第114話 殺意
「ッ!」
ドンキホーテは辺りを見回す。まずい、こちらは手負いのカインがいる状態での接敵。加えてマーシーとチャルがいる。
だと言うのに──
「はは、どうやらこっちが正解だったらしいな」
両手剣を構えた鎧を着た男が、影の暗闇の中から姿を現した。殺気と薄汚いマントを羽織りその男の目には異常なほどの、憎悪を宿している。
「あんた、妊婦や子供を殺すのか……!」
その問いに男は笑う。
「おいおい、冗談だろ? お前は『それ』が人間に見えるのか?」
「……は?」
何を言っている。
「そいつらは化け物だ、ええとドンキホーテだっけ? その化け物どもを庇うならお前も同罪だなぁ? 死ぬしかないよなぁ!?」
何を言っているんだこいつは、ドンキホーテは言葉の意味の理解を拒んだ、と、同時に、嫌悪を覚えそして、感じた。
「そいつらを渡しなよ、ドンキホーテ君」
こいつは止まらない、ジミニーのように話の通じる相手ではない。
こいつは標的が妊婦や子供だと知っていま殺そうとしている。
「カイン! マーシーさん、チャル! 洞窟へ逃げろ!」
そう言ってドンキホーテはペンダントを投げる。カインは咄嗟にそれをキャッチし、重たそうに体を引き摺りながら、洞窟に向かって走り出す。
「行くぞチャル! 姉様も!」
「でも兄様!」
「チャル! 行くんだ僕たちは!」
一瞬、戸惑うチャルにドンキホーテは叫んだ。
「チャル! 俺なら大丈夫だ! すぐに追いつく!」
チャルはその言葉を完全には信じられなかった。自分の母は最後に、同じようなことを言って死んでいったからだ。
しかし、それでも、それでもチャルは答える。
「待ってるから! ドンキホーテ!」
ドンキホーテはただ背中で語った、青いマントをたなびかせたまま。
「いいマントじゃねぇか、ええ? ドンキホーテ君?」
両手剣を持つ男はそう言い放ち、そして自らの剣を正眼に構えた。
「ディラス・レッカーだ、よろしくな」
両手剣の男、ディラスはそう名乗った。皮肉げにドンキホーテは笑い言う。
「はっ、嫌に丁寧だなぁ」
「知っておきたいだろうが、自分を殺す! 人間の名前ぐらいヨォ!!」
「どっちが!!!」
──ガキィン!!
ドンキホーテの片手剣とディランの両手剣が十字に交差する。
「奴らを明け渡せドンキホーテぇ!!」
「申し出は剣で返礼させてもらう!!」
「だろうな!!」そう叫びディランは鍔迫り合うドンキホーテの剣を万力を込めて弾く。
大きく体勢を崩されたドンキホーテだが、その勢いを利用して体を回転、そのままの勢いで回転切りをディランに放った。
その咄嗟の機転によるドンキホーテの一撃をディランは咄嗟にバックステップでかわす。
だが、
──ジワリ
ディランの右頬には血が滲んでいた。
──このガキ……ッ! 強い!
一歩たじろいだ、ディランに再びドンキホーテは詰め寄り斬撃を繰り返す。
最初は脇腹を狙った突き、次にディランの右肩に目がけて垂直切り繰り出す。
しかしその斬撃をディランはすべて両手剣でギリギリのところで防ぎ受け流していた。
だが肌で感じるほどの攻撃の圧にディランは気圧されていく。
そしてそれと同時に、続いていくドンキホーテの連続斬撃の中、ディランは、ふと気がつく。
これほどまでに研ぎ澄まされた上質な剣技を汚すがごとく、ドンキホーテの中に混じる雑念を。
──コイツ……そうか!
ニタリ。とディランは笑う。ドンキホーテの斬撃は続く、その一瞬のうちに繰り出される斬撃は風を裂き代わりに、敵意と害意を纏ってディランに襲いかかった。
──たりねぇな
ディランは斬撃の嵐を両手剣で防ぎながら欠伸が出そうなドンキホーテの剣技に侮蔑すら思い始めた。
そしてついにドンキホーテの剣をディランはV字型に形成された自らの両手剣の鍔に引っかけ勢いを止めた。
「ッ!」
自らの剣を止められたドンキホーテは驚き体勢を整えようとした、だがディランはそれを許さない。
「ドンキホーテ、テメェには殺意が足りないなぁ」
──ドゴォ!!
爆発音が洞窟に木霊した。
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