中学生(18)
今回残酷よりの描写があります(後半)。苦手な人は注意してください
もしよろしければ評価ポイントをお願いします!
少年「……はぁ」
少年は溜息をつきながらブランコの椅子に座り、軽く漕ぎ始めると、初めてここに来たことを思い出す。
初めて来た時は、名も知らない女の子が手にお菓子を持ってブランコの椅子に座っていた。彼女は4つある席の一番右に座り、彼は右から2番目の席に座った。彼女の顔は下に向いているため、どんな表情をしているのか分からないが、辺りを覆う空気は軽いものではなく、むしろ重かった。
少女「……」
少女は彼が来たことに気付いたようだが、どうでもいいという感じに顔を直ぐに下に向ける
少年「……」
少年も特にすることは無かった。ただ、なんかすぐに帰っていくのはなんかなと強く思い、少女の隣、右からに二番目の椅子に座る。あの時は何とも思わないで隣に座ったが、今考えて見ると少し怖い印象を与えてしまっていたと思ってしまう。左二席が空いているのに、わざわざ自分の隣に座ってきて無言でいるのって中々怖いものだっただろう。ただこの時は少年も精神的に参っていたので、気にする余裕は無かった
少年も少女も口を開かない。公園の木に鳥がやってきて鳴き声がする。巣には2羽の鳥がいて、少し距離を取っていた
少年「それ食べないの?」
ずっとお菓子を持ったまま食べないでいることが気になって少年は少女に話しかける
少女「……食欲が無いの」
少年「……そっか」
少女はそう言ったが、少女のお腹から可愛らしい鳴き声が聞こえた。少年は少女の方を見るが、少女は恥ずかしがっている様子も無く、ただぼんやりとしていた
少年「それ、貰っていい?」
少女「……」
少女は無言で袋を少年に渡す。袋を開けると中は小さなお菓子が入っている袋が沢山あり、一口サイズのお菓子を詰め合わせたようなものだった。適当に1つを選び、袋を開けて口に放る
少女「……」
少女はまだ顔を下に向けていた
少年「……はい」
少女「いらない」
少年「これならどう? 飴ちゃんだし、これなら食欲が無くても舐めるだけだから」
少女「……」
少女は受け取らなかった。少年は取り出した飴の袋を少女の手に渡して落とさないように少女の手を掴み、飴を包み込むように握りしめさせる。少女はされるがままだ
少年「……いつもここにいるの?」
少女「家にいたくないの」
少年「どうして」
少女「お父さんとお母さんはいつも喧嘩してるの。それを見てるのが辛い」
少年「……そうなんだ」
少女「うん」
少年「どうして2人は喧嘩しているの?」
少女「お父さんはお酒の飲みすぎで、お母さんはそれを止めようとしたけどお父さんがお母さんを殴って……それで……」
少年「そうなんだ」
お菓子を食べながら少女の話を聞く
少年「ねぇ、良かったら僕と遊ばない?」
少女「何をして遊ぶの?」
少年「なんでもいいよ。僕も今は家に帰りたくないからさ」
少女「どうして帰りたくないの?」
少年「僕が女の子に見えるからだよ」
少年の返答に少女はそれまで顔を下に向けていたのを少年に向ける。その目に何を思っていたのか少年には分からないが、初めて顔を上げてくれたことに少しホッとした
少女「どこかおかしいの?」」
少年「僕男なんだ」
少女「へー」
少年「……それだけ?」
少女「他にある?」
少年「いや、男のくせにとか。気持ち悪いとか散々言われてさ」
少女「別に気持ち悪くないよ。どこもおかしくないじゃん」
少年「……そう?」
少女「殴り痕があるわけでもない、火傷の痕もない、血も出ていない。どこもおかしくない」
少年「……」
少女の納得の材料判断に驚いてしまう。そんな判断の仕方をするとは……、この子は自分とは違う境遇にいるが、それでも抱いている気持ちはそう遠いものではない、それが少年の思ったことだった
少女「君、なんでここにいるの」
少年「家に帰ったら、お母さんとか親戚の人がいて、それで女物の服とか髪の毛を付けさせられるからだよ。だから帰りたくない」
少女「……そんなことで」
少年「そんなことじゃない!!!」
少年は怒鳴るように言うと、隣にいた少女の肩はビクッと震えている。少年は強い口調で言ってしまったことに気付き、怖がっていないか少女の顔を見るが
少女「ごめんなさい、殴らないで! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
少年「あ、その」
少女「痛いのは嫌だ痛いのは嫌だ痛いのは嫌だ痛いのは嫌だ痛いのは嫌だ」
少年「ご、ごめん」
少女「来ないで!!!」
少年が伸ばした手を少女は振り払う。持っていた袋からお菓子が落ちてしまう。少女は少年を見て、怯えるように椅子の両端に付けられているチェーンを触りながら身体を震わせている。少女の手はチェーンの油が付いてしまい少し黒くなっていた
少年「……ごめん」
少女「……」
少女はもう口を開かないで、早くここからいなくなれという空気を出してきた。いつも奇異の視線で見られている少年にはすぐ察知することが出来る類の空気だ
