中学生(17)
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多くの学生は総合順位や各教科の順位の上昇を志す。学生にとってテストとは全員例外なく競える唯一の競技であるためだ。部活では運動部、文化部などに分かれ、入っていない人もいるし、趣味でやっているゲーム・料理・手芸・写真などもそれぞれバラバラで競うことは中々無い。あるとしても数人か数十人、数百人と競うが、それは学外の人とも競うことがほとんどだ。例え体育祭だろうと、学園祭だろうとそれはあくまで団体競技、個人競技は試験くらいしかないので、思う存分自分だけの力を振るうことが出来るのが試験だ。逆に言えば自分だけの力しか頼れないので、全く自分には力がない人にとってはとても辛いものだ。しかし学校の試験だけとみれば辛いだけであって、これから飛び込むであろう社会では個人競技も重要だが、体育祭や文化祭などの団体行動が出来る人が重宝される。
そんなありがたい校長の話しを多く聞き逃している生徒達
話が終わり解散となった教室ではどこもかしこも夏休みの予定について話をしていた。例えば旅行に行くとか、どこに行くかとか、ゲームの大会に出るとか、親戚の家に行くとかそんな感じだ。この話を聞けば、さっきの校長の話を聞き流していた者でも嫌でも気づく
夏休みに入ったのだ
健也は鳴海達3人とも予定を立てていくが、その予定はあっさりと決められた。何をするのかぎちぎちに決めるのもありだが、それだと自分の時間を大切に出来ないという鳴海の意見が出て、大体1週間に一度集まるか~くらいの予定となった。こんなにあっさりと決まったのは、暇なら誰かにメールをして会えば良いよねという4人の共通意見があったのが大きかった。とりあえず今日はまた次会う日を決めて解散となり、健也は家に帰ると、ニコニコとした母が出迎えてくれた。ちなみに鳴海は一緒ではない、途中までは一緒だったが、「少し荷物を整理してくる」と言った後に実家に帰ったようだ。
荷物? と思ったが、どうやら夏休み中は基本的に健也の家で過ごすつもりらしい。なんでかと聞いても「一緒にいたいから」と単純明快、とても簡単に言ってくれたが、それを聞いた健也は少しだけ緊張してしまった。試験では英語だけ80点以上取ることが出来なかったのでご褒美は無かったが、それでもご褒美をリアルに想像していた健也に鳴海のことを全く意識しないというのは困難になりつつあった。普段は意識しないようにしているが、それでも視線はどうしても鳴海の身体に行ってしまうことが増えてきた。前までは一緒に寝ることにそういう劣情を抱くことは無かったのに、今では寝る時多少なりとも意識をしていしまい、若干寝つきが悪くなってきている
ニコニコしている母からは、お小遣いが少し増えるというご褒美をもらった。普段ならこういうことは無かったのに、2年生前期の試験も過去最高の得点で突破したことで、健也両親もテンションが上がり「この調子で頑張って」と言われ家庭の雰囲気も明るくなったのがきっかけだ。学校に通わせている親の身としては、息子がそれなりの成績を取っていることは健也が思っている以上に安心材料の大きな1つとなっているようだ。
ちなみに健也の成績は以下の通り(左から1年生前期、1年生後期、2年生前期)
国語 62点 60点 84点
数学 58点 64点 96点
理科 54点 72点 81点
歴史 66点 62点 87点
英語 50点 48点 74点
家庭科 48点 64点 83点
技術 51点 56点 82点
計 389/700 426/700 587/700
1年生の前期試験は総合点数だけで見れば総合700点の半分、350点は取れていたが、各教科があまり良くなかった。しかし鳴海、吉良、愛奈のお陰で1年生後期試験では各教科大体50点は取れており、今回の試験では最低点が英語の74点、他の6教科(国語・数学・理科・社会・家庭科・技術)は80点以上取れるという結果になった。総合得点の83.8%、四捨五入すると84%も取れているので、誰が見ても申し分ない結果であることが分かる。増えたお小遣いで何か鳴海にプレゼントをするのもいいかもしれない
何をプレゼントしようかと悩み、吉良に相談したが
吉良「よく一緒にいるのに好きな物知らないの?」
と言われてしまった
それを聞いて「確かに」と思ってしまう
鳴海の苦手なものも知らないのに、好きな物さえ知らない……というよりも見る限りなさそうだというのが健也から見た鳴海の印象だ。
どの食べ物も、お菓子も苦手な物もないようだが、特別にこれが好きというのも無いようで全体的に好きという感じだ
好きな場所……健也と一緒に行くところはどこでも楽しそうにしていたし、以前の肝試しでも余裕そうな感じがあった。苦手な場所…どこだろう、見た感じ苦手にしている所はなさそうだ。もしかしたら苦手な場所を一緒に訪れたが、鳴海が苦手ではないふりをして誤魔化した可能性もあるので、全く苦手が無いというわけでもないかもしれないが、それでも心当たりは無かった
食べ物も場所も思いつかない……他に何があるか健也が知っている限り鳴海と仲の良さそうな愛奈にも相談してみるが「前にも言ったでしょ? 一緒にいてあげることが鳴海にとって一番嬉しいことだと思うよ」とのこと
一緒にいる……一緒にいることが一番嬉しい? 果たしてそれで良いのか? どこかに連れて行った方が良いのではないか?
