23話 ヤカン乱舞
「ロクサブロウ。あの竜は出せぬのか?」
「申し訳ありません、私自身ではどうにも」
竜が出てきたのは、後にも先にもあの時の一回だけだからな。
あの一回では、流石に竜の出し入れの仕方まではわからなかったからな。
「そうか、わかったのじゃ。まあ、街の連中も直ぐに気付くじゃろうしな」
「ただ」
竜はだせないが。
「なんじゃ?」
ヤカン
「な、あれは」
「攻撃手段は他にもあります」
ヤカン、ヤカン、ヤカン
「す、凄い。あの巨体が怯んでる。せ、先生。あれは」
「シルシル。あいつの注意くらいは引き付けられる。今のうちに攻撃を」
「ロクサブロウさん?」
「説明はあとでする。今はあの巨体に集中を!」
「はい!」
「シルシル、拳がくる!」
「これくらいぃぃぃぃぃいい!」
凄いな。
あの大きな拳を弾きとはすのか。
っと、感心してる場合じゃないな。
追撃はさせない。
ヤカン1
右拳を弾け。
ヤカン2
左拳を弾け。
ガードががら空きだ。
ヤカン3、4
腹部に突っ込め。
顎が前に出たな。
この辺の反応は人間とかわらないのか?
まあいい。
ヤカン1、2
顎を撃ち抜け!
「えっとロクサブロウさん?」
ヤカン、ヤカン、ヤカン、ヤカン
全力だ、捻って殴れ。
「ろ、ロクサブロウ。あのヤカンは」
「ええ、私の武器です」
「ちょ、ロクサブロウさん、僕達が何かやる隙がないんですが」
あの時の竜ほどでもないのか?
「ロクサブロウ! 油断するな!」
?
色が変わった?
「どうやら段階が変わったようじゃ」
段階?
「先ほどとは別物だと思うのじゃ」
ヤカン、ヤカン、ヤカン、ヤカン
「べ、別物……」
ヤカン、ヤカン、ヤカン、ヤカン
「せ、先生」
ヤカン、ヤカン、ヤカン、ヤカン
「あの巨体をなぶるヤカン。なんと緊張感のない光景じゃ」
よし、倒れた。
「まさにヤカン乱舞じゃな」
動かなくなった。
終わったか?
いや、角が光っているな。
「あの光っている部分を直接攻撃で殴るのじゃ!」
「わかりました!」
シルシル!
「!」
シルシルの大斧が弾かれた。
「まずい、奴が再生するのじゃ!」
ヤカン
!?
これも弾かれた、
「無駄じゃ。核の破壊だけは直接攻撃以外は一切受け付けないのじゃ!」
色々と意味がわからん。
ただ、直接殴れということなら。
こいつで殴るだけだ!




