並んで、昼食です!
俺が屋上で昼食をとり始めてからというものの、ここの所の昼休み中は俺と紫崎とメリーさんの三人でいる時間が当たり前になっている。
今では紫崎と並んでベンチで昼食をとる始末だ。そんなこともあり、紫崎とメリーさんとで世間話なんかをする時間も増えてきた。
「そういえば……紫崎君、ちょっと聞いていいかな?」
「何です? 先輩」
「もし良ければでいいんだけど……何で仕事中にあんなにつまらなそうにしてるのかなって……いや、別にそれが悪いって訳じゃないんだけど、何か俺の指導に不満があったりとか……」
実際の所は指導する機会など数える程しかなかったんだけど。こうもつまらなそうだとこっちが不安になる。
「あ~……」
紫崎は頭をかきながら、少し間を置いて答えた。
「いや、別に先輩達がどうとかじゃなくてですね、ただ単純に働く事そのものが気乗りしないっていうか……正直お金については株やらFXやらで十分稼いでますし、親父の命令で仕方無くって感じですかね」
なるほど、そう来たか。どれ、もう少し突っ込んで聞いてみるか。
「やっぱり将来は社長候補として……って奴かな?」
「親父はそのつもりみたいですけど……気乗りはしませんね。何かにつけて親父からは命令ばかりで……全く、嫌になりますよ」
紫崎はブツブツとつぶやきながら、顔を伏せる。やっぱり社長の息子には息子なりの気苦労があるってことか。
「坊っちゃ~ん せっかくのお昼ご飯なんですから、もっと楽しい話しましょうよぉ~」
メリーさんが痺れを切らして話に割り込んできた。確かに、メリーさんが言うことももっともだ。
「そうだよね……ゴメンな、妙な話振っちゃって」
「いえ、こんな愚痴言える機会なんてそうそう無いので助かりました」
ここで、俺から別の話題を振ってみる。
「そういえば、メリーさんはお昼食べたりしないの? うちは休みの日にはアミィと一緒に外食したりするんだけど」
すると、紫崎は顔をひきつらせて答えた。
「いえ……うちのメリーはですね……やっぱり止めときます」
紫崎のこの態度、この話題に触れるのは良くなさそうだ。俺が更に別の話題を振ろうとすると、メリーさんが話に割り込んできた。
「それにしても、響さんはいつもアミィちゃんの話をしてますよねぇ~」
俺は、メリーさんからのいきなりの指摘にドキッとする。
「そ、そうかな?」
「そうですよぉ~ 響さんは、本当にアミィちゃんのことが好きなんですねぇ~ 坊っちゃんももっとわたしの事を紹介してくださいよぉ~」
「な、何言ってんだメリー! 全く……」
紫崎は妙にアタフタしながら顔をしかめる。すると、メリーさんから意外な提案があった。
「響さんがよろしかったら、わたし、アミィちゃんに会ってみたいんですけどぉ~ ダメですかぁ~?」
「何でまた急に?」
「だってぇ~ お話しを聞けば聞くほど可愛らしいんですもの~ 坊っちゃんもそう思いませんかぁ~?」
「いや、僕は別に……」
「それにぃ~ どうせ坊っちゃんは休みの日もパソコンの前で唸ってるだけじゃないですかぁ~! たまにはわたしを外に遊びに連れてってくださいよぉ~」
「だ~から、会社では抱き付くなって……」
俺はメリーさんの急な提案に驚きはしたものの、案外いい案なのではないかと考えていた。
上手くやれば紫崎との距離感がもっと縮むんじゃないか。更にアミィにも友達が増えるとなれば一石二鳥だ。
「うん、いいんじゃないかな? 俺とアミィはいつでも大丈夫だけど」
「響先輩!?」
「やったぁ~! 次の休みが楽しみですね、坊っちゃん♪」
「何!? もう決まった流れ!?」
紫崎は珍しく慌てている。これは、決まりかな。
「あ~! 解ったよ! 解りましたよ! それじゃあ、次の土曜日! 12時! 高天崎駅前の大時計の前! それでいいですか!? いいですね!」
勢いで場所と時間まで決まってしまった。紫崎は追い詰められるとヤケになるタイプらしいな。
「こっちはそれで大丈夫だよ」
「何着て行くか迷いますねぇ~」
「お前メイド服以外持ってないだろうが!」
「冗談ですよ、坊っちゃん♪」
「ハハハ……」
急な展開になったけど、紫崎とメリーさんともっと仲良くなれるかもしれないな。
次の土曜日が楽しみだ。今日は早く帰ってアミィにもこのことを教えてやらないとな。
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