そんな気持ちで、スマホでどこか行くところが無いか自分の部屋のベッドに横になりながら検索をしていると、横から良い匂いがした
鳴海「何見てるの?」
健也「なんでもないよ」
画面の中を見せないように直ぐに画面を真っ暗にして逃げる。鳴海も深追いはする気は無いようで「ふーん」と言いながらリビングに戻っていった
いや、ほんと油断できないわ。いつ入ってきたんだよ、ドアの開いた音がしなかったぞ
内心ドキドキしながらスマホで検索を続ける
遊園地、プール、ピクニック、温泉……色々あるが、どれも予算的にな~、貯金を崩せば行けるところも増えるが、鳴海の資金がいくらくらいあるのかも分からない
そういえば鳴海が普段何にお金を使っているのかいまいち分からない。服とかに使っていると言っていたような気がするような?
前にも思ったが、鳴海が健也家に来ることは頻繁だが、健也が鳴海家に行くことはここ最近滅多にない。というか思えば小さなころ、鳴海の額に傷を付けて謝りに行ったきりなような? それくらい行った覚えがない
部屋から顔だけ出してリビングの様子を伺うと、鳴海と健也母が何やら話して盛り上がっていた。机の上には写真集らしき物が置いてあり、それを2人で見て談笑している。遠くからではどんな写真があるのかよく見えない
…写真を見て盛り上がっているという事は、もしかしたら鳴海が関心を持っているものかもしれない。写真を参考に行きたい場所とか、何か望んでいることが分かるかもしれない
そう思った健也は忍び足でリビングに近づいて、近くの物置に身を潜めて2人の会話を聞く
鳴海「へぇ、こんなことがあったんですね~」
健也母「そうなの、健也ったら鳴海ちゃんと会う前はやんちゃでね……」
鳴海「あ、このけん君可愛い」
健也母「でしょー、それなのに今の健也は…」
鳴海「今も可愛いですよ~」
健也母「はぁ、この頃の可愛さはどこにいったのかしら…あんなに純粋だったのに」
鳴海「もっと積極的になってほしいです」
健也母「そうよねー、鳴海ちゃんはこんなに積極的なのにうちの健也ったら…はぁ、ごめんね鳴海ちゃん、うちの健也が」
鳴海「出来れば遠回しに伝えてほしいです」
健也母「しっかり伝えておくわ。あ、ここら辺から鳴海ちゃんが写っているわね」
鳴海「けん君の可愛い写真を沢山見せてくれてありがとうございました」
健也母「いいのよ~、こんな息子ならいくらでも教えてあげるわ~」
鳴海「はい、今後もよろしくお願いします」
…………
忍び足で自分の部屋に戻って扉を閉める。黙って机の方に向かい、椅子に腰かけて、机の上に肘を乗せて両手を頭の上に乗せる
いや……なんかやけに自分のことを知られていると思ったが、まさかお母さんが内通者だったとは
母親が内通者、それは基本的に家庭では最強の存在だ
健也家では、家事・洗濯・掃除を基本的に母に任せているので、ここで母に歯向かうようなことを言う・行動すると最悪ご飯抜きになる。それは以前鳴海のことで問題が起きたら、ご飯抜き、お菓子抜きに何度もなったことがあるのでその恐ろしさを身に染みて知っている。そして母は鳴海に協力的だ。健也も息子だから協力的だが、健也対鳴海だったら、ほぼ確実に鳴海に味方する勢いだ。こんな状況で鳴海の機嫌を損ねたら……想像するだけで胃が痛い
しかも話をしていた内容が健也の子供のころの話、具体的に言うと鳴海と出会う前の健也の話だ。あそこに割って入って行くのもありだが、自分のことが話されているところに飛び込むのは少し勇気がいる。しかも女性だけの空間、更に幼馴染と母親がいるところに自ら飛び込む勇気は健也には無かった
