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幼馴染の意地  作者: ヤマネコ
24/43

中学生(22)

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吉良と鳴海は1年前に4人で行ったお祭りに2人で遊びに行くことになった。吉良は約束の時間5分前に着くように待ち合わせ場所に向かうと、既に愛奈は待っていた。


吉良「お待たせ~」

愛奈「遅い」

吉良「いや、まだ5分前でしょ?」

愛奈「女の子より早く来ないと機嫌が悪くなる子も多いわよ?」

吉良「愛奈はそうなの?」

愛奈「いや別に」

吉良「何なの?」

愛奈「こういう子をさっきそこで見かけたから、吉良に言ったらどう反応するか見たかった」

吉良「へー、ちなみに相手はどんな反応をしたの?」

愛奈「ごめんって言いながら何度も頭を下げていた。あれは男より女の方が立場上だね」

吉良「立場って……大人だったの?」

愛奈「見た感じ高校生かな。もしかしたら中学生かも?」

吉良「学生よりなんだ」

愛奈「それより、これ」


愛奈は来ている服をしっかり吉良に見せるようにその場でゆっくりと一回転する。愛奈が来ているのは着物で、4人で出かける時よりも気合を入れているのが、服に詳しくない吉良でも分かったくらいだ。どこにどのような工夫をされているのか、全く分からないが手間暇かけているのは見て取れる


吉良「似合っているよ」

愛奈「正解」

吉良「もしかしてこれも?」

愛奈「そう、さっきの男女がやっていたことその2。ちなみに男はなんて反応したと思う?」

吉良「え、なんだろ……。飢え死にすればいいぃ! とか?」

愛奈「それ誰想像したの? 健也?」

吉良「よく分かったね!? 健也ならもしかしてこんな感じのことを言ったりするかなって」

愛奈「鳴海も健也が時々訳の分からないことを言いだして反応に困る時があるって言ってた」

吉良「鳴海さんだし平気でしょ」

愛奈「そうね、鳴海なら反応に困る程度で、距離を取るようなことはしないし。それよりも受付を済ませましょうか。ちなみに男はそんなことより早く何か食べようだってさ」

吉良「健也も鳴海さん以外の人と来ていたら似たようなことを言いそうだね」


1年生の時と同じように受付を済ましてから近くで待機する。去年と比べて人がとても増えており、待機場所も少し手狭で暑苦しい。夜とは言え、昼間に温められた地面や建物から熱を発しているので、逃げる場所もここでは全くない。愛奈は熱そうに襟元に手で風を送っているが、それでも気休め程度だろう。汗が止まらないようだ


吉良「はい」

愛奈「ありがとう」

吉良「なんか今年はとても多いね」

愛奈「そうね……」

吉良「しかも屋台もとても増えているような?」

愛奈「そうね」

吉良「そうねしか言わないな~」

愛奈「いや、ちょっとね……」

吉良「?」

愛奈「汗が溜まって気持ち悪くて……」

吉良「あ……これどうぞ」

愛奈「あら、ありがとう」


吉良は持ってきていた扇子を愛奈に渡すと、愛奈はそれを広げて仰ぎだす。隣にいる吉良に愛奈の匂いがうっすらとした


吉良「ハンカチは?」

愛奈「忘れちゃって…」

吉良「はいこれ、また使っていないから」

愛奈「あらどうも」


渡されたハンカチを自分の首元に運び、汗を拭き取る


愛奈「えっと……」

吉良「今度返してくれればいいよ」

愛奈「そう、分かった」

吉良「……カップルが多いね~」

愛奈「ほんとね」


2人の前には、今か今かと待ちわびている男女が多かった。もちろん同性だけで組んでいる者達もいるが、男女の方が圧倒的に多い。全員やけにテンションが高いように見えるが、なんでこんなにワクワクしているのだろうか? もしかして視界が悪いのを利用して好感度を上げようとしているのだろうか?


