中学生(23)
比喩で女性の読者様には不快な思いをさせてしまう可能性がある表現があります。それと今回の話は、人によっては気分が悪くなることが起きます。耐性が無い方は注意してください
2年生の夏休みが終わった。教室では、生徒達が夏休みの思い出を熱く語っており、その話を聞いて盛り上がり、続いて自分の体験を話して盛り上がっていた。健也はその風景を見て溜息をつく。右に置いてある席を見る。そこには鳴海がいなかった。
鳴海は夏休み最後の日で鳴海家に帰り、その後会っていない。今まで健也家にいることに拘っていたのに、咳をする回数が増える、眠る時間が長くなる、話を聞いていないことが今まで以上に増えていた。健也が病院に行くように言ってみたが、どういうわけかそれを嫌がっていた。健也の両親に鳴海のことを相談してみても「鳴海ちゃんの好きにさせなさい」との一点張り。鳴海の具合がおかしいのを健也と一緒に見ているのにその反応をすることに健也はとても驚いた。どうしてそんなに気楽でいられるのかと怒鳴ってしまったが、鳴海に腕を掴まれて顔を横に振られてしまう。それだけで、鳴海が自分の身体について言及されることを嫌がっているのが分かったが、1年生の秋から咳が出ていて、今ではこんなに咳をしていることがどうみても正常とは思えず、つい鳴海にも怒鳴ってしまう
何で病院に行かないのか、どうしてそんなに気楽にしていられるのか
あの時は何を言ったのかほとんど覚えていないが、こんなことを言って鳴海に迫った気がする。その時の鳴海の反応は何も言わないで、健也を見ていた。その目が今までのような温かいものではなく、どこか遠くを見ているような……健也を見ているけど、健也を見ていないような……そんな目をしていた。これまで何度も目を合わせているので、そんな目をしていることに気付いたが、本人が口を閉ざしている以上、健也はそれ以上何も知ることが出来なかった。
喧嘩別れのような形で、荷物を持って玄関に向かう鳴海。玄関で健也両親に頭を下げて何かを話していたが、健也は玄関まで見送ることが出来なかった。どんな顔をして見送れば良いのか分からなかった。聞き耳を立てて何を話しているのか聞こうと思ったが、よく聞きとることが出来ず、そのままその日は鳴海と別れた
メールをして謝ろうとも思った。メッセージ入力欄に、文字を入れては消して、文字を入れては消してと繰り返す。本当にこんな文章で良いのか、もっと違う書き方があるんじゃないのか、もう時間も時間だし少し経ってからの方が良いのではないか。そんなことを考えているうちに時間だけが無為に過ぎていき、気が付けば朝日が昇っていた。スマホを見ていると画面が真っ黒になっており、電源ボタンを入れると、中央に長方形の枠が出てきて、左端に僅かに赤く点滅している。溜息をついて充電をしようとコンセントに指すと、もう登校しなければ遅刻をしてしまう時間だ。急いで課題と荷物を整え、制服に着替え、朝食・洗顔などを済まし学校に向かう。隣に鳴海はいなかった
学校に到着。そして今に至る
健也「……」
男子A「よお健也、何ボーっとしてんだ?」
健也「え、してたか?」
男子B「してたよ、徹夜?」
健也「あー、そんなとこ」
男子A「分かるぜ~? 俺も昼夜逆転しちまってよ~、起きるのが辛かったぜ」
男子B「夏休みは何してたの?」
健也「友達と遊んだり、旅行に行ったりとか」
男子B「おー、どこにいったの?」
健也「肝試しとか、温泉とか」
男子A「いいなそれ、男だけ?」
健也「女子もいた」
男子A「マジか! マジなのか!?」
男子B「慌てすぎだろ」
男子A「だって夏休みだぜ? それで男女だろ? そうなったらやることは1つしかないだろうが!」
健也「何それ」
男子A「はぁ? 何って、そりゃセ」
男子B「ごめん手が滑った」
男子A「痛い! 何しやがる!」
男子B「手が滑っただけだよ、ごめん」
男子A「はぁ、話を戻すぞ。セッ」
男子B「足が滑ったー!」
男子A「馬鹿め! そんな攻撃を2回も受ける俺じゃ痛い!」
男子B「顔が滑ったー」
男子A「さっきからなんだよお前! 何か恨みでもあるのか!?」