……このまま部屋にいても鳴海が特攻してきて、結局考えがまとまらないと思った健也は、吉良に会えないかとメールをすると、即既読からの返信が来た
吉良『良いよ、場所は?』
健也『この前の公園』
吉良『分かった、すぐ行く』
健也『ありがとう』
外着に着替えてスマホを持ってリビングに出ると、女子会で盛り上がっている2人が健也に気付く
健也「少し出てくる」
鳴海「あ、じゃあ私も」
健也「ごめん、男だけで会う約束なんだ」
鳴海「吉良君?」
健也「そうだね」
鳴海「ならいいかな。いってらっしゃい」
健也母「あまり遅くならないようにね」
健也「はい、行ってきます」
吉良と待ち合わせの公園に向かった
公園には既に吉良が来ていて、吉良以外に人はいなかった。吉良はブランコに座っており、右から2番目の椅子に座っていた。健也もいつも通りの一番左に座り
健也「よ」
吉良「ん」
健也「ありがとうな、いきなり言ったのに来てくれて」
吉良「丁度僕も外に出て何かしようかなって思っていたところだからさ」
健也「そう言ってくれて助かる。実は話があるんだ」
健也は吉良に、鳴海に何かサプライズをしたいがどんなのが良いのか思いつかなったことを伝える。更に嫌いな物や場所、好きな物や場所がいまいち分からないこと、愛奈に一緒にいてあげることが鳴海にとって一番うれしいことじゃないかということ、どこかに連れて行くのもありだがどういうところが良いのか迷っていることを話す
吉良「それ本人に言うのは?」
健也「言えないから吉良に相談しているんだ」
吉良「それもそうだね、本当に鳴海さんって好き嫌いが無いの?」
健也「嫌いな食べ物も無いみたいだし、かと言って好きな食べ物もそこまで無いみたい」
吉良「へー、初めて聞くね。もしかして味が分かっていなかったりして」
健也「冗談でもそう言うのは嫌だぞ」
吉良「ごめんって。いや食べ物がダメとなると場所……、場所も心当たりないの?」
健也「特にこれと言って苦手な場所もなさそうだし」
吉良「それで愛奈からは一緒にいてあげればいい、だっけ?」
健也「そう、いつも一緒にいるけど更に一緒にいるってこと?」
吉良「いつもって、一緒にいる時ってどんな時?」
健也「ご飯を食べる、勉強をする、映画やアニメ・ドラマを観る、寝る」
吉良「本当に一緒にいるね。あと残っているものがあるとしたら……あっ!」
健也「何だ!? 思いついたか?」
吉良「お風呂とか?」
健也「……」
吉良「ちょ、ちょっと? 冗談で言ったのになんでそんなに顔を赤くしているのさ」
鳴海の裸体を想像して顔を真っ赤にしてしまう。この前の妄想が再び脳裏から蘇って健也の脳をグルグルと回り続ける
吉良「……入ったの?」
健也「入ってねーよ」
吉良「なんでキレ気味なの……」
健也「お風呂以外……あるか?」
吉良「トイレ?」
健也「殴られるだろ、というか俺が嫌だ」
吉良「僕から言ってなんだけど、僕もそれは嫌だ。それされたら絶交するかもしれない」
健也「なんで俺の顔を凝視しているんだよ、んなことしねーよ」
吉良「……この前のサッカーで、おっぱい連呼していたことがあるからなー。なんか信用できない」
健也「あの時の俺はどうかしていたんだ」
吉良「今は?」
健也「……」
吉良「黙るな」
健也「いや、無いとは言えないけど、あるとも言えないわけでして…」
吉良「なんだ、その新人のセリフみたいな言い回しは…。まぁ、とにかく場所を変えてみたら?」
健也「場所?」
吉良「聞いた感じ、どれも家の中って感じだし。外で話すとか」
健也「外…どこ?」
吉良「公園、遊園地、プール、温泉、スポーツクラブ、ゲーセン、カラオケ、喫茶店、山、海とか? 夏休みだし人もいそうだけどね」
健也「……そうだな、予算的に…んー」
