第139話 戦い
──ドシャァ!!
二人の男が地面に落ちた、一人は腕に怪我をしており、もう一人は、全身から煙を噴き出している。
最初に起き上がったのは腕に怪我をした男、ダンだった。
「サンダルフォン! 平気か!」
ダンはすぐさま、右腕を切り落とされた、巨人の女天使であるサンダルフォンに語りかける。
彼女は、切断面を押さえながらも、いたって冷静に、
「大丈夫です、所詮は分霊、切り落とされた魂のかけらは本体に戻りました」
と返した。
その答えを聞き、ダンは無事とはわかっていながらも気を緩める。
そして、近くに転がる。一人の男に近づいた。
シーライ・マックイーン、かつての友であり、過去の因縁でもあるこの男は、ダンのクロス・シュトラール、破壊をもたらす光線によって体のさまざまな部分に傷を負っていた。
だがかろうじて、息はあるようで、短く、そして浅い息をコヒュー、コヒュー、と繰り返していた。
戦闘不能だ、シーライはもはや動けはしない。
いつのまにか、シーライの展開した。黄金の壁、『聖なる城壁』サクラメントも消え去っていた。それは力の源たるシーライが弱まったことの証拠だった。
急がねばならない。速くドンキホーテと合流しなければ。
「サンダルフォン、もう大丈夫だ、辛い思いをさせたな」
コクリとサンダルフォンは頷くと、多数の光の粒子と、光の糸とでもいうべき、物に体が変換されていき、空に吸い込まれていった。
──ダン、気をつけて、まだ戦いは終わっていません。
「わかっている」
言われるまでもなく、ダンは一歩踏み出す、向かう先はドンキホーテの──
「く……くふふはははは!」
突如、シーライが笑い始める。ダンは時間が惜しいと心の片隅では思いつつ思わず、警戒もあってシーライの方を向いた。
「私の……!勝ちだ!」
「何を……」
笑うシーライにダンは不可解そうな顔をして問う。その問いかけさえも、可笑しかったのか、さらに声を上げて勝ち誇るように言った。
「貴様は気がついていないだろう! 貴様が最初に通した、馬! あの馬に乗った者を!」
「……どう言うことだ」
シーライは叫ぶ。
「今、やつが皆殺しにしているだろう! 子供も妊婦も!」
─────────────
バルナッド遺跡、忘れ去られたその遺跡には、何の価値もないと言われている。
古代の人々が住んだ、痕跡はあるもののさほど珍しいものではない。というかむしろそれしかないのだ。
出土品もなく、目新しい発見もないその遺跡からは早々に考古学者は手を引いた。
バルナッドはもはや誰もすまない。魔物も出る。土地も耕せない。とあれば、何の利点もなかった。
この星の者であればの話だが。
この人気のない遺跡は山に面している、名は遺跡と同じくバルナッド山、その山の地中にそれはあった。
聖域と呼ばれるその場所は惑星エーテラウスへと通じる転送魔法が施された魔法陣があり、このユーライシア大陸の中でも数えるほどしかない、魔人の国の出入り口である。
今そこに、ドンキホーテたちは立ち入ろうとしていた。
「マーシーさん! もうすぐだからな!」
ドンキホーテは馬車の中でマーシーに話しかける。今、ドンキホーテたちがいるのはバルナッド遺跡のかつての住居がある遺跡群の中だ。
その中を馬車は走り抜けていた。
「姉様! 頑張って!」
チャルがマーシーに語りかけるが、マーシーはただうめき声を上げ、反応を返さない。
「アレンさん!」
カインがアレンを呼ぶ。
「わかっておる! もうすぐじゃ!」
ダンが馬車から抜け出した後、それは始まった。
マーシーが破水したのだ。
ゴールは目前だというのに、先にマーシーが耐えられなかった。
だがどこかで止まるわけにもいかない。ダンが完全に追ってを防いでいるかもわからないからだ。
「入口を開くぞ!」
アレンがそう叫んだ。
すると遺跡群から抜けた。馬車の目の前の山の斜面が突如として崩れだし、石造りの四角い入り口が現れた。
それを見るとアレンは言う。
「降りるぞ! ここが聖域じゃ!」
─────────────
馬車から降りた後のドンキホーテ達の行動は早かった。
急いで、入口を魔法により埋めた後、聖域の中に入ったドンキホーテ達は。
光苔が発する、強くそして温かな光に導かれ、聖域の中枢まで来ていた。
中枢はドーム型の巨大な空間が広がっており、おそらく自然につくりだしたものではないことがわかる。
そのドーム状の空間の入り口に来たドンキホーテ達は、アレンに、導かれるまま真ん中へと進んでいった。
「あっちじゃ!」
とアレンは言う。アレンの向かう先には、石造の建物があった。太い、柱を幾つも連らせそれに合わせて石材を積み上げたそれは何かの神殿のように見え、光苔の光のおかげか、神々しい。
「姉様! もう少しです!」
カインは浮遊魔法で軽くなった、マーシーを抱えながらアレンに必死についていった。
チャルも涙を浮かべながら、走る。
やがてアレンの促されるままに神殿らしき建物の中に、ドンキホーテとカイン達は、あたりを見回す。
大きな広間、その真ん中に石のテーブル。他にもどこかに続く階段がそこかしこに建造されている。
「そこのテーブルにマーシーを乗せるのじゃ!」
アレンの指示にカインは従い、テーブルの上にマーシーを寝かせた。
「アレン先生何を!」
「このままでは、転移の反動に母体が耐えきれん!」
アレンは、覚悟を決める。
「ここで、マーシーの赤ん坊を取り上げる」
カインは目を見開いた。
「そんな無茶な!」
「わかっておる! じゃがそれしかない! 幸い水は魔法で用意できる! 覚悟を決めてもらうぞ! カイン! マーシーも良いな!」
マーシーは苦しみながらも頷く。
──ドガァァン!
「ッ! 先生!」
突然の轟音に、ドンキホーテはアレンの方を見る。
「追手か!」
恐らく追手が、この聖域の入口を破壊したのだろう。
どうする、そんな思考をアレンが巡らせる前にドンキホーテは神殿の入り口に向かって一歩踏み出した。
「俺が行く」
「……!! ドンキホーテ!」
「何……大丈夫さ、守り切ってみせるからよ」
アレンは、それ以上声をかけられなかった。ドンキホーテの決断が、最善手だと思ったからだ。
「ドンキホーテ!!」
チャルがドンキホーテを呼び止める。
「帰ってきてね……!」
ドンキホーテは、ただチャルに向かってウィンクした後、
「俺は大丈夫、マーシーさんのこと頼むぜチャル」
と言った。
「……うん」
不安そうなチャルは走りだしたドンキホーテの背中を最後まで見送っていた。
─────────────
匂いがする。
奴らの、穢らわしき奴らの匂いが。
憎しみと共に、その獣は聖域へと足を踏み入れた。
光。
光苔による光が獣を照らす。
そして獣の障害たる敵も。
「よぅ、ガリルさん」
ドンキホーテはそうガリルに向かって、言う。
「これはこれは、ドンキホーテ君、久しぶりだな随分と」
─────────────
ダンは走る。ドンキホーテたちが走ったであろう街道を。
そして悔やんでいた、
「ドンキホーテ! ガリルと戦ってはいけない!」
なぜ、あの一頭の馬を通してしまったのか、それが全ての過ちだった。
ダンの頭にシーライの言葉がよぎる。
『奴は、ガリル・ガランドールは──』
──S級の冒険者だ。
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