少年「お菓子、ごめんね」
持っていたお菓子を椅子に置いて、少年は公園から出て行った。少女は再び顔を下に向けた
数日後
男子A「お前女だろ、ほら、女子達と遊んで来いよー」
男子B「そうだそうだ、そんな女みたいな顔と声をしやがって、ほらほら~」
少年「や、やめてっ……」
少年の呟きを聞くものは誰一人いなかった。誰しも下品な笑いで少年を押したり倒したりしては、少年が立ち上がるまでゴミや石を投げ、それをまた面白がっている。少年を攻撃しているのは男子だけでなく、女子もいた。
少年の顔には傷が出来ているが、それも注視しないと見つけられない程度の傷だ。誰に言っても、ギリギリ信じてくれなさそうな怪我を与えては笑い、それを見てまた周りが煽ってくる
少年はたった1人でそれに立ち向かうことは出来なかった
一対多数
これは基本的に自分が攻撃すれば、攻撃したと同時に自分も攻撃される。攻撃するために身体を動かしているため、回避も受け流しも不可となり、相手の攻撃が直撃することになる。力も無い、体格も大きくない、周りからは自分の敵になっていくという同調圧力
これに歯向かうことが出来なかった
その日もまたギリギリ転んで程度で済む怪我を負わされるが、精神的には怪我なんてものではないほどの重症だ。家に帰っても自分を女装させて可愛がろうとする親戚や親、かと言って外に遊びに行くのも気が乗らないし、乗りたくない
必然的に少年は1人きりになれる場所…自分の部屋に引きこもってしまうのは無理もないことだった
不幸中の幸いは、1人きりになれる場所を見つけたことだろうか?
少年は現実世界のことは考えないで、第二の世界へと飛び立った
そこは電脳世界
その世界は顔を出す必要もなく、ただ手を動かしていれば安全にしたいことが出来るものだった
例えば動画を見る、小説を読む、写真を見る、チャットをする。これらのことが直接攻撃される心配が全くないことを知った少年は更に第二の世界にのめり込む。時には食事をすることさえおろそかになって親に怒られるが、その時は自分の世界のことを思い描いていれば大抵は聞き流せた。家にいる時は食事とトイレ・お風呂以外は極力自分の部屋にいると、親から引きこもっていないで出てこいと扉をガンガンと叩かれた
その音がうるさくてイヤホンをしていたら、無理やり部屋に入ってきた第二の世界ごと破壊して来た。自分の目の前に在った世界は、もう入れないように使えなくされてしまった。親は少年の世界ごと没収して、どこかに隠してしまう。この時はスマートフォンというものが出てきたばかりだが、高価であまり手が出せるものではなく、PCを使っていたが、それすら没収された少年の心に残ったのは、虚無感だった
自分の世界を取り上げられた少年は、家にいてもまた嫌な思いをするだけなので、外に出て時間を潰すことにしようとした。なんなら家出をしようとも思った
以前来たことがある公園に向かうと、そこにはブランコに座っている少女が1人いた。4つある席の一番右、少年は隣に座る気力もなく、一番左の席に座る。近くに誰かが座ったことは気配で伝わったようで、少女は顔を上げて誰が来たのかを確認する
少女「あ」
少年「あ」
それは少し前に会ったことがある少女だ。少女は少年を見ると逃げ出そうと立ち上がろうとするが、少年の様子がおかしいことになんとなく気付いたのだろう。上げた腰を下ろして再び椅子に座る。少年も少女も口を開かなかった。何も話さないでいると空は暗くなっていき、街灯が点けられるも頼りない。公園内は暗くて、目を凝らさないと見えなくなるくらいの暗さだった
しかし少年はこの暗さが心地よかった
顔も見られない、姿が見えない、それは少年がいた第二の世界とそこまで条件は変わらなかったからだ。少し安心して溜息をつくが、それがとても大きかったようで、隣にいた少女は少しだけ驚いたような声で
少女「大きな溜息だね」
少年「ごめんね」
少女「別に、私もこの暗さは好きだし」
少年「顔が見えない、姿が見えないって安心するよね」
少女「わかるよそれ。姿が見えなければ殴られることも無いしね」
少年「まだ解決してないんだ」
少女「そっちこそ、見た感じ解決していなさそうだけど」
少年「多分解決しないよ。せめて1人でも味方がいれば心強いんだろうけどねー」
少女「いないの?」
少年「いたらこんなになってない」
少女「それもそうだね」
そこで会話が途切れると、街灯がチカチカと点滅する。接触不良だろうか? 冷たい風も吹いて、2人は身を縮こまながら話を続ける
少女「帰らないの?」
少年「帰りたくない」
???「ならこっちに来ないか?」
突然後ろから声を掛けられ振り返った。少女もその声にびっくりして振り返る、暗くてよく見えないが、低身長と高身長の女性の2人がいた。1人は少女の方を見ていて、もう1人は小型の端末機で何やら遊んでいるようだ。低身長の女性は、舌打ちをした後に端末を服のポケットに入れて、一歩少年少女の方に足を出す