吉良「吊り橋効果ってほんとにあるのかな」

愛奈「さぁ? それは吉良が知っているでしょ?」

吉良「え、どういうこと」

愛奈「去年は健也が助けに来た時、とても安心したような表情をしていたじゃない」

吉良「それは! 愛奈が大したことない、初心者でも楽勝とか言っているくせに横から脅してきたからでしょ!?」

愛奈「脅すって……少し足音を大きくしたり、足を止めた程度じゃない」

吉良「それだけでも本当に怖かったんだからねー!」

愛奈「今回は?」

吉良「大丈夫」

愛奈「本当に?」

吉良「……大丈夫」

愛奈「そう、まぁ順番が来ればその時ね」

吉良「あ、僕達の番だって!」

愛奈「はいはい、行きますよー」


2人で、受付で去年と同じ説明を受けてから出発するが、今回の肝試しは時間制限があるようだ。時間を過ぎると強制的に失格になってしまうとのことで、去年にはなかったものだ。吉良達の順番は集まっている人達の中でも最後尾から数えた方が早い。待機場所には人は全くおらず、さっきまでの暑苦しさは少しだがマシになっていた。手には支給された懐中電灯、万が一に備えて位置情報が送られる機器をポケットに入れて歩き出す。構造は去年とほとんど変わっていないようだが、所々違いがあるのを見つけて、間違い探しをしているような感覚だった。


吉良「初心者向けでここまで人が来るのもすごいよね。来るならもっと怖い感じに宣伝されている所に人が集まるかと思っていたけど」

愛奈「もう夏休みも終わりだしねー。遠くに行くよりも、手近な場所にあるところを選んだんじゃない? それに、ここの神社って最近有名らしいし」

吉良「有名?」

愛奈「肝試しに力を入れているって」

吉良「……」

愛奈「不安になった?」

吉良「そうだねー、愛奈は夏休み何して時間を過ごしていたの?」

愛奈「露骨に話を逸らさない。まぁいいわ。えっとね……人と会う、本を読む、映画・アニメを観るとかかな」

吉良「基本的に家にいたってこと?」

愛奈「そうでもないかな。毎日ではないけど、基本的に外には出てたよ。吉良は?」

吉良「僕はこうして遊びに行くとき以外は家。圧倒的に家にいるね」

愛奈「健也と会っているんじゃないの?」

吉良「会ってはいるけど、メールとか電話の方が多いかな。健也もあまり外に出るような人じゃないから」

愛奈「あーそうね」

吉良「人と会うって鳴海さん?」

愛奈「鳴海もそうだし、他にも会っているわよ。というか吉良、少し喋りすぎじゃない?」

吉良「え、お喋りするのは何もおかしいことじゃないでしょ」

愛奈「あと、さりげなく私を前に出すのは止めてくれない? せめて隣同士で歩こうよ?」

吉良「いや、何言っているの? 隣同士だよ?」

愛奈「それは前後って言うのよ」

吉良「じゃあこうすればいいんでしょ」


吉良は身体を横にして、蟹のように道を歩き始める。2人を真上からみたら「T」という立ち位置になっており、吉良の進行方向の先には愛奈が先行して歩いている。だから決して前に出しているわけではないのだ


