海「それって……」

愛奈「さぁ? どうでしょうか?」


その言葉を聞いて、鳴海は内心焦っていた。どうして焦っているのかも分からないが、ただただ焦っていることに気付いた。


鳴海「あ、愛奈なら別の学校も十分受けられるんじゃないの? 成績も模試も良かったと聞いたけど」

愛奈「あれ、私そのこと言ったか?」

鳴海「吉良君から聞いたよ。2年生の模試の時にかなりいい点数を取っているって」

愛奈「あー、そうなんだ。確かに私なら他の偏差値が高い学校を狙う事も出来るよ」


人によっては逆鱗に触れるが、愛奈はしっかりとした学力があるので、堂々としていた。実力がある以上、陰口を叩いてもその人の実力は衰えるわけではない。精神的にダメージを与えることが出来なくもないが、それは相手次第では全て無効になる。愛奈はその1人だ


愛奈「でも、だからって偏差値が高いところを目指してもなーって感じなんだよね」

鳴海「どうして? 狙えるなら狙えば良いのに」

愛奈「それで入れたら入れたで楽しいかもしれないけど、そこまで入りたいかというとそうでもないんだよね。というか、鳴海はどうなの? どこを受ける気なの? それとも就職?」

鳴海「わ、私は、その……」

愛奈「その……」

鳴海「……まだ考え中」

愛奈「そう。じっくり考えなさい。高校3年間はとても大事で、基本的に一度しか体験できないから」

鳴海「……」

愛奈「鳴海の家からも、ここの学校は徒歩か自転車で通えるでしょ」

鳴海「確かにここならそれも出来るけど…家から近いという理由で選んでいいものなのかな」

愛奈「そこは親御さんと相談かなー。親は何て言っているの?」

鳴海「行きたいところに行け、お金の心配はしなくてもいい」

愛奈「あら、それはとてもありがたいことじゃない。経済的負担を気にしなくても良いと言うのはかなり大きいわ」

鳴海「でも、交通費ってそんなにかかるのかな」

愛奈「鳴海はそもそも電車をあまり使わないから想像しにくいだろうけどね。一駅移動で大体150~300円くらいで、それを最寄りの駅で降りるで、軽くても千円は超えるわけ。それも片道。往復でも二千は行きそうね。それを3年間…まぁ休日とか祝日を抜くと3年間も無いけど、それなりの額はあるのは分かる?」

鳴海「うん」

愛奈「定期を買っても3か月2万を超えるところもあるわけ。だけど徒歩か自転車ならそれを0円に出来る。この差が大きいのが分かる?」

鳴海「……うん、想像出来たよ」

愛奈「後は学費とか、他の部分にもお金がかかるから、家から近いというのも立派な選択肢の1つよ。無理して遠くに行っても、良いことがあるか分からないんだから。電車通学に憧れているとかそういう理由なら止めはしなけど、おすすめはしないわ」

鳴海「……うん、ありがとう。考えておく」

愛奈「そう、さぁ、着いたよ」


2人の前には健也が受ける志望校の高校が出てきた。時間も放課後だし、外で部活をしている声が聞こえる。中には薄着になって走り込みをしている陸上部の人や、奥にある校庭にサッカーや野球をしている人達も見える


鳴海「でも、なんで今日? 校内見学出来る日なの?」

愛奈「いや、でも校内見学って信用できないのよね」

鳴海「どうして?」

愛奈「そりゃ、学校からすればどうしても入学者の数は増やしておきたいから、良いところ、魅力的な所ばかり見せるに決まっているでしょ。入学さえさせてしまえば、途中で退学しようが、入学金は入るし、場所によっては学期に振り込むお金を請求できるから」

