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【旧】アミィ  作者: ゴサク
四章 ハリケーンガール
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残念です……

 待ちに待った休日。俺達は『アルカディア』の前までやって来た。天気は快晴、こんな日に雨が降ったんじゃたまったもんじゃないからな。


「ふわぁ~! おっきいですねぇ~!」


 アミィはこの遊園地のシンボルである巨大観覧車を見上げている。その目は今まで見たことがないほどまんまるに見開かれていた。


「あんなにデカイと何かあった時怖いなぁ」


 俺の口からついフラグの様な台詞(せりふ)が飛び出す。気を取り直して俺は、アミィの手を引き受付へと進んだ。


「それじゃあ、早速入ろうか!」


「はい!」


 俺はこれから始まるアミィとの楽しい一時に心を踊らせていた。今日は時間が許す限り、めいっぱいアミィと一緒に遊ぼう。


 …………


 受付を抜けると、そこにはきらびやかな世界が広がっていた。

 辺りを見渡せばあらゆるアミューズメント施設が軒を連ね、周囲は家族連れやカップルで賑わっている。

 ちっちゃいメイドさんと二人で歩く俺は周りからどう見えているのだろうか? いや、そんなことより今日は存分に楽しまないとな!


「さて! まず何から乗ろうか!」


「ご主人様ご主人様!」


 アミィが目をキラキラと輝かせながら俺の袖を引っ張る。この感じ、よっぽとやってみたいことがあるんだろうな。


「私、ジェットコースターに乗ってみたいです!」


 ジェットコースターか。アミィにしては意外な選択だ。


「ジェットコースターか……それじゃあ、取り敢えず行ってみようか」


「はい!」


 アミィは俺の前をトコトコ歩いていく。いつもは後ろから付いて来るからな、それだけ楽しみって事なんだろう。

 しかし、俺の予想が正しければ、ジェットコースターは……


 …………


 俺達はジェットコースター乗り場の前で、看板を見ながら(たたず)む。アミィの表情は、かなり落胆しているようだった。


「……やっぱりな」


「残念です……」


 予想通り身長制限にギリギリ引っ掛かった。アミィはだいたい140センチくらいだけど、この遊園地の身長制限は少々高いみたいだ。この分だと他の絶叫系も軒並みアウトだろうな。


「仕方ありませんね……それでは、どうしましょうか」


「そうだなぁ……それじゃあ無難にお化け屋敷とか?」


「お化け! 私、怖いですよぅ……」  


 アミィは少し眉を潜めて、口に手を当てて震えている。これは、ちょっとイタズラしてみたくなるな。どれ、ちょっと強引に引っ張っていってみるか。


「よし! そうと決まったら早速行こう! な!」


「え? ご主人様!? ちょっと! わあっ!」


 俺はアミィを引っ張って半ば強引にお化け屋敷へと引き込んだ。初めてのお化け屋敷、アミィのリアクションが楽しみだ。


 …………


「お化けさんたち、すっごく頑張ってましたね~! と~っても、楽しかったですね! ご主人様!」


「ガクガク……ガクガク……ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……」


 何だあの異常なまでに作り込まれた造形は。畜生、最近のお化け屋敷は進んでやがる。まさかこんな事になるとは……俺、カッコ悪い。

 アミィはというと、満面の笑みでお化け屋敷の内容を振り返っている。なんでアミィはあれが平気なんだ……アミィの規準が全く解らん。


「じ、じゃあ次はどうしようか、アミィ」


「そうですね……あ! ご主人様! あれなんてどうですか?」


 アミィが指差した先には、あまり他の遊園地では見慣れないものがあった。あれはまさか、あれなのか!? あれをやるのか!?

 そんな俺の慌てようを知ってかしらなんだか、アミィはそのアトラクションへと駆けていった。仕方ないな、俺もアミィの後を追って、アトラクションへと歩いていった。


 …………


「キャアー♪」


 アミィが高さ数10メートルの踏切台から躊躇なく飛び降りた。そして地面スレスレでゴムが延びきりビョンビョンと上下する。


「アミィ……いい根性してるな」


 まさかアミィがバンジージャンプをやりたがるとは思わなかった。飛び降り終えたアミィが、こちらに引き揚げられる。


 次は俺の番だ、いや、本当は俺は飛ぶ必要はないんけど。

 アミィが飛んだからには俺も(おとこ)を見せなくてはいけないんだ。これは漢の意地だ。お化け屋敷での汚名返上といこうじゃないか。


「それにしても……た、高ぇ……」


 俺は踏切台の縁に立った。踏切台から下を覗くと客が豆粒のようだ。

 アミィはこれを躊躇なく行ったのか。どうなっているんだ、アミィの恐怖に対する神経は。


「……ゴクリ」


「ご主人様! ファイトです!」


 アミィから声援がかかる。仕方ない! 行くしかない! 俺は覚悟を決めて踏切台から飛び降りた。


「ぎゃあああああ!!」


 俺は情けない悲鳴を上げながら地面へと吸い込まれていった。恐らく、その姿ははた目から見たらとても間抜けなものだっただろうな。

ここまで読んで頂き有り難うございます!

もし気に入って頂けたら、感想、評価、ブックマーク等宜しくお願い致します!

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