19話 配信、セラルンダ放送局 その4
『みなさんこんにちは! 今日はティアムの街で起こった謎の竜騒ぎの速報だよ! 今日のゲストは現場をたまたま見ていた鈴木さんだ!』
『どうも、鈴木です』
『そうそう。こっちの事情に詳しくない人のために、説明するよ。ティアムの街っていうのはね、日本から初めてセラルンダに来るときに降りる街だよ』
『補足すると、俺達日本人が基礎を作った街ですね』
『そうそう、最初は神父様達の教会と戦士の学舎くらいしかなかったもんね』
『そうですね。最初の頃は本当になにもありませんでしたね』
『みんな手探りでさ。あれはあれで楽しかったよね。初日の裸祭とかさ』
『そこに関しては俺はノーコメントで』
『えー、なんでだよ』
『何万という裸の野郎が、所狭しと溢れでる絵面は、まさに地獄絵図でしたから』
『……うん、まあ、何万は私も遠慮したいかな。好みの男4~5人くらいでいいや』
『確かに、好みの女性……いや、違う、違うんだ! 誤解だ、これは』
『どうしたの鈴木さん?』
『いえ、なんでもないです』
『いや、明らかにテンション駄々下がりじゃない』
『いえ、大丈夫です』
『なに? 携帯になにかきたの? どれどれ』
『あっ、ちょっと』
『正座? なにこれ?』
『いや、えーと』
『また来た』
『正座?』
『わかりました』
『鈴木さん? どうしたの急に正座なんかして、携帯の指示に従わなきゃいけないの』
『いえ、はい、とにかく気にしないで話を進めてください』
『? まあ、事情はわからないけど、頑張ってね』
『はい』
『それじゃ、みんな竜騒ぎの速報だよ! さっきもちょっとだけ話した戦士の学舎に大きな竜が現れたんだ! しかもなんの前触れもなく、いきなりだよ! 私は別の祭に参加してたせいで、教会送りだったから見てないんだけど』
『ああ、あの一嬢三姫の騒ぎ見に行っていたんですね』
『うんうん