第136話 追憶
拳と剣がぶつかり合う。光り輝く光子の剣は憎しみをのせ、鋼に類する硬度を持つ拳は、使命と哀を乗せ、絡み合う。
それはまるで、流星群と拳の残像によってできた影の嵐の食らいあい。
やがて、苛烈を極める剣と拳を打ち合いを二人の男は、ダンとシーライはこのままでは埒が開かないと判断し、同時に剣と拳を引いて、距離を取った。
二人ともバックステップをし、離れること数メートル、ダンとシーライは祈る。
『サクラメント』信仰心の強い聖職者にしか扱えない奇跡の再現。または紛い物、それをダンとシーライは同じタイミングで発動する。
「ウリエルの火よ!」
「ウリエルの火よ!」
二人は同時に、そう唱えた。すると何もないダンとシーライの目の前の空中に巨大な火の玉が現れる。その火の玉達ははそのまま、直進、ダンの火の玉はシーライを、シーライの火の玉はダンを狙って放たれる。
火の玉お互いがぶつかりあい、巨大な爆発を起こした。
ダンとシーライの間で起こった爆発は天高く炎を舞い上げ黒き、黒煙を吐き出した。
「チッ!」
視界が悪い、シーライは剣を振るい強風を巻き起こして、黒煙を払った。
そして黒煙が払われた街道の景色には当然のごとく、ダンは立っている。
サクラメントにより引き起こした、火炎の力は互角だった言うことだ。
完全に威力が相殺されダンとシーライ両者に火の手は回っていなかった。
その事実がシーライには耐えられぬほど腹立たしかった。
「なぜ、信仰に背いたお前が! 私と同じ力を手に入れられている!」
シーライは怒りを言葉に表す。
「どうして! お前なのだ!」
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二十年前、シーライは、若くそして、信仰の道に進んでいた。
なぜ彼が信仰の道を行ったのか。理由はただ一つだけだ。
復讐。この一言だけで説明は十分である。
シーライの両親は死んだ、彼がまだ幼子の時だった。禁術に類する魔法兵器によって、彼の両親は死んだのだ。
とあるカルト集団が力を求めて起こした魔法暴発の事件だった。
その魔法兵器が毒の空気を作り出すと言う、広範囲に影響を及ぼすものであったためシーライ自身もその毒牙にかかった。が、奇跡的に彼だけ助かったのである。
そう、その毒を治療できるサクラメントを習得した、パラディンが偶然通りかからなければシーライは死んでいただろう。
その時からシーライは自身もパラディンになることを望み、そしていつしか、禁術に指定された魔法を流通させるもの、それを使う者達を撲滅することを目標にしていった。
そして、シーライはパラディンになるべく。邁進していく。サクラメントを覚え、剣術を学び、戦士として、成長していった。
何日も何日も、鍛錬の日々の中いつしかシーライの隣には友と呼べるものがいた。
名はダン・アストー。
最初は、気に食わなかった。何せ、
「俺はダン、まぁ気楽にやろうぜ、シーライ君」
などと、戦闘訓練の時に言い放ったものだから、シーライはダンを軽蔑していただが、付き合っていくうちにわかった。
彼の信仰心の高さも、拳術の才も、シーライの知る中では、頭ひとつ抜けていた。
この美しい黒き肌のダンはいつしか、シーライにとっての憧れとなっていた。
ダンの実力は凄まじくだと言うのに飄々と、驕りもせず、見下しもせず誰とでも対等に接することのできる男だった。
なおさらそれが、シーライには眩しく見えたのだ。
シーライは卑屈になることはなくむしろ、そんなものが同期として仲間にいることを誇らしくさえ思い、ダンの良き親友であろうとした。
だが、聖十字教であるがために二人は仲を断つこととなる。
異教徒殲滅作戦、それは聖十字教の一部宗派に根付いていた、悪しき教えであった。
聖十字教の教えにそぐわない、特に異端とされる者たちを排斥するための一部、部族に対する弾圧行為だった。
その行為に誰もが反対意見を述べなかった。
だが、とある部族の村を焼き払い蹂躙した時だった。
ダンが叫んだ。
「こんなこと! 神が許されるはずがない!」
男の叫びは、火のまだ残る村に山に反響した。
シーライは意味がわからなかった。異教徒どもと言うのは、悪しき者どもである。
自分の父や母が殺されたのも、異教徒による禁術の魔法であったし、何よりこの部族にも、こうなるべくした理由があるのだ。
「ダン」
叫ぶダンに、シーライは語りかける。
「この部族は、異教徒だ、彼らは我らの理解の及ばぬ術を、使い、混乱を貶める可能性があったのだぞ。神は許してくださる」
「そのために子供を、殺した……私は、己の拳で!!」
地に膝をつけるダンは拳を地面に叩きつけた。大きな音を立てて地面にヒビが入る
「奴らに話し合いの余地などなかった」
地面のヒビを見ながらシーライは淡々と語った。
「奴らは我らによる文明化を拒むどころか、それに異を唱えたんだ、奴ら独特の術を用いた紛争になるのも時間の問題だった」
それは教会が用意した『言い訳』だった。紛争の種になるから、和を見出すから、そう言った理由づけで聖十字教はいくつもの異教を潰してきた。
それが信仰の証に、そして教会の利益に、実績に繋がるから。
ボソリ、ダンがつぶやく
「だからと言って、神は……死を望まない」
その嘆きは誰の心にも響かなかった。
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