少女「……」
少年「……」
低身長の女性「こっちに来れば、2人の悩みは解決してあげられるぜ?」
高身長の女性「どうかしら? 悪い話じゃないと思うけど? あ、ちなみに誘拐とかする気はないわよ? もしするなら黙って襲うし」
低身長の女性「っつーわけだ、どうするよ?」
少年「……本当に解決するの?」
低身長の女性「お前のことは知っているぜ? 男だけど見た目や声が女にしか見えなくて、さぞ孤独だっただろう。お前を殴ったり、からかったりしてきた連中に仕返しをする方法があるんだがどうだい? しかもバレる危険はほぼない」
少年「……あ、でも……どうやって」
低身長の女性「お前、この前母親にパソコン没収されたらしいな」
少年「な、なんでそれを!?」
低身長の女性「ネットで話したじゃんか。私は○○だよ? ほら、この前まで~~とか~~のことを話したじゃん、それも学校の事とかも話してくれたじゃん、その○○だ」
少年はそれを聞いて驚く。低身長の女性が言った内容は、少年と相手の2人のトークルームで話した内容であり、その相手しか知らない内容を何度も言っている。更に初めて会うのに、的確に今の自分の状況を当ててきた。
もう少し機械に詳しかったらこの相手をまだ疑うが、機械に触ったばかりで、新しい世界に足を踏み入れたばかりの子供にはこれ以上疑うことはしなかった
低身長の女性「どうだ? 仕返し、したくないか?」
少年「……本当にばれないのか?」
低身長の女性「あぁ、お前がヘマをしない限りの話だけどな」
少年「……行く」
低身長の女性「そうか、じゃあ来な。そっちはどうする?」
低身長の女性は少女に指指すが、横にいる少女は怯えていることが分かった
低身長の女性「あー……」
高身長の女性「私に任せて。それよりその子」
低身長の女性「あいよ、来な」
少年「はい」
低身長の女性についていくと、ある建物に入った。中は暗いが、所々の部屋から話し声が聞こえてくる。今更になってくるべきは無かったかと思ったが、逃げきる自信が無かった。もし逃げたら何をされるのか…想像するだけでも怖い。想像しないで逃げれば良いと思うかもしれないが、そんな芸当は出来なかった。低身長の女性がある部屋に入る。そこには電気が点いていて、中に1人の女性がいた。
低身長の女性「よー、この子がお願いしたいことがあるんだって」
無表情な女性「……あぁ」
低身長の女性「出来るか?」
無表情な女性「任せて」
低身長の女性「じゃあ私はこれで」
低身長の女性は少年を置いていって部屋を出て行った。部屋は沢山のモニターが置いてあり、キーボードも複数置いてある。机にはフライドポテトが皿に乗せられていて、その皿に割り箸が置かれている。床にはプラスチック容器や、ペットボトルが散乱しており、少し埃っぽい。無表情な女性の体格は、さっきの低身長の女性とほぼ変わらず、白衣を着ている。部屋の隅には大きな箱が置いてあり、そこには大きな機器からとても細かな部品まで置かれており、そこだけ整理整頓がされていることから、機械に関してはそこらに転がっている物よりも大切にしていることが伺える
無表情な女性「……さっきのあいつから話は聞いている。復讐したい、そう?」
少年「は、はい。自分の容姿を馬鹿にしてきた奴、それで殴ったり水をかけてきた奴、無理やり女装させてきた奴、他にも僕をいじめてきた連中全員に復讐したいです」
無表情な女性「……そう。とりあえずこれ見て」
無表情な女性は、1つのモニターを見るように指さす。それを追って少年が見たのは、前にチャットをしていた内容そのものだった
無表情な女性「これ、私」
少年「わ、ほんとだ」
無表情な女性「それでこうすると…」
無表情な女性は目にも止まらない速さでキーボードを叩くと、少年のアカウントで書き込みをしていた
少年「え、なんで!?」
無表情な女性「世に言うなりすましみたいなもの。これともう少し他のことも教えてあげる」
少年「……」
無表情な女性「信じてないって顔。じゃあこれならどう?」
またキーボードを叩くと、そこには少年が見てきた動画の履歴、様々なサービスの少年のアカウントであれこれするところ、少年が保存した画像や動画なども出してきた
ここまで見せられれば疑う余地もない
少年のアカウントを使ってあれこれしているというのが嫌でも分かる
無表情な女性「教えて欲しい?」
少年「は、はい。これがあれば…」
無表情な女性「そうだね、君に嫌がらせをしてきた連中全てのアカウントを乗っ取って、あることないことを書きこんで内乱を起こさせることも出来る。こっちが何もしなくても向こうが勝手に潰れる。それでも反撃してくるならまた違う方法で潰せば良い、どう?」
その質問に少年は迷うことなく
少年「はい、僕に教えてください、お願いします!」
無表情な女性「良いけど、その代わり条件がある」
少年「なんですか」
無表情な女性「~~~~してほしい」
