第126話 俺は
ドンキホーテは思い出す。
「良いかドンキホーテ、これからはなるべく闘うときは気を抜くでないぞ」
それはカール達三兄弟を屠った後のシラグラ村で、アレンが言った忠告だった。
「お主の魂には今、殺人鬼の残留思念とでも言うべきものと、悪魔の魂が同居しておる。それらはお主が絶体絶命のとき表に出てきやすいようじゃ」
「奴を追い出せねぇのか、先生?」
ドンキホーテの懇願に、アレンは自身の黄色い双眸を伏せ首を横に振った。
「人の心をどうにかするような、魔法はワシには使えん」
「そっか」
「すまんのぅ、役に立たなくて」
「いやいいんだぜ先生」
これは、俺の問題なんだ。ドンキホーテはそう思った。するとそれを見透かすようにアレンは言う。
「良いか、今度また、自身の体が制御不能になったら、絶対にわしのところに来い、もうお前だけの問題ではないのだからな」
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剣から、血が滴る。滴り落ちた血によって地面には赤い血の水溜まりができその、表面は鏡となって一人の男を映し出していた。
誰だ?
この血の鏡に映るのは。
「俺だよ、ドンキホーテ」
屈んだその男は血の鏡に映る自身に話しかける。
嘘だ。
「嘘じゃないさ」
見ろ、鏡の中の男はジェスチャーをする。周りには先程戦っていた、戦士の肉体。
生き物としての既に温もりを失っている肉体だ。
「俺がやったんだぜ」
俺は、やってない。
「やったさ、お前が選んだんだ」
俺が選んだ。
「全員殺してやったぜ、お前は傍観を決め込んだ、それだけ」
違う、俺は!
「何が違うんだよぉ!! ぎゃはは!!」
ドンキホーテは笑った。そしてアレンからもらった、ペンダントを見て笑う。
「そうだ、 行かなくちゃな、アレン先生のとこに……!」
まて……。
「そうだ、そう約束したもんな、先生」
待ってくれ!
「もうお前に、俺を止める力はねぇよ」
ドンキホーテは走り出す。幽霊馬さえ、使わずにあえて走った。
それは自由への喜びがらか、地面を蹴ることを,わざわざ楽しんでいらように見えた。
「待っていろ! 魔女があ!!」
─────────────
「ドンキホーテ、帰ってくるよね」
チャルはそう、心配そうな声で聞く。馬車の中で、その声を聞いたマーシーは頷いた。
「ええきっと大丈夫よ」
気休めにしかならない言葉をマーシーは吐く。
ここはルラン村、ドンキホーテとの合流地点、兼、休憩ポイントだ。
アレン達一向は、無事追手を振り切りルラン村に着くことに成功した。
ルラン村、そこは前回立ち寄ったシラグラ村とは異なり、冒険者ギルドがあるために、発展し人口も村というより小さな町に近いものだった。
なるほど、とマーシーは実感する。アレンがここを休憩ポイントに指定するのも頷けた。
ここならば、人目もシラグラ村よりも多く、何よりも冒険者ギルドという、多くの冒険者が在籍する組織もある。
ここは伝聞が行き渡りやすい。
妊婦を襲う、集団など逆に非難を浴びるに違いないのだ。
つまりこの村にいれば実質、世間を、周りを、味方にできるという心算をアレンはしているのだ。
たとえ、マーシー達が灰色のホウキの構成員だとしても、きっとその認識は変わらないだろう。
馬車の窓の外から見た様子人々は活気に溢れて、人が良さそうだとマーシーは感じていた。この人々が自分達を、カインやチャル、お腹の子を迫害してきそうには見えない。
そう信じたかった。
すると馬車の扉がガチャリと開く。
「姉様! 食べ物を持ってきました! 干し肉ですが! 美味しいものです!」
そう言うや否や、カインが馬車の中にずかずかと入ってくる。
「カイン……」
「アレンさんは今、宿を取りにいっています、もう少しここの道路の端で待っていてください」
「ありがとう、助かるわ」
ニコリと微笑むマーシーにカインは微笑みを返し、笑う。
あとは、ドンキホーテが帰ってくるのを待つだけだ。馬車にいた三人はそう思っていた。
しばらくしたのち、馬車の外が騒がしくなる。
すると怒号に似た、叫びが聞こえた。
「村の入り口で戦いだぞ!」
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「お主、ドンキホーテか……っ! それとも!」
魔女アレンは問う。目の前の男に向かって。
「ああそうだよ、センセ、わからないのかぁ?」
ニヤリと、ニタリと、男は笑う。そして叫んだ。
「俺がドンキホーテだぁ!!」
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