鳴海「そうなんだ」

愛奈「学校の維持にもお金がかかるからね。人件費に、設備の維持費、清掃費、学食の食品とかにもお金はかかるから」

鳴海「学校運営を抜き打ちで確認しに来たってこと?」

愛奈「それもあるかな。でもそれはあくまでおまけ感覚で、この学校の放課後がどんなものか気になったのよ」

鳴海「え、ちょっと、入るの?」


愛奈は中に入るのをためらわず校門から堂々と入る。鳴海はびくびくと震えながら入るが


愛奈「こういうのは堂々としていれば問題ないわ。それに……」


愛奈がそう言うと、近くから女子2人がやってきた。怒られると思った鳴海は顔を伏せるが


女子A「はい、これ」

愛奈「どうも」

女子B「あなたの分」

鳴海「え、え?」

女子B「はい」

鳴海「は、はい」

女子A「じゃあ」

愛奈「ん」


女子2名はさっさと去ってしまった。手にはこの学校の制服を渡された。愛奈は鳴海の手を引いて近くにある更衣室に入り鍵を閉める


愛奈「鳴海、ここのロッカーに鞄と制服を入れて」

鳴海「ほ、ほんとに着替えるの?」

愛奈「うん」

鳴海「バレたらどうする気なの…?」

愛奈「バレない。バレたら黙らせる」

鳴海「そこまでするの!?」

愛奈「冗談よ、冗談」


にっこりと言っているが、鳴海はこの時の愛奈がとても怖かった。この学校の制服を着ることになんとも思っていない愛奈は、スルスルと来ていた制服を脱いで、渡された制服を着る


愛奈「モタモタしないで」

鳴海「え、でも……」


いきなり志望校になるかもしれないところに潜入するような形で入って、しかもこの学校の制服を渡されるという、手際の良さに驚くのと、バレたらどうしようという不安が混ざって、持っている制服を見て、愛奈を見てを繰り返す


愛奈「いやなら帰っていいわよ? でも1人で帰れる?」

鳴海「わ、分かったよー」


鳴海も渋々と着替える。なぜか採寸が不気味なほどにピタリと合っていたのが気になったが、愛奈から早くしろというオーラを当てられて、考える余裕も無かった


愛奈「じゃあ行こうか」

鳴海「行くってどこに」

愛奈「まぁ、付いてきなさい」

鳴海「本当に大丈夫なの?」


2人で更衣室を出ると、外ではこの学校にいるのは当たり前という感じに歩いている生徒が多数。鳴海はキョロキョロとするが


愛奈「堂々としなさい。私達は今この学校の生徒だから、そんなにキョロキョロしていたら怪しいわよ」

鳴海「逆になんでそんなに堂々としているのか私には分からないんだけど?」

愛奈「経験」

鳴海「何回もこういう事をしているの?」

愛奈「まあね」

鳴海「何でって……新聞部だっけ?」

愛奈「そんなとこ」

鳴海「取材の為にそこまでやるの?」

愛奈「実際取材をするならこういう不意打ちじゃないと事実は確認できないことが多いから」

鳴海「言っていることは分かるけど、バレたらどうする気なの……」

愛奈「一応予防策もあるから」

鳴海「どんな」

愛奈「ポケットのどっちかを漁って見て」


そう言われて、上着のポケットを漁ると、生徒手帳が出てきた。中には学生証もあり、そこには自分の顔も映っている。名前と生年月日、住所も自分のではないが、顔だけは当てはまっている。


鳴海「これ、私の顔じゃん!? いつ撮ったの?」

愛奈「鳴海が記憶喪失になるまえ。覚えていないの?」

鳴海「覚えていないよ! え、私もここまで強引だったの?」

愛奈「私が見ている限りね」

鳴海「……」


自分がそこまで強引な方法を取っていたのが信じられなくて、言葉が出ない鳴海。愛奈はそんな鳴海を見ているが、全く動じていない。無表情に鳴海を見ており、大きく溜息をつく


愛奈「…………ダメか」

鳴海「え、何か言った?」

愛奈「何も? とりあえず校内に入るよ」

鳴海「え、ま、待ってよー」


校内に入る。放課後なので、人が出入りしており、楽しそうに出て行く人もいれば、憂鬱そうに出て行く人もいる。そんな中逆走して入る鳴海達を見て戸惑う人たちもいたが、それも一瞬で直ぐに興味を失せたようだ。愛奈は堂々と歩き、鳴海は愛奈の後ろに隠れるように歩いている。愛奈は近くの教室に入る。


教室の中には談笑している人達がいて、入ってきた鳴海達2人を見るが、すぐに興味が無くなったようで、談笑に戻った。愛奈は迷わず、教室の後ろに設置されているロッカーの1つを開けて中を調べ始める