少年「そんなことで良いんですか?」
無表情な女性「そう」
少年「それなら僕でも出来そうです! お願いします!」
無表情な女性「じゃあ契約成立。君の名前は?」
少年「吉良です」
無表情な女性「そう、吉良、よろしく」
吉良「はい!」
それから無表情な女性に色々なことを教わった。アカウントの乗っ取り方、どうやったら相手がロックを掛けている部分も解除出来るか、誰か分からないようにされている書き込みで誰が書いているか特定する方法などなど
その間家に帰らないで、宿泊と食事、お風呂も出してくれた。もちろん無料というわけでもなく、無表情な女性の部屋の掃除や、トイレ掃除、廊下の掃除などされ、外に出ることは全く無かった。最初は少女のことが気にかかったが、相手のアドレスを盗む方法などを知っていくうちに全く気に賭けないようになってしまった。復讐する方法が現実味を帯びてきたのだから無理もない
無表情な女性以外にも女性が何人も出入りしているようだ。詳しい人数は教えてくれなかったが、最低でもこの無表情な女性を入れて6人はいるみたいだ。挨拶はしたが、無表情な女性以外とは話す機会がほとんど無かったので結局誰がいたのか分からない
吉良「飴那さん、ここはどうやるんでしたっけ?」
飴那「ああ、ここはこう」
吉良「あぁ、ありがとうございます」
飴那「分からないところが在ったらどんどん言って。これは吉良の復讐なんだから」
吉良「はい!」
無表情な女性の名前は 飴那志保というらしい。物静かで必要なこと以外はほとんど口を閉ざしているが、時々とても声を荒げながらキーボードを叩いている時がある。何をしているのかと聞いたら
飴那「ギャンブル」
吉良「楽しいですか?」
飴那「このスリルが中々、今日は大勝」
吉良「いくらくらい買ったんですか?」
飴那「それは吉良が知ることじゃない。ほら、勉強して」
吉良「はい」
それからも数か月単位でPCの勉強をしていく。何度かテストも行い、初めは不安定だったものの、安定してアドレスを盗む、成りすまして書き込みをすることも出来てきた。もちろん足跡が残らないように気を付ける方法に何度も注意をされながら実践と反省を繰り返していく
飴那「こんなものかな。もうこれで吉良は大丈夫」
吉良「え」
飴那「合格、家に帰りな」
吉良「家……」
今まで夢中になっていて…いや、考えないようにしていたことを言われると心臓が飛び跳ねた
吉良「いや、でも」
飴那「吉良、帰りな。もう十分出来るようになっているから大丈夫。そうだな……最初はこの子を助けてあげな」
飴那が1枚の写真を吉良に見せる
写真に写っているのは、1人の少女で、場所は公園、ブランコに座っている様子だ
吉良「あれ、この子」
飴那「じゃあこれ飲んで」
吉良「なんですかこれ」
飴那「水」
飴那が渡してきたのは1つの小瓶だ。中身は見えないようにされていて、付け口から匂いを嗅いでみるが無臭だ。色も部屋の光を当てて工夫して見てみるが、透明な色だ
吉良「はぁ……いただきます」
飴那「……」
それを全て飲み干し、小瓶を近くの机に置くと、突然強い睡魔に襲われる。抵抗する暇もなく、吉良の意識は無くなった。
吉良「……っは」
吉良母「吉良!! 大丈夫?」
吉良「ふぇ?」
目を覚ますとそこには病院の部屋だ。横には心底安心したように息をついている母の姿、更に横には医者がいた
医者「吉良君、これ何本に見える? 吐き気や頭痛は無いかい?」
吉良「え、5本ですね。吐き気と頭痛は…ありません」
医者「そうですか、一応軽く検査しましょう」
吉良母「息子は大丈夫でしょうか?」
医者「そうですね、詳しいことは検査しないと分かりませんが、おそらく大丈夫だと思われます」
吉良母「良かったぁぁぁあ」
お母さんが何やら安心したように呟いているが、なんでこんなに焦ってんだと不思議に思う吉良だった。その後検査を受けるが肉体的な問題は特に無かった。骨が折れているわけでもなかったので、そこは安心なのだが、1つ問題があった
医者「では本当に覚えていないと」
吉良「はい、何で僕がここにいるのか…」
吉良母「あんた、自分がどうしてあんな所にいたのか覚えていないの?」
吉良「どこにいたの?」
吉良母「どこって……ここから1時間以上もする場所にあるお墓によ。なんでそんな所で寝ていたのよ」
吉良「し、知らないよ。僕も何が何だか分からないんだよ」
吉良母「あんたねー!」
医者「お母様、落ち着いてください」
吉良母「……」
医者「吉良君、本当に何も覚えていないのかい? 誰かに会ったとか、何を見たとかそういうのでも全然構わないから、思い出せないかな?」
吉良「……」
必死に記憶を手繰るが、ここに運ばれる前の事を全然思い出せない
吉良母「数か月も行方不明になっていたのよ、吉良」
吉良「えぇぇ!? そうなの!??」
医者「……」
医者は吉良の様子と話を聞いて何やら紙に書き込みそれを近くの看護師に渡す
医者「とりあえず大丈夫そうなので、退院の手続きをお願いします」
