第127話 もう一人のパラディン
「ペンダントの反応が近づいてくるからと、見にきてみればこうなっておるとはのぉ」
アレンは戦闘体勢をとる。ルラン村の、道が開通している大通り、交通量の多い村の入り口とも呼べる場所で、その男は立っていた。
エヴァンソ・ドンキホーテが立っていた。蒼の双眸に狂気を宿らせて。
「ドンキホーテ……戻ってこい、くるのじゃ」
剣の乾きかけた血を拭こうともせず、男は言う。
「無駄だよ、先生あいつにそんな力残っちゃいない、いやむしろ俺が強くなりすぎたって感じか?」
ケタリと、笑った顔を見せる男は、その様子に怯える民衆を見るとまた愉快そうに喋る。
「ここは人が沢山いるなぁ、実に暴れがいがありそうだ」
「馬鹿な真似は良せ、ここには冒険者ギルドがある、暴れても死ぬだけじゃ」
アレンはこんな言葉で諭せるとは思っていない、ただ時間を稼ぐことのよって、ドンキホーテがもどれるまでの時間を確保したいだけだった。
だが、男は止まらない。
「なんだよ、そりゃあマイナスの情報じゃないぜ、むしろ楽しめるってことだ!!!」
「まて!」
「またねぇよ」
突如として、男が殺気を纏ったことに気がついたアレンは、咄嗟に魔力による防御魔法を展開する。構わず突っ込んできた男は剣を振り上げそして縦一線に振り下ろす。
──ギギギ!!!
金属音とも、粉砕音とも似つかないような独特の音が村に木霊する。アレンの魔力でできた防壁、魔法障壁に男の剣がめり込み、青白い火花が舞っていた。
「戦闘だ!!」
ついに野次馬達の不安は真骨頂に達して、逃げ惑い始まる。そんな中、アレンは思案を巡らせていた。
どうすれば、ドンキホーテを無傷で捉えられるか?
それは今の段階では不可能に近い、前回、光の鎖の魔法で捕縛できたのは不意をついたからだ。
今回は真正面での戦闘どう考えても、不意をつけるような気配ではない。
「やってみたかったんだよなぁ、センセ! 前からよぉ! テメェとはサシでさぁ!」
「くっ!」
──ギリリ……!!
ついに、魔法障壁にヒビまで入り出したのを見るとアレンは咄嗟に別の魔法を唱え始める。
「バスターショック!!」
衝撃音、そして、風が吹き荒ぶ、男は突然の衝撃波により剣を弾かれる。
「へぇ!」
男はそのまま、バックステップし、アレンを睨みつけ剣を構え直した。
「やるじゃねえか、センセ、でもな!!」
盾を装備した左手の四本の指を地面につかせ、ドンキホーテは叫んだ。
「ヴァルファーレ!!」
その声と共に。男の右腕と顔の右半分が赤い水晶に染まるように、覆われた。
「いくぜぇ!!」
悪魔の力をその身に纏ったのだ。
瞬間、地面を蹴ると同時に男は消える。ブリッツ・ステップだ。それを視認するとアレン、刹那の思考を巡らせる。
敵は高速で移動しており、まだ捉えることは至難の技である。
ならば、とアレンの体に電気が走る。
「トゥルエノリブラ!」
それは、魔法の名だった。詠唱もなく口にしたその魔術は、バチリと音を立てて、アレンの体を囲むように魔力の渦を展開させた。
常人には感じることすらできない。微弱な魔力の渦の中で、アレンは目を光らせる。
──雷の結界、構築完了じゃな
アレンはそう心の中でつぶやいた。
この雷の結界は、地中を掘る戦士ディランと戦う際にも使用したものだ。
近づくものに対して機械的に、魔力は反応して雷を放射する。
──これで雷の網にかかったところを、捕縛する!
風が吹く、アレンの周りで煙が舞う、どうやらアレンが魔法を発動させたのを感じとり、男は様子を見ながら高速で、周りを跳ね回っているようだ。
かろうじて、紅の水晶の反射光が残像を描いているのがアレンの目にも捉えられた。
「こい! 臆病者!」
アレンは叫んだ。
「いやぁっはぁ!!」
その叫びに呼応するかのように男はアレンに向かって突進する。剣を振り翳して、もはや考えるのも面倒臭いとでも言うように。
だがアレンに半歩も近づく前に、閃光が走った。
雷が男を打ったのだ。
「ぐっ、ひ! ひはははは!!」
だが男の狂気がアレンの予想を上回る。男は勢いを弱めるどころか、むしろ加速し、雷に打たれながら剣を薙ぎ払ってくきた。
「なにっ!?」
アレンは驚き、思わず魔法障壁を咄嗟に発動させる。
だが、
「くらえヤァ!」
斬撃のインパクトと同時に男は剣に闘気を込め、そして放った。
「三日月断頭台!!」
その言葉と共に男の剣から光の奔流が放たれ、アレンを吹き飛ばした。
闘気による光線だった。
「ぐっあああ!!」
横合いに吹き飛ばされた魔女は受け身が取れず蹴飛ばされた石ころのように転倒し、地面に伏せる。
「はは!」
なんて無様な姿だと、男は笑う。
「なにやってんだよぉ、おい! 全然弱えじゃねえか、センセ?」
「ぐ、貴様!」
「あーあ、つまんねぇ、殺す気で来ねえからそうなるんだよ」
瞬間、男は背後から殺気を感じる。今まで感じたことない、大きく、驚異的な殺気。
「ほぅ、ならば殺す気での戦いとやらをやってみるか、少年?」
アレンは見た、男の背後に立つ、黒い肌と黄金の瞳の神父を。
その神父が着るローブにアレンは見覚えがあった。
「聖十字教の、パラディンじゃと……!」
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