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第75話 始めるんだここから、俺の復讐が、わからせてやろう、知らしめよう、俺の思いを

「起きろ! 起きんか! エヴァンソ!」


 強く肩を揺すられたエヴァンソ・ドンキホーテは「ンア」などと言う、間抜けな声を上げながら目を覚ます。視界の端には口うるさい教官が、ドンキホーテを見下していた。


「ああ、すんません」


 あくびをしながら、ドンキホーテは椅子から立ち上がるどうやら、昼食のサンドイッチを食べ終えた途端に爆睡をしてしまったようだ。


「全く、弛んでいるぞ!」


 そういうのは、ドンキホーテの指導役のロンだった。頭でっかちで、生真面目さが服と鎧を着込んでいるような男で、きっちりと整えられた髪に、磨かれた靴を見れば誰でもこの青年が上流階級の、つまり正統な血筋よ騎士とわかった。


「いやぁー申し訳ない、雑用がきつくてさぁロンさん」

「それは貴様の落ち度だ、行くぞ、午後も見回りだ」


「了解」ドンキホーテはわざとらしいほどシャキリとした、返事でロンについて行く。

 ドンキホーテが騎士になってから2ヶ月ほどたった、彼の先輩騎士を殴った罪は未だに許されておらず雑用ばかりさせられている。

 別にドンキホーテにとってそれが苦痛なのではなかった、むしろ案外きつかったのはこの──


「よし、では、ここからは2人に分かれるぞ、ドンキホーテは右に、私は左に行く、では研修開始!」


 この研修だ、どうやら最近物騒な事件が立て続けに起こった王都はこのように新米の騎士を街中の見回りに出動させなければならないほど、民草の不安が高まっているらしい。

 実際に、この研修のおかげで前年度よりは軽犯罪は無くなってきているらしいが、ドンキホーテにとってはあまり楽しいことではない。


「あぁ、もっと魔物退治とかやると思ってたんだけどなぁオイ」


 なにせ2ヶ月も同じことをやらされている。

 だが、しょうがない事なのだ、レーデンス曰く、冒険者出身の成り上がりの騎士は実力が保証されるため、武家出身の者よりも、こう言った見回りなどの基礎的な(つまらない)仕事に回されやすいのだという。

 まぁ要するに実践訓練よりも騎士の普段の業務をいかなるものかという事を、頭に叩き込まれる研修なのだ。

 その事を思い出したドンキホーテは頬を叩き叫ぶ。


「いやでも! あと1ヶ月やれば俺もはれて遍歴騎士だ!」


 遍歴騎士、旅をする騎士、主を持たない騎士など、様々意味があるが、ここソール王国ではフィールドワークの任務を主とし、それを国や騎士団にフィードバックする騎士たちの事を言う。

 戦地の様子から、開拓の進んでいない魔物だらけの土地、はたまた危険な古代の遺跡まで、フィールドワークの対象は様々だ。

 ほぼ冒険者にほんの少しばかりの権力を持たせたようなものだが、冒険者の中には騎士という称号に心惹かれるものも多い。

 ドンキホーテもその一人だった。

 自分が目指す英雄は、まさしく騎士から生まれている。人を助け、悪を倒す、それは騎士という職業のステレオタイプであり、なぜドンキホーテが騎士というものを目指すのかも、それだけで説明ができた。

 自分もただなりたかったのだ、人を助けて、悪を倒す人間に。

 それこそドンキホーテが思い描く英雄であるから。

 さて、では悪とはどのようなモノなのだろうか。


「きゃあぁぁぁぁぁ!!」


 突如、女性の金切り声がドンキホーテの耳に入る。

 ドンキホーテは間髪入れずに、その声のする方角へと走った。人気のない路地に入るも、彼の足は止まることはない。

 ここで初めてドンキホーテはつまらない街中の見回りなどという研修に感謝した。

 見回りのおかげで大体の土地勘は掴めた。どこをどう行けば声の発生源に近づけるのかは理解できている。


 ──だが問題はここからだぜ! どうすればあの声の主を見つけられるか──


 その必要はなかった。路地裏を進むドンキホーテの視界の隅に何かに馬乗りになっている人物がいた。

 馬乗りになっているのは体格的にみて男、そしてその男がまたがっているのは間違いない声の主だろう。服装から判断して間違いはなさそうだ。


「おい! そこのお前! なにしてやがる! ささっとその人から離れな! さもないと──」


 肉の裂く音。そして飛沫音。

 それがドンキホーテの耳に届く、気付かなければ良かった。そうすればドンキホーテは少しはまともにいられただろう。

 男は、女に跨りながらナイフを振り下ろしていた。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も


「たす……け……て」


 ただ絞り出された声を聞くまでドンキホーテの精神は目の前に広がる光景を理解することはできなかった。

 いや、今もこの状況を彼が理解することなどできるはずもない。

 ただわかるのは目の前にいる男は間違いなく、


「死ぬべきだ……!」


 その憎しみに似た正義感をドンキホーテは刃に乗せた。

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