愛奈「……」

吉良「ちょ、ちょっと? なんで僕の後ろに回るの! あぁ、ちょっと! 押さないで!」

愛奈「耐性をつけてきたんでしょ? ほら、見せて見なさいよ」

吉良「……」

愛奈「そんな顔をしてもダメ」

吉良「わかったよ、どの道もう行かないと僕達がやられるんでしょ! 行きますよ!」

愛奈「なんで逆切れしてるの」

吉良「よし、行こう!」


吉良は足を踏み出さないで、注意深く懐中電灯の明かりで茂みや建物の裏を徹底的に調べている


愛奈「何してんの」

吉良「先にこっちが見つければいいんでしょ、大丈夫、僕なら出来る」

愛奈「肝試しの趣旨が変わってきてるよそれ」

吉良「見つけてから先に倒せばいいんでしょ、分かってるって」

愛奈「何も分かってないわそれ。ほら、あまり立ち止まると詰まるでしょ? 歩いて」

吉良「っぐ、はいはい!」

愛奈「だから何で逆切れしてるのよ…」

吉良「そうだ! こういう時は歌を歌えばいいんだ!」

愛奈「また健也みたいなことを……」

吉良「ある日~森の中~」


【ぎょっへへへへへへへいいいいいいい!!!】


吉良「出会った~~~!???」

愛奈「あははは、何それ!? ぎょへいに出会った!? ぷぷぷっ……」

吉良「笑うな~!」

愛奈「いや、これは笑うでしょ」


仕掛け人が奇声を上げながら草叢から飛び出てきた。吉良は両手を万歳して固まっている。それを見た愛奈は、はしたないと分かっていてもお腹を抱えて大笑いする


吉良「……そうか、ここは神社だ」

愛奈「そうだよ」

吉良「神社……神社に出る動物って?」

愛奈「猫とか? 地域によって様々だろうけど、狐とかいるんじゃない? 知らないけど」

吉良「じゃあ出てくるのは猫だと思えばいいんだ」

愛奈「……それよりも耐性は? どこ行ったの?」

吉良「あいつは置いてきた、この先の戦いについてこれないから」

愛奈「本当に健也みたいにアホ言わないでよ。吉良はあいつよりはまともでしょ?」

吉良「健也インストールするわ」

愛奈「インストールするとどうなるの?」

吉良「インストールが始まる」

愛奈「んなこと分かってるっての! 具体的にどうなるの?」

吉良「メンテナンスが始まる。いつ終わるのかは不明」

愛奈「インストールした瞬間にメンテナンス? 不良品じゃない。 ……もしかして遠回しに健也のことを馬鹿にしてる?」

吉良「いや、どうだろ」

愛奈「否定しないの?」

吉良「鳴海さん関連になると、馬鹿になるから割と否定できない」

愛奈「あぁ……」

吉良「そこで納得する愛奈も愛奈だよ?」

愛奈「……」

吉良「今どの辺だろう? そろそろゴールじゃない?」

愛奈「まだ中間地点前かな」

吉良「よし、ショートカットしようか」

愛奈「そっちはリタイア用の通路だよ? 逃げるの?」

吉良「逃げる? 僕が? 笑わせないで」

愛奈「やっと本気出したのね。じゃあ行きましょう」

吉良「……」

愛奈「い・き・ま・しょ・う・ね?」

吉良「こういう時、健也なら何て言うかな」

愛奈「アニメとか漫画の話をしてそう」

吉良「確かに。よし、それで行こう。ぼくはさいきょうだ!」

愛奈「なんか微笑ましいね、それ」


中間地点を通りすぎると、更に肝試しの雰囲気が出ていた。出てきたというよりは増してきたという感じか。物音が全くしない、どこに潜んでいるのかも分からない。道は暗く、手元にある懐中電灯とほんの僅かに設置されている明かりしか光源は無い。


ずきん


中間地点を通ってから何か頭痛がするが、気にしないで歩く吉良


先をゆっくりと歩くと、進行方向から何かがどさりと倒れた音が聞こえた。吉良は近くに落ちていた石を手に取る


愛奈「それで攻撃しちゃだめだからね」

吉良「先制攻撃だよ」

愛奈「どっちにしろ攻撃じゃ……また何かどさりと音がしたわね……」

吉良「やめてよ、嘘言わないで」

愛奈「吉良、割と本気で冗談じゃない。 ……ねぇ、あれ蝶々だよね?」

吉良「え」


愛奈が指さした方向には蝶々が群がっており、そこには暗くてもはっきりと見える蝶々が沢山いた。両手の指じゃ足りない数の蝶々が飛んでいる先には倒れている人が沢山おり、人数的に吉良達よりも先に出て行った人達全員だろう。全員地面に倒れていて起き上がる様子はない。吉良は蝶々を見ると、なぜか近づいてよく見たいという衝動に駆られる