吉良「あまり豪華なところは難しいだろうね。鳴海さんってお金何に使っているの?」
健也「服・靴・リボン・ネクタイなどの装飾品や、アロマとか……だったかな?」
吉良「あー、健也には難しそうなものばかりだね」
健也「恥ずかしながら全くその通りで」
吉良「服とか買ってあげれば?」
健也「……候補にしておく」
吉良「あとは……思い切って下着とかどう?」
健也「ゴホッゴホッ」
吉良「興奮しすぎでしょ」
健也「だ、だって吉良が……」
吉良「じゃあ靴下とか? ニーソ・タイツとか?」
健也「それはそれで嫌じゃないか!?」
吉良「鳴海さんから靴下とかパンツ買ってもらったらどうするの? 着けない?」
健也「え……どうだろ………多分着ける?」
吉良「じゃあ」
健也「そ、それとこれとじゃ話は別だって!」
吉良「まぁ、確かに」
健也「吉良すごい余裕だけど、何? 経験あるの? 女子に下着類をプレゼントしたことが?」
吉良「あるわけないでしょ!」
吉良は両手を握り拳にして上下にブンブンと振っているが、体勢が崩れそうになって椅子の横に付いているチェーンを掴んでしまう
吉良「あっ、ちょっと手を洗ってくる」
健也「おう」
チェーンの触りどころが悪かったのか、両手をベタベタとしてしまったようだ、すぐ近くの水道で何度も手を洗っている。その間に吉良の意見を参考にして鳴海に何をサプライズをしようかとまた考える
下着……最初はびっくりしたけど、ありかもしれない。何かの作品で異性に下着を送ることは国によっては親愛のあかしとかなんとか言っていたような? ここは思い切って……1人で買いに行くのはハードルが高いから吉良も誘えば来てくれるか? でもどんな下着を……日常よりにするか、それとも少し色っぽいものにするか……Tバック・紐も……っう!
吉良「うわぁぁ!? 健也なんで鼻血出しているの!?」
健也「すまん……俺も水貸してくれ」
吉良「ほい」
健也「すまん」
吉良「何を想像したのやら………」
しばらくすると鼻血が止まった。軽症で済んだようだ。想像だけで鼻血が出るなんて、創作の話だけだと思ったが、本当だったとは………
健也「吉良、下着はダメだ。俺が倒れる」
吉良「鼻血流して、服が少し濡れていて、真顔でそんなこと言われると説得力があるよね」
健也「別の路線で行こう。この路線は崩壊する」
吉良「崩壊させたのは健也だけどね」
健也「路線がゆるゆるだったのがいけない」
吉良「健也の妄想がノリノリだったのがいけない」
健也「妄想言うなぁぁー」
吉良「残念ではないから大丈夫でしょ。いや残念かもしれない?」
健也「えぇい、話を戻すぞ。装飾品……靴とか?」
吉良「でもサイズが合っていないと使ってくれなさそうだよね。しかも試着しないと足を痛めるかもしれないし。成長期に変な癖が骨に付くと取り返しがつかない可能性があるよ。それよりはリボンとかネクタイの方が良いと思う」
健也「な、なるほど。リボン………リボンか」
吉良「?」
健也「リボン使うとしてもどんなのが良いのか……」
吉良「それを本人に聞けばいいんじゃない? 一生懸命に選んでくれたのもうれしいかもしれないけど、鳴海さんの趣向に会わないのを買ってもあまりねー………、一緒に悩んで買ってくれた方が嬉しいと思うよ?」
健也「よし、装飾品にするとしたらリボン系にしよう。他にも無いか?」
吉良「他って?」
健也「物だけじゃなくて、他にも何かこうサプライズが出来るのもだよ」
吉良「場所だとそうだね……夕焼けの浜辺とか?」
健也「あー良いなそれ。でもこの辺に浜辺ってあったか?」