男子B「別に?」
男子A「はぁ~~~???」
健也「楽しそうだな」
男子B「いつものことだから」
男子A「っち…もう教師が来たか。じゃあな健也」
健也「うん」
それから課題の提出をして、校長のありがたい話を聞いて、解散となったが、鳴海は姿を現さなかった。星奈も姿を現さず、健也の両隣は空席となっていた。椅子に座ったまま今日はどうしようかとポケットに手を入れるが、そこにはいつも入っているスマホがない
健也「しまった……充電したまま家に置いてきたか……」
どうしようかなと思っていたが、いつもあの2人はこっちの教室に来ているので、大人しく教室で待つことに。しかし5分、10分経っても2人は姿を現すことはなかった
健也「……これもしかして来ないか?」
一応また5分待つが、教室は健也以外に人はいなくなってしまった。愛奈と吉良はやってこない。もしかしたらHRが長引いているのかもしれない、こっちから行こうと健也は椅子から立ち上がり2人の教室に向かう。教室に到着するも、2人はいなかった。残っていた生徒に2人がどこにいるかを聞いてみると
「吉良君は休んでいて、愛奈さんは直ぐに教室から出て行ったよ」
と返された。その生徒にお礼を言ってからどうしようかなと廊下を歩く。1人で行動するのはかなり久しぶりだった。家では鳴海、外では吉良(時々愛奈)、部屋にいても鳴海が入ってくるので、完全に1人になるのはとても懐かしくもあり、寂しさもあった。いつも組んでいるグループの自分以外の全員がいない時の寂しさ体感しながら下駄箱で靴を履き替えて学校を出る
健也「……やっぱり行かない方が良いかな……でもこのまま何もしないのもそれはそれで……うーん」
鳴海の家に行こうかどうか迷う。最後に会ったのが喧嘩別れのような形なので、こっちから会いに行くのは少し恥ずかしいし、気まずい。だからと言って何もしないのもそれはそれでモヤモヤして何をするにしても集中出来る気がしない。でも家に行ってどうすれは良いのかが分からない。仮に入れてくれたとしても、何を話せばいいのか分からない。身体の事を一切話してくれそうにないし、それが健也母の前でも、健也の前でも話してくれなかった。
健也「そうだ、鳴海のお母さん達に話を聞けば……」
鳴海両親とは、小学生の時以来直接会って話をすることは無かったが、それでもここまで鳴海と長い付き合いをしている健也になら、鳴海の身体の事を教えてくれるかもしれない。鳴海に会えなかったら鳴海両親に鳴海の身体の事を聞く、鳴海に会ったら今までみたいに適当に何かを話せばいい。
考えが纏まった健也は、鳴海家に向かった
健也「……あれ、この辺だよな」
小学生の時に来ていた記憶を頼りに、鳴海家に向かうが、そこは空き地になっており、家が無い。近くの表札を確認していったが無かった。
健也「あれ、この辺じゃなかったかなー、どこか道を間違えたのか?」
近くをウロウロしていると、近所のおばさんに話しかけられる。学生服を着て、表札をジロジロと見ていたら、それは怪しまれるのも無理なかった。おばさんに、自分の友達だと言って鳴海のことを話すと
おばさん「はて、そんな家あったかのー?」
分からなかったみたいだ。健也が不審者ではないことが分かったおばさんは、にっこりと笑ってどこかに去って行く。健也も自分が不審者出ないことを分かって貰えて安心した。もし不審者と通報されたらきっと面倒なことになっていただろう。そのまま一軒ずつ家を調べていくが、鳴海家を見つけることが出来なかった
健也「あれ、本当にこっちだったかな……もしかしてまた道を間違えているのか?」
数年前に行ったきり、それもとても小さい頃の記憶だ。所々が違う場所の道順と混同しており、勘違いしていることも十分あり得る。頭をポリポリと掻きながら、鳴海家を探すも見つけることが出来なかった。
時間が過ぎて空が茜色になって来た。これ以上探せば、本当に不審者になってしまうので、今日は切り上げることに
