中学生(11)
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健也「ん…あぁ、あれ?」
鳴らない目覚まし時計を見ると、時刻は午前9時。学校はもう始まっている
健也「げぇぇ!? 鳴海、起きて!」
鳴海「……」
横で寝ている鳴海の身体を揺するが、目を覚ましてくれない。なんども名前を呼んでも反応をしてくれなかったが、5分程度続けていると、流石に自分の身体に何かが起きていることに気付いたようで、寝ぼけた目で健也を見る。髪の毛は少しぼさぼさだ
鳴海「うるさいよ…何」
健也「学校! 今日学校だよ!」
鳴海「今日は休みだよ。新一年生の入学式で」
健也「え、あ……ほんとだ」
鳴海「寝るね……」
健也「もう9時だよ?」
鳴海「眠いから寝るの……。けん君は起きて何かしても良いから……おやすみ」
健也「え、ちょ、鳴海?」
鳴海「zzz……」
鳴海はまた眠ってしまった。夜更かしでもしたのだろうか? 眠そうに掛け布団を身体に巻き付けて健也の枕に頭を乗せて寝息を立てる。鳴海の頬を軽く突いてみると、近くに蚊が飛んでいてうっとおしそうに健也の手を跳ね除けた
払われた手を見ると、少し赤くなっている。音もかなりなったのだが、それでも鳴海は目を覚まさない。仕方ないので鳴海をそのまま寝かせて服を着替える。鳴海の背中側で着替えているので見られる心配はない。
そのままリビングに向かうと朝食が作られていたが、母の姿が無かった。机の上には置手紙があり、そこには「出かけていきます。朝ごはんはこれを食べてください。お皿は健也に洗わせてください」とあった
置かれていた朝食を食べて、部屋に戻ると鳴海はまだ寝ている。起こさないようにスマホを取り出してメールが来ていないかを確認すると吉良からメールが来ていた。その内容は取材をしたいから手伝ってほしいというものだ。吉良が調べているのは行方不明者続出事件で大きな内容は
・行方不明になっていた生徒が見つかるが、行方不明前の時よりも性格・行動が大きく変化している
・このノートに書かれている男子:女子の行方不明者は2:8程度
というものだ。本人は趣味程度で調べようと言っていた。健也も自分の取材対象は決めていないので協力をするつもりではあったが、これを手伝って本格的に手伝うか、自分の取材対象を決める判断材料にするのも悪くないだろう
健也「鳴海……」
鳴海を見ると目を覚ます様子はない。聞いても寝息を立てているままだ。吉良と遊びに行ってくることをメモ書きして枕元に置いて部屋を出る。そして吉良に指定された場所に向かうと、なぜかあんパンと牛乳を手に持っていた。場所は健也達が通っている学校周辺だ。吉良も健也に気付いたようで、健也が声をかけようとすると、吉良は口元に指を立てて「シィー」と伝えてきた。開けそうになった口を慌てて閉じて周辺を見るが、そこには健也が見える限り誰もいない。再び吉良を見ると「こっちに来い」と手招きをしている
健也「……」
手を軽く上げて近づくと、無言であんパンと牛乳を渡される。ちなみに牛乳はパックだ。パックは瓶よりも安いので予算が無かったんだろう。もし雰囲気を出すなら多分瓶だろうし(適当推理)
吉良「……」
吉良は学校入り口を見ている。しかし中に入ってくる者も、出てくる者も誰もいない。もしかして「見えないものが又は見えてはいけないもの」を見ているのか?
