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シシ狩り!〜自分の正義を貫いた結果、パーティを追放されたけどまあいいか!俺は自分の夢を信じて突き進むだけだ!〜  作者: 青山喜太
幻想英雄譚編

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第132話 ライフ・イン・アッシュ

「オラァァ!!」


 男の剣による一撃が砂漠の大地を裂いた、砂煙は舞い、ドンキホーテは吹き飛ばされる。


「ぐっ!」


 横転したドンキホーテは、すぐさま体勢を立て直し立ち上がった。


「テメェは、一体なんなんださっきから!」


 男は剣の薙ぎ払いから三日月状の光波が放たれる。その光波はドンキホーテに向かってまっすぐと風を切りながら進んでいった。


 ドンキホーテの近くで爆発する光波。砂煙が舞う。


 だがドンキホーテ自身は、避けていたのか無傷のまま、煙の中から飛び出し。男と共に、砂の上を並走する。


 そして男は砂を蹴り、平行線を崩しドンキホーテと剣を交える。


 ドンキホーテはそれを剣によって受け流した。


 そのやりとりを数回繰り返した二人の剣戟はやがて剣の反射光だけだが、目視できるようになり、光が交わりながら火花を飛ばす異様な光景へと二人の打ち合いは変化していった。


 剣の青白い閃光がドンキホーテを襲うだが彼は、力を抜き男の閃光の如き剣一撃を防ぎ、


「くっ!!」


 と、息を吐きつつ、自分を殺傷せんとする、膨大な力を明後日の方向に逃した。


 しかし男の二撃目がくる。


 大きく弾かれた剣を男はニヤリと笑うと共に、再び剣を加速させる。縦に一直線、男は振り下ろす。


 ──ガァン!


 その一撃もドンキホーテに防がれた。だが男の剣は止まらない。そのまま流れるように、右の袈裟斬り、切り上げ、突き、と連続してまるで嵐のように斬撃を次々と繰り出した。


 その度にドンキホーテは己の剣や盾でそれを受け流し、防ぎ、弾く。


 ──ギィン!


「やるじゃあねぇか!」


 そう言いながら男はドンキホーテから一旦、距離を取る。

 剣での攻撃が防がれたというのに、男の余裕は崩されない。


「だがさっきからよぉ、なんでテメェは、攻撃しねぇ? そんなんで俺に勝てると思ってんのか! ああ!?」


 男は、訴える。戦うためにきたのではないかと。現に今も命の取り合いをしているというのにドンキホーテの剣から殺気は感じない。


「舐めやがって……そうやってテメェは自分を守ってきた! そんなんじゃ守るもんも守れねぇくせに! 弱い癖に! 力を否定する!」


「……」


 男は言う。


「俺なら使いこなせる。窮屈そうに力を振るうテメェをぶっ殺して! この牢獄から! 抜け出す!」


 男はそして叫んだ。


「ヴァルファーレ!!」


 男に、水晶がまとわりつく、顔の右半分と右腕に。

 そしてハァと、息を吐くと男は地面を蹴った。


「死ねぇ! そして俺に体を! 寄越しやがれ!」


 一瞬、光かと見紛うほどの突進と剣の突き。


 ドンキホーテの胸は剣に貫かれた。



 ─────────────



「ぐ、うう!!」


 教会の聖堂にてドンキホーテは苦しみ出す。


「ダン殿!」


 椅子の上に座り意識を失っていた、ドンキホーテの体が痙攣するのをみて魔女アレンはダンに助けを求める。

 近くで本を読んでいた、ダンもすぐに異変を察知し、ドンキホーテの元は駆けつけた。


「引っ張り上げる!」


 ダンはそう言って。ドンキホーテの額に手を翳す。ダンの手から光が溢れ出した。サクラメントだ。ドンキホーテの精神を現実世界に引っ張り上げようと言うのだ。


「……! だめだ!」


 しかし、ダンは告げる。


「精神が絡み合って、このままではドンキホーテだけを引っ張り上げられん!」


「そんなではまさか!」


 アレンの頭に最悪がよぎった。


「ああ、そのまさかだアレン殿! ドンキホーテは取り込まれかけている!!」



 ─────────────


「ぐっ、うう!!」


 胸を貫かれたドンキホーテは苦悶の叫びを上げる。


 だがそれを聞くのはたった一人の男だけだった。


「テメェは終わりだ! ドンキホーテ! さっさと、俺に変わりやがれ!」 


 男の叫びが耳に入る、鬱陶しい、とは思わない、痛みと共にドンキホーテは考えていた。


 ──俺は、俺は何がしたいのか。


 なぜ、こんなことをする、痛い、苦しい、なのにどうして。

 頭によぎるのはそんな言葉ばかり、そんな時ふとカインの母がローザが思い浮かんだ。


 自分が殺した、他者の母の顔がよぎった。


 ローザだけではない、沢山の灰色のホウキの構成員を殺してきた。

 もし、あの時、ローザを殺した時、気がつかなかったら自分はどうなっていたのだろうか。


 もしも、そのもしもがドンキホーテの姿が頭の中に湧き上がる。


 その自分は目の前の男によく似ていた。


 自分が正しいと信じて、突き進む、そして殺して、奪って……悦に浸る。


「俺だ……」


「ああ?」


「お前は……俺だ……」


「はっ! 何を今更」


 でも、俺とお前、ドンキホーテとデリメロには、決定的な差異がある。


 ドンキホーテは胸に突き刺さった刃を握った。

 そしてデリメロの顔をぎらりと見つめると、ボソリ、ぼやく。


「夢は……あるか……!」


「はぁ?」


「お前に……夢は……あるのか!!」


「……ねぇよ、そんなもん!」


 剣を引き抜こうとするデリメロ、だが、


「っ?!」


 剣が抜けないドンキホーテが、必死に刃を握り込んでいる


「気でも触れたか!」


「俺は……」


「!?」


「英雄になりてえ!!」


「何を!」


 瞬間、ドンキホーテの体が熱く燃える。体のあちこちから炎が現れ、瞬く間に全身に燃え広がった。


「っ! なんだ!! テメェ何をしている!!」


「俺は、皆んなを守れる英雄になりたいんだよ!」


 デリメロの剣に炎が燃え移る。


「ヒッ!」


 思わずデリメロは剣を手放した。剣はやがて灰になり、地面の砂と同化した。

 その剣の姿にデリメロは自らの運命を悟る。そうだ、この砂漠、砂でできているのではない。


 取り込まれるこの炎と灰の海に。


 だが動けない、目の前の燃える男にデリメロは恐怖し、動けない。この恐怖をデリメロは思い出す。

 デリメロは感じたことがある、この凍てつきそして、燃えるような恐怖を。


「四肢……狩り……」


 ボソリとつぶやいたデリメロの首に燃える男は右手で掴みかかる。

 そして燃える男は、ドンキホーテは言った。


「お前がどうしようが関係ない。お前が抑えられないのなら、お前と共に俺は行く。行くぞ」


 炎が、デリメロの体に伝染していく、首から徐々に全身へと。


「英雄に……皆を守れる存在に……俺は成る」


 炎はデリメロを灰にした。ざらりと、ドンキホーテの腕から灰がこぼれ落ちていく、デリメロだった灰が。

 やがて全ての灰が、灰の砂漠に吸い込まれた後、声が響き渡った。


 ──はっ、せいぜい、頑張ることだな。


 聞き覚えのある声だった。


 ──俺はいつでも、見ているからな。


「ああ、せいぜい奪いにこい」


「いつでも相手にしてやる」ドンキホーテの声が砂漠の砂に吸い込まれた。


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