第109話 奴の声
悪意の塊が具現化したようなその四足歩行の獣は、シュルルと、細長い管状の舌のような器官(口のような場所から出ているため恐らく舌だろう)を体外に出して、ドンキホーテを威嚇する。
ティンダロスの猟犬と呼ばれたその獣は、悍ましい声を天に向かって吠える。
「ダリア、力を貸せ」
ジミニーは、その獣に指示をする。すると、ティンダロスの猟犬は、嫌そうに細長い管状の舌を、ジミニーの首に突き刺した。
「なにを!」
ドンキホーテは思わぬ同士討ちに、警戒する。だが、当の本人、ジミニーは、気にもせず。唐突に言い放った。
「私の名前は、ジミニー、ジミニー・グレイラン。吸いすぎだ! ダリア! 契約違反だぞ!」
ジミニーはザリアの管を片手で引き抜いた。
「……なんだよ、急に」
「君に敬意を払っているところだ」
「あ?」
「君のように、私にここまでのクロスレンジを挑めるやつはそうはいない、実際、舐めていたよただのガキだと」
「だが」とジミニーは良い、ライフルをドンキホーテに向ける。
「君の勇気と、その力には敬意を持って接しなければ……私は負ける。敬意は油断を、拭い去る」
「本気を出したってことなら! 数手、遅いんだよ!」
もはや持ってはいられない、警戒を解いたドンキホーテは、ジミニー突進する。肩から出ていた出血も止まりかけていた。
距離にして10メートルほどの距離、爆風により距離を取られたがそれでもドンキホーテにとっては一瞬で詰められるような距離だ。
しかし、ジミニーは全く焦りもせずライフルをドンキホーテに向けたままだ。
そして、ジミニーは懐から何かを取り出してドンキホーテに投げつけた。
──なんだ?!
ドンキホーテは思わず、距離を詰めるの躊躇した。その一瞬がその躊躇いが全ての間違いだった。
ジミニーが投げつけたのは立方体のガラスの箱だった。それは何の変哲もないただの箱だった。その箱をジミニーは撃つ。
──バリン、バリ。
ガラスがの破片がまるで飛沫のように飛び散る。ジミニーはつぶやく。
「鋭角を生成」
落ちるガラスは天高く舞い上がりまるで雪のようにパラパラと舞い落ちる。
「ダリア、午前9時の魔弾」
ジミニーの言葉が言い渡した。必殺の合図を。
瞬間。
多くのガラスの破片に空間の歪みが起こった。それはダリアと呼ばれるティンダロスの猟犬が現れた時とどことなく雰囲気が似通っていた。
そして無数のガラスの破片の空間の歪みから頭を出したのは、数多の銃の弾丸であった。
それはただただ無機質にドンキホーテに向かう。進むことを躊躇った彼に向かって。
「しまっ──!!」
現れた弾丸には魔力の気配。
その弾丸は魔弾であった。
──ドゴォォ!!!!
