第123話 もう一つの
──ぎゃはは、ぎゃはは。
木霊する。あいつの声が。
途切れずに、耳の中をぐるぐるとかき混ぜるように反響している。
騒がしくそして、止まらない、最悪だ、どうして俺は──
─────────────
──ギャハハ!!
ドンキホーテは大声を上げて笑う。ちぎり取った首を手にしたまま。
「殺してやった、殺してやったぞぉ!!」
踊る、踊る、歪にそして嘲笑するように、踊るドンキホーテの姿は村の住人にはまるで悪魔のように見えたのだろう。
次々と、家の中から戦いを眺めていた野次馬達は次々と息を殺し、隠れ潜んだ。
「あぁ……やっと俺の番だ!!」
ドンキホーテは天を仰ぎ見て笑う。
「なぁ! お前、本当は、ギリギリだったんだろ! だよなぁ! 連戦につぐ連戦! まともに寝もせずに戦い続けてよぉ! だから俺に体なんぞ持っていかれるんだドンキホーテ!!」
ドンキホーテは笑いながらそう叫ぶ、カールの生首を放り投げ、そして、朝焼けの空に向かって嬉しそうに吠えた。
「俺はまた自由だ!」
だが、その言葉の次の瞬間、ドンキホーテの体は自由が効かなくなる。
──ジャララ
という音とも共に、まるで光を物質にしたかのような、光輝く鎖によってドンキホーテの全身はがんじがらめにされた。
「おいおい」
だが、当の捕らえられた本人はさぞ余裕そうに、この鎖の大本を見た。
鎖の大本にいたのは魔女アレンだった、彼女の近くに浮遊する魔法陣から光の鎖が伸びている。
「せっかくの自由時間なんだぜ、先生? も少し、遊ばせてくれよ」
「お主! やはり! 混ざってあるな……! いや、というより」
「共生って言ってくれよ、センセ。俺はこいつと一緒に体をシェアする立場なんだ、少しぐらい俺にも遊ぶ権利があるとおもわないか?」
「その赤い水晶……」
アレンは目を細め、見抜く。
「やはり、精神交換事件の犯人の能力と同じようじゃな!」
「ご名答だ……」
──ギリギリギリ
ドンキホーテは体に力を込め出す、鎖を引きちぎろうとしている、それがわかった白猫のアレンは言う。
「やめておけ、解けはせん」
「どうかな」
──ギリギリギリッ
「センセ、アンタ、手加減したろ?」
──バン!!
光の鎖が弾け飛ぶ。
「ギャハハハハハハ!! 俺は止められねぇぜ!」
男は叫んだ、嬉しそうに。
「あの時みたいに、氷の魔法で迎え撃てばいいものをよぉ! 知り合いだからって躊躇したかぁ!?」
ドンキホーテは大地を蹴って突進する。目標はアレンその人だ。
「死ねやぁ!」
体で風をきりながら剣を構えるドンキホーテ、しかしアレンは落ち着いていた。
「戻ってこいドンキホーテ、お主ならできるはずじゃ」
「……!!」
そしてついに剣がアレン目がけて振り下ろされるその時
剣は、ピタリと止まった。
そしてドンキホーテの体から、ゾワリと力が抜けていく。
急に力を失った影響なのか、ドンキホーテはそのまま、足からグダリと崩れ落ちた。
だが、途中で体に力を入れ戻したドンキホーテは、体を地面に預けることなく、両手を使って体を支えた。
どしゃりと落ちる剣。その剣と同時にどうやらドンキホーテが戻ってきたらしいことを感じたアレンは静かに話しかける。
「ドンキホーテ、やはりお主、混ざった、いや、心に住まわせてしまったのじゃな奴を」
「……」
ドンキホーテは何も答えない。
「何も言わんでいい、お主のアビリティが「不変」であることを聞かされ、心同士が混ざることはないと、タカを括っておった、ワシの責任もある」
そして魔女は重々しく、言う。
「犯人が使っておった悪魔もひょっとしてその心にいるのかの?」
コクリとドンキホーテは頷く。
「どうして言わなんだ?」
「言ったら遠征隊にきっと参加できないと思ったんだ……俺は……俺は……すまない先生……」
「……もうよい……」
謝るドンキホーテに近づき、言った。
「お主は充分戦っておる、それ以上傷つかなくて良い」
ドンキホーテはその言葉を前にただ歯を食いしばることしかできなかった。
晴天に雨が降る。
ドンキホーテの頬を,少し濡らした。
ここまで呼んでいただいてありがとうございます!
もし
面白いな、だとか
応援したいな
と感じてくださいましたら
下にある[☆☆☆☆☆]マークをタッチして。
[★★★★★]にしていただけるとモチベーションにつながります!
どうかよろしくお願いいたします!
そしてよろしければいいねの方もよろしくお願いします!