愛奈「吉良? 吉良!?」

吉良「え」


背中に大きな衝撃が加えられ、その衝撃を耐えることが出来ず鼻から地面に倒れそうになるのを愛奈が抱きとめる。


吉良「痛いっての、何するのさ!」

愛奈「良いから! こっちに来なさい!」


その細い腕からは考えられないような強さで、蝶々から距離を取る


愛奈「吉良、あんた魅了されたでしょ」

吉良「え」

愛奈「さっきまで吉良が立っていた場所と、今立っている場所を見て」


愛奈にそう言われて、さっき立っていた場所と今立っている場所を確認すると、自分でも気づかないうちに蝶々の方に歩み寄っていた。愛奈が止めてくれなかったら、そのまま至近距離まで蝶々に近づいてもおかしくないくらいに近づいていたことに気付く


吉良「ねぇ、あれってそういう仕掛け?」

愛奈「仕掛けで蝶々を使うのは聞いたことないわね。いや、仮に使えたとしても人をあんなにも地面に寝転ばせるなんて……考えにくいけど。あんなところで寝かせるよりは他に仕掛け場所に潜伏させて脅かした方がコスパいいわ」

吉良「じゃあ何、あれ本当に気絶しているってこと?」

愛奈「……一応使っておきましょう」


愛奈は持っていた非常用の機器のスイッチを押す。これは押すだけで、声のやり取りをするわけでもないので、後は待つことしか出来なかった。


吉良「どうする、来た道戻る?」

愛奈「そうね、とりあえずここは戻って運営に任せましょう」


2人は来た道を戻ることを決意。仕掛けならいいが、もし万が一の事があったら肝試しどころではない。早く運営の人が来ないかと思いながら足を進めるが


吉良「ねぇ」

愛奈「……」

吉良「この道さ」

愛奈「……えぇ」

吉良「嘘だよね? こんなに長かった? それに見えている景色も全然変わらないし」

愛奈「そうだと思いたいけどね……」


2人は歩き続けるが、全く景色は変わらない。歩いても歩いても、スタート地点にすら戻れずに歩き続ける。愛奈はさっき使った機器をもう一度使ってみるが、運営の人が来る気配が全くなかった


吉良「スマホも圏外になってるし」

愛奈「こっちも」


自分達が持っているスマホで連絡を取ろうと思ったが、なぜか圏外になっている。写真を撮る、電灯を点ける、計算機を使うなどのことは出来るが、それ以外のことは出来ないようになっていた。インターネットに繋げようにも全く綱がる気配がなく、電話をしようにもそもそもかからない、メールも送信できないようになってしまった。流石におかしいと気付いた2人


吉良「ここまでするの?」

愛奈「いや……これは……」

吉良「何? 何か知っているの?」

愛奈「……」


愛奈は何か考え込むように足を止めて、視線を下に向けて考え始めた。吉良は何か手がかりが無いか懐中電灯をあちこちに向けてみるも、誰もいない。先程の奇声を上げてきた仕掛け人の姿も全くない


愛奈「……」


愛奈はまだ何か考えているようで、吉良が話しかけても反応していなかった


愛奈「そういえばさ」

吉良「何」

愛奈「新聞部にあった過去の記事に神社で行方不明になっているというのがあったよね?」

吉良「あぁ、僕が追いかけている事件の。確かに場所に神社と書かれているのもいくつかあったよ」


健也も吉良に渡された行方不明事件のノートを見ているが、あまり興味が無かったので、どこで起きたかは全く意識を向けないで、人数と男女比程度にしか注目をしていなかった。そもそも吉良の手伝いなので、そこまで目が言っていなかったが、行方不明になった場所の項目もあり、そこには「神社」も多数あった


愛奈「私の調べている事件の1つにある蝶々の事件知っているよね?」

吉良「あの時愛奈が話してくれたやつだよね。確か鳴海さんが健也と一緒にカップル成立の取材に行っている間に話してくれた」

愛奈「そうそれ。事件に登場した蝶々は、相手の意識を乗っ取るようなことが記述されていた。見ないように意識しても、強制的に蝶々に意識を向けさせられて、蝶々に近づいてしまう。私はそれを魅了と勝手に言っているけど」

