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幼馴染の意地  作者: ヤマネコ
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小学生(2)


健也「なぁ鳴海」

鳴海「ん~? な~に~?」

健也「本当に手を繋がないといけないのか?」

鳴海「また私が転んだら、お母さんにうるさく言われるんじゃないの?」

健也「そうだけど……」


健也の家で遊んでいたのだが、お菓子を切らしてしまい近くのショッピングモールに買いに行くことになった。距離的にそこまで遠くなく、なぜか健也の両親は鳴海のことを高く評価しており「鳴海ちゃんが一緒なら心配ないね」というほどである。一体どこでそんなに高く評価されたのか……謎のままだ。


この前転んで額に一生の傷を付けてしまってから、何かと鳴海とは手を繋いで移動することが当たり前になっていた。最初は抵抗があったが、何度も手を繋ぐことになってからは違和感がなくなっていった。


しかしいくつか謎がある


鳴海「じゃあはい」

健也「はいはい」


何故か鳴海から手を繋ぐのではなく、健也から手を繋ぐようになっていることだ。一度自分ばかりから手を繋ぐのではなく、鳴海から手を繋ぐように言ってみたが、どうしてか少し怒ったような顔になって口を聞いてもらえなくなってしまった。不機嫌になるときもあるよなとその時はそう思ったが、家に帰った後になぜか母に手を繋がなかったことに叱られ、父からは


健也父「健也、そういうのは男から手を繋ぐのが常識なんだ」

健也「そうなの?」

健也母「そうよ、ちゃんと鳴海ちゃんの手は健也から握ってあげなさい」

健也「……分かった」


どうしてか そう聞いても「そういうものだ」と言い返されてしまう。更に抵抗するとお菓子とゲームを没収されてしまい、健也にはどうこうすることは出来なかった。更にもう1つ謎があり


鳴海「! 違うでしょけん君、そうじゃない」

健也「……なんでこうするの?」

鳴海「こうしてほしいからだよ」

健也「えー変わらないでしょ?」

鳴海「変わるから。けん君は分からないと思うけど、とても大切なことなんだよ?」

健也「分かったよ……」


手を繋ぐ前に、鳴海の目をジッと見つめること。それが鳴海からお願いされたことだった。本当になんでだ……


健也「はい」

鳴海「♪」


手を繋ぐ。握手をするような繋ぎ方で、指と指を絡めるような繋ぎ方ではない。手を繋いで鳴海を車道側にならないように歩く。これも父から教わったことだ。場所は家でハワイではない。


鳴海との会話は楽しい。話す内容はコロコロと結構変わる。健也の好きなアニメや漫画の話をしても、彼女は興味深そうに聞いてくれる。聞いてみたら見たことのない作品の話をしてしまったこともあるようだが、それでも相槌を打って自分の話を聞いてくれる。そして彼女の話は、普段自分が関係しないような話だが、なぜか退屈しない。料理や裁縫の話をされても、聞き流さないでなぜかスラスラと聞くことが出来る。


話の内容じゃなくて、誰と話をしているのかが重要ってことだろうか?



















ショッピングモールに到着、さっそくお菓子売り場に向かい、各々好きなお菓子を籠に入れて会計を済ませようとするとレジに向かう途中


鳴海「あ、けん君」

健也「どうしたの?」

鳴海「あのこ……」

健也「え、どれだ……あぁ、もしかしてあの子?」

鳴海「うん……」


鳴海は空いている手(片手は健也と繋がっていて、健也の片手は籠を持っている)で女の子を指さす。見た感じ歳は近そうだ。置いてあるお菓子にあちこち視線を向けてキョロキョロしている。特におかしなところもないので健也は違和感がなかったが


鳴海「……」


鳴海は難しそうな顔をして彼女を見続けている


健也「鳴海?」

鳴海「もう少し待って」

健也「? うん?」


特に急いで会計を済ませる理由も無かったので、健也もその子を見ることに。美顔な女の子だ。隣にいる鳴海と同じくらいだ。鳴海は可愛いとしたら、彼女は綺麗という感じだ。彼女はなんども棚に視線を彷徨わせている


健也「どれにするのか悩んでいるのかな」

鳴海「いや、あれは……」

健也「え?」


鳴海が彼女に向かって歩き出すにつれて健也も歩き出す。彼女はこちらに気付いている様子はなく、棚にあるお菓子を手に取り、籠に入れようとしたのか、手を下におろして腕に変えていた小さな鞄の中に……って


健也「え?」

鳴海「ねぇ、そこのあなた」

???「!!」


鳴海が彼女に向かって声をかけると、彼女は分かりやすいくらいにぴくっと肩を震わせた後に、急いでお菓子を棚に戻してこの場から走り去ってしまった。追いかけるのかと思ったが、鳴海は足を止めて


鳴海「……会計しようか」

健也「今の子知り合い?」

鳴海「知らない」

健也「そうなの?」

鳴海「うん、初めてだよ」


よく分からないうちに鳴海が先行して歩くので、健也も引きずられるような形で付いていく。少し握っている手の力が強いように感じたが、それは健也を引っ張るために力を出しているからだろうか?