吉良「無いね、少し離れたところに温泉旅館があってそこの近くに浜辺がある。そこがここから一番近い浜辺かな? でも地図で載っている限りだから、もしかしたら意外にもこの近くにあるかもしれないね」
健也「温泉……」
吉良「鳴海さんは自分の分出すと思うけど」
健也「普段なら俺もそう言う。自分の分は自分で出すのが俺達のルールだ。だけど今回はサプライズだから話が別だ。極力鳴海から金を出させるような真似はしたくない」
吉良「おー、かっこいいー」
健也「でも鳴海のことだから自分も出すとか言いそうなんだよな………」
吉良「確かに言いそう」
健也「温泉以外となると……あとは………」
吉良「肝試し?」
健也「俺がダメなの知っているだろ?」
吉良「でも鳴海さんさ、健也が怖がっていうところを見るの楽しんでいなかった?」
健也「まっさかー、そんなことないだろ」
吉良「なら」
健也「それはそれ。これはこれ」
吉良「……多分喜ぶと思うよ?」
健也「その心は」
吉良「怖がっている男子ってかなり可愛いとの情報が」
健也「どこ情報だよそれ」
吉良「想像してみなよ。怖がっている鳴海さんを見て、はい、どう思う?」
健也「どうって……」
鳴海が何かに怯えているところを想像してみる、が、だめ。思いつかない。ホラー作品、暗がりな場所も怖がっている様子も今まで一度も見たことないし、なんなら楽しんでいるようなところもあった。あれ? もしかして吉良の言っていた、怖がっている所が可愛いって本当なのでは?
吉良「健也?」
それに以前ご褒美に鳴海のエッチな姿を想像して楽しんでいた。というか今も楽しんでいる健也。それなら、自分の情けない姿を見せることで鳴海が喜ぶなら、とことん情けない所見せるべきか? 割と冗談抜きでそう思えてきた
健也「なぁ、吉良。どうやったら情けない姿を見せられるかな」
吉良「逆のことはよく聞くけど、そんなこと初めて言われたよ」
確かに「情けない姿を見せないようにするにはどうすればいい」という会話はよく聞く話だが、「情けない姿を見せるにはどうすればいい」なんて聞く人はそうそういないと思う
吉良「とことん、本心でいればいいんじゃないかな? 特に意識することもなく、床を舐めるように伏せたり、捨てないでくれとか言いながら膝をついて手を伸ばしたり、涙を流しながら名前を呼び続けるとか?」
健也「なるほど! 吉良は詳しいな、それ参考にするわ」
スマホのメモ帳に吉良に言われたことを書きこんでいく。吉良は何とも言えない表情をしていたが、そんなことを気にする暇もないくらい、健也はとてもいいアイデアだと思っていた
健也「よし、装飾品とホラー系な場所…食べ物は後回しにして他の要素は……」
吉良「装飾品・場所・食べ物以外となると…思い出?」
健也「思い出か。思い出って難しいな」
吉良「印象深い記憶が思い出だからね~。これを思い出にしろって言うのも難しい」
健也「印象深い…こうインパクトが強いってことだよな」
吉良「そうだねー、そうそう怒らない、珍しいこととかは目を引くし記憶に残りやすいんじゃないかな?」
健也「珍しい………何があるかな、一緒に考えてくれ」
吉良「ジュース」
健也「それくらいなら奢ろう、どれが良い?」
近くにある自動販売機にお金を入れてジュースのボタンを押すとガタンと下に落ちた。容器を手に取り吉良に渡す
吉良「ありがとう」
健也「代金はアイデアで」
吉良「はいはい、そうだねー反転してみたら?」
健也「反転?」
吉良「今までやっていたことの反対。例えば普段掃除をしない人が掃除をする、真面目君がヤンキーになって、ヤンキーが真面目君になる、普段は非協力的だけど、協力的になるとかそんな感じ」
健也「な、なるほど」