家に戻ってコンセントから充電器を抜いて、スマホを操作する。鳴海から何か連絡が来て否かを一番に確認したが、何も連絡が来ていなかった。愛奈からも何も連絡が無かったが、吉良からは大量のメッセージと着信が送られていた。何事かと思い、吉良とのチャット画面に映ると、そこには数えきれないくらいの着信と
「助けて」
とあった
健也「……は?」
なんだこれはと思って、「助けて」という文字を見つめ返していると、吉良からの着信が来た。すぐに通話ボタンを押すと
吉良「健也! 健也! 助けて!」
健也「どうして!? 何があった!?」
吉良「良いから! 今すぐ家に来て! お願い!!」
1年前に聞いた肝試し以上に、怯え、震え、泣き出しそうな声がスピーカーから聞こえる。それを聞いているだけで、健也もとても焦ってしまう
健也「どうした!?」
吉良「お願い! 健也助けて!」
「助けて」
そう連呼するだけで、他には言葉を言わない。それだけ緊迫した状況なのだろうか? 判断する前に健也はスマホをポケットに入れて、部屋着のまま家を出る。両親に「どこに行くのか」と呼び止められるが、それに応える余裕は健也には無かった。
急いで自転車を使って吉良家に向かう。吉良家に到着し、インターホンを連打するが、反応が無い。誰もいないかと思ったが、部屋の電気が点いているため、誰かはいるはずだ。夜遅くでインターホンを連打することは間違いなく近所迷惑な行為だが、あれだけの「助けて」と連行する親友の怯えた声を聞いてしまえば、そんなことを気遣いする余裕も無かった。また着信が来た。吉良からだ。通話で「家に前にいる」と伝えると、鍵がガチャリと開く音が聞こえた。
吉良「入って!」
健也「おう!」
耳にスマホを当てながら吉良家の玄関を開けて中に入る。中は以前来た時とそう変わりなく、見る限り何もおかしなところは無い。吉良は部屋のソファーに座って上から毛布を被って震えていた。
健也「吉良、どうしたんだ。そんなに慌てて」
吉良「……1人が怖くて」
健也「どういうことだ? 何か怖い映画でも見たのか?」
吉良「そんなもんじゃないの!!」
冗談で言ってみたが、マジギレされてしまった。毛布に包まりながら震えているので、反応を見ようにも見ることが出来ない。それから吉良が落ち着くまで、適当に雑談をするように促される。こんな状況で雑談も何もないが、それでも吉良の怯えている状況をどうにか出来るならと、思いついたことを適当に話していく。20分程度経つと、震えが少しずつ収まったようで毛布が揺れることは無くなった。
吉良「ごめんね、こんな時間に呼び出して……本当にごめん」
健也「親に連絡していいか」
吉良「うん」
もう夜遅い。夜になっていきなり飛び出し、しかも何も言っていないために何を言われるかと震えながら電話をするととても怒っていた。友達が困っていたこと、今日は友達の家に泊まることを伝えると激怒されるが、同時に心配もされた。健也が吉良と電話をしている時、健也が思っている以上の声量で話をしていたのが聞こえていたようで、怒られる程度で済んだようだ。
健也「それで、どうしたんだ……」
吉良「……目が」
健也「目が?」
吉良「目がおかしくなったの」
健也「視力低下?」
吉良「そんなものじゃなくて、変なものがいるの」
健也「変な物?」
吉良「何か……すごい気持ち悪い」
健也「……病院に行くか?」
吉良「こんなの、どう説明をすればいいのか分からないよ……」
健也「とりあえず……見せてくれないか?」
吉良「引かない?」
健也「引かない」
吉良「絶対? 本当に? 本当に引かない?」
健也「引かない。だから見せてほしい」
吉良は心の準備を整えるためか、深呼吸をしている。深呼吸をするたびに毛布が揺れ、とても大きく息を吸っては吐いてを繰り返している。こんな吉良は初めて見るので、とても大きなことが起きているのだけは、今の健也には分かった。
吉良が毛布を取ると、片目には眼帯が付けられていた
健也「眼帯?」
吉良「ここからだよ……本当に覚悟だけはしてね。本当にだよ??」
健也「……分かった」