声を掛けたかったが、近くにいる人達に聞かれたら最悪自分達が潜入していることがばれるため、慌てて口を塞ぐ。愛奈は何かを探しているようだ。


愛奈「……」


愛奈は適当に教科書を取り、ペラペラと捲っては戻して、違う教科書を捲ってと繰り返している。そんなことをしていると、捲っていた教科書のページの間に1つの封筒が出てきた。愛奈はそれを見つけると、とても慣れた手つきで封筒だけを取り、鳴海が壁になっていることを利用して、すぐにスカートのポケットに入れて


愛奈「ありがとう。やっぱり教科書に課題のプリントを挟んでいたわ」

鳴海「そ、そうなんだ。見つかった良かったね」


ここでぼろを出さないように鳴海も精一杯気を遣って、この場で不自然にならない程度の会話で返す。愛奈はチラッと残っている連中に目をやった後に、鳴海も外に一緒に出るように促してきた。大人しくそれに従って教室を出て扉を閉める


愛奈はまたどこかに歩き出す。愛奈の横に並んで小声で話しかける


鳴海「何さっきの」

愛奈「必要な物」

鳴海「何に」

愛奈「取材」

鳴海「あのさ、愛奈の説明は必要最低限にも達していないんだよ? もっと説明してくれないと私降りるよ」

愛奈「降りられるの?」

鳴海「降りられるでしょ。ロッカーのカギもあるんだし、普通に校門から帰れば」

愛奈「その制服はどうする気なの?」

鳴海「あ、そ、それは適当に置いていけば……」

愛奈「なるほど、でも今出るのはまずいと思うけどねー」

鳴海「え、なんでよ」

愛奈「ん」


愛奈は窓の外に指を向ける。指を指された方向に顔を向けるが、そこには不可解な光景があった。校門から出て行った生徒達の姿が消えている。まるで瞬間移動しているかのように一瞬で姿を消した


鳴海「え」


見間違いかと思い、目を補足して校門の方を見る。校門から出た生徒達の姿が見えなくなった。


鳴海「え、何、あれ、どういうこと?」

愛奈「鳴海にはどう見えているの?」

鳴海「は、あれのこと? 人が校門から出たら消えているように見えたけど……」

愛奈「そうなんだ」

鳴海「そうなんだ、じゃないよ! え、あれどうなっているの!?」

愛奈「……あまり見ない方が良いよ」

鳴海「何でよ」

愛奈「見たら気持ち悪くなるから。私も気持ち悪くなってきたし」

鳴海「ねぇ、まさかとは思うけど、あれのことを取材しに来たってわけじゃないでしょうね?」

愛奈「……」

鳴海「何で黙っているの?」

愛奈「それもあるかな」

鳴海「はー? 良くもこんなわけ分からない場所に連れてきたわねー?」

愛奈「……」

鳴海「……何? さっきからジロジロと」

愛奈「いや、やけに冷静だなって」

鳴海「はぁ? そんなこと……あれ、確かに……」

愛奈「あれはあと1時間経過したら無くなるから平気だよ」

鳴海「知っているの?」

愛奈「知っている。けど、教えない」

鳴海「なんでよ」

愛奈「鳴海がああなったら困るから」

鳴海「あれ、本当にどうなっているの?」

愛奈「さぁ? ただ、私と行動した方が良いってこと」

鳴海「……まぁ、今更単独行動なんかする気ないけどさ……。それよりもどこに向かっているの?」

愛奈「さー、どこに行きましょうかねー」

鳴海「目的地なしなの?」


それから愛奈と鳴海は校内をウロウロと歩く。鳴海は愛奈がどこに向かっているのか聞いても答えてくれず、ただついていくことしかできない。目的地が分からない、いつまで歩くか分からないこの状況では、普段歩いている同じ距離でも、疲労の溜まる速さが違う。少し息切れになって来た鳴海だが、愛奈は全く息を切らしていない。体感的には1時間くらい歩いたと思ったが、実際は30分程度校内を歩いていた


ずっと歩いていた愛奈は足を止めたので、鳴海も足を止める


愛奈「確定ね」

鳴海「え、何が」

愛奈「……」


愛奈は黙って近くの窓を開けて、スカートに入れていた封筒を外に投げる


鳴海「え」


突然の行動にただそう呟くことしか出来なかった鳴海だが、歩いてきた後ろから何か走り出す足音が聞こえた。音がした方を振り向くと同時に、何かが自分の横を走り去る。かろうじて分かったのはこの学校の制服を着ている男子というのは分かった。慌てて男子が走って行った方向を確認すると、窓に付けていた足を外しているところが見えた。すぐにその足は見えなくなる


