第107話 魔弾
ドンキホーテ達を乗せた馬車は悪路を、越えて突き進む。向かうべき場所は既に決まっている。
魔法のペンダントが指し示す、安全地帯に向かわなければならない。
ドンキホーテは例のペンダントを取り出した。
赤い鉱石を楕円形にカットし、金の装飾を施したそれは、淡く光線を発し、進むべき道を指し示す。
ドンキホーテはその光の示す方角に従い。馬車を走らせていた。
「……いい加減、寝たらどうだ」
ドンキホーテは後ろの馬車内にいる、自分より幼い少年に対してそう言った。
「……」
少年カインは、何も喋らない。姉と妹の二人が寝てしまっている状況で、カインだけは起きていた。
「寝ておけよ、べつに俺を信用しなくてもいい、だがな、俺たちは馬車を盗んで逃げた、裏切り者と討伐対象なんだぜ? いざという時に体調不良で逃げられないなんて、ことがあったらどうしようもないだろ」
道を馬車が進む。ガタゴトと、馬車の音が鳴りつづける。
「なんで……」
そして無限に続くかと思われた沈黙はカインによって破られた。
「なんで母様を殺したのに僕たちは助けるんだ?」
「……」
その問いに答えが出せない、ドンキホーテは答えに詰まった。
罪滅ぼし? それとも情に流されたから?
「違うな! お前が弱いからさ! 自分に向き合えない、自分の罪から逃れようとしているだけさ、目的に酔うことでな!」
デリメロが嘲笑う。馬車の中で座りながら。
──ギャハハ、ギャハハ
ドンキホーテは口をつぐみそして言った。
「……わからない」
カインはその一言を聞くと、ただ何も言わず、ドンキホーテが気づかぬ間に眠っていた。
─────────────
「よう、起きたか?」
次に馬車の中でカインが目を覚ました時には、ドンキホーテはキャンプの準備をしていた。
妊娠している姉マーシーは、馬車の中で毛布をかけ、ただじっとドンキホーテを見ていた。
妹チャルはマーシーの手を握り眠たそうなまなこを擦っていた。カインは問う。
「……ここはどこだ」
「多分、ゴーリ村近くの森ん中だ、そんなに古城から移動したとも思えないし、と言うことは──」
ドンキホーテは指を指した。
「あれがガレル山ってことだ。あの麓に光線は差している」
つまりあの山の麓が、旅の目的地だと言うことだ。カインは思わず呟いた。
「じゃあ、そこに行けば……」
「ああ、安全な場所ってやつに行ける」
ドンキホーテはそう言って、キャンプで火を起こし始める。その姿を見ていたマーシーは思わず言った。
「ドンキホーテさん……何か手伝うことは……」
「ないよ、アンタは妊婦なんだぜ、気にするなよ」
「そうだよ姉様ダメ!」
隣でマーシーの手を握っていたチャルはそう言って反対した。
カインも同じ気持ちだった。
「姉様、コイツになぜ手を貸すのです!」
「カイン、この人は私たちのために火を──」
「──火くらいなら僕だっておこせます!」
そうカインが言った時だったヨタヨタと妹のチャルが立ち上がる。
「あ、チャル! どこに!」
「私、手伝う!」
「何を言ってるチャル! あいつの手伝いなんてする必要ない、今から僕が火起こしをやる!」
だがチャルは兄の制止を振り切り馬車の外に出ようとした時だった。
「出るな!」
ドンキホーテは、左手でチャルを馬車の中へと押し戻す。
思い切り押されたチャルは弾き飛ばされるようにして、馬車の中に戻され、カインは思わず妹を支えた。
「何を──!」
カインは怒気を込めてドンキホーテに避難の言葉を浴びせようとした。
が、その気など、一瞬で失せる。
銃声。
そして赤い血。
ドンキホーテの肩から血が滴っていた。
「クソ!」
ドンキホーテは悪態をつき、遠方、崖を見つめる。
恐らくあれが、弾丸の発射地点だ。
崖の上に奴はいた。
ボルトアクションライフルを持った、羽付帽子と、翠のマントを羽織った男が。
噂で聞いたことがある、今回の遠征隊で参加していると。魔法を弾丸に込め発射するという高等技術の会得者。
ドンキホーテはつぶやいた。
「魔弾の射手!」
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