第117話 歴史
パチパチと、炎が燃え盛る、人間の肉を焼いて。
カインは目を晒し、マーシーは咄嗟にチャルの目を覆った。
人間を一人焼き殺した、当の本人、魔女アレンはため息をついて、ドンキホーテに近づく。
「平気か、小僧、そもそもなんでここにおるんじゃ?」
「それは……とにかく大丈夫だぜ……回復薬も……あるしな」
アレンとディランとの戦いの最中、ずっと体を伏せていることしかできなかったドンキホーテは、ようやく上半身を起き上がらせ、ごくりと回復薬を口にする。
「すまねぇ、アレン先生、この回復薬、遅効性なんだ、すぐには……」
「安心せい、別にすぐに立ち去るわけでもないのだからな」
すると、今まで黙っていた、カインはようやく状況に慣れたのか口を開いた。
「あの、貴女は……」
「ああ、自己紹介がまだじゃったの、わしはアレン、アレン・シンディじゃ」
そう喋る、猫は尻尾を揺らしながら、カインに近づいた。
「僕は……カイン・レインです」
「ああ、知っておるよ」
その言葉に驚くカイン。
そして魔女アレンはカインだけでなく、目線をマーシーとチャルに向けると、
「そっちがマーシーとチャルじゃな」
二人の名前を言い当てた。
「知り合いか?」
地面に座ったままのドンキホーテが、そういうと白猫の魔女アレンはため息をつきながら言う。
「親友の子供じゃからな、会ったことはないが話には聞いておった」
親友、その言葉がドンキホーテに重くのしかかる。その親友を
「私たちの母さんの……」
マーシーはボソリとつぶやく。
「そうじゃマーシー、わしはお前さんらの母の約束によりここにおる、苦しかったの……もう大丈夫じゃ」
「ところで」とアレンは切り出す。
「ローザは……どうなった? 生きておるのか?」
「それは」と言葉に詰まるカイン、チャルは目を伏せ、マーシーは黙った。
「俺が、殺した」
ただドンキホーテは、一言ボソリと懺悔するように吐き出した。
その一言は。罪悪感で浸され重く、何よりも澱んでいた。ドンキホーテは思っていたのだここで殺されても文句は言えないと。
故に吐き出した。楽になるために。
「あーあー、テメェ死ぬきかよ」
頭の中でデリメロが、ぼやく。
「おい、わかってんだろうな、この魔女が俺たちを殺す気なら、俺もこの魔女を殺すぜ?」
できないさ、こんな怪我じゃ。
「舐めてくれるなよ、俺たちにはまだ切り札が──」
「そうか」
デリメロとの会話はそんなあっけない魔女アレンの回答で幕を閉じた。
それに衝撃を受けたのはドンキホーテとカインだった。
ドンキホーテは言う。
「なんで、俺はアンタの、親友を」
「いつかこうなると思っていたからじゃ、お主、遠征隊に所属していたのじゃろう? 先々月ぐらいから音信不通になっておったからの。
遠征隊なんぞが組まれた時から、こうなることは予想しておった」
淡々と喋る、魔女アレンに、カインは苛立ちを覚え始めていた。
ならば母が死んだのは当然だと言うのか、運命だと、いや何より。
「なぜ、そこまで知っておいて母を助けてやらなかったのです! アナタがいれば母様は!」
カインの怒りはもっともだった。だが、魔女アレンはため息をついた後、ポツりと喋る。
「灰色のホウキ、それは世間一般から見ればただのテロリスト又は武器密輸の犯罪者集団としか映っておらん」
「……ッ! そんな……!」
カインの驚きようを見て、魔女アレンはさらに憂鬱そうな顔をした。
「恐らくマーシー、お主は知っておろうな」
「……はい」
「そうか、ではこの際、教えておいてやろう。灰色のホウキは、過激な犯罪者集団として世間に認知されておる。そして実際に被害を生んだ組織じゃ。故にわしは協力を長年拒んだ」
話し続けるアレンに思わず、ドンキホーテは立ち上がる。
「待ってくれアレン先生! それ以上は!」
あまりにも酷だ、彼らは、カインやチャルはまだ自分より下の子供なのだから。だがそんなドンキホーテの思いをふりきりアレンは言う。
「ドンキホーテ、こやつらは知らねばならない、灰色のホウキの真実を、知る権利があるのじゃ、そもそもなぜお主が遠征隊に所属しているのか、ワシは知るべきじゃと思う」
そうして、アレンは喋り始めた。灰色のホウキの歴史を。
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