吉良「それ、もしかしてさっきの?」

愛奈「可能性はあると思っているよ。吉良が行方不明者の方の事件を調べてくれなかったら、偶然と割り切れたけど、流石にこれは怪しい」

吉良「僕は取材よりも命が惜しいからね。愛奈の取材全部には付き合わないよ」

愛奈「そうね。無理に付き合えとは言わないわ。だけどこの状況で吉良、何が出来る? 吉良得意の機械が強制的に使用不能になった今、足を使って手がかりを探す必要がある。それは1人で探すよりも2人で探す方が効率的だと思わない?」

吉良「…………、取材を手伝え、そういうこと?」


愛奈は無言で首を縦に振る。吉良はそんな愛奈を見て溜息をつくが、それでも現状打てる手が無いので、愛奈の言うことに耳を傾ける


吉良「蝶々か、それは見ていると魅了されるの?」

愛奈「基本的にはそうみたいね。さっきの吉良みたいに、自覚しないで自分から近づいて蝶々に触れようとするだろうね。ただ一部の人は、魅了はされないみたいだけど」

吉良「一部の人? 愛奈もそうなの?」

愛奈「私はさっきの吉良みたいに近づいていないでしょ。一部の人の範囲を調べてみたけど、これが年齢性別もバラバラで、まだ何が条件なのか分からないのよ」

吉良「そうなんだ、とにかく愛奈は魅了されないのね? ならひとまず安心かな」

愛奈「どうかしら? 確認されているのはあくまで魅了だけで、他にも何かあるようなことが記述されていたし」

吉良「それいつからあるの?」

愛奈「私が新聞部に入部してからあるみたい。ノートに書かれていたわ」

吉良「……そういえばさ、一年前に聞いたことがあるんだよね」


吉良は愛奈に、1年前のこの肝試しに、運営側も想定されていない仕掛けがされていたという話をしていたグループのことを話す


愛奈「そんな話が…、そういえば鳴海から健也も今吉良が言ったような話をしていたって聞いたことがある。 ………」

吉良「運営が黒ってこと?」

愛奈「無関係とは思えないのよね。ただ、とにかく今はあれを調べたいかな」


愛奈は倒れている人達を指さす。吉良も見ようとするが


吉良「ぐはっ」

愛奈「こら、魅了されるでしょ吉良は。私だけ行く」

吉良「でも、もし愛奈に何かあったら…」

愛奈「大丈夫だって」

吉良「……いやでも」

愛奈「吉良が一々魅了されたら、調べられる物も調べられないじゃん」

吉良「……分かった」

愛奈「ここで待っていて、あと一応目を閉じておいてね。もしどこからか蝶々が湧いたら、魅了されかねないんだから」

吉良「目を閉じれば回避できるの?」

愛奈「出来るよ。あとはさっきみたいに衝撃を与える、何か夢中になっているとか」

吉良「……分かった。早く戻ってきてね」

愛奈「はいはい」


吉良が目を閉じると、


吉良「え、ちょっと!?」

愛奈「目を閉じて」

吉良「え、でも」

愛奈「良いから」

吉良「……分かったよ~」

愛奈「……はい、じゃあ待っていてね」


目を閉じていたので何をしているのか分からなかったが、声は愛奈だった。触られたのはほんの一瞬だった。何をしたかったのかよく分からないが、それでも悪いことをしているとは思えなかったので大人しく目を瞑って待つ











