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第98話 幻影

 数日前のことだ。精神交換事件が終わりを告げ、王都は平穏を取り戻そうとしていた。人々は胸を撫で下ろし、明日に向かって生きる準備をする。そんな時、人々の心に湧き出る感情があった。

 追悼の念である。今回の精神交換事件では、多数の死者が出た。中にはドラゴンの襲来により自らの子を失った民も存在した。

 故に皆が進むためには、生者のために死者を慰る必要があったのだ。

 だがそんな追悼の心もある一つの情報によって憎しみが渦巻くこととなる。

 なぜ、犯人が精神交換の魔法などを持っていたのか。

 なぜ犯人は悪魔などと契約ができたのか。

 その術を教えたのは誰なのか。

 それは「灰色のホウキ」という、魔法使いの集団の仕業であった。禁術であるはずの精神交換の魔法を犯人へ売り渡しすことができたのは、彼等がその魔法の情報の売買していたからのである。

 許してはおけぬ。誰かが、力と金のある誰かが言った。

 かのような禁術を売る組織はあってはならない、殲滅すべきだという世論は一気に広がり、どこかの権力者が金を出したことにより、「灰色のホウキ」討伐遠征隊が組まれることになった。

 遠征隊員は、志願制だ。誰もが手を上げた。その中にドンキホーテも入っていた。


 ─────────────


「本当に行くのか」


「……」


 冒険者の宿の玄関で、レーデンスの呼びかけにドンキホーテは背を向け少し黙った後静かに言った。


「なんでお前は逆に来ないんだ?」


「……私は……わからないからだ」


「何がだよ!」


 怒気のこもった声と共にドンキホーテはレーデンスを睨みつける。


「俺は! 悔しい! こんなことをされて、黙っていられねぇよ!」


「確かに、「灰色のホウキ」は禁術を売っていた、だが……彼等は半魔人の集まりだ!」


「何の関係があるんだよ」


 ドンキホーテは怒りと共にレーデンスを睨みつけたまま問う。


「半魔人は、被差別の種族だ。私は……私はどうしても討伐に賛成はできない」


「なら……いいさ」


 レーデンスの答えに、ドンキホーテは業を煮やし冒険者の宿の玄関を開け、そのまま一歩踏み出した。


「ジェーンと、メアリさんを頼む」


 そんな一言を残して。

 あの事件の後、アルベルトの妻メアリは無事、息を吹き返した。だが、心にやはり深く傷を負ってしまった。ジェーンも同じだった。

 メアリはジェーンがいる手前、少しばかり気丈に振る舞ってはいるが、ジェーンの方はまだ自らの部屋から出てこれない。

 ドンキホーテは扉越しに聞いた。今も、夢に見ると彼女はいう、アルベルトの血まみれの姿を。

 だからドンキホーテは約束したのだ。もうそんなことが起こらないために、ジェーンのような被害者が生まれないために、進むしかないのだと。

 待ってくれ、と後ろでレーデンスが言ったような気がした。

 ドンキホーテは気にしなかった。


 ─────────────


 ガタガタの道の上を3台の遠征隊の馬車が通り抜ける。馬車の中、未だに飽きもせずおしゃべりな男二人はは、四肢狩りについて話している。


「そういえばなんで四肢狩りは、正体を明かせねぇんだ?」


「お前それはよぉ! 謙虚なんだよ! かの英雄様は! 世直しを当然のことだと思ってるのさ!」


 本当は違うとドンキホーテは一人思う。本当はロンが、うやむやにしてくれたのだ。

 罪人を必要以上に痛めつけたとあっては、ドンキホーテ自身の騎士としての資質が疑われかねない、だからわざと四肢を切り取った張本人自体をわざと報告しなかったのだ。

 全てはドンキホーテに追及が行かないようにするためだった。

 だがその結果、顔無しの英雄、四肢狩りが生まれたの、だからおかしなものだ。


「本当におかしなもんだよなぁ、なぁ四肢狩り様?」


 ドンキホーテに声がかけられる。その声をドンキホーテは無視した。


「本当はテメェは英雄なんかじゃねぇのにな? 俺とおんなじだろ? ただ己の正義のために誰かを痛めつけた」


 うるさい。


「なんで、お前なんかが褒め称えられるんだろうな、お前も快楽殺人者と変わらないのに」


 うるさい。


「いい加減認めちまえよ、俺の四肢を狩った時、俺が断頭された時、気持ちよかったろ? だからお前は今も誰かを殺そうとこの馬車に乗ってるんじゃないか?」


「黙れ!」


 ドンキホーテは叫んだ、隣にいる精神交換殺人事件の犯人デリメロに向かって。

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