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第79話 いい気味だ、狼狽えてやがる。

「カールランドさん!」


 ドンキホーテは必死に呼びかける。


「どうしちまったんだよ! あんたこんなことする人じゃあねえだろ!」


 彼がそんなことするはずはない、現にドンキホーテは今目の前に広がる光景が現実とは思えなかった。

 何かの間違いだと思いたかった。


「カールランド?! 馬鹿な」


 遅れてレーデンスもカールランドの存在に気がつく。こんな事を起こす人間ではないとレーデンス自身思っていたため、いるとは夢想だにしていなかった。


「うるせぇな、次、無駄な事を言えば女を殺す。そこに転がってるジジイとババアみたいにな」


 カールランドの言葉によってドンキホーテは初めて地面を見た。首のない老人の死体が転がっている。

 野晒しに何の尊重もされず、ただ無造作に置かれたその死体は冒涜的にもほどがある。


「なんだよ、これ……」


 認めざるを得ない。だがあまりにも、惨すぎるその現実はドンキホーテを絶望の底に叩き落とすには十分だった。


「わかった! 貴様の望みを聞こう!」


 脱力するドンキホーテの耳にロンの声が響く。ドンキホーテの絶望をよそにロンは続ける。


「何が目的だ、金か? それともどこかへ逃げたいのか!」


 ロンは考える、このような立てこもりなど事件を起こすにしては、どこか落ち着いた犯人の様子。これは恐らく計画的な犯行なのだ、と。

 ならば今予想できるのは犯人像は──


 1、なんらかの凶悪犯であり国外または、この都外の安全地帯までの逃走を図っている。


 2、またはただの衝動的な殺人犯、この落ち着きようは最高にイカれているから。


 できればロンは前者である事を望んだ。なんらかの目的があるならば、その分行動に予想ができる。

 ドンキホーテの知り合いならばなおさら、性格などから行動が高まるはずなのだ。


 ──さぁ、どうでる?


 ロンは相手の出方を探る。果たしてどちらだこのカールランドとかいう男は。


「目的ねぇ……おいそうだ誰か、この哀れな家族のために、代わりに死ぬ奴はいないのか? そうすればこの家族は解放してやる!」


「何……を言って……!」


 ロンの隣にいたレーデンスは思わず、言葉を漏らす。何かを要求されるまでもなくなくまるでゲームをしているかのようなその口振りは、明らかに常軌を逸している。


「カールランド……一体なぜ……どうしてしまったのだ」


 レーデンスの呟きは誰にも届かない。

 そんななか犯人は二階のベランダに立ちながら叫ぶ。


「どうしたよ! さっさっとしねぇと! 家族全員おっ死ぬぞ!」


 ヘラヘラと笑いながらそう叫ぶ。明らかに狂っているその姿はロンが想像する最悪の部類の犯人だった。


 ──最高にイカれいる方か。


 だが、逆に今回はその狂気じみた行動は、ロンに取って都合が良かった。

 準備が整ったからだ。


 一陣の風と共に、矢が飛来する。


「ぎゃ!」


 その矢はカールランドの肩に深々と刺さった。そして矢が刺さった痛みと衝撃でカールランドはのけぞり尻餅をつく。


「ちくしょう!! イテェぇ!!」


 まずいカールランドの頭に、ここに来て初めて焦りが浮かぶ。射手がいたのだ、まさか時間をかけすぎたか。

 そこで初めて男は酔いが冷めたが、もはや全てが遅かった。


「陶酔が覚めたか?」


 肩に刺さった矢の激痛が走ると同時に、男の隣から声が聞こえた。ロンだ。整えられた髪、高い背、甘いマスクから発せられる軽蔑と殺気。

 男は思う。ああ、こいつは騎士だ、裁きの体現だ。

 だが男もここで終わる気はない咄嗟にこの家に住む家族の血を吸った短剣を抜き放ち、ロンに襲い掛かる。

 実際の時間で1秒にも満たない刹那の時間。

 迫り来る短剣に、ロンは恐ることもなく右手の手袋を外し、左手でナイフを払う。

 そしてトン、と手袋から解放された右手を男の胸に置いた。

 ロンは無機質に告げる。

 彼の特殊能力(アビリティ)を。


黄金王の右手(ゴルドフィスト)……!」


 瞬間、男の皮膚は光り輝く黄金へと姿を変えた。金の輝きを放つ口も聞けない黄金の像へと変わった男を見てロンは言う。


「ふむ、大蛇以来だが衰えてはいないな」

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