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【旧】アミィ  作者: ゴサク
三章 双子の人魚姫
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久しぶりだな

「みんな~! 今日は私たちの歌を聴いてくれてありがとうね~!」


「それじゃあ~ね~! バイバ~イ!」


 大歓声も冷めやらぬなか、ツインマーメイドの出番が終わった。

 二人は観客に笑顔を振り撒き、手を振りながら舞台裏へと入っていく。さすがはトップアイドル、他の参加者とはものが違う。もちろん会場のボルテージは今日一番だった。


「やっぱり生は違うな、ちょっと鳥肌たったよ」


「クソッ! もうちょいチケットの確保が早ければなぁ……」


 昌也は間近で観られなかったことが相当くやしかったようだ。まぁ、ツインマーメイドの歌を聴けただけでも儲けもんだと思え、昌也。


「今日の参加者の皆さん、全員スゴかったですけど、今のお二人の歌は特にスゴかったですね……私、憧れちゃいます……」


 アミィはうっとりとした表情で余韻に浸っていた。無理もない、初めて聴いたアイドルの歌がこれだからな。


「はぁ……」


 キッカさんは相変わらずどこか遠くを見ていた。ライブの間はずっとこうだったみたいだな。

 ツインマーメイドが舞台裏へと戻り、次の出演者が舞台に上がった。しかし、ステージ上の様子がどうもおかしい。


 周りの観客がザワサワと騒ぎ始めた。どうやら何かトラブルがあったようだ。

 そんな中、ステージ上のミュージシャン型アンドロイドが急に暴れだした。


「アアアア!」


 ミュージシャン型アンドロイドがステージから飛び降り、ギターを振り回しながら観客席へと突進してきた。

 ステージと観客席の最前列までは距離はそんなにない、程なくして、暴走したアンドロイドは観客席へと飛び込んでいく。


 観客席は大混乱、皆悲鳴をあげながら我先にと席を立ち逃げ惑っている。倒れる椅子や砂ぼこりが観客の混乱を更に加速させる。

 それを境にステージの舞台裏から相当数のアンドロイドが飛び出してくる。アンドロイド達は、みんな一様に正気を失っているようだった。


 俺はとっさにアミィに呼び掛けた。アミィは何が起こったのかよく解らず、その場で呆然としていた。


「アミィ! 大丈夫か! 危険だから、俺の傍から離れるんじゃないぞ!」


「は、はい! ご主人様!」


 俺はアミィが人並みに呑まれないように、しっかりと手を握る。そして、俺は昌也とキッカさんの安否を確認した。


「昌也! キッカさん! そっちは大丈夫か!」


 俺の問いかけに、昌也とキッカさんが答える。


「おう! こっちはひとまず大丈夫だ!」


「こちらも問題ごさいません」


 よかった、昌也とキッカさんは、何とか大丈夫みたいだ。俺はアミィの手を握ったまま、改めて周囲の様子をうかがう。


「それにしても、まさかこんな所でこんな目に遭うとはな。全く、運がいいんだか悪いんだか」


「あのウイルスの話、マジだったんだな……自分で話を盛り上げておいて何だけど、実際見るとやっぱり怖いもんだな……」


 そうか、昌也はあんなアンドロイドの状態を見るのは初めてだったな。さすがの昌也も、今回ばかりはこわばった表情を浮かべている。


「とにかく、安全な場所まで逃げないと……」


 しかし、人混みで上手く行きたい方向に動くことができない。すると、人混みの中からアンドロイドが一体こちらに飛び出してきた。


 しまった! 人間とアンドロイドの見分けがつかなかった! その距離は目と鼻の先、完全に油断していた!


「ラァァァ!」


 ヤバい! 避け切れない! 俺は思わず目を閉じその場にしゃがみこんだ。

 そこで俺は気づいた。アミィの手は既に俺の手を握っていなかった。クソッ! 何で気がつかなかった! アミィはどこに行った!?


「……」


 おかしい、飛び出してきたアンドロイドはいつまでも俺の所には到達しない。

 恐る恐る目を開けると、そこには先程のアンドロイドが転がっていた。顔を上げると、俺の目の前にアミィが立っていた。


「アミィ……?」


 アミィは首だけこちらに振り返りながら、俺に言った。その目には、あの日と同じ様に、みなぎる自信をたたえていた。


「久しぶりだな、恭平。言ったただろ? 恭平に何かあったら俺が守ってやるってよ。そうビクつくな。こんなもんどうってことないよ」


 これは、間違いない。あの日のアミィだ。俺の頭の中であの日の光景がフラッシュバックする。


「今はそんなことよりこの状況を何とかするのが先だ! 俺の傍から離れるんじゃねぇぞ、恭平!」


 アミィはアンドロイドを見据えて気合いを入れる。その姿は、もう俺の知っているいつものアミィじゃなかった。

ここまで読んで頂き有り難うございます!

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