吉良母「あ、はい、わかりました」
その後退院の手続きを母がしている間、吉良は医者と話をしていた
医者「吉良君、最後の確認だけど、本当に何も覚えていないのかい?」
吉良「はい、何も」
医者「そうか…、分かったありがとう。お大事に」
吉良「あ、あの」
医者「何かな?」
吉良「なんでそんなに聞くんですか?」
医者「医者だからね。こういう時の対応策を増やすために聞いているんだ。それに…」
吉良「それに……?」
医者「……これは誰にも言わないでくれよ?」
何故かやけに顔を強張らせている医者。聞きたくないが、そこまでかしこまるのも気になり、結局聞いてしまう
吉良「はい」
医者「……君みたいに行方不明になるケースは実は結構な数があるんだ。そして全員何も覚えていないと言う。これまで検査した者全員だ。警察も調べているが、これが驚くほど何も分からないそうだ。人によっては10数年行方不明になっているのに身体は全く問題ないのも疑問の1つなんだ。吉良君みたいに数か月から数年も寝たきりなのに、全く身体が重くないようで自然と起き上がれているのも疑問なんだ。これも全員でね」
吉良「え」
医者「あー、今言った内容を記者にした者もいるが、その者も行方不明になったらしい。そして発見されても遺体で出てきたという」
吉良「……」
言葉が出なかった
医者「とにかく、くれぐれも遅くまで出歩かないように。次の患者がいるから私はこれで」
吉良「……は、はい、ありがとうございました」
吉良母「吉良~、帰るわよー」
吉良「うん」
家に帰ると、自分の部屋にPCがあった。PCを見たとき何かを思い出しそうな気がしたが、すぐにそれは引っ込んでしまう
吉良「これ…」
吉良母「あぁ、あの時はごめんね。これは吉良にとって必要なものなのよね。返すわ」
吉良「う、うん」
吉良母「夕飯が出来るまで少し待っていてね。食欲はある?」
吉良「ある」
吉良母「じゃあ待っていてね」
吉良「うん」
母が部屋から出て行ったのを確認してPCを起動する。とても懐かしい感覚だったが、どうして懐かしいのか分からなかった。PCを開く。
どれも取られる前のデータで、親に変にいじくられていないことを安心すると、なぜか公園に行かないといけない気がした。母に少しだけ公園に行くことを伝えると、早く帰ってくると言うなら行ってもいいとのこと
なんでこんなに焦っているのか、自分でも分からない、身体が勝手に動き、公園まで走る
公園に到着すると、1人の少女がブランコに座っているのを見つける。それを見てとても懐かしい気持ちになった。少女は吉良に気付いたようで、一度顔を見上げると少し驚いた顔をしていた
少女「あんた…」
吉良「あ、えっと…」
少女「?」
吉良「……」
この少女を見ると、何かを忘れているような気がしたが、すぐに引っ込んでしまう
少女「元気そうね」
吉良「え」
少女「4ヶ月とかそのくらいかな。前にも会ったでしょ」
吉良「……そうだっけ?」
少女「覚えていないの?」
吉良「……ごめん」
少女「そう、まぁでも顔が少しすっきりしているような気がするわ。悩みは解決したのかな」
吉良「悩み?」
少女「自分が女みたいな容姿と声のコンプレックス」
吉良「!」
少女から言われた言葉で、何か忘れていたことを思い出した。
そうだ、僕はあいつらに復讐をするんだった
少女「なんか怖い顔をしているけど、どうしたの」
吉良「いや、なんでもないよ。それよりこんな所で何しているの?」
少女「私? 前にも話したでしょ」
吉良「変化なし?」
何のことか覚えていないが、とりあえず話を合わせることに
少女「えぇ、お父さんはお母さん以外の女に手を出していたみたいで、もう最悪よ。家庭崩壊しているわ、家も空気がギスギスしているし、学校ではそのことで男子女子がうるさいし。はぁ……あいつらを困らせる方法ないかな」
吉良「困らせる方法……」
その言葉を聞くと、なぜかPCのことが頭に浮かんだ。なんでここでPC? と思ったが、それも一瞬。それが必要だと感覚的に分かった
吉良「ねぇ……僕に1つ出来るかもしれない方法があるんだけど。どう?」
少女「何それ」
吉良「君を苦しめている連中はSNSとかパソコン・スマートフォンを持っているかな?」
少女「え、えぇ。確かに持っている連中がほとんどね」
吉良「その人たちのアカウントかアドレスを知らない? 一つでも書き込みをしている掲示板でも良い」
少女「……一応私をいじめてくる奴のアカウントの一部知っているけど、多分これスペアだよ。本垢は知らないよ?」
吉良「それで構わないよ。教えてくれないか?」
少女「何するの?」
吉良「ちょっと懲らしめてやろうと思って」
少女「出来るの?」
吉良「出来る」
少女「即答なのね」
吉良「出来るから」
少女「そうなんだ。とりあえずここに座りなよ」
少女が指を指した場所は、自分の席と1つの席を空けた椅子だった。4つあるブランコの椅子の右から3番目、左から2番目の椅子だ。少女は一番右に座っている。指定された席に座り、少女の答えを待つ