健也も覚悟を決めると、吉良は付けていた眼帯を外す。眼帯を外した目は、付けていなかった方の目と全く異なる目をしていた。瞳には小さなゲジゲジのようなものがうじゃうじゃと敷き詰められおり、それも全部ぞわぞわと動いている。健也の背筋は一気に凍り、何も言葉が出なかった。
吉良「……ね」
眼帯を付け直すと、その光景は見えなくなったが、それでもさっきの異常な光景に衝撃を受けた健也は口を開けてパクパクとする。その衝撃で脳は理解しようとするのを放棄し、何も考えられなくなる。吉良も健也のこの反応は予想していたようで、動じていないように努めてはいるが、それでも自分の眼球が明らかにおかしくなっていることに気付いているようで、膝に置いている手は震えている。健也から何を言われるのかも怖がっているのも震えの1つの原因だろう。
健也「……」
あまりの気持ち悪さに、膝をついて吐きそうになるが口元を手で押さえる。友人の家に汚物をまき散らすわけにはいかず、必死に口の中から飛び出さないようにドロドロとしたものを抑えるが、それがまた気持ち悪くて仕方がない。
吉良「それに吐いて良いよ」
近くには洗面器が置いてあり、遠慮なくそこに口を入れて、溜まっていたものを吐き出す。まだ食事をしていなくて助かった。もし食事をしていたら、今吐き出した以上に吐いていたからだろう。吉良は健也の背中をさすり、最後まで吐き出させる
健也「す、すまん」
吉良「口洗ってきな。紙コップね」
健也「あぁ、すまん」
洗面所に向かい、紙コップを取り口の中を何度も濯ぐ。人の家の洗面所で、汚物の残り水を流すのには抵抗があったが、これから人と話すときに汚物を出した口で話をする方がもっとダメだろと思い、申し訳ないという気持ちを抱きながら口を濯いだ。吉良の元に戻ると、洗面器を持って戻ってきた。奥から水の流れる音がする。位置的にトイレだろう
健也「ごめん」
吉良「いいよ、僕だって最初信じられなくて吐いちゃったし」
吉良は少しやつれている。しっかりとした食事をしているのか少し不安になった
健也「いつからだ、あとそうなった心当たりは?」
吉良「夏休み前の肝試しからかな」
健也「あぁ、愛奈と一緒に行くことになったあれか」
吉良「そう」
吉良は健也に、祭りでの出来事(第24部、中学生22)のことを話した
健也「レンズを通して人を見たら心臓部に火が燃えていた?」
吉良「信じてもらえないと思うけど。そうなの」
吉良は部屋の隅に三角座りをして、視線を下に向けている
健也「蝶々……」
吉良「どうしたの?」
健也「いや、俺も最近蝶々を見たから。それも自分の意に介さないで見ようとしてしまったようなことがあって」
健也は吉良に、鳴海との温泉旅行での出来事(第23部、中学生21)を話した
吉良「そっちも蝶々出たんだ」
健也「あぁ、でも俺は目に何とも出ていないな」
吉良「……」
健也「あ、すまん! その、悪気は無かったんだ! 本当にごめん!」
吉良からしたら「俺はお前みたいに目に異常が無かったよ、ラッキー」という風に聞こえてしまったらしい。何度も謝ると吉良も少しは落ち着いてくれたようだ。それもそうだろう、冗談抜きで例えるなら、「私はあいつと性交したけど、妊娠しなかったよ? あら、あなたは妊娠したの? ドンマイドンマイ!」と言っているようなものだ。(気を悪くした読者様、冗談にならないことで例えていますが、吉良はそれくらいに落ち込んでいると思ってください)
健也「あとは……その……」
吉良「っ!」
健也「……」
そのレンズを通して見た事か、それとも蝶々を大量に見たからか、人が突き刺さっている無残な姿を大量に見たからか、原因が分からないが、祭りに参加したその体験からというのうは濃厚だろう。じゃなきゃいきなりこんな目になっているにはとてもじゃないが考えられない。目の病気なのかとも思ったが、それにしても健也にどうこう出来る方法は思いつかなかった。出来るとしたら病院に行くように説得するくらいだろう。しかし吉良は
吉良「こ、こんなの、見せられないよ。怖い……」
膝を抱えて震えている。それからはずっとブツブツと言っているが、健也の話に耳を傾けてくれそうにない。健也が話しかけてもずっとブツブツと言っている
