第118話 半魔人
とある昔、まだ短命なる人間と長命なる魔人が憎み合い戦争をしていたころ、とある魔女と人間の男が恋に落ちた。
当時では珍しい二人の恋人は、時勢に流されることなく見事結ばれて、子を成した。
それが半魔人の始まりだと言わておる。
人間と魔人の間に生まれる子はその二人を機に多くなっていき、やがて人間との融和を唱える、融和派と呼ばれる思想の派閥が魔人と、人間の間に生まれるほどになったのじゃ。
それは次々に生まれてくる、半魔人族の子供達を守るために、その子らの親達が中心となった。いわゆる、人間と魔人の和平をねがう思想だった。
だがことはそうはうまくはいかない、人間は半魔人を嫌い、魔人族も、半魔人を認めなかった。
やがて数世代にわたり土地も、市民権も得られなかった半魔人族は、生きるために、結託を始めた。
その一つが、灰色のホウキじゃ。
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そう語り終えたところで、魔女アレンは言う。
「ここまでがお主たちが知っておるであろう、灰色のホウキの実態じゃな」
コクリと頷くカイン、チャルもまた首を縦に振った。
だが、
「……」
マーシーだけは黙っただけだった。
「俺は……知ろうともしなかった」
そう呟いたドンキホーテに、魔女アレンは言う。
「まぁ、まてここからが本題じゃ」
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灰色のホウキは各地に散らばる同胞を集め始めた。
迫害されたもの、隠れ潜んでいたもの、人間と魔人に復讐を働こうとするものさまざまな、半魔人がいたが、灰色のホウキは全てを受け入れた。
その結果どうなったか、明白じゃ。
灰色のホウキは二つの派閥に分かれた。隠れひそみ、人間や魔人たちから隠れ住もうとした消極的な穏健派と、迫害してきたものを復讐し、権利を勝ち取る過激派にのう。
じゃが穏健派はとにかく力が弱かった、過激派に対して何もブレーキをかけることはできなかった。
ブレーキのない過激派がやったのは権利と力を得るために禁術と呼ばれる、魔法を盗み出すことじゃった。
その禁術を兵器として売り資金を得て、力を拡大し、いずれ起こる国家との戦いに備えるそれが過激派が選んだ道じゃった。
その選択をした時点で尚更、人間族と魔人族、そして各地で隠遁しておる、同胞の半魔人たちにさえ反感を持たれてしまった。
じゃが、穏健派がいることも事実として知っておったお主らの母ローザは、灰色のホウキの名誉復活のために行動をし始めたのじゃ。
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アレンは黄昏るような、どこか懐かしむような表情をした後、重々しく言った。
「ローザが、灰色のホウキの穏健派の団員と恋に落ちた時からこうなるとは予感しておった。名誉復活のため、ローザは魔人でありながらも、灰色のホウキ内で政治闘争を繰り広げておった」
「そんなこと、知らなかった……」
ポツリとカインがつぶやいた。カインだけではないチャルも幼いながらもアレンの話を重く受け止めていた。
そして、何よりもドンキホーテがこの歴史を知るにつれ彼の中の罪悪感が大きく膨らんでいった。
この中で、ただ冷静だったのは事実を知っていたマーシーだけであった。
「実際ローザは、うまくやっておった、かなりの地位についたと、近況で聞かせもらっていた。
じゃが、ワシは政治に興味などないし、灰色のホウキには特に肩入れする気もないから受け流していたが……」
「そんな時じゃ」とアレンは続けた。
「王都エポロでの、殺人事件に灰色のホウキの禁術が使われたのじゃ」
精神交換殺人事件、ドンキホーテの頭の中にあの事件が浮かぶそう、それが全ての始まりだった。ドンキホーテと灰色のホウキの。
「結果、王都で起こってしまったが故、急激に灰色のホウキの問題が注目され始め、そして今に至ると言うわけじゃ」
大国で、被害が起きればその分、注目される。その後はアレンの説明がなくとも全員がわかっていた。
瞬く間に資金が集まり、遠征隊が結成され灰色のホウキは全滅した。
「数日前に、きたのじゃ、ローザからの願いがな、いざと言う時、逃れる術をを確保してほしいと」
「だから、貴女は母を助けてくださらなかったのですか」
泣きながらカインはアレンに言う。
「……そうとも言える……」
「カイン! やめなさい!」
マーシーが制止するが、アレンは言う「よい」と。
「お主からすれば、母を見殺しにしたようなものじゃ構わんよ、その認識で。実際、ワシはローザが死ぬなど思ってもいなかったのだから、力を貸さなんだ」
じゃが、とアレンは付け足す。
「こうなったからには命がけで、貴様らを守らせてもらう、それがワシにできる親友への手向じゃからな」
アレンのその言葉と共に広大な空間の中心に移動し始める。
「アレン先生なにを?」
ドンキホーテの質問にアレンは答えた。
「これよりテレパシーの魔法で魔人族の国にコミュニケーションを取る」
「魔人族の国ってまさか……!」
ドンキホーテは驚きを隠せない。それもそのはずだ、魔人族の国は、
「ああ、そうじゃ。衛星エーテラウスにな」
空の向こうにあるのだから。
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