少女「……いいわ、それであいつらを滅茶苦茶に出来るなら」
吉良「どれくらい滅茶苦茶にしたい?」
少女「どれくらいまで出来るの?」
吉良「それなりには出来ると思う」
少女「今すぐ出来るの?」
吉良「いや、今度また別の場所で会って、その時にするよ。僕も自分の復讐相手いるし」
少女「あら、そうなのね」
少女はとても面白そうに笑っている。吉良にはその少女の笑みがとても印象的だった。なぜここまで印象的だったのか、吉良自身分からないが、今の自分は彼女の力になれるかもしれない。その事実が重要だった
少女「じゃあ今度そっちの家に行っていいかな?」
吉良「え」
少女「そこなら都合がいいんじゃないかな? 私の家は無理だし」
吉良「……そうだね。僕も家の方が都合がいいかな」
少女「じゃあ、また明日ここで会いましょう」
少女は少し嬉しそうに椅子から立ち上がり、公園を出ようとする
吉良「ま、待って。君の名前は?」
少女は公園から足を踏み出そうとした片足を戻して、くるりと振り返り笑顔でこう言った
少女「私は愛奈。君は?」
吉良「僕は吉良だ」
愛奈「吉良……吉良ね、よろしく」
吉良「うん、愛奈もよろしく」
愛奈「あら、いきなり呼び捨て?」
吉良「ダメ?」
愛奈「まぁいいわ。これから長い付き合い…いや、そこまで長くないかもしれないけど関係は続きそうだものね。呼び捨てでいいわ」
吉良「じゃあね愛奈。また」
愛奈「吉良もね。また」
愛奈の姿が見えなくなるまで見送った後に、急いで家に帰って母と夕食を食べて自室に戻る
吉良「あ、こいつらか、間抜けな奴らだ。あれ、ここからえっと…あ、そうだこうするのか。よしよし抜けた。あとはこうして」
何故か頭で考えるよりも指が勝手に動き、凄まじい勢いでキーボードを叩いて、画面が目まぐるしく変わり続ける。新しいウィンドウが出たかと思えばすぐに消えて、また出てと繰り返しているうちに吉良は指を止めた
吉良「こんなもんかな…もう寝よう」
PCを閉じて就寝した
次の日
吉良が学校に行くと(吉良は昨日来たと思っているが、実際は数か月も来ていない)、色々な人に興味本位で声を掛けられた。それもそうだ、数か月も行方不明になっていた人がいきなり学校に来たらそれは話題になる。吉良はその辺を適当に処理して教室に入ると、教室は何か殺伐としていた。
首を傾げながらも自席を聞いて、席に座る。教室にいる連中の大半はなんだか気まずそうな、悪いことをしていることが見つかったような顔をしているが、吉良にはさっぱり分からない。何人かにどうして学校に来ていなかったのかを聞かれたが、廊下で対処したように処理、その後授業が始まるまでの自由時間だが、誰か1人が呟いたのをきっかけに教室がざわざわとし始めた
「ねぇ、あの噂本当?」
「あぁ、あいつが吉良をいじめていたって話か」
「水までかけて、しかも顔まで殴っていたんだろ」
「それにあいつも、暴力で女の子を犯したって」
「マジかよ、やべーなあいつ」
「あの子万引きしていたらしいよ、その時の画像がネットに流れているの」
「うわ、マジじゃん。うわぁ、私あいつの友達止めるわ」
「見てあの子、あんなに顔を赤くしてるよ」
「漏れそうなんだろ? 言ってあげるなよ」
「ちょ、割と本気で笑いそうになったでしょ、ぷぷぷ」
「笑ってんじゃねーか」
「うわー、僕あいつがあんな人だったなんてショックだわー」
「ねぇ、人を殴って、しかも辱めるとか最低だよね」
「人間の屑だよね」
「死ねばいいのに」
「なんで学校来てんだ? 気持ち悪いな~」
こんな会話がちらほらと聞こえてくるが、吉良は首を傾げて他の生徒に話しかける
吉良「なんか教室の空気が重いような気がするけど、どうかしたの?」
生徒A「あぁ、吉良は知らないのか?」
吉良「何を?」
生徒A「これだよ」
生徒Aが取り出したスマートフォンには沢山の書き込みがあった。そこには掲示板で、教室で震えている者、泣き出している者達のことが書かれていた
「○○って殴って怪我させたらしいよ」
「えー、うわ、写真まであるの?」
「うわ、マジなんだ」
「ねぇ□□が、女の子をレイプしたって本当?」
「私知ってるよ? 口と腕にガムテープ当てて無理やりしたらしいよ」
「本人達は否定してるけど、どうなの?」
「これ見てみ。この動画」
「うわ、これ犯している人目線で撮られているじゃん。信憑性が増したな」
「ねぇ、これも見て。あの2人仲良さげにしているけど、実際はこんなに悪口言い合っているよ」
「うっは! 本当じゃん! えー、あの2人仲悪かったんだー」
「仲良さそうに見えて実は悪いってのはよく聞く話ではあるけどね」
「ねぇねぇ、△△があの子を自殺に追い込んだって本当?」
「あー、1人自殺したってあったよな」
「それに△△が関わっているみたいだよ。ほら」
「うわ、殴っているところを写真にしているの? 馬鹿じゃねーの」
「それもピースしながらとか頭おかしいんじゃねーのこいつ」