愛奈「もういいよ。目を開けて」

吉良「んにゅ?」


目を瞑っていたが、身体を揺すられて目を覚ます


吉良「どうだった?」

愛奈「全員気絶していたわ。脈はあるけど、少し弱まっている人もいる。急がないと死人が出そう」

吉良「死人!??」

愛奈「そうね……運営の人も全く来ないし、助けを期待することは難しそうね」

吉良「ど、どうしよう??? 僕達に何が出来るのかな」

愛奈「最悪あの人たちは置いていくしかないわね」

吉良「置いていく!?」

愛奈「私達2人で担げる人数じゃないわ。それよりは助けを呼んで救援してもらう方が良い。それよりもここから出られないこの状況をどうにかしたい。何かアイデアある?」

吉良「アイデア……? そういえば倒れている男女比っていくつくらい?」

愛奈「大体4:6くらい?」

吉良「そう、……周囲に人がいない、出られない道、蝶々……」

愛奈「そういえば吉良の機器は使った?」

吉良「使ってないけど、愛奈と一緒でしょ?」

愛奈「一応見て」

吉良「一緒だと思うけどなー」


ポケットから取り出した機器は、貰った時と一点異なるところがあった


吉良「あれ? レンズなんか付いていたかな?」

愛奈「……」

吉良「どうしたの?」

愛奈「いや、レンズ? どこにあるの?」

吉良「え」

愛奈「え」


2人で顔を見合わせる


吉良「いやいや何言っているの? ほらここに」


吉良がレンズの付いている場所を指さすと


愛奈「……あーほんとだ、ごめん、暗くて分からなかった」

吉良「そう? まぁそうだよね」

愛奈「そのレンズ……何だろうね?」

吉良「さぁ、取り敢えず覗いてみるかな」


レンズに目を当てて、さっきの倒れている人達の方を見渡すと、そこには驚くべき光景があった


吉良「え!??」

愛奈「どうしたの?」


倒れている人達をレンズ越しで見ると、全員心臓部分に火が付いているように見えた。火の大きさは人によってそれぞれで、弱火で燃えているような人もいれば、小さくて今すぐにでも火が消えてしまいそうな人もいる。ただ全員火が少しずつ小さく・弱くなっているのは見て分かった。見ている途中、完全に燃え尽きてしまった人もおり、火が消えてしまいそうな人は、さっき愛奈が言っていた通り脈が弱まっている人だろうか? 


愛奈「どう? 何か分かった?」

吉良「ちょっと待って」


一度レンズから目を離して、肉眼で見るとそこにはまだ蝶々が囲むように飛んでいた。すぐに目を閉じて魅了されないように回避する


レンズ越しには蝶々は映らないようだ


気絶している人達と蝶々以外に、何かないかと見渡すと、さっきまで歩いていた道が円のような道をしている。肉眼で確認すると一本道に見えるが、レンズ越しに見ると円のような道になっている。道理で先程からずっと歩いていてもたどり着けないわけだ。しかしこれで見ても、ただ道が繋がっているだけで、どこかに抜けられるような道が見当たらない。試しに愛奈を見て見ようと、レンズを愛奈に向けた瞬間


愛奈「危ない!」


突然目を塞がれたことに驚き、機器を落としてしまい、足を前に動かしてしまう。足を前に出すと同時に何かバキッと嫌な音が聞こえた。その音は機械に触れている者なら、いやでも分かってしまう音だ。何が起きているのか確認しようとするが、目に何か当てられていて確認することが出来ない


愛奈「近くに蝶々がいる。このまま移動するよ」

吉良「でも、これ」

愛奈「私が拾うから」

吉良「……分かった」


愛奈に指示されるまま、目を閉じて移動すると、気絶している人がいる所より遠くにいる所にいた。移動した感じ、多分円の道になっていたところ(肉眼では一本道)にいるのだろう。愛奈が言っていた蝶々だが、目を開けた時には姿が無かった。移動している間にどこかに行ってしまったのかもしれない。


愛奈「吉良、これ」

吉良「あら……これ弁償かな?」

愛奈「かもね……」


愛奈に渡された機器は、完全に壊れており、全体がひしゃげている。とてもじゃないが、使えるとは思わなかった。レンズも完全に潰れており、拾って見るも何も見えないようになってしまっていた。


吉良「あー、何か手がかりがあるかもしれないと思ったのに……」

愛奈「何か分かった?」

吉良「特に何も。なんか倒れている人の心臓部辺りに火が映っていたり、蝶々は映らないし、一本道だと思っていたここの道が円形の道になっていて、ずっとグルグルしていたことくらい」