慌てて窓からいなくなったのが何かと確認しようと、窓際に近づくと


鳴海「あれ?」

愛奈「どうしたの?」

鳴海「さ、さっき誰かが飛び降りなかった?」

愛奈「飛び降りたわね」

鳴海「そうだよね。でも」

愛奈「誰もいないわね」


2人が窓から見える外の下を見るが、そこには何もない。ただの地面で、草や茂み・花も何もない。誰の姿も無い


愛奈「これで終わりっと。帰りましょうか」

鳴海「え、何の話?」

愛奈「取材が終わったってことよ」

鳴海「さっきの封筒は?」

愛奈「もう落とした」

鳴海「でも封筒が無いよ?」

愛奈「ほんとね」

鳴海「何したの?」

愛奈「……いやーやっぱりそんな反応なのね」

鳴海「何が?」

愛奈「普通ならもっと取り乱すか、慌てふためくと思うんだけど、鳴海ってとても落ち着いているなーって」

鳴海「え」

愛奈「うん、取材は終わったから帰りましょう」

鳴海「……」


確かに自分でも驚いた。あまりにもこの状況にそこまで驚いていない自分に驚いた。愛奈の言う通り、もっと慌ててもいいはずなのに……なんでだろうか?


鳴海「ねぇ」

愛奈「んー?」


階段を降りながらさっきの更衣室に向かう2人。愛奈は先頭に歩き、鳴海は後ろをついていく


鳴海「私って2年生の途中までどんなことしていたの?」

愛奈「覚えていないの?」

鳴海「うん、ほとんど覚えていないし。それは家で話したでしょ」

愛奈「私が覚えていることは話したけど」

鳴海「本当に?」

愛奈「というと?」

鳴海「まだ話していない部分は無いの?」

愛奈「なんでそう思うの?」

鳴海「なんか、そんな感じがした」

愛奈「私は知っていることは話した」

鳴海「……」


全く声のトーンや歩く視線も変化なく返してくる愛奈。やはり深く考えすぎたのだろうか?


鳴海「何でもない。この制服はどうするの?」

愛奈「ロッカーに入れて帰れば問題ないよ」

鳴海「どうやってそんな手筈をしているのよ」

愛奈「新聞部の元先輩。何人かここに来ているから」

鳴海「あ、じゃあさっきの2人って」

愛奈「そうね」

鳴海「愛奈って怖いね」

愛奈「私からしたら鳴海の方がとても怖いけど」

鳴海「え、どういうこと?」

愛奈「言葉通りの意味」

鳴海「何それ? 意味わかんない」

愛奈「ほんと、意味わかんないわよねー」

鳴海「はー?」

愛奈「帰り、どこか寄りましょうか」

鳴海「どこかってどこ?」

愛奈「どこにしようか。ラーメンとかどう?」

鳴海「えー? ラーメン?」

愛奈「……」

鳴海「何?」

愛奈「別に? 鳴海は鳴海だなって」

鳴海「意味が分からないよ」

愛奈「とりあえずどこかに寄ってから帰りましょう」


2人で元の制服に着替えて、外を出る。少し怯えながら校門を出るが、消えるようなことは無かった。2人で学校から遠ざかると、近くにハットをかぶった人を見つける。その人は手にカメラを持っている。鳴海達に気付いたその人は、姿を見られないように顔を伏せてどこかに走り去っていってしまった


鳴海「何だろうねあの人」

愛奈「さぁ、私が知るわけない」

鳴海「まぁ、どうでもいいわね」

愛奈「……そんな感じよねー」

鳴海「何が?」

愛奈「え、さっきの人でしょ」

鳴海「うん」

愛奈「うん」

鳴海「うん?」

愛奈「うん?」

鳴海「オウム返しやめて」

愛奈「いや、そんなつもりはなかったんだけどね。とりあえず帰りましょう」


2人で帰宅路を歩く。鳴海は振り返って高校を見るが、来た時よりも大きい学校に感じた。しかし、そんな感覚も直ぐに記憶から忘れて、何事も無かったかのように、愛奈と共に帰った。



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