8話 配信、セラルンダ放送局
あれから一年か。
しかし、たった一年で異世界というものがここまで定着するとは。
特に薬系の定着具合はかなりのものだ。
医者にもかからず、余計な手間もなく、一瞬で怪我も病気も治ってしまう。
しかもある意味で誰でも買えるからな。
使うなというほうが無理だ。
まあ、薬や医療業界から各国に圧力はあったという話だが。
注文から支払い、発送まで全てにおいてこっちの世界が一切関われないからな。
使うのを止めるにも止められないだろう。
あの端末を取り上げようと試みた連中もいたようだが、成功したって話は聞かないしな。
薬以外だと……。
『今日はセラルンダ放送局にセラルンダの統治者であるセダさんが来てくれましたー。今日はなんとセダさんが質問、疑問、問い合わせに答えてくれるそうです!』
『どうもー、自称神のセダでーす』
自称神、こいつだな。
『それでは、セダさんに寄せられた多くの質問に答えていただきましょう』
『はーい』
『まずはこれ、この番組を見ているみなさんも知りたくてしょうがない質問です。なぜ一つの国のある世代の人達、まあぶっちゃけると日本の氷河期世代のことだよね。なんで彼等だけがセラルンダに入れるんですか?』
『えーと、僕の求める資質を持っている人が多かったっていうのがまずひとつ』
『ふむふむ』
『あとは競合する相手が少なかったからだね』
『競合ですか?』
『そ、僕が招待状を送った人達は、何故か理不尽な扱いを受けてる人が多かったからね』
『なるほど。確かに私も身に覚えがありますね。先輩にも後輩にも給料が負けるって言う無茶苦茶な状況でしたからね』
『あはは、それはまたすごいね。まあ、そういう無茶苦茶なことをしてくれる会社が多かったお陰で、自由に楽しく稼げる場を提供しただけで、たくさんの人達が招待を受けてくれたよ。そしてみんな、結果を出してくれた』
『結果ですか?』
『既に、みんなが知ってると思うけど、みんなが利用しているセラショッピングの商品。あれはほとんど彼らが供給してくれているんだよ』
『なるほど。そういう意味なら確かに結果だしてますよね。実は私も結構商品を供給してたりしますし』
『そうそう。僕も本当に助かってるよ』
『じゃあ、次はこれ。ああ、これも気になってる人、多いかも。追加でセラルンダへの招待状が届いたりはしないんですか?』
『追加の予定はないね。さっきも言ったけど沢山の人達が招待を受けてくれたからね。結果も出てるし、必要ないよ』
『あははは、はっきり言いますね。でも日本だけじゃなくて、世界中から非難轟々じゃないですか?』
『うーん。正直どれだけ非難されても、僕にはあんまり関係ないからね』
『まあ、確かにそうですよね。それに非難轟々だけど、じゃあセラルンダの物を買わないのかって言うと……実際のところどうなんですか?』
『商品の売れ行きには全く影響はないよ。それどころか商品の種類によっては供給が全く追い付いてないしね』
『まあ、便利とかそういう次元じゃないですもんね。しょうがないですね』
『そもそも僕のところに非難の言葉なんか聞こえてこないしね』
『あははは。宣言採択やら非難決議やらデモンストレーションやらやってる人達、聞いてますか? セダさんは聞いてないそうですよ』
この自称神だしな。
聞いてないだろう。
まあ、聞こえたところで気にも留めないだろうしな。
『じゃあ、一旦休憩! まだまだ続くからお楽しみにね!』