HAHAHA、まさか? そんなオカルトチックな……
吉良「……来ないか」
牛乳パックは上着のポケットに入れて、あんパンの袋を開けて、両手でリスみたいにモグモグと食べている。見た感じ吉良は2年生になっても1年生の時と身長が変わっていないように見える。牛乳を飲んでいるというのはそういうことだろうが、まだ中学生だ、そこまで焦らなくても一杯食べて運動もしているようだし(時々メールや電話で話している)、絶望するには早い。
あんパンを食べ終えると、急に牛乳パックを持っていない方の手で口を抑える
健也「大丈夫? 吐きそう?」
首を横に振るが、それでも苦しそうだ。多分詰まったのだろう、吉良の背中をさすると、少しずつではあるが、ごっくんとすると苦しそうにしている様子はなくなった
吉良「あ、ありがとう」
健也「もう大丈夫? 俺の牛乳パック飲む?」
吉良「それは健也のだから」
健也「あ、お金」
吉良「今度何か奢ってくれるなら良いよ」
健也「高いのは無理だぞ?」
吉良「別に高いのでなくてもいいよ。一緒に何か食べよう、健也のおごりで」
健也「……分かったよ」
吉良「……来ないか」
健也「誰を探しているの?」
吉良「分からない」
健也「はぁ?」
吉良「まだ誰か分からないんだ、今は候補探しみたいなものだよ」
健也「?」
吉良「この前のノート見せたでしょ、行方不明者についてのノート」
健也「あ、あぁ確かに」
吉良「そこに書いてあった名前を調べると、全員この学校の人だったんだよ」
健也「なんだって!?」
吉良「お遊びの可能性もあるけどね。そもそも新聞部にあったものだから」
健也「ここの生徒と断言できる証拠は?」
吉良「過去の生徒名簿や、入学証明書、あとはSNSの書き込みとか調べたら全員ここの学校だった」
健也「それが本当なら…」
吉良「と言っても、個人的は深追いする気はないんだよね」
健也「なんで?」
吉良「もし、本当にここの学校の生徒の多くが行方不明になっている、そしてこのノートの持ち主が急に情報を書かなくなった……だとしたらさ」
健也「……」
吉良「可能性はあるってこと」
健也「いつからだ」
吉良「ノートによると、少なくとも12,13年前くらいからみたい」
健也「13? 中途半端な数字だな」
吉良「そんなもんじゃないかな」
行方不明者が見つかった時は、行方不明前よりも性格・行動の変化している。そしてそれがあまり表立っていない。1年生の時にはそういう話は聞いたことがない。健也含む4人はそこそこ知り合いを作っているので、何かそういう噂があれば女子チーム(鳴海・愛奈)が聞きつけていそうだが、2人からそういう話を聞いたことがない。
更に行方不明者がいたら学校が無関係とは言い切れない、1人や2人ならともかく、ノートにあった名前だけでもそれなりにあった。それに感づいたノートの持ち主は学校か、他の何者かに……
吉良「考えすぎかな?」
健也「ありえないとは言えないけど、もしそうなら確かにこれ以上は関わりたくないな。危ない橋で、何も得ることがない」
吉良「そうだねー。僕もなんとなくノリでここに来たけど、健也もそう思う?」
健也「他の奴なら面白半分に飛び込みそうではあるがな……」
この行方不明者事件のことも気になるが、それよりも鳴海のことが頭にちらつく
健也「でもなんで今日に…」
吉良「もし健也がさ、こういう行方不明者を出す事件の黒幕ポジションに近い立場だとしてさ」
健也「おう」
吉良「新しく入ってくる新入生を観察したいとは思わない? この立ち位置だと自分のテリトリーにわざわざ入ってきた馬鹿と思うだろうし、手を出すなら新入生だと思うんだよ」
健也「……そうだな、わざわざ網にかかって来たやつだもんね。知らない場所よりも知っている場所で狩ろうとするのは何もおかしくない」
美味しいと噂されているお店に行くか、行き慣れているお店に行くかとかそんな問題だろう。それもわざわざ行方不明にするくらいだから、一目や注意が付かないところ、10年以上も見つかっていない、見つかっても消して今も続いている可能性も十分にある
吉良「そろそろ入学式が終わるね。僕は適当にぶらつくけど健也は?」
健也「……俺も付いていく。家に帰っても特にやりたいことも無いしな」
吉良と共に学校から離れて駅前近くに移動した
吉良「鳴海さんと遊びに行かないの?」
健也「最近鳴海体調が崩れるみたいなんだ」
吉良「最近まで休みも少なくなってきていたけど、少し辛くなってきたのかな?」
健也「本人は大丈夫って言ってるけどな」
吉良「僕達に出来ることってあるのかな……」
健也「とりあえず気を遣うくらいしかないよな……、俺も何かないか考えているんだけどさ」
吉良「んー」
2人並んで歩いていると、近くに子供が泣いていた。小さな女の子だ。見た感じ2~4歳くらいに見えるし、手には黒猫の縫いぐるみを持っていた
あれ? どこかであの女の子を見たような? どこだったかな?
