第三十話 お試し
「ロランか、よろしくな!」
ドンキホーテは手を差し出した、握手をするつもりだ。しかし当のロランはそれを無視し、依頼が貼られている掲示板へと歩き出す。
「な、あいつ……! 俺のこと嫌いなのかな……」
ドンキホーテは無視されたショックから肩を落とす、レーデンスはドンキホーテの肩を叩き、慰めた。
そうして落ち込んでいる者がいることを気にせず、ロランはバンと音を立てて依頼書をテーブルに置く。
「この依頼、まず受けて欲しい」
ドンキホーテとレーデンスは目を通す。依頼の内容は簡単なものだった、暴れイノシシと呼ばれる、低級の魔物を倒して欲しいというものだ。
「オイオイ、こりゃ簡単な依頼だなぁ、こんなのを受けてどうするんだ? ロランちゃんよぉ〜」
ドンキホーテは先ほど握手を無視された腹いせか、年上だというのに大人気なく、ロランを煽るような口調で話す。
ロランは気にせず続ける。
「君たちそういえば「カウント」はいくつ」
「3だぜ」
「3だが」
ドンキホーテとレーデンスはそう答えた。カウントとは冒険者に与えられる数字のことである。
4から0まであり、数字が少なくなればなるほど優れた冒険者の証となる。
もっとも0の「カウント」を持つものは例外中の例外で、実質1の数字を持つものが上級の冒険者と言われる。
この数字の増減の権利は冒険者ギルドに一任され、難易度の高い依頼や、ギルド指定の特殊な任務をこなすことで昇格することができるのだ。
そして、ドンキホーテ達今いる「3」の立ち位置は、まぁまぁ冒険に慣れてきた、中級の冒険者と言える立ち位置だ。
それを聞くとロラン少年は、「うん」と呟き、
「じゃあ大丈夫だね、受けられる」
この依頼はカウント3以上の冒険者が受けられるという、制限が付いている。ドンキホーテ達ならば、この依頼は受けられる。
しかしそれにしても、暴れイノシシは危険とはいえ、闘気を使えるものにとっては雑魚も同然である。
「なぁ、本当に受けんのか、こんなの簡単すぎだぜ?」
「確かにそうだな、私もそう思う、この依頼に何か関係があるのか? その繰り返す時間とやらに」
そういうドンキホーテ達に少年は、冷静にこう返した。
「質問は無しだ、君たちはまずこれをやって貰えばいいだけ、お金を受け取ったんだから、嫌だ、とは言わせない」
「オイオイ、どう言うことか聞かせてくれてもいいだろうが……」
ドンキホーテはロランに食い下がるも、少年は、「いいからやるんだ」とだけ言う。
結局、ドンキホーテとレーデンスは納得のいかないまま、暴れイノシシ退治を受けることになった。
翌日、ドンキホーテ達は暴れイノシシを討伐するために歩を進めていた。
例のイノシシの出現場所は、王都エポロからそう遠いところではない、森の中で現れたらしい。
「ハァ、ま、受けたもんはやるけどよぉ〜。今更になってイノシシ退治かよぉ〜」
ドンキホーテはため息をつきながら、森の中を歩む。
「別に、嫌なら今からでも断ってくれても構わない、そのかわり、お金は返してもらう」
なぜかついてきた、ロランがそう言う。そう言われては、逆にやる気がでるというものだ、ドンキホーテは剣を抜きいう。
「いいや、辞めはしないぜ! 行くぜレーデンス!」
「あ、待て、ドンキホーテ!」
先行するドンキホーテにレーデンスはついていく、その後ろに付かず離れず、ロランはついていった。
「ロラン、離れるなよ! 守れなくなるからな!」
ドンキホーテはそう言いながら、ロランが付いて来られるであろう速度を維持しつつ、そう話しかける。
「大丈夫、僕は自分で自分の身は守れるから」
その言葉にドンキホーテは本当かどうか疑うも、いざとなれば守ればいいかと考え直し、歩を進めた。
こうして、イノシシ狩りが始まった。
「オラァ!」
「フン!」
ドンキホーテとレーデンスの剣はイノシシの肉を削ぐ、所詮は雑魚、二人は暴れイノシシを難なく狩り続けて行った。
その様子を後ろからロランはじっと見つめていた。まるで品定めをするかのように二人の働きを見ている少年は、小さく呟いた。
「……まぁまぁかな」
その呟きは誰にも聞こえなかった。
「いやぁ、楽勝だったぜ!」
そう言いながらドンキホーテは目の前にある、調理され、切り分けられた肉にフォークを突き刺した。
あの後難なくイノシシ狩りは終了し、その報酬に加え、イノシシ肉を分けてもらったのである。
火が通り、塩で味付けされた、噛むたびに肉汁が溢れ出す肉をドンキホーテはうまい、うまいと頬張る。
そんなドンキホーテの横でレーデンスは上品にフォークで肉を口に運び、ドンキホーテとレーデンスの対面に座るロランはレモネードを飲んでいた。
肉を堪能して、喉に通したレーデンスは少年に問いかける。
「そう言えば話してくれるか。なぜこんな依頼を私達に頼んだのだ」
「そうだぜ、俺もやってる最中にそれがスゲー気になった!」
同調するドンキホーテ、ロランはグイとレモネードを飲み干して、口をハンカチで拭いた後言った。
「まだ、話せない」
それを聞いてドンキホーテは、肩大げさに落とす。
「まぁいいけどよ、で次はなにをしたらいいんだ?」
ドンキホーテの発言と共にロランは立ち上がり、掲示板に向かっていった。
そして一枚の依頼書を提示する。
ロランは言った。
「また君たちには、依頼を受けてもらう」
その依頼の内容はサラマンダーの討伐、先ほどよりも一段階ほど難易度が上がったものだった。
奇妙に思ったが金を受け取った以上、ドンキホーテ達はその要望を承諾し、翌日向かった。
その時もロランはついてきてまるで、何かを見定めるようにドンキホーテ達の討伐を見つめていた。
そして、依頼を達成して冒険者ギルドに戻って来れば、またロランは一段階ほど、上の依頼を達成するようにドンキホーテ達に頼んだ。
この奇妙な、ロランの要望はついに時間が巻き戻されるという、日の前日まで続いた。
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