第119話 聖域へ
「エーテラウス……本当に……!」
カインは息をを飲み込む。
「信じられません……まさか私たちが、魔人たちの国に行くことになるなんて……」
マーシーはそう言った。実際、半魔人が魔人の国に行く前例など聞いたことがなかったからだ。
「そうじゃな、だからこそお主らの母もギリギリまでは説明せなんだ、なにせ本当に実現できるかわからんからな」
「じゃがもう手筈は整った」アレンは言う。
「この洞窟は強大な、古代の魔法陣が組み込まれておる」
大地に光の線が走る、アレンの声と共にそれは細やかな幾何学模様を形成しながらやがて巨大な円となった。
やがて、その円はドーム状の広大な空間の大地を埋め尽くすほどの巨大なものとなった。
そして円の辺り一面にはさまざまな文字らしきものがが規則正しく並び始め、やがて円の模様を構成する一部へと変わる。
所謂、魔法陣が形成されたのだ。
「行くぞ、エーテラウスにメッセージを飛ばす!」
「な、なんだこれ!」
ドンキホーテは思わず、驚きの声を上げる。あまりの魔力量に、周囲のものは浮き始めた。それはドンキホーテやカイン達とて、例外ではない。
「衛星にメッセージを飛ばすための魔法陣じゃ。じっとしておれ直ぐに終わる」
そう言うと、アレンは目を伏せ、魔法陣の中央に居座り、叫んだ。
「我が声よ、天へと走れ!」
瞬間、魔法陣が光り輝き、洞窟内にいる全ての物体を光が包み込んだ。
─────────────
「これは……」
ガレル山、麓の森で、シーライ神父は馬を止まらせる。それに同調するようにして神父が率いていた遠征隊の一軍は足を止めた。
「いかがいたしました神父様」
近くを護衛していた遠征隊の一人が心配そうに尋ねた神父は言う。
「巨大な魔力の奔流を感じた、ちょうどディランを向かわせたあたりからだ」
この魔力の量を制御できる者がいる、これはとある事実を示していると神父は感じた。
「そうなのですか? 私は何も……」
困惑する隊員を、無視してシーライ神父は馬を走らせた。
「神父どちらへ!」
驚く隊員にたいして食い気味に神父は叫んだ。
「皆のもの続け! ディランが負けた!」
─────────────
「目を開るのじゃ! ドンキホーテ!」
「どわぁ!」
ドンキホーテは目を覚ます。いつのまにか洞窟の大地の上で気絶をしてしまったようだ。
起こしてくれたアレンに対して「ありがとな先生」と言うと、ドンキホーテは立ち上がった。
「俺は、気絶してたのか」
ドンキホーテは問う。アレンはペタリと地面に座ると言った。
「ああそうじゃ魔力酔いでのぉ」
「カイン達は!?」
辺りを見回すとマーシーが手頃な岩の上で平気そうな顔で座り、カインもまたチャルに対して話し相手をしていた。どうやら全員、平気なようだ。
「皆、魔力に対する耐性はあるからの、恐らくお主よりは」
「そうかよかった……」
胸を撫で下ろすドンキホーテに、アレンは再び話しかけた。
「……なぜお主は、あやつらを助けようとしたのじゃ?」
「え?」
アレンの問いかけにドンキホーテは固まった、どうして助けるのか、そんなことを聞かれるとは思ってもいなかった。
だがドンキホーテにとってはもはや答えは決まりきっていた。
「俺は……俺は……あの子らの母親を殺した時に初めて気づいたんだよ、俺も結局、アイツと同じなんだって……」
「アイツ……?」
そこまで聞いて、アレンは気がついた。そして同時に、思わず、
「すまん、ドンキホーテ。ワシも軽くするような質問ではなかったな」
と謝った、気がついたのだ。アレンは、
「いやいいさ先生、俺は、どうせ自分の無力感や、無価値感を埋めたくて、人を手にかけた。相手を悪と決めつけて……俺は……!」
この若者もまた苦しみの中にいるのだと。
「もう……大丈夫じゃ、ワシの言葉なんぞなんの価値もないかも知れぬがここまであの子らを守ったこと、誇ってよい。お主だからこそやり遂げられたことじゃ」
ただそんな気休めしか、アレンはドンキホーテに声をかけることしかできなかった。
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ドンキホーテ達はアレンの案内で洞窟を出た。入り口はディランによって封じられたため、アレンが入ってきた入り口から外に出ることになった。
今はまだ夜空が広がるこの時間帯だというのに洞窟から抜けた達成感をドンキホーテは感じていた。
だが誰も彼もがわかる問題が一つ。
「馬車は?」
チャルがつぶやいた。そう移動手段がない、その問題を誰もが思っていたところをチャルが代弁してくれたのだ。
すると、アレンが得意げにニャアとなき、前足の肉球から光球を放った。
「ワシは魔女じゃ! 馬車ぐらい呼び出せるわ!」
猫の魔女アレンが前足から放った光の弾はやがて大きくなり、美麗な装飾をなされた馬車が召喚された。
「す、すげぇ……」
思わずドンキホーテは感嘆の声を漏らす。
「では行くぞ!」
アレンは馬車に乗り込む。
「姉様、お手を!」
「ありがとうカイン」
カインの手を借りマーシーが馬車へ乗り込んだ。
「待ってくれ! そういえばどこへ行くんだ?! 俺聞いてないぞ!」
すると最後にチャルがドンキホーテの手を取った。
「ドンキホーテは寝てたからね! 教えてあげる!」
チャルは得意げに続けた。
「聖域だよ!」
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