健也「……そうだ、愛奈は? おい吉良、愛奈はどうなんだ?」
吉良「……」
吉良は反応してくれない。愛奈も一緒に吉良と肝試しに参加しているため、何か吉良と似たような症状になっていてもおかしくない。急いでスマホを取り出して愛奈に電話をする。数コール鳴った後に、電話に出る
愛奈『もしもし?』
健也『愛奈、お前吉良のこと知ってるか!?』
愛奈『はぁ? 何いきなり? こんな夜遅くに?』
健也は吉良の目が祭りの時からおかしくなっていることを伝えると、愛奈は
愛奈『私は何ともないけど……それ本当なの?』
健也『冗談でこんな質悪いこと言えるか! 何か知らないか!!?』
愛奈『そう言われても……私には何も出来ないわ』
健也『そ、そうか。すまん』
愛奈『病院は……閉まっているか。明日病院に連れて行くしかないんじゃない?』
健也『吉良が病院に行きたくないって』
愛奈『なんで?』
健也『見られたくないって言うんだ』
愛奈『でも』
健也『愛奈の言いたいことも勿論分かる。だけど今あいつの精神状態がそれどころじゃないんだ。愛奈も説得してくれないか?』
愛奈『分かった。けど明日ね』
健也『あぁ、頼む』
通話が切れる。愛奈が何も出来ないのは分かってはいたが、それでも「使えないな」とどうしても思ってしまう。愛奈に対してだけでなく、自分に対してでもだ。こんな状況で何が出来るのか、一生懸命に考えるが、それでも健也に思いついたのは病院に行くように説得するくらいだった。部屋の隅で震えている吉良、まだブツブツと言っており、健也の話に耳を傾ける余裕がないようだ。お茶でも用意して、少しでも気を紛らわらせないかと、台所に行くがお茶葉が無い。時間も遅いが、幸運なことにポケットに小銭が少し入っていた。コンビニでお茶の1本くらいなら買えそうだ。今出たら補導されかねないが、何か気を紛らわせたいという気持ちが強く吉良を部屋に置いてコンビニに向かう(鍵は借りてしっかりと鍵をかけた)
コンビニでお茶を買い、お店を出ようとすると見覚えのある2人を見つける。鳴海と温泉旅行で写真を撮ってもらった女性2人だ。1人(低身長の女性)は飴を銜えながら、もう1人(高身長の女性)に話をしている。健也と目が合うが、2人とも目を逸らしたかと思えば、何か驚くような顔をしていた
低身長の女性「おい、お前」
健也「はい」
高身長の女性「……なんか焦っているみたいだけど、どうしたの?」
健也「いや、なんでもないです」
一刻も早く帰って吉良の様子を見ようと思ったが、意外にもこの女性2人は話を続けようとしてきた
低身長の女性「何か見えちゃいけないものが見えてないか? お前」
健也「!?」
吉良の目を思い出してしまう。あの瞳の中に虫がぞわぞわとしている光景をなぜかはっきりと思い出すと、全身が震えて、膝をついてしまう。店員さんも何事かと健也含む3人を見ているが、声を掛ける気はないようだ
低身長の女性「……おい」
高身長の女性「多分この子じゃないよ」
低身長の女性「他ってことか」
高身長の女性「じゃないかな、この反応……」
2人は何やら短いやり取りをした後に、健也に再び話しかける
低身長の女性「お前には飴の恩がある。本当なら断るけど、飴だからな。仕方ない。私達は少し不思議な現象に詳しくてね。例えば、身体の一部が増えたり減ったりとか、目や耳に異常が起きているとか」
健也「!? それは本当か!??」
低身長の女性「あぁ、だからお前が何に悩んでいるかを教えてくれたら助けになるかもしれない」
高身長の女性「もしこいつの言った通り、病院に連れて行きたくても連れて行けないような症状なら、少しは心当たりがあるから助けになれるかもしれないよ」
健也「本当ですか!!」
低身長の女性「とりあえず、店から出るぞ。こいつを頼む」
高身長の女性「はいよ」
高身長の女性と一緒に外を出る。少ししてから低身長の女性も出てきて、手にはビニール袋が入っている。健也は2人に、吉良の眼球に虫が詰まってぞわぞわと動いていることを伝えると
低身長の女性「あぁ、それならなんとか出来る」
