32話 配信、セラルンダ放送局 その6
『じゃあ、最後はとっておき。アレだね』
『そう、アレです』
『怪獣大決戦!』
『これは本当にすごかったですね』
『だねえ、私ここにいたんだけどさ』
『なんと、ではあの何の役にも立っていなかった防衛網のお一人ですか』
『加藤さん、結構毒はく人なのね。なんの役にも立ってないは言いすぎじゃない?』
『いえでもほら映像を見てくださいよ』
『……。うん、まああんまり役に立ってはいないかな』
『でもそのおかげであの竜が助けに来てくれたんですから、それはそれでよかったのでは?』
『そ、そうかな?』
『そうですよ、ですから話を進めましょう』
『じゃあ、気を取り直して。映像見ながら話を進めるよ!しっかしこの竜すごかったねぇ』
『ええ、普通にレイドボスを圧倒してましたからね』
『うんうん、もうだめかーと思ってたら、あっというまにレイドボスを倒しちゃうんだもん』
『そうそう、空飛べるからとかブレスをはけるからとか関係ないですからね』
『拳一発であれだけ吹き飛ばせるからね』
『力の差がありすぎましたね』
『でもさ』
『なんでしょう?』
『この竜なにものなんだろね?』
『さあ? 一度負けたレイドバトルへの助っ人でしょうかね?』
『あの神様がそんなもの用意してくるかな?』
『なさそうな気はしますが』
『うーん、戦闘終わったらどっかに消えちゃったしね』
『ですねえ。どこかに行くのではなく文字通り消えてしまいましたからね』
『もしかして誰かの使い魔だったりして』
『その可能性もありますが……それなら噂くらいは聞こえてきてもよさそうですが』
『だねぇ。この番組を見ている方で何か知ってる方がいたらぜひとも情報をお寄せください』
『またあんな絵がとりたいものです』
『そういえば加藤さん』
『なんでしょう?』
『加藤さんて映像関係のお仕事してるの?』
『いえ、完全に趣味ですね。本業は営業職やってました』
『やってました? 過去形?』
『ええ、半年くらい前に退職しました。それこそ最悪の職場だったので』
『あらら』
『そういえばこの間その会社から電話がありましてね』
『へー、戻ってくれとか?』
『さあ? 話を効くつもりもありませんでしたので』
『あははは、かなり嫌ってるねぇ』
『まあ、色々と理不尽な職場でしたからね。二度と関わりたくありませんね』
『そこまで言っちゃう?』
『なんせ社長が今日は絶対契約デーだ、一人一契約がとれるまで帰ってくるな!とか言う会社ですよ』
『あー、それで取れないとどうなるの?』
『取れるまで外回りですね』
『ぎゃー、馬鹿じゃないの』
『馬鹿ですよ。それで若い社員は直ぐに辞めちゃうし、毎月慢性的な人手不足でした』
『それでも加藤さんは続けてたんだ』
『まあ、次の職ってのがなかなか決まりませんでしたからね。特に業界内だと会社からの妨害もあったみたいですし』
『あー、そういうところで社員が辞めないように努力はするよね。そんな事してるよりも職場環境整えればいいのに』
『そうですねぇ、そういう意味でも馬鹿なのかもしれませんね』
『っと、話がそれちゃったね。加藤さんのいた会社の方、見てますかー? 努力の方向間違ってますよー』
『まあまあ、馬鹿を煽るのはその辺までで』
『それじゃあ、今日の放送はここまで。加藤さんありがとうございました!』
『こちらこそ、楽しい時間でした』
『それじゃあ、まったねえ~』
次回更新は10/28(月)になります。