2人で会計を済ませた。レジの人になぜかニヤニヤとされたが、どこかおかしな点があったのか? なぜか手を繋いでいる所を凝視していたような……。もしかして手がないと思ったのかもしれないな(?)


2人で健也家に帰っている途中に、公園があった


鳴海「偶には公園で食べてみるのはどう?」

健也「あーうん、いいんじゃない?」


家でゆっくりと食べるのもいいが、偶には外でゆっくりと食べるのも悪くないかもしれない。鳴海の言う通り、手を繋いで公園に入ると、1人の女の子がブランコに座っていた。別にブランコに座っていること自体おかしなことではないのだが、少し暗い顔で、漕ぎもしないで座っているだけだ。この公園はベンチが無いので、椅子代わりにしているのかもしれないが。


ブランコは4つ、一番右に座っている。一体どんな子だろうか? 顔を見てみる


健也「え」


なんとそこに座っていたのはショッピングモールにいた女の子だ。鞄もあの時見たのと同じもので間違いない。


鳴海「けん君。そこに座ろうか」

健也「うん」


健也が一番左に、その隣に鳴海、空席、彼女という順になった。鳴海は彼女に気付いていないのか、無邪気にお菓子の入ったビニール袋を取り出し


鳴海「ほら。これけん君が食べたかったやつでしょ」


自分の好きなお菓子を渡されて食べるように促してきた。お礼を言って袋を破り、ポリポリと食べ始める


健也「うまっ」

鳴海「ふふ、それは良かったね」


鳴海は健也が先に食べたのを見てからお菓子を食べ始める。2人で適当に会話をしながらお菓子を食べるわけだが……


健也「……」


健也の座り位置的に、鳴海を見ようとすると必然的に奥にいる彼女の姿も目に入る。なんで落ち込んでいるような暗い表情をしているのか分からないが、好きなお菓子を食べている時にそんな顔を見せられると食欲が無くなってしまう。


健也「……」

鳴海「? どうしたの?」


楽しい話で花を咲かせていたのに、なぜか落ち着かないような様子をしている健也を見て不思議そうな顔をして、どういうわけか体勢を少し前かがみにした。健也からは鳴海が壁となって彼女の姿が見えなくなってしまった。


健也「いや、その……」

鳴海「うん」

健也「……」

鳴海「変なけん君」


鳴海は持っていたお菓子を美味しそうに食べ終えて、健也が他のお菓子を食べ終えるのを待つが


健也「……帰ろうか」

鳴海「あれ? そのお菓子は?」



手に持っていた最後のお菓子。それを持って座っている彼女に近づく


健也「あの」

???「……」


健也の声が聞こえていないのか、全く身動きがない


健也「君」

???「……え」


呼びかけられていることに気付いたのか、彼女は顔を上げて健也の顔をジッと見る


健也「俺お腹いっぱいになったからさ、良かったらこのお菓子食べてくれない? 家に持ち帰るとお母さんに食べられちゃいそうだから」

???「……お金持っていないよ」

健也「いいよ、もし今度会ったらお菓子交換しようよ」

???「……本当にいいの?」

健也「良いったら良いの」


彼女の手に乗せるようにお菓子を無理やり乗せる。彼女が何か言う前に鳴海の手を握って逃げるように公園から出て走った。後ろから何かを言っているような声が聞こえてきたが、走っている時の足音で聞き取ることは出来なかった。







家に付いて玄関を開けようとしたら


鳴海「優しいね」

健也「何が」

鳴海「あの子にお菓子を渡したことだよ。それも渡したお菓子が」

健也「別に、なんか突然食欲がなくなったからだし?」

鳴海「へ~?」

健也「あーもう、なんでにやけるの?」

鳴海「にやけてないよ? ただちょっとね~」


そういうと、なぜか握っている手を強くしてきた。とても痛いというわけではない、少し強く握られているような感じだ


健也「何?」

鳴海「え、何が?」

健也「いや、手を強く握って」

鳴海「そんなことないよ?」

健也「そう?」

鳴海「そうだよ?」

健也「うーん……」

鳴海「ほら、早く入ろう。ただいま~」


鳴海が健也家の玄関を開けて、中に入る。あの子はあのお菓子を喜んで食べて居てくれるだろうか? 少なくとも不満はないはず


なぜなら


彼女が鞄に入れようとしていたのと一緒のお菓子を渡したからだ。元気がなかったけど、あれを食べて少しでも元気を出してくれたらいいな


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