内緒です!
俺達は高天崎市内のショッピングモールに到着した。休日だけあって、ショッピングモールは人で溢れかえっている。
アミィとはぐれないよう注意しないとな。俺とアミィはしっかり手を繋ぎ、ショッピングモールの中へと足を踏み入れる。
「さて、それじゃあ早速買い物に行こうか」
「はい!」
そういえばアミィが何を買いたいのか聞いていなかったな。俺はショッピングモール内を歩きながら、アミィに尋ねてみる。
「そういえば、今日アミィは何が買いたいんだ?」
俺の質問にアミィは少し遠慮気味に答えた。
「えっとですね、お裁縫道具を買いたいと思いまして」
裁縫道具か、俺の服でも直してくれるのかな?
「何でまた裁縫道具を?」
「あのこを直してあげたいんです。遊園地で、約束しましたから」
あのこ? あぁ、遊園地で貰ったぬいぐるみの事か。
「そうだったな。ちゃんと直してあげないとな」
「後は……」
アミィの顔がほんのり赤く染まっていく。そして、アミィは少し声を張り気味に答えた。
「な、内緒です!」
内緒か……何か気になるな。まぁ、アミィにも何か考えがあるんだろう。
「それじゃあ、取り敢えず雑貨屋にでも行こうか。ここなら何でも揃うだろうから、入ってみよう」
俺は近くの雑貨屋へと入ろうとした。すると、アミィが慌てて俺を制止する。
「ち、ちょっと待って下さい! 申し訳ありませんが、ご主人様はここで待っていてくれませんか?」
何だろうか? 多分さっきの『内緒』に関係あるんだろうけど。ここは大人しく、アミィの言うことを聞いてあげよう。
「解ったよ。それじゃあ、はい、お金」
俺がアミィに財布を渡すと、アミィは雑貨屋へと入っていった。その足取りは、何だか楽しみでしょうがなさそうだった。
「それでは、行って参ります! ご主人様!」
「あぁ、気をつけて行ってきな」
…………
20分程するとアミィが戻ってきた。アミィは大分急いできたらしく、何だか顔に赤みがさしている。
「お待たせしました! ご主人様!」
「あぁ、お帰り、アミィ」
アミィの手にはいくつか袋が握られていた。裁縫道具にしては大きい袋だけど、中身については今は詮索しないでおこう。
「さて、それじゃあちょっと早いけどお昼にしようか」
「はい!」
俺達は近くのファーストフード店で昼食をとる事にした。買い物帰りの昼食、何だか本格的にデートみたいだよな。
…………
「ゆっくりでいいからな、アミィ」
「はい……申し訳ありません」
俺達はテラス席に座り昼食を食べる。アミィは小さい口でハンバーガーを頬張り、俺はそんなアミィを眺めながらジュースを飲んでいた。
その時、横から何やら聞きなれた声がかかる。この声、平日は毎日飽きるほど聞いている声だ。
「よう、恭平! 何やってんだ? こんなところで」
そこには昌也がニヤニヤしながら立っていた。その後ろには、例に漏れずキッカさんも一緒だ。
「何って、普通に昼飯だけど。なあ、アミィ」
「はい、何かおかしいですか? 昌也さん」
俺とアミィには昌也の質問の意図がよく解らなかった。
「いや、何て言うか、改めて言うのも何だか妙な感じはするんだけど……」
昌也が何だか言いにくそうに頭を掻く。
あぁ、そうか、もしかして、アンドロイドと一緒に食事ってのは普通はあまり無い光景なのか。もう当たり前すぎて考えてもいなかったな。
「あぁ、もしかして、アンドロイドと一緒に食事ってのは変なことなのか?」
「いや、キッカさんも俺と一緒に食事するから変ってことは無いけど、さすがにこんなところでってのはなぁ。こんな公衆の面前で一緒に食事とは、本当に仲が良いなぁ、お前ら」
そんな俺達のやり取りに、キッカさんが口を挟む。
「ご主人、まだ用事が済んでおりませんが」
「あぁ、悪かったよキッカさん、それじゃあな! 恭平!」
昌也はそのまま振り返り、ショッピングモールへと向かっていく。するとキッカさんがこちらにやって来てアミィに囁いた。
「まぁ、うまくおやりなさい、おちびちゃん」
そう言うとキッカさんは昌也の方へ早足で歩いていった。一瞬見えたキッカさんの表情は、何だか含みをもったような笑みだった。
「どういう意味でしょうか? 今の」
「さぁ、何だろうな……」
キッカさんの意味深な囁き、そしてあの笑み。
俺はキッカさんに俺達の関係を感づかれたのではないかと内心ヒヤヒヤしていた。
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