思い出そうにも思い出せない
吉良も泣いている子供気付いたようで、健也に「どうする?」的な顔をしている
周囲にいる人も気づいているようだが、全員見て見ぬふりをしている。気持ちはわからんでもない、場合によっては何時間も拘束されてしまうような案件だ。吉良は健也を見ているだけで、自分から子供に何かアクションをするつもりはないようだ
健也は子供に近づく
健也「君、どうしたの? お母さんは?」
子供「お母さんが、お母さんがいないの」
健也「お母さんか~、どんなお母さんかな? 服装とか、何か特徴ないかな?」
子供「……おっぱいが大きい」
健也「最高」
吉良「……」
健也「あー、それはえっと……」
出来るなら他の情報も欲しいが、泣いている女の子の相手をするのは想像していたよりも大変だと思っていると子供のお腹が鳴った。
吉良「この子、もしかしたらお腹空いているんじゃないかな?」
近くにいる健也にも聞こえたのに気づいたのか、更に泣きそうになっている
健也「これ食べる?」
吉良から貰ったあんパンと牛乳パックを見せると、子供は凄い勢いで首を振って、「頂戴♪」と両手を前に出している
子供に2つを渡すと同時に、袋を開けてあんパンをモグモグと食べ始めるが、喉が詰まったようで
子供「~~~!!」
健也「あーはいはい、これ飲んで」
子供「ごくごく」
ストローを指した牛乳パックを子供の口に運ぶと、ストローを銜えてチューチュー吸い始める。容器の牛乳が減っていくのが、子供がごくごくと喉元を鳴らすたびに分かった。あんパンと牛乳を食し終えた子供はさっきよりも気持ちが落ち着いたのか、話をしてくれた
子供「お兄さん~、お姉さん~」
吉良「おねっ」
健也「まぁまぁ、子供だし、ね?」
吉良「むぅ~」
健也「えっと、何かな?」
子供「ここが鳴っている音ってなんていうの?」
子供は自分の胸を指さしている
健也「心音?」
子供「しーんーおーん?」
吉良「ドキドキって言った方がいいんじゃない?」
子供「おードキドキー、お姉さん賢いんだねー」
吉良「……」
健也「吉良、その拳抑えて」
吉良「分かってるよ……はぁ、筋肉付けた方がいいのかな……」
吉良は肩をがっくしと落として落ち込んでいる
子供「きーんーにーく?」
健也「まぁ、筋肉は間違ってはいないか」
子供「こーこー、きんにくっていうの?」
健也「え、んーと、間違ってはいない……かな?」
子供「ほーかーにーは?」
健也「バクバクとか?」
子供「ほーかーにーは?」
健也「バキューンバキューン」
吉良「え」
子供「おー! バキューン あははは!」
子供は楽し気に笑っている
子供「ほーかーにーは?」
健也「キュピーンキュピーン」
子供「おー! ほーかーにーは?」
健也「グサッグサッ」
吉良「ちょ、ちょっと待って健也、途中からおかしくない?」
健也「後で説明するよ」
子供は楽しそうに笑っている
子供「ほーかーにーは?」
健也「他? そうだなー」
子供「う~~、な~い~の~?」
子供は悲しそうに顔を下に向ける
健也「オラオラオラァ!」
吉良「は!?」
子供「おー! オラオラオラァ! あはははー、お兄さんおもしろーい!」
健也「喜んでくれたようで何よりだ」
吉良「健也、流石にそろそろ突っ込まないと僕が混乱する」
健也「あーそれは」
一度吉良の方に視線を移して、すぐに子供の方に視線を戻すが
健也「あれ」
吉良「いなくなってる…」
いつのまにか子供はいなくなっていた。近くを見渡すが、人混みばかりで見つけることが出来なかった
吉良「まあいいや」
健也「良くないんじゃ?」
吉良「探そうにもこれじゃあ……」
確かに人はどんどん増えていく、駅前だから一定の密度は常時あり、小さな子供を見つけるのは困難に思える
吉良「それよりも何? バキューンとキュピーンとグサッとオラオラは何? どういうこと?」
健也「バキューンは拳銃、キュピーンは弓、グサッは刃物、オラオラは拳」
吉良「どういうこと?」
健也「さっきのは心音の擬音語だったじゃん? ドキドキやバクバクは心臓の能動的な音だけど、受動的な音はバキューンとかキュピーンとかグサッとかじゃないかな?」
吉良「あー、銃で心臓を撃たれる、弓で心臓を打ち抜かれる、刃物で心臓を刺される、拳で心臓を殴られるってこと?」
健也「そういうこと、あの子は能動か受動かを聞いていないからな。」
吉良「受動で答える人なんてそうそういないと思うけど……」
健也「まぁまぁ、子供だったみたいだし、難しいこと言っても分からないと思うし」
吉良「そう……だね……。はぁ…ねぇ、健也」
健也「あん?」
吉良「僕って男に見えるよね?」
健也「……」
吉良「なんで黙ったの?」
健也「いやー、男にも色々あるしね。俺から見たら吉良は男だよ」
吉良「はぁ……身体鍛えた方がいいかな」
健也「鍛えるか鍛えないかで言うなら、鍛えた方がいいんじゃない?」
吉良「んー、ちょっと考えるかなー。行こう健也」
健也「おう」
ズボンのポケットに手を突っ込むと何かが入っていた。今日のズボンのポケットには「何か」入れた覚えはない、これを洗濯する前に何か取り忘れていたものがあるのか?
「何か」を取り出すと、お守りみたいなものが入っていた。どこの神社か分からない、神社の名前が刺繡されていないし、手触りが紙だ。おそらく折り紙で作られたものだろう。さっきの子供が作ったものかもしれないが、子供がいない以上確かめる方法はない
反対のポケットにも「何か」入っている。それも取り出すと、小さく折りたたまれた紙が入っていた
紙を開く
【笑わせてくれたお礼です~。大切な人に渡すと良いことが起きるかも? かもかも~】
それだけだった
何かよく分からなかったが、とりあえずポケットに戻した
ただ忘れないようにスマホのメモに「今日、ズボンのポケット、中を取り出す、取り忘れない」と記入して、吉良と一日過ごした