「見て見て! ☆☆がホテルに出入りしてんだけど(笑)」
「うわ、これおじさんじゃん」
「何、あいつそういう関係なの?」
「じゃねーの? ホテルに入って行くところを撮られているんだから」
「うわー、可愛い子だと思っていたけど…うわぁ」
「私あいつの友達止めるわ」
「私も」
「私も。無理、キモ過ぎてもう無理」
「ねぇ、どうせ身体からオジサンの匂いするよ(笑)」
「あいつ風呂入ってねーのかよ? くっそ笑ったわ」
「ねぇ、これなんかやばくない?」
「うわ、万引きしてるじゃんこいつ。どこの誰?」
「~組の~~だね」
「何年生?」
「~年生じゃない?」
「うわー、みんな怖いわー」
「ねー、表では平気でも裏ではみんな顔違うんだね」
「だな。こいつらなんで学校に行けるんだ?」
「ほんっと、図太い神経してるよな(笑)」
ザっと見ただけでもこれだけ見られた
吉良「なんか……すごいことになっているね」
生徒A「まだこれでも氷山の……えっと氷山の…なんだっけ?」
生徒B「一角」
生徒A「そうそう、氷山の一角らしい。探せばもっと出てくるみたいだよ。ほら」
吉良「……怖いね」
生徒A「だな」
先生がやってきたが、何やらめんどくさそうに後ろ頭をポリポリと掻いた後に、教室にいる生徒の2/3以上が呼ばれ、何やら別室に集められている。しかも後ろの扉からも先生が入ってきて、全員表情が暗い。なんなら真顔
呼ばれた生徒は、全員怖がりながらも付いていく。中には拒んで逃げようとしたところを、先生に組み付かれて連行されている人もいた。教室に残ったのは吉良を含めて8人程度だった。7人は何が起きているのかは知っているが、全員関わりたくないと思ったのだろう。先生に指示された内容を無言でこなしていく。そしてこの7人は吉良には危害を食わなかった者達だ。そして連れていかれた連中は…
吉良も呼ばれて話を聞くが、何を知っているかの確認をしてきただけで、具体的な話はなかった。それは残っている7人も同様だったみたいだ。帰って来た人達は何を話したかと話題になり、それで知ることが出来た。
その日は授業どころではなく、自習の連続となった
放課後
急いで公園に向かうと既に愛奈はいた。暇そうにブランコを漕いでいるが、吉良と目が合うと、ゆっくりと振り幅を小さくしてから動きを止めて、ぴょんと降りた
愛奈「こんにちは」
吉良「うん、こんにちは」
愛奈「……なんかすっきりした顔をしているね」
吉良「そうだね。久しぶりにこんなにすっきりしたかも」
久しぶりにここまでの高揚感だ。ワクワクが止まらない
吉良「そっちは……言うまでもなさそうだね」
愛奈「えぇ、最悪よ。でも吉良が終わらせてくれるんでしょ?」
吉良「終わるかは分からないけど、きっかけにはなると思うよ」
愛奈「心強いわね。じゃあ吉良の家に行きましょう」
吉良「分かった」
初めての来客を連れてくると、お母さんはとても嬉しそうにしていた。ジュースとお菓子を吉良の自室に持って行き、PCの前に腰を下ろす
吉良「言ったやつは?」
愛奈「はい、これ」
愛奈から渡された紙には数字やアルファベットが書かれている。吉良はそれを打ち込んでいき、昨日と同じように作業をしていく。横で愛奈が見ていたが
愛奈「すごーい。これどうやってるの?」
吉良「勝手に動くの」
愛奈「冗談が下手なの?」
吉良「分かるんだよ。冗談抜きで、自分でも不思議なくらいだよ」
愛奈「へー、あそうそう。こいつらとあとこれと……」
吉良「OK」
愛奈「出来そう?」
吉良「出来るよ」
愛奈「そう、これで終わるのかな」
吉良「終わらせてあげる。これで少なくともうるさいハエは黙るよ」
その日は解散して、次の日にまた愛奈と待ち合わせをした。その時に会った愛奈は今まであった中で一番明るい表情をしており、とても楽しそうにしている
吉良「どう?」
愛奈「全員じゃないけど、手出しはしてこなくなったよ。家も前よりは空気が軟らかくなったよ。お父さんがお母さんに謝って、なんか丸く収まったみたい」
吉良「全滅出来なかったか、ごめんね」
愛奈「家の空気が軟らかくなっただけでも十分嬉しいわ」
愛奈は吉良から少し離れた所で座布団の上に座っている。吉良が作業をしている間、出された飲み物もお菓子にも手を付けようとしなかった
吉良「それ食べていいんだよ?」
愛奈「あ、ごめん。その」
吉良「?」
愛奈「……昔、家庭崩壊のことで友達に相談していたら、飲み物に針とか画鋲を入れられたことがあってね……」
吉良「!?」
愛奈「いや、吉良がそんなことしないというのは分かるんだよ。でも前にあったことが頭の中をよぎって、なんていうか食欲があっても食べる気がしないんだ。食べ物だけじゃなくて、飲み物にも仕込まれたことがあってさ」
吉良「……」
愛奈「そんな顔をしないでよ。私吉良には感謝しているの」
吉良「そう?」