愛奈「……そうなんだ」


愛奈は信じられないというような、戸惑っているような表情をしている


吉良「まぁ、信じてくれないのも無理ないよね」

愛奈「い、いや。それはもうこの時点で色々起きているから、信用は出来るかな」

吉良「それにしても…手がかりなしか。そろそろこの肝試し自体のイベントが終わる時間じゃないの?」

愛奈「そうね……」


スマホの時計を見ると、あと1分程度でイベント自体が終わる


愛奈「……もしイベント時間が終わっても戻らなかったら……」

吉良「……怖いことを言うなよ」


1分経つと地震が起きた


吉良「地震!?」

愛奈「うわっ!」

吉良「愛奈!」


地震で体勢を崩した愛奈は転倒し、吉良も衝撃に耐えられなくなり転倒する。地震はどんどん大きくなり、近くにある建物も倒壊し始めた。ガシャンガシャンと、ドミノが倒れていくように建物が倒れ、道も崩壊しはじめる。あまりの揺れに目を開けることも出来ない。ただ床に這いつくばって2人は衝撃に備えることしかできなかった。揺れは収まるどころか強くなる一方で、ついに自分達の足元の道も崩壊した


愛奈「きゃあああぁ!」

吉良「うわああぁぁぁ!」


重力に逆らえず、身体は下に落ちていく。どこまでも落ちて行き、横には愛奈の着ている着物が見えたが、身体を動かすことが出来ず、ただ落ちて行くことしか出来ない。下に落ちて行くと、下には大きな針が敷き詰めるように置いてあり、そこには数えきれないほど多くの人が刺さっているのが見えた。多くの者が針に身を貫かれており、とても生きているとは思えない


吉良と愛奈もその大量に設置されている針の山に落下する


吉良「うわああぁぁぁ!」


逃げようにも、逃げた先にも針の山があり、逃げ切ることが出来ない


このままでは突き刺さる!


2人の身体と針が交わろうとするその瞬間

















ニャーン


猫の鳴き声が聞こえたと同時に、身体は空中に止まり、少しずつ上昇していく。何が何だか分からなず、吉良はただ視線をあちこちに彷徨わせて「え、え」と呟くことしか出来なかった。吉良と愛奈は上にゆっくりと上昇していくが、他の者達は2人と同じように上昇することなく、針の山に身を貫かれ、中には吉良達がいる方向に目を向け、口を開けたまま動かなくなっている者もいた