吉良「特に鳴海さんは健也と長い時間一緒にいるから、その分効果も期待できると思う。今まで一緒にいた人がいきなり反転したらかなりインパクトもあるだろうしね」
健也「なるほど、今まで男だと思っていた奴が実は女だったみたいな感じか」
そう言うと、吉良は少しびっくりしたような反応をしたが
吉良「そうだね、僕も顔とか声が女の子に思われて男だと話したらびっくりされているから。その僕が言うんだから期待できるよこれは」
健也「つまり俺が女装すればいいんだな!」
吉良「待って、何かがおかしい」
健也「反転してるだろ?」
吉良「反転にも種類があるでしょ! なんでいきなりそんな発想になるの!? というか女装出来るの!?」
健也「嫌だけど鳴海が喜ぶなら…我慢する」
吉良「絶対に戸惑うと思うよ!?」
健也「インパクトはあるだろ。インパクトでカイザーするんだ!」
吉良「2コストで結構ダメージ出るそれは置いておいて! しかもそれ鳴海さん燃えてるじゃんか!」
健也「ばかやろう、伝説のプレイヤーは素手で地面殴ったその衝撃で打ち消したんだぞ。しかも予選でだ! 本選クラスで行われても文句が言えないんだぞ!」
吉良「健也、落ち着いて! なんかテンションおかしくなってるよ?」
健也「……そうだな、確かに鳴海が燃えるな。それよりはゲイザーしないと」
吉良「あれも燃えてるでしょ! 跡形もなく溶けるわ!」
健也「でもあれは打撃だけで付加属性の炎は無いぞ?」
吉良「……」
健也「いでっ!」
吉良にビンタされてしまう
吉良「あれは青い演出だけど、炎は赤よりも青の方が高温なんだよ? だから3コストなんだよ? 鳴海さんを燃え殺す気?」
健也「……すまん、取り乱した。確かにそうだ、インパクトが強すぎると火傷するな、それは良くない」
吉良「そうだね、なんかもうめんどくさいからそれで良いよ。意味は合っているし」
健也「女装はなし……となると……うーん」
吉良「少し反応を軟らかくしてみるとかどう?」
健也「軟らかく?」
吉良「僕が見ている限りでも、健也鳴海さんに少し冷たい感じがするし」
健也「そうか?」
吉良「一緒にいることが当たり前になって、隣にいてくれることの有難さを忘れていないかってこと」
吉良の言葉で、身体が固まってしまい、吉良の言葉を聞くために全神経を耳に集中させる
健也「……………」
吉良「しかもテストも鳴海さんのことで頑張っていたみたいじゃないか。どういう理由で頑張っていたのか僕は知らないけど、それでも鳴海さんが喜んでくれるから頑張ったんじゃないのかな? どうなの?」
健也「……」
健也が頑張ろうと思ったのは鳴海のご褒美が楽しみだったからだ。しかしそれよりも、勉強を真面目にやるように言われていたが、それでも中途半端にこなしていたのがきっかけで今回のご褒美の件に繋がった。鳴海は健也がもっと勉強に真面目になってくれることを望んだのに、いつの間にかその意図を忘れてエッチなことしか目に映っていなかった。ご褒美につられて、彼女の気持ちを考えることを忘れてしまっていたことに気付いた
健也「……最低だな俺」
吉良「?」
健也「ありがとう吉良。俺、目が覚めたよ」
吉良「お、どうしたの?」
健也「そうだな、反転もありかもしれない。でもそうじゃないんだ」
愛奈が言っていた「一緒にいることが鳴海にとって嬉しい」、そして鳴海がいつも健也の隣にいたこと、そしてそれを当たり前となっていて、それに忘れていたくらいにずっといてくれたこと
その事にお礼を言って、これからも一緒に何かをする
それがゲームでも、出かけるでも、寝るでも、勉強でも
恐らくこれが一番大切なのだろう
心の整理が多少だがついた
健也「ありがとう、もっと鳴海を大切にするよ」
吉良「……そう、これからどうするの? 帰るの?」
