110話 なんて戦い方だ
「なんて戦い方だぁ? みてたけどよぉ!!」
デリメロは嘲笑った、引き金を引かれ打ち込まれるはずの弾丸は未だ来ないそれどころか。ドンキホーテはあの森の中にすらいなかった。
辺り一面の雪景色、雪原の上にドンキホーテは、彼はいた。
この異様な現実感のない光景にドンキホーテは戸惑う。
白昼夢か、それともと考える前に、目の前の、嘲笑う声の主、デリメロの姿を見つけるとぎろりとドンキホーテは睨みつけた。
「お前……っ!」
「いやはや、呆れてものがいえねぇぜ、だからこうして出てきてやったんだろうが!」
この段階でようやく精神の世界にいるのだとドンキホーテは気がつく。
そしていかにも自分は苦労しているから出てきてやったのだ、そんな雰囲気を醸し出しながらデリメロはいう。
「なんだよありゃあって聞いてんだぜぇ? 答えろよ何かをよ」
「……何が言いたい」
「はっ! 例えばなぁ、テレポートであのジミニーとかいう男の背後を取った瞬間だ……」
デリメロは呆れたように話し始める。
「直前で気づかれて、銃撃されたよなぁ、それをさ、剣で弾いた後テメェはどうした?」
「……」
「黙るなよぉ……テメェは奴を蹴った、剣で切りかかればよかったのになぁそうすりゃあ奴を殺せたんだ」
そんなこと、と言いかけた、言いかけたところでそれ以上のセリフをドンキホーテは吐くことができなかった。
「なに躊躇してんだ? テメェはよぉ! 死にてぇのか!?」
デリメロのその叫びは、ドンキホーテにとって、衝撃的なものだった。躊躇、戦うことに対してだろうか、違う。ではカイン達を守ることか。
それも違う。
「人殺しを躊躇うなよ、ドンキホーテ……! 楽しんでいこうぜ……せいぜいさぁああ!」
──ギャハハ
違う。
──ギャハハ、はははは!
違う、俺は人殺しなんかじゃない。
─────────────
それは、誰も予想だにできなかった、ティンダロスの猟犬であるダリアも、魔弾の射手ジミニーも、そしてドンキホーテ本人も。
ジミニーは引き金を引き、弾丸を発射した、咄嗟に、そして瞬間的に、誰も予測できないほどの機敏さで、ドンキホーテは左手を弾丸の軌道上におく。
手の甲を貫いた弾丸は勢いを殺し、そのままドンキホーテの額に着弾、弾丸は火花と化す。
「っ?!」
ジミニーは咄嗟のドンキホーテの機転にも驚いたが何よりも、
「ギャハははは!! 交代だ!」
その雰囲気の変わりように驚いた。
異様な威圧感を感じたジミニーは咄嗟にダリアと共に距離を取る。
わざわざ、地面に爆風の生じる魔弾を打ち込み、何メートルもの距離を稼ぐほどに、彼は威圧されていた。
「怖気たのか、私が!」
ジミニーは自らの行動に、後悔の念と共にそんな言葉を吐き出した。
本来なら二発目を撃ち込むべきだった、しかしそれ以上に二発目を撃った瞬間にドンキホーテに殺されると何故か感じてしまった。それが彼の判断を鈍らせたのだ。
──ユラリ
立ち上がる少年は別人だジミニーはそうなぜか、感じた。ぬるく、澱んだ空気がドンキホーテの周りにまとわりついている。
──ニタァ
笑った、少年だった何かが。
「もう、腕なんか狙わねぇよ……!!」
その彼の言葉と共にドンキホーテの殺意が、一次元、変わった。ジミニーはそう思った故に、
「ダリア!! 全過去魔弾発射だ!」
指示する、必殺の言葉を、ティンダロスの猟犬が吠える。
するとドンキホーテの周囲30メートルのありとあらゆる鋭角から最悪の殺意が放たれる。
魔弾だ、過去から無機質な刺客がドンキホーテに向かって放たれる。
だが、
「しゃらくせぇ!」
一振り、ドンキホーテは剣を薙ぐ、右前方に向かって、その薙ぎ払いは光波を伴い、魔弾達を壊した。
さらに、左に向かって剣で十字を切る。十字の光の光線と、風圧で弾丸は勢いを殺され粉々になっていく。
そして続いて後方、頭上と、ただ気配だけで、
「はっはぁ!!」
ドンキホーテは全ての魔弾を自らの体に着弾前に破壊した。
──カッ!
その高速の斬撃とほぼ同時に、破裂音と光が破壊された一部の魔弾から放たれる。
瞬間、その魔弾達は爆発する。
それすらドンキホーテは読んでいた。
その爆風に彼は乗る。
加速したドンキホーテは一瞬で、ジミニー達はとの距離を詰め、横一文字の斬撃を放つ。
その斬撃は、ティンダロスの猟犬である、ダリアの首を刈り取った。
「ダリ──!」
狼狽えるジミニーに、ドンキホーテは続けて斬撃を放つ。
「テメェもしね! 魔弾の──ッ!」
しかしその斬撃は止まる。
ジミニーの首の寸前で。
「返せ……! 俺の体だ!」
ドンキホーテはそう言葉を、吐き出した。
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