愛奈「家庭崩壊しているから親に相談することも出来ない、学校の先生も信用できない、友達も信用できない、そしてギリギリの所を攻めてこられているから証拠もつかめない、引っ越そうにも引っ越せない。一番なのは直ぐに解決できる類のものじゃなかった。それを吉良、あなたは解決とまではいかなくても、解消するきっかけになってくれた。それが世間では褒められる方法じゃなくても。だからね、吉良」
愛奈は身体の向きを吉良に向けて、額を床に付ける
愛奈「私は感謝しようにも、こういう形でしかお礼を言うことが出来ないの。吉良にとっては面倒かもしれないけど、私にとってはこれしか感謝を示す方法が無いの。本当に、本当にありがとうね。私を助けてくれて」
愛奈は吉良の返事を待つ
吉良はどう反応すれば良いのか分からなかったが
吉良「じゃ、じゃあさ。友達になってくれない?」
愛奈「……」
愛奈は黙って顔を上げる。その顔は驚きで埋まっていた
愛奈「そんなので良いの?」
吉良「僕も愛奈も辛い思いをしてきた。今までの友達はもう、なんていうか、信用でいないからさ、その、あの、あー言葉が上手くまとまらない。えっとね、つまり、その」
愛奈「……っぷぷ、あはははっ!」
吉良「な、笑いすぎでしょ!」
愛奈「いや、だってさ~、ダメだ、お腹痛いあははは!」
愛奈は土下座の体勢から、お腹を押さえて床に転げまわっている。それを見た吉良は、むかつくとのもあったが、それよりも嬉しい気持ちの方が大きかった。初めて会った時よりも、もっと、もっと、良い笑顔をしているからだ。最初の顔を下に向けていた愛奈は、今は顔を上げて笑っている
転がりながらだけど
吉良「っふふ」
愛奈「何笑ってんの、よ!」
吉良「うわっち!?」
愛奈が座布団を吉良に投げると、吉良はそれを避けようとするが、足が痺れていて回避出来なかった。見事顔に座布団が当たるが、痛くはなかった
吉良「やったな~」
愛奈「あはは、それ!」
吉良「おっふ!」
愛奈「2アウト、これで3アウトよ!」
吉良「あはっ」
追い打ちで投げられた座布団を2回食らってしまうが、それは全くイラつくものではなく、楽しいという感情だった。愛奈も笑いながらも吉良の攻撃を甘んじて受け入れる
2人でなぜか突然始まった枕投げをキリの良いところでやめると、愛奈が吉良に話しかける
愛奈「吉良、私の知り合いに困っている子がいるの」
吉良「そうなの?」
愛奈「その子は可愛いだけど、その所為で周囲からうるさく言われていてうんざりしているそうなの」
吉良「可愛いなら仕方ないような……」
愛奈「仕方なくない、可愛いからっていちゃもんを付けられて良いことにはならない」
吉良「そ、そうだね。続けて」
愛奈「その子は小さい頃から一緒にいる男の子がいるんだけど、その男の子にちょっかいを出そうとしている連中が邪魔でしょうがないんだって」
吉良「そうなんだ。それで」
愛奈「もし私の友達が助けを求めてきたら、私の時みたいに助けてほしいの。吉良なら出来るでしょ」
吉良「確かに出来ると思うけど、どんな子?」
愛奈「こんな子」
愛奈がスカートのポケットから一枚の写真を取り出す。そこには吉良の知らない女の子と男の子が写っていた。女の子は男の子の腕をがっつりと組んでいて、見るからにイチャイチャしているのが分かる。良く見ると女の子の額にはうっすらと傷が残っているように見えた
吉良「ふーん、まぁ、いいよ。その代わり、僕が困っていた時は愛奈も助けてよ?」
愛奈「えぇ、指キリしましょう」
2人で指キリする
吉良「じゃあ、改めてよろしく愛奈」
愛奈「こちらこそ、吉良」
2人で握手を交わしながら、その後も談笑した
吉良「そろそろ帰ろうかな」
愛奈「ごめんー、待たせたー?」
吉良「あ、来たか」
愛奈「ごめん、服選ぶのに時間がかかった」
吉良「似合ってるよ」
愛奈「っ! あ、ありがとう」
愛奈は照れたように顔を赤らめて、一番右のブランコに座る
吉良「懐かしいね」
愛奈「そうね」
隣にいた少年少女は、仲良く話しながらブランコを漕ぐが、少年は全く漕げていなかった。背中を押してもらわないと上手く漕げないことを少女に伝えると、少女はブランコを降りて、少年の背中を押す。
漕いでいたブランコを降りて、一番右の椅子を見るが、そこには誰もいなかった。出る時に一番左の椅子と、左から2番目の椅子も見る。しかし、そこにも誰もいない。
木を見てみる。そこには鳥の巣に鳥が2羽、仲良さげにお互いの身を寄せ合っている
隣を見ると、そこにはよく知っている少女がいた
少女は少年の隣に立つ
少年は少女と伴に、公園の出口に向けて足を進める
少女も少年の隣を保ち続けるように歩く
出口に差し掛かった時、木から「バサバサ」と鳥が飛んでいく音が聞こえた
2人はそれを見上げると、丁度2人が出ようとした方角に、2羽が横に並んで飛んでいくのが見えた
2人はそれを見て笑いあう
鳥の姿が見えなくなったのを確認した2人は、公園を一緒に出て歩き出した
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