133話 目覚め
瞼を開ける、まず初めにドンキホーテが感じたのは光、ステンドグラスから差し込む柔らかな月夜の光だった。そこでドンキホーテは自身が教会の祭壇にいたことを思い出す。
そして椅子に座っている感触と共に声が耳に入ってきた。
「ドンキホーテ!」
白猫の魔女アレンの声だ。
「目が覚めたか……」
アレンは安堵し、ニャアとため息をついた。
「どうやら、魂から見るに、元のドンキホーテ君のようだ」
同時にそばにいたダンもそう言いつつ、「大丈夫か?」とドンキホーテに手を差し伸べた。
「大丈夫だ、一人で立てるぜ」
そう言ってドンキホーテは椅子から立つ。そして月夜に照らさせる教会を見渡すとボソリと、
「戻ってきたんだな」
と呟いた。
「一瞬じゃったな」
アレンのその言葉の通り、ドンキホーテが精神の世界に言った時間はそう長くは無かった。だがそれ故に心配なことが一つアレンにはあった。
「それにしてもドンキホーテお主、本当に大丈夫なのか……?」
いかにも何もなさそうなドンキホーテの様子に逆に心配になったのだ。
ドンキホーテは右手でピースサインを見せる。
そしてニコリと笑った。
「安心してくれ! アイツとは話しつけてきた。多分もう、体を乗っ取られることはねぇよ!!」
そのあっけらかんとした態度にアレンの心配はどこかへ飛んでいき、アレンはほっと息を吐く。
だが本題はここからだ。今はまだスタートラインに立ったにすぎない。
「ドンキホーテ君」
ダンが話しかける。
「早速なんだが……」
「ああ……わかってるぜ、もう朝早くには出るんだろ」
ドンキホーテはアレンの顔を見て言った。
「行こうぜ先生……聖域へ」
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朝、カイン達兄妹とドンキホーテ、魔女アレンに、パラディンのダンを加え、馬車は動き出した。
「ドンキホーテ!」
走る馬車の中、カインの妹チャルはドンキホーテに話しかける。
「良くなったんだね! よかった!」
ドンキホーテは薄く笑う。
「ああ、皆んなのおかげでな」
ドンキホーテにニコリと微笑み返すチャルは、そのまま馬車の外を見つめ始めた。
ルラン村は既に抜けどんどんと遠ざかっていく。それを馬車内でアレンも確認し、口を開いた。
「皆、よくきけ、もうすぐワシらは聖域に着く、運が良ければ戦闘は起こらんじゃがもし、運が悪ければ……」
「覚悟はできています」
アレンの説明に対し食い気味にカインは答える。
「いま、言っておきます、ドンキホーテ、アレンさん、ダンさん、本当にありがとう、僕達だけでは、成し遂げられなかった、貴方達のおかげで、僕はいま家族を失わないでいられる」
カインのその言葉は本心からだった。
ドンキホーテは思わず、口走る。
「カイン……そんな、少なくとも俺は、好きでやってることだし……!」
「だとしても! 僕は貴方達に、感謝しなければならない!」
カインは言う。
「同じパラディンが、この事件に関わっているのにも関わらずか?」
そう言ったのはダンだった。ダンは悔恨を瞳に表しながらも、言う。
「今回の件、私も君たちに感謝される価値などない人間だよ、同じパラディンとして彼の凶行を私は止められていないのだから」
「ワシもそうじゃ」
アレンもまた目を伏せながら言う。
「すまんのぉ、偉そうにしておきながら親友を……お主の母を見殺しにしてある、ワシはその罪滅ぼしをやっておるにすぎん」
だから気にしなくていい、三人の意見はそう固まっていた。それでも、
「それでも感謝を、させてください」
マーシーはカインに続いて感謝を述べる。
「お腹の子、もうすぐ産まれます、その子が今も元気でいられるのはあなた方が力を尽くしてくれたから、この子分までどうか、感謝を……」
マーシーのその言葉に、ドンキホーテは言う。
「そうか、ありがとうな、でもやっぱ、そんなに重く恩を感じなくてもいいぜ! 俺は好きでやってることだからな」
その答えはアレンと、ダンの答えも代弁していた。ドンキホーテのその言葉にカインの瞳が滲み出す。
「ドンキホーテ……ドンキホーテは……」
カインが、なにかを言おうとしたときだった。
「つけられている……!」
ダンが唐突にそう言い。馬車の窓から身を乗り出した。
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ルラン村の付近の見晴らしのいい丘の上、ドンキホーテ達の馬車を見つけた者達がいた。
「やはりここにいたか、随分と探したが……」
遠征隊だ、遠征隊と遠征隊を率いる、パラディンの称号を持つ男、シーライ神父だった。
シーライ神父は、馬に乗った遠征隊の先頭に立ち叫んだ。
「追うぞ! ここで穢らわしき血を断つ!」
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