3話 プレゼントとクソゲー
はあ。
それで使い方は……。
心の中でヤカンと唱えるとヤカンが出る?
ヤカン。
出た!?
しかも……宙に浮くヤカン?
で、これをどうしろと?
「あはははは。ヤカン、ヤカンだ」
な!
自称神。
どこから?
問うのも愚問か。
「うんうん。そうだね、その通り。想定外の存在に常識を当てはめるのは無駄だよ」
「それで何しに来たんだ? 忙しいんじゃないのか?」
「君の特殊能力が、あまりにも面白そうだったからさ。あははは、ヤカン、ヤカンだよ。しかもなんか浮いてるし」
……。
「ぶべ」
このヤカン思い通りに動くのか。
「へえ、まさか僕に思考を読み取らせずに攻撃するとはね」
?
「そのヤカン、僕の理の外にあるみたいだね。流石、誰にも結果がわからないルーレット。まさかこんなものが出るなんて」
自称神、何を言っている?
「なんでもないよ、君はとても面白いものを手に入れたってことさ」
「ヤカンだけどな」
「うん、ヤカンだけどね」
「それでこいつの使い道は?」
「僕にもわかんないよ。説明書あったでしょ?」
「自称神のプレゼントとか言う訳のわからない一文と、ヤカンと念じたらヤカンが出るしか書いていなかった」
「……六三郎君、ハードモードだね」
「は?」
「うん、まあ、とりあえずプレゼントは受け取ってもらえたみたいだし、チュートリアル頑張って」
「ちょっと待て、このヤカンの説明を」
「言ったでしょ、僕の理の外にあるって。神だってわからないこともあるもんさ」
……。
「痛っ!」
お、出てくるのは一個だけじゃないのか。
「痛、痛、痛、痛!」
四個が最高みたいだな。
「ちょっと、六三郎君。僕は神様だよ、そんな気安く頭を、痛、痛っ、痛い、痛ぁあ!」
四個同時に別々の動きもできるのか。
「ねえ六三郎君、さっきから酷くないかな?」
……。
「ぶべぇ」
お、回転も入れられるのか。
「いい加減にしようか、六三郎くべあっ」
変化球も行けるな。
見た目以外もなかなか面白いなヤカン。
「あ、ちょ、べ、だ、ご」
あはははは。
楽しくなってきたぞ。
「ろ、六三郎君。ヤカンを笑ったことは、あ、謝るからそろそろこれ、ぼ、とめてもらえないかな。流石の神も意識が飛びそうなんだけど」
自称神、案外脆いな。
話が進まないし、そろそろいいか。
「やっと止まったよ。ありがと、隙ありぃーぶべらっん」
流石にそれくらいは予想するって。
「……」
あれ?
本当に気絶したのか?
白目剥いてるし。
自称神、あんまり人に見せていい顔じゃないな。
「本当にひどい目にあったよ」
「申し訳ない、やり過ぎた」
「謝ればいいってもんじゃないよ」
なら止めをさすか?
「発想が物騒すぎるよ。しかもちょっと本気じゃないか」
「気のせいだ」
「はあ、まあいいや。さあ、チュートリアルが始まるよ」
空が?
夜、じゃないよな。
また凄いのが出てきたな。
チュートリアルで竜とかクソゲーだろ。