第125話 暴走
「こんなガキに……」
7人の戦士のうち一人がそうつぶやく。
「カール達が殺されたのかこのガキに?」
疑問を呈する一人の戦士にリーダーらしき男が言う。
「あくまで可能性だ、だがこいつはかなり動ける、攻城戦で確認済みだ」
──まずいな。
多勢に無勢、今更、胸のうちにそんな言葉と共に焦燥が湧くドンキホーテは幽霊馬から降り剣を引き抜いた。
すると戦士達の一人は驚き、思わず言った。
「おいおいおい、マジでやる気かよこのガキ!」
「カールが、やられたのが事実なら、こいつは脅威になる全員で殺すぞ」
リーダーの声がけと共に、馬に乗っていた。戦士達全員が各々の武器を取り出す。
ドンキホーテは目を光らせる、弓が二人、剣が五人、ならば最初に狙うべきは、遠距離攻撃ができる弓だ。
残像と共に、ドンキホーテは姿を消す。
ブリッツ・ステップ。
七人の戦士達は即座に、ドンキホーテに対する脅威度を改める。
熟練の戦士にしかできないはずの、高速移動手段である。ブリッツ・ステップをいとも簡単に繰り出した、ドンキホーテの技量はもはや疑うべくもなく高い。
光の線が何筋も走る。それが剣の反射光だとわかるまで戦士達は呆然としたままだった。
──ボトリ
二人の弓兵の腕が落ちる。
一人は右腕を。
もう一人は両腕を。
「ぐあああ!!!」
痛みを訴える叫び声が森の中に響くと、残された五人の剣士達はもまた、馬上から素早く、ほぼ同時にブリッツ・ステップで移動する。
戦士達の馬は反動でよろけ、中には転倒する馬もいたが構わず五人の戦士はドンキホーテに襲い掛かった。
最初に襲い掛かったのは二人の戦士だった二人はマントをたなびかせ、それぞれドンキホーテの胴体と首を狙った。しかしそれをドンキホーテは察するや、首への一撃を、伏せて躱し、胴体への攻撃を盾で防いだ。
ドンキホーテはそのままその場で一回転し、剣を弾き返すと共に、回転のままに斬撃を、首を狙ってきた戦士に対して繰り出す。
狙いは足だった。
──ザン!
そんな音と共に、首を狙った戦士の足は斬り飛ばされる。
「ぐああ!!」
だが戦士達は止まらない、ドンキホーテは胴を狙った戦士を足で蹴り飛ばすと、間髪入れずに続いて3つの影がドンキホーテの頭上、左右の三方向から迫る。
「クッ!」
それを察知したドンキホーテは焦る。だが、人間がやっているのだ。完璧な連携などあり得ない。迫り来る三つの剣筋をドンキホーテは刹那のタイミングのずれがあると言うことに気づく。
──ギン!
まず最初に左から来た、突きを盾で受け流す。
そのまま流れるような動きで、そしてドンキホーテは盾の向きを方向転嫁させ、剣を弾く。
次に右から来た、薙ぎ払いの剣を腕ごと剣を切り飛ばした。
「ッ!」
一瞬の出来事で剣の斬撃の挙動すら見えず、腕を切り落とされた右方の戦士は苦悶の表情を浮かべる。
こうして二方向から迫りきた剣戟を防いだドンキホーテだが、最後の頭上から迫り来る剣だけは完全に防ぎ切ることはできないと判断し、身を翻してその剣を躱した。
「当たらんか!」
そう言った頭上から襲い掛かった剣士は、リーダーらしき男だった。リーダーの男は、ドンキホーテを睨みつける。彼の部下は既に四人もの四肢をもがれていた。
たった一人と子供の手によって。
残されたのはリーダーを含めた三人の五体満足の戦士だけだった、舌打ちをしながらリーダーの戦士は自身の剣を躱し、目の前に相対する、ドンキホーテを見つめた。
「なるほど、強いな」
「だが」と笑うリーダーの戦士は笑う。
ドンキホーテは息が上がっていた。
心臓が耳の隣きたように高鳴る。一連の戦闘で彼は体力を使い切っていた。
「スタミナ切れか、連戦のせいか? だがどちらにせよ好都合だ!」
─ーまずいな、流石に見抜かれるか…。
ドンキホーテの心に再び焦りの感情が湧き始める。だがここで負けるわけにはいかない。ここでこの者達を、止めなければ、アレン達の安全は担保されない。
「好都合かどうか。試してみるか?」
ニタリと笑いドンキホーテは剣を構える。集中だ、集中しろ、と自分に言い聞かせて。
目の前の敵は残り三人だ、三人をやれば終わる。
剣を引くように地面と並行に構えたドンキホーテは三人の戦士達に目を光らせた。
だがそれは間違いだ。
──ズッ
鈍い痛みが、足に走る。ナイフが足に刺さっていた。最初に腕を斬り飛ばした弓兵が体勢を立て直し、ナイフを飛ばしたのだ。
「ぐっ、あ!」
ドンキホーテは思わず足をついた。
「よくやった! かかれ!」
リーダーの男の声が響く、まずい体勢を立てなさなくては、ドンキホーテの脳内に死の一文字が浮かぶ。
迫り来る三人の戦士を前にドンキホーテはただなすすべもなくひざまづいたままだった。
「殺す気で、いかないからそうなる」
奴だ。
「そうやってお前は、誰かを守るなんて口で言いながら中途半端な剣しか振わない、殺人の重みから目を背けてんだ」
奴の声がする。頭の中で。
「俺に代れよ」
ニタリとドンキホーテは笑った。
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