ドンキホーテの体に無数の弾丸が向かいそして炸裂した。
爆発が伴い。殺意の権化のような爆炎が天高く舞い上がる。
ジミニーはその爆炎に巻き込まれぬように、バックステップで距離をとりつつ、その爆発を見ていた。
「終わったか……何を喜んでいるダリア?」
爆煙を見ながら、猟犬にジミニーは問う。管状の舌を出し伝えた。
人間の小僧の死ぬところが見れて満足だ、と。
「チッ、レイシストめ」
その呟きの瞬間、ジミニーは気配を感じた、自身の背後からだった。冷たい殺意を感じたのだ。
「ッ!」
ジミニーは思わず腰のホルスターからリボルバーを引き抜き背後に向かって撃った。的も見ずただの勘からの射撃、結果的にそれは当たることはなかった。
その弾丸は標的の剣によって弾かれ、ジミニーは蹴りを腹にぶち込まれた。
「がはぁ!!!」
吹き飛ばされ、樹木に受け止められたジミニーは口から空気を吐き出した。
そして蹴りを放った張本人を睨みつける。
「やるな……ドンキホーテ!!」
「なんだよ……俺のこと知ってんのか……いや当たり前か」
ゆっくりと立ち上がったジミニーは、しかしニヤリと笑った。先程のダメージは全くもって気にせずといった様子でだ。
ティンダロスの猟犬のダリアも、めんどくさそうにジミニーに寄り添ったどうやら積極的にドンキホーテを攻撃することはないらしい。
「迷っているな、ドンキホーテ」
唐突にジミニーは話し始めた。
「果たしてあの弾丸は一体どうやって、現れたのか、いつ私が撃ったのか」
ドンキホーテは何も答えない、だがジミニーが一瞬で複数用意した、あの弾頭の得体が知れず攻めるに攻められないのも確かだった。
「君が、どうやってあの複数の弾丸から逃れたのか、今はそれはいいだがね、一応説明してあげようか」
「何?」
「私の先程の仕掛けは、単純だ、『過去に撃っておいた弾丸を現在に持ってきた』それだけさ、そして過去から現在までの繋ぐゲートを開くには条件がある」
「何を言って──」
「──鋭角、120度以下の鋭角さえあれば私は、銃弾を現在に持って来られる」
「へぇ良いこと聞いたぜ、あんた馬鹿か? 手の内を晒すなんてよ」
ジミニーは笑う。
「晒した方がいいと判断した、このクロスレンジ、馬鹿みたいに突っ込まれたら私たちは爆発で相打ちだ、それは嫌だろう? 君はこの情報を知ったことで考えたはずだ──」
ジミニーの言葉はまさしくドンキホーテの心中を見抜いていた。
「鋭角はどこだろう、と?」
「ッ!」
「もっと当ててやろうか? いかにその鋭角の銃口から逃れ、または掻い潜り、私を倒そうか──」
「──もう推理は聞き飽きたぜ!」
ドンキホーテは地面を蹴った。ジミニーは叫ぶ。
「ならば使うか!? テレポートの魔法を!!」
瞬間ドンキホーテは、テレポートの魔法をルーン石を使って使う。そして一気に剣のリーチがジミニーに届くところまで転移した。
ドンキホーテは剣を振り抜く、狙いは腕だ。ジミニーの予想は当たっていた。
──やはりテレポートか。
迫り来る剣を前にジミニーはただ冷静に頭の中で呟き、そして、
「ダリア!」
ジミニーは指示する、ティンダロスの猟犬に。するとドンキホーテが無意識に右足で踏んでいた小石から、その鋭角の角から、一発の弾丸が現れた。
弾丸はドンキホーテの右足の皮膚と具足を貫き骨を砕いて、そのまま足の甲を撃ち抜いた。
「ぐがあ!!」
痛みに苦悶の表情を浮かべたドンキホーテは痛みに気を取られ、剣の薙ぎ払いを繰り出し損ねる。
「別に爆発を伴う魔弾だけではないよ、ドンキホーテ」
その言葉と共に、ジミニーの銃口から火が噴き出る。ドンキホーテは咄嗟に全身を闘気のバリアで包んだ。しかし、
「ぐっ!!」
─ードガン!
鎧から火花が飛び散る。鳩尾に貫通力を強化する魔弾が打ち込まれたのだ。
しかしそれはドンキホーテの纏っていた闘気のバリアを貫き威力が減衰され、鎧を貫くまでには至らない。
それでもその衝撃は、ダメージとなり、ドンキホーテは体勢をよろめかせ、背を地面につけてしまう。
「ぐ、あ!!」
そしてジミニーは、再び、ドンキホーテにライフルの銃口を向ける。
「終わりだな、ドンキホーテ……!」
その言葉と共に、今まさにジミニーが引き金を引こうとした時だった。
「なんだぁ今の戦い方はよぉ!」
殺人鬼の声が頭に響いた。
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