そんな光景を見るに堪えなくなり、吉良は目を瞑る


身体は上昇し続ける感覚が続いており、数分経つと意識を失った













吉良「……っは」

愛奈「……」


吉良が目を覚ますと、そこは肝試し会場の休憩室だ。横には愛奈が眠っており、近くには会場の運営の人が椅子に座っていた。目を覚ました吉良に気付くと


運営の人「大丈夫ですか? どこか具合の悪いところはありませんか?」

吉良「え、いいや、大丈夫です……」

運営の人「良かった……あなた達2人とも、途中で倒れていたんですよ?」

吉良「そうなんですか?」

運営の人「はい、それでここまで運んで寝かせていたということです。良かったです、そちらの子は……あ」

愛奈「……ん? あれ、ここは?」

吉良「僕達倒れていたらしいよ」

愛奈「え、そうなの? どこで?」

運営の人「中間地点付近ですよ」

愛奈「……」

吉良「あ、そうだ! 実はいたっ!」

愛奈「助けていただきありがとうございます。目も覚めたので失礼します」

運営の人「あら、そうですか?」

愛奈「はい。ほら、急がないと屋台の食べ物無くなっちゃうよ?」


愛奈は吉良の腕を引っ張ってお礼を言いながら休憩室を出ると、お祭りが行われていた


屋台が集中している所では、タコ焼きや焼きそばなど、1年前とは変わらない光景が広がっていた。愛奈は吉良の腕を引っ張り、屋台が集中しているところの入り口で立ち止まる


愛奈「どうする? 帰る?」

吉良「それよりもさっきなんでさ」

愛奈「神社が黒だったらどうするの、最悪……」

吉良「あ、そうか……」

愛奈「私はもう帰りたいんだけど。吉良は?」

吉良「僕も食欲無いし……というか今すぐここから離れないし……」

愛奈「じゃあ帰りましょう」

吉良「うん」



沢山倒れていた人達は結局何だったのか


蝶々と行方不明者の関連性はどの程度あるのか


肉眼で見た光景と、レンズ越しに見た光景の違いは何なのか


神社は無関係なのか


あの針の山に突き刺さっていた大量の人達は何だったのか


それらに興味はあるも、あんな体験をしたら足を踏み込もうとは吉良は思えなかった。一刻も早くこの場から去りたい。そう思いながら歩いていると


「キモダメシ、サイコウダッタナ」

「アァ、チョウタノシカッタ」

「マタキタイナ」


抑揚のない声でそんな会話が聞こえたが、すぐに横を通り抜けたので、会話は聞こえなくなった






愛奈と共に会場を出ようとすると、出入り口に黒猫が一匹いた


愛奈「……」

吉良「猫だね」

愛奈「そうね」

吉良「誰かが連れてきたのかな?」

愛奈「さぁ、取り敢えず感謝しておきましょ」

吉良「感謝?」

愛奈「猫は場所によっては神様だから。何かの縁だし祈っておくのも良いと思うよ」


愛奈は黒猫の前にしゃがんだので、吉良もなんとなく続けて隣にしゃがんで黒猫を見る


愛奈「ありがとうございます」

吉良「ありがとうございます」

黒猫「ニャーン」


黒猫はそう鳴くと、どこかに去ってしまった


愛奈と共に神社から離れて、自宅にたどり着く。すぐに風呂と食事を済ませて、寝ることにした。風呂に入る時、ズボンのポケットに何か入っていないかを確認すると、何か小さな白い紙がくしゃくしゃになっていた。何だろうと思って取り出してみると、紙をくしゃくしゃにして切り込んだような物が細切れになっている。全く身に覚えがない。全てを取り出してみると大きさ的に……お守り? くらいな感じだが、吉良には全く身に覚えが無かった


寝る準備を整終えて、布団にもぐる


吉良「……夢に出てきませんように」


そう祈りながら吉良は部屋の電気を消した













「ねぇ聞いた? あの神社の肝試し」

「ああ聞いたよ? あそこすごい力を入れて作っているみたいだって。友達が行くって張り切っていたよ」

「へー、何か言ってた?」

「それがね、あの神社の肝試しは最高だから、ぜひ来てほしいって言っていたの」

「満足できるほどの出来栄えだったんだ、あそこの神社って前はそんなに人がいなかったよね」

「細々としていたみたいだよ。だけど急に人が集まるようになって、今では屋台も沢山出て商店街の人にとってはかなり助かっているって話だよ」

「この辺にもショッピングモールが出来てから、わざわざ商店街の方で買い物をする機会も減っていたもんね。お母さんの知り合いに商店街でお店を持っているけど、人が全然来なくなって、お店を畳もうかと真剣に悩んでいるんだって」

「そんなに人来ないの?」

「最近は赤字じゃないだけで御の字らしいよ。どうにかして村興しを出来ないかって話になって、結果あの神社での肝試しなんだって」

「へー、でもその友達がそこまで進めるだなんて……今度行ってみようかな」

「イイトオモウヨ? ミンナデイコウネ?」

「うん、私友達誘ってみるよ!」

「ソレハイイネ、タクサンサソッテネ?」

「うん!」
















「あの神社やばいよね。刑事の勘が言っている。危ない匂いがするってな」

「おい、そんな迂闊なことを言うと……っ!」

「お、おい、なんだよあんたら……!」

「イマ、ナンテイッタノカナ?」

「いえ、何も」

「そ、そうです、何も言ってないです!」

「……」

「うわ、何するんだ! やめろ!」

「痛い痛い痛い! 放せ! う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……」
























「ほんとーに、おもしろいよね~~、きゃはは♪ さいこう~♪」



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