高身長の女性「そうね。それなってからどのくらい?」
健也「本人がいうには1週間程度かと」
低身長の女性「1週間か…際どいな」
高身長の女性「急がないとね。君、案内して」
健也「え、でも」
高身長の女性「一刻を争うわ! 早く!」
健也「は、はい!!」
本当なら知らない人に家を案内するようなことをしてはいけないが、実際に親友の身に何かしら異常なことが起きていて動揺していること、病院に行ってどうにか出来る類のものか疑わしいこと、2人に急かされてじっくりと考える余裕が無かったことが重なり、健也は2人を吉良家に案内した
吉良家に着くと、吉良が天井にロープを括りつけて、なぜかその近くに椅子が置いてあり、その椅子に昇ろうとしている所だった。
健也「吉良!」
吉良「……ごめん、僕もうどうしていいか分からないからさ……さよなら健也」
健也「ちょっと!」
首を吊ろうとしていた吉良を横から手加減なしでタックルすると、吉良と共に壁に勢いよくぶつかった。肩が滅茶苦茶痛かったが、それも一瞬。健也も興奮状態にあるので、痛みには鈍感になっていた。女性2人が吉良に近づき、吉良に許可なく包帯を取ると
低身長の女性「げ」
高身長の女性「不味いわね」
低身長の女性「急ぐぞ」
吉良「や、やめろ! 僕は死ぬんだ!」
低身長の女性「今死なれると迷惑だから、死ぬならこれが治った後に死んでくれ」
高身長の女性「ちょっと」
低身長の女性「事実だ。ほら、治してやるからジッとしてろ」
低身長の女性は、吉良の腹部を強打すると、吉良は動かなくなった。
低身長の女性「おい、お前。私達が良いと言うまで目を瞑ってろ」
健也「な、いきなり殴りやがって」
低身長の女性「これ治したいんだろ? 別に嫌なら私達は帰るけど」
健也「……」
低身長の女性「どうなんだ?」
健也はその女性の威圧に怯えてしまい、目を瞑ってしまう
それから5分程度経つと
低身長の女性「ん、取れたぞ」
高身長の女性「そうね」
低身長の女性「卵残ってないよな」
高身長の女性「ないわ。全部綺麗に取れてる」
低身長の女性「おし、もう目を開けていいぞ」
健也は目を開けて、吉良の元に駆け寄る
吉良「あ、あれ……っ! 眼帯が! 見ないで健也!!」
健也「っ! 吉良、取れているぞ」
吉良「え」
健也「ほら!」
健也が近くに落ちていた鏡を吉良の前に差し出すと、さっきまで眼帯を付けていた方の目には、虫はいなくなっており、片方と同じような目に戻っていた
吉良「……良かった~~~~~~~」
何度も鏡を見ては、目元を弄って確認し、健也に無くなっているかをしつこく聞いてくる。それを何十回も確認すると、吉良は心底安心したように、健也に抱き着いた。女性達2人は、そんな茶番に飽きたのか、すぐに去ると思ったが
低身長の女性「それで、吉良とか言ったなお前。そうなった時の話を聞かせろ」
高身長の女性「それくらい教えてくれても良いよね?」
吉良「健也……この人たち誰なの…」
低身長の女性「それはどうでもいいだろ。早くお前が知っていることを教えろ」
健也「吉良、話してあげて。この人達は恩人なんだから」
吉良「う、うん。実は……」
吉良は女性2人に、さっき健也にした話をもう一度する
低身長の女性「なぁ、その一緒にいた奴ってどんな奴だ。この中にいるか?」
低身長の女性が手元からスマホを取り出し、それを吉良に確認させていく
吉良「全員違います。僕の友達です」
低身長の女性「そいつの写真はあるか?」
吉良「……それ必要ですか?」
低身長の女性「必要だ。もしその子もお前と同じことになっているかもしれないからな」
吉良「それなら……」
健也「あ」
低身長の女性「……」
高身長の女性「どこの誰かな? 吉良君みたいに症状が悪化しないように助けに行きたいからさ、教えてくれないかな?」
吉良「この人です、名前は愛奈」
健也は、愛奈は何も症状がないことを伝えようとしたが、低身長の女性に睨まれ、怖くて何も言えなかった。高身長の女性も、ふんわりと笑ってはいるが、目が怖かった。
低身長の女性「……」
高身長の女性「……はい、どうも」