健也「そうだね、ショッピングモールにでも行って何かお土産を買ってから帰ろうかな」
吉良「そっか、じゃあ僕も……っとごめん」
健也「どうぞ」
吉良はスマホを取り出して耳に当てる
吉良「うん、そうだけど、うん、あー、はい、分かった。こっちから折り返すよ」
通話を切る
吉良「ごめん健也、僕これから用事が出来た」
健也「相談してくれてありがとうな。感謝する」
吉良に頭を下げると、とても驚いた吉良
吉良「あ、頭を下げなくてもっ」
健也「いや、俺が心から下げたいんだ」
吉良「もうっ……」
吉良とは公園で別れて、健也はショッピングモールに向かった
吉良「ん、そうだよ。はいはい、じゃあそういうことで」
吉良は公園に残って電話をしていたが、すぐに通話を切って公園から出て行った
健也「これで良いかな」
ショッピングモールで少し高いケーキを3つ買う。同じ種類のケーキを3つではなく、違うケーキを1つと1つと1つだ。お母さんも食べるだろうし、もしお母さんが食べなかったら自分が食べればいいかと考えながら手に持っている箱の中身を崩さないように慎重に進む。ショッピングモールを出ると、入る前より少し風が吹いていて地面に落ちているゴミが飛ばされているのが見えた。帰り道の途中、健也と同じ学校の制服を着ている少女の後姿を見つける。
夏休みに登校……補習組か?
少し追い越して誰かなと興味本位で見てみると、そこには予想にもしなかった人物がいた。思わず手に持っていた箱を傾けそうになるが、ギリギリ地面と平行を保つことが出来た。見間違いではないかと思い、その少女を見るが、間違いない、彼女だ
健也「星奈……」
星奈「……」
星奈は虚ろな目でゆっくりと歩いている。なぜ制服姿なのか、今まで学校に来ていなかったのか、色々聞きたいことがあるが、それよりも虚ろな瞳になっていることが一番気になった。何度も彼女の名前を呼んでみるが、彼女はまるで健也の声が聞こえていないように聞き流している。身体を揺すってみようかと思ったが、そこまでするのも……、嫌だから無視をしているのかもしれないと思い、言葉だけで話すことに
健也「おい、星奈。お前どこにいたんだ? 学校にも来ないで…、心配したんだぞ? 学校の奴らもなんかお前のことを忘れているみたいにしているし、それに先生にも連絡していないってどうしたんだ?」
星奈「……」
星奈は一言も話さない。虚ろな瞳で、ロボットみたいにゆっくりと歩いている。箱を持っていない方の手で、彼女の顔の前に手を動かすが、焦点が合っていないのか、見えていないような反応だ。こっちから声をかけても全く反応が無い。これではいくらこっちから呼びかけても反応が無いのでは対応しようがない
健也「あ、そこは」
星奈「……」
星奈の目の前の道が少し凸凹になっており、そこに足を引っかけてしまい顔から地面に落ちてしまう。その際に制服姿なのでスカートも一瞬だが舞い上がる。
黒くて、とても面積の少ない布が見えた。まるでマイクロビキニのような……
僅かな時間だったので、どんな下着か分からないが、それでもパンチラが見えたのには変わりない。守られている部分が一瞬だけ肌色と僅かな黒い布が見えたことに興奮してしまう健也。
星奈は顔から倒れているのでうつ伏せのような格好になっており、しかもスカートは捲れているため、綺麗なヒップが見えた。シミ1つない綺麗なお尻だ。本当に黒のマイクロビキニで、同い年の女子のお尻に黒い布が食い込む姿、そして顔が見えないことでまるでこっちから一方的に支配しているような感覚、時々風が吹いてスカートがバサバサとお尻を隠す面積を増減させ、そのたびに見える角度と下着の見え方の変化
これら全てが興奮に繋がり、ズボンの一部がはちきれそうになっていた
健也「はぁ…はぁ……」
いつの間にか息が荒くなっており、見てはいけないとされている景色が目の間にあるという事実も更に興奮するファクターとなっていた。目を逸らそうにも逸らすことが出来ない
健也のズボンの一部は更に膨れ上がる
映像や画像で見る女のお尻よりも、リアルなお尻、しかも綺麗な肌と形だ
更に健也は興奮する
触りたい、見るだけでは物足りない、あれを触って、撫でまわして、揉みたい
そんな欲求が健也の頭を駆け巡り、手を伸ばそうとすると、伸ばそうとしていた手には箱があった。それを見て健也は伸ばそうとしていた手を下ろす
健也「何をやっているんだ、この馬鹿がっ」
箱の中身が滅茶苦茶にならないように慎重に歩く。さっきまで星奈は倒れていたが、ゆっくりと身体を起こして再び歩き出す。相変わらず瞳は淀んでいて、健也の声も行動に反応する様子もない。
健也「……良かったらまた学校に来いよな」
そう言って星奈を置いていって家に戻った
家に戻ると鳴海は健也の部屋で漫画を読んでいる。漫画は少女漫画で、お母さんが趣味で読んでいる作品の1つだ。買ってきたケーキを見せると、鳴海と健也母はとても驚いていた。思えば自分から家族に何かを買ってくるというのは初めてかもしれない。箱を開けると、1つのケーキだけが横に倒れてしまっていた。それを自分が食べようかと思ったが、鳴海はなぜか倒れている方を食べると言い出した
鳴海「私はこれが良いかな」
健也「いや、それ形崩れているじゃん。俺のこれと交換しようよ」
鳴海「私はこれが食べたいの」
健也母「じゃあお互いのケーキを少しずつ分けましょう? それでどうかな鳴海ちゃん」
鳴海「じゃあそれで構いません」
健也「その、ごめんね」
鳴海「ううん、買ってきてくれてありがとうねけん君」
鳴海は嬉しそうにケーキを食べると、お母さんも一緒にケーキを食べ始めておいしそうに食べている。健也も自分のケーキを食べていると目の前に、ケーキが刺さったいるフォークを前に出される
鳴海「あ~ん」
健也「えっ」
健也母「あらあら、青春しているわね~」
鳴海「あ~ん」
健也「……あ~ん」
鳴海「あれ、意外」
健也が鳴海のくれたケーキを食べていると、意外そうな声で
鳴海「いつもは少し嫌がるのに」
健也「まぁ、そういう時もあるよ?」
鳴海「へー? じゃあはい」
鳴海は口を開けて目を瞑っている。健也は言われる前に自分のケーキを小さく切ってフォークに刺し、鳴海の口元まで運ぶと更に意外そうな顔しながらも味わって食べていた
鳴海「……美味しい」
健也母「私は少し出かけてくるわね。あとは若い2人で」
お母さんは急いでケーキを食べ終えて、外に出て行ってしまった
健也「そこまでしなくても」
鳴海「……」
健也「鳴海?」
鳴海「……何」
健也「なんで顔真っ赤なの」
鳴海「…っさい」
健也「え」
鳴海「なんでもないよ。ほら、あ~ん」
誤魔化すようにまたあ~んをしてくる鳴海。健也はそれを頂く前に、自分のケーキをまた小さく切ってフォークに刺し
健也「じゃあ俺からも」
鳴海「っ!?」
健也「どうした?」
鳴海「…」
鳴海は無言で健也のフォークを口に入れ、健也も鳴海のフォークを口に入れて、一緒にケーキを味わう。鳴海は顔を真っ赤にしながらケーキを食べていた
普段鳴海から話しかけるのに、その鳴海は無言だ
鳴海は黙ってケーキを健也の口元に、健也も鳴海の口元にケーキを運び、一緒に食べる
心臓の音がうるさい。相手に聞こえていないか心配になるくらいだ
2人とも無言で見つめ合いながらもケーキを食べさせ合う。部屋には時計の針が進む音しか聞こえてなかった




