4話 チュートリアル
「君さ、これ見てもその程度なの? 感想がクソゲーって、冷静過ぎない?」
「自称神の相手で疲れてるからな。驚く気力が残っていないだけだ」
「よく言うよ」
「それで、このでかいのがチュートリアルなのか?」
「そうだね、こいつを倒すのが君のチュートリアルだ」
俺の?
どういうことだ?
「チュートリアルの相手は人によって違うんだよ。ここまで大物が出るとは予想外だったけど」
予想外に理の外か。
神ってのも万能とはほど遠いんだな。
「そりゃね、僕達だって宇宙も別世界も含めた大きな意味での世界の一部だからね。知らないことも限界もあるさ」
なるほど、そんなものなのか。
「そんなものだよ。さあおしゃべりの時間はおしまいだ」
そうみたいだな。
あちら様が臨戦態勢になったみたいだ。
「じゃあ、神並みな言葉で申し訳ないけど、頑張って」
神並み……。
まあ、そうなんだろうが。
「あはは、とにかく頑張ってねぇ」
……。
手応えありだな。
消えた相手にも当たるんだな、このヤカン。
く、耳が。
竜ってのはどれだけでかい声なんだよ
これが咆哮ってやつなのか?
見るからに普通じゃあないよなぁ。
ここからは本当に大変そうだな。
「はあ、はあ、はあ」
どれだけ戦ってるんだ?
時間感覚がさっぱりなくなってるな。
お陰であいつの行動の癖がだいたいわかるようにはなったが。
息を大きく吸ったか。
あの黒い炎がくるね。
吸い込めヤカン。
おお、吸い込む吸い込む。
流石、神をもボコるヤカン。
色々便利だな。
何度やっても無駄だ、このトカゲ野郎!
自分の炎でも食らってろ。
吐き出せヤカン。
うーん、あまり効果がないの。
ゲームみたいに耐性とかがあるのか?
捻って殴れヤカン。
うお、耳が。
今の咆哮が怒ってるのか、痛んでるのかわからんが。
ヤカン直撃が一番効いてるようだな。
?
飛んで逃げるつもりか?
うお、俺の体が浮いた!?
そうか、羽ばたきの風圧で俺を吹き飛ばすのか。
うおおおおお。
絶叫マシンどころじゃないな、こりゃ。
この状況で地面直撃は痛そうだが。
……どうにもならないな。
ぐ。
痛ぇ。
今度は右腕と鎖骨か。
粉砕骨折じゃなきゃいいが。
粉砕だと、治るのに時間がかかるんだよな。
足は動く。
ヤカンも暴風は防げないのか?
いや、俺が防御を意識しなかったからか。
そうだな思い込みは意味がないな。
もう一回おなじ事をしてくるか。
そうだな久しぶりに俺に重症を与えた攻撃だったからな。
吸い込めヤカン。
おお。
暴風も吸えるのか。
なんでもありだなヤカン。
そういえば吐き出す時も手を加えられるのか?
まあ、やってみるだけか。
圧縮して吐き出せヤカン。
おお。
竜の腕一本、千切り飛ばした。
相変わらずでかい声だな、トカゲ野郎。
この声色。
今のは本気で痛かったか?
あそこは突破口になりそうだな。
傷口中心に攻めてみるか。
捻って殴れヤカン。
おおう、傷口に回転ヤカンが入っていって……。
傷口から体内をえぐってるなヤカン。
竜ものたうち回ってるし、流石にこれは痛そうだ。
……。
動かなくなったな。
終わりか?