低身長の女性「邪魔したな。今日はもう寝な。じゃあな」
高身長の女性「健也君だっけ? 少し話したいな。良いよね?」
良いかな? ではなく 良いよね? だった。これはもう拒否権は無いような物だ。大人しく首を縦に振ると、玄関前まで一緒に歩き、2人を見送る
低身長の女性「これをやる」
健也「え」
低身長の女性から受け取ったのは、見た感じは防犯ブザーだった。小学生の時に付けていたものと同じで、試しに紐を引っ張ろうとしたが
高身長の女性「それは自分ではどうしようも無い時に紐を引いてね。使い捨てだから」
健也「え、あの、どうして」
低身長の女性「有益な情報を教えてくれたお礼ってことだ。大人しく受け取ってくれ」
健也「はぁ」
なし崩し的に受け取ると、女性達2人は扉を開けて出て行ってしまった。一体何者だったのだろうか……考えても結局分かるわけでもなく、吉良の元に戻ると、さっきまでの落ち込みが嘘のようにはしゃいでいる
吉良「健也、健也、健也、僕の目、おかしくないよね?」
健也「あぁ、おかしくないよ」
吉良「よかった、本当によかった。目が普通って良いことだよね!」
健也「あぁ、そうだな」
吉良「今何時?」
健也「1時だな」
吉良「あ、もう寝ないと遅刻するね」
健也「そうだな」
吉良「ごめんね、こんなことになって」
健也「そうだな。俺も疲れたから泊っていいか」
吉良「良いよ。お風呂入れてくるね」
健也「頼むわ」
それからお風呂と軽い食事を済ませて、2人は直ぐに眠った。
一方そのころ
低身長の女性「これでほぼ確定だな」
高身長の女性「そうね。どうする」
低身長の女性「餌の可能性があるからなー。だがああなった以上、無関係じゃなくなった。それにあいつから聞いた話じゃ、そいつは何も症状が出ていない。そしてレンズを通して見ようとした瞬間に邪魔された」
高身長の女性「でも証拠がないわね。それに神社……どおりで最近増えていると思った」
低身長の女性「肝試しは盲点だった。確かに肝試しなら、なにも隠す要素が無く、堂々と行えるわけだ。それに言い訳も使える」
高身長の女性「レンズは誰が用意したのかしらねー。もしかして」
低身長の女性「それはない。あいつらも今回のことに関しては私達と本気で組んでどうにかしようとしているみたいだしな。あいつがわざわざ私にお願いをしてくるくらいだし、わざわざそんなことをするとは思えない」
高身長の女性「嫌いなのに、よく考えているのねあの子のこと」
低身長の女性「嫌いだから余計に見ちゃうんだよ。距離を取るためについ目が行っちまう。そもそも、お前がそんな能天気なのが原因なんだ、私は嫌だったのに……」
高身長の女性「でもあの子も悪い子じゃないんだよ? 家が家だからあんな風になっているだけで……」
低身長の女性「お前から聞いた話が本当なら確かに気の毒だがな。それが何だ、邪魔なら対立する」
高身長の女性「アンタもあの子と同じくらい、家が家なのは知っているけどさ、もう少し柔らかく話せないの? さっきの子だって怯えていたわよ?」
低身長の女性「仲良くするのはお前の方が得意だろ、得意不得意はお互いで補い合えば良い」
高身長の女性「その考えには賛成だけど、それでも努力はしなさいよ」
低身長の女性「へいへい」
次の日、吉良の目は、普通の目だった。虫が湧くことも無く、通常の目をしている。2人で学校に行くと、愛奈と出会い、吉良の目を見て健也に「話が違う」と言っていたが、「もし話が本当なら、大変だったね」と言った。直接見ていないからそんな淡々とした反応に鳴るのは無理ないが、それでも健也からしたら冷たい反応であることに違いなかった。吉良は治ったことで、その辺の対応はどうでも良いと思っているようだ。吉良が言うには「心配するだけで治るなら、誰も苦労しない」とのこと。吉良も直接見せていないし、体験もしていない人に、いくら何を言ってもあまり意味が無いと思ったのだろう。予鈴がなると2人と別れて教室に向かう。
いつもの席に向かうが、両席とも空席だった。
もしよろしければ評価ポイントをお願いします! 力になります!




