20話 クラス担当
やっと今日からまともに授業がはじまるか。
学舎が半壊してしまったからな。
しょうがないか。
「ロクサブロウ」
「おはようございます、ルンダルナ先生」
「うむ、おはようなのじゃ」
「お怪我は大丈夫でしたか?」
「なに、ちょっと瓦礫の下敷きになっただけじゃからな。その程度では妾はびくともせんよ」
……。
「それよりもロクサブロウは大丈夫なのか?」
「私も特に問題ありません」
「あれはあの日以降外には?」
「出していませんね、なにせ大きすぎますので」
特に必要性も感じないしな。
「それが賢明じゃろうな。近いうちに、使い魔を小型にする方法も習うであろうからな。それまでは大人しくしておくがいい」
「そんな方法があるのですね」
「ロクサブロウのもの程ではないが、大きな使い魔を持つものはおるからな。流石にいつもその巨体を晒すわけにもいかんじゃろ。それなりの対策はあるのじゃよ」
なるほど。
確かにサイズが大きいとどこにも出せないからな。
使い魔の意味がないのか?
「それではなロクサブロウ、精進するんじゃぞ」
「はい、失礼します」
講義の部屋は………。
あった、初級講座。
ここか。
……。
セラルンダの住人が多いな。
一年もたっていれば、そんなものなのかもしれないな。
まあ、学ぶ内容が変わるわけでもないだろうし。
気にしたところで意味もないか。
「冒険者を目指すものたちよ、よく来たのじゃ」
ルンダルナ先生?
「妾がこのクラスの担当、ルンダルナ・レガレスじゃ」
講堂がざわつきはじめた?
何かあるのか?
「質問よろしいですか?」
「なんじゃ」
「先生はもしかして、グラベルの魔塔を攻略した戦団【血の雨】に所属していませんでしたか」
「しておったが、それがどうしたのじゃ?」
「では先生があの激流の掃魔レガレス?」
「うむ、そうなるな」
どうやらルンダルナ先生は有名人のようだな。
回りの連中の反応を見る限りでは一廉の人物のようだ。
「それでは、挨拶代わりに魔法を一つ見せてやるのじゃ」
魔法か。
やはりそういうものがあるのか。
「分かりやすい魔法じゃ、よく見ておくのじゃぞ」
指先に文字?
いや、図形か?
そこに何かが集まって……弾けた。
なんだ?
弾けた何かが波紋のように広がった。
「これで終わりじゃ」
「先生、今のは?」
「ふむ、掃除の魔法じゃ」
「掃除?」
「自分の回りを見てみるのじゃ」
まわり?
なるほど。
たしかに床や机が光輝いているな。
「どうじゃ?」
凄いは凄いんだが。
なんというか地味だな。
「ああああああ!」
今度は一体何事だ?
「わ、私のメモが全て消えてる!?」
?
「うむ、ここら一帯を全て清掃したせいじゃな」
は?
「お、俺の本が真っ白に!」
「私の青のシャツも真っ白に!」
「うむ、水を極力小さくし、全ての汚れを浮かせて消滅させたのじゃ」
俺の学舎案内も真っ白だ。
後で新しいものを貰わないとな。
それに服も全て真っ白になってしまったし。
見た目の地味さとは裏腹に、えらく迷惑な魔法だな。
「驚きの白さじゃろ?」
ヤカン。
「ぶべ!」
「せ、先生!?」
これはまた苦労しそうな担当がついてしまったようだ。
「な、何じゃ? あれはヤカ、ぶば」
「せんせーい!」
騒がしい毎日になりそうだ。