お前なら大丈夫だ
アミィお姉ちゃんがぼくを見つめている。いつものアミィお姉ちゃんとは何だか雰囲気が違うけど、その目をみているだけで、何だか勇気が湧いてくる。そして、アミィお姉ちゃんがぼくに話しかけてくる。
「すまねぇな、進。お前のお陰で間に合ったよ。お前の勇気がなかったら、俺はダメだった、助かったよ」
アミィお姉ちゃんの声は、いつもと違ってすごくカッコ良かった。いつもの優しいアミィお姉ちゃんも好きだけど、今のアミィお姉ちゃんも、ぼく、好きだな。
そして、アミィお姉ちゃんはぼくの肩に手を置いて、優しく語りかける。
「もう大丈夫、進を傷つけようとした悪い奴はお姉さんがブッ飛ばしてやったからな。本当によく頑張ったな。偉いぞ、進」
アミィお姉ちゃんは、ぼくの頭を撫でながら、誉めてくれた。そして、アミィお姉ちゃんはぼくに向かって話を続ける。
「それだけの強さがあれば、俺達と離ればなれになっても大丈夫だよな? 進、よく聞け? 多分、俺達とお前はもう会えないだろう。進だって、それは解ってたんじゃないか? 辛いよな、俺達も別れたくないよ。でも、俺達とお前が過ごした思い出は無くならない。いつまで経っても俺達は進のことを忘れないから。だから、行ってこい、進。お前なら大丈夫だ」
アミィお姉ちゃん、やっぱり解ってたんだ。ぼくは、もうみんなと会えないって。解ってて、あっちのアミィお姉ちゃんは黙っていてくれたんだ。
ぼくだって本当は解ってた。それでも、我慢してみんなを心配させないように頑張った。でも、こっちのアミィお姉ちゃんはぼくのことを励ましてくれた。
嬉しい。ぼく、本当は我慢なんてしたくなかった。泣きたかった、誰かに聞いてほしかった、本当は別れたくないって。
気づいたら、ぼくはアミィお姉ちゃんの胸で思いっきり泣いていた。
「お姉ちゃぁぁぁぁん!!」
「よしよし、今は思いっきり泣いていいぞ、進。でも、それも今だけだ。泣き止む頃にはもうお前は強い子だ。お姉さんはもうお前の強さを知っているからな。大丈夫、大丈夫だぞ、進」
「うん! ぼく、行ってくるよ……! ぼくも、アミィお姉ちゃん達のこと絶対に忘れないからね……! ずっと、覚えてるからね……!」
アミィお姉ちゃんは、ぼくが泣き疲れるまで抱き締めてくれた。ふと、顔をあげると、アミィお姉ちゃんの目はいつものアミィお姉ちゃんに戻っていた。
…………
俺達が水槽を眺めながら歩いていると、前からバタバタと走ってくる集団に出くわした。そして、間もなくして通路に警報が鳴り響く。
「何だ!? 何が起こったんだ!?」
「解らねぇ! でも、何かヤバいことが起こったのは間違いねぇだろ!」
走る人だかり、鳴り響く警報、俺の背筋に汗が吹き出す。人だかりのなかにはアミィも進君もいなかった、悪い予感がする。
「ジュリさん! 急ごう! アミィと進君が危ない!」
「お、おう!」
俺達は必死で通路を駆ける。油断していた、この状況、十分考えられたことだ。アミィには俺が付いていないとあっちのアミィになれない。
つまり、アミィと進君を危険に晒してしまっていたんだ。気が回っていなかった! 頼む! 無事でいてくれ、二人とも!
俺達はとにかく通路をひた走った。アミィと進君の無事を願って、必死に、走り続けた。
…………
しばらくすると、俺の目の前にアミィと進君がいるのが見えた。良かった! あの感じ、特に大きな怪我なんかはしてなさそうだ!そんなことを考えていると、俺の足が何かにとられてしまう。
「うわあっ!」
俺はその場で盛大に転んでしまう。起き上がって後ろを振り向くと、一体のアンドロイドが転がっていた。
いや、今はそんなことはどうでもいい。俺は即座に立ち上がり、アミィと進君の無事を確認する。
「大丈夫か! アミィ! 進君!」
すると、アミィがこちらに駆け寄ってくる。その顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。
「ゴメンなさい! ご主人様! 私のせいなんです! 私が、進くんを連れ出したりしたから……!」
「落ち着いて、アミィ! 何があったか話してくれないか?」
俺の言葉に、アミィは幾分か落ち着きを取り戻し、俺に何があったかを話し始めた。
アミィと進君が暴走するアンドロイドに襲われたこと、アミィが気づいたら進君を抱きしめていたこと、アミィ達を襲ったアンドロイドはアミィ達から遠く離れた場所でのびていたこと。
「とにかく、無事で良かった! 進君も大丈夫かい?」
「うん! 大丈夫だよ! アミィお姉ちゃんがぼくを守ってくれたんだよ!」
「え……?」
アミィが、進君を守った? この状況を見る限り、あっちのアミィが、進君を守ってくれたってことだよな?
おかしい、アミィは俺が危険に晒されない限り、あっちのアミィにはならないはすだ。
いや、今はそんなことより、二人の無事が確認出来たことが重要だ。ジュリさんも、進君の無事が解って心底安心しているみたいだ。
「よかった……! 進が無事で……! ゴメンな、進……! オレが側にいなくて……!」
俺達は、進君を抱き締めながら泣いているジュリさんが落ち着くまで待った。その間、俺はアミィの不可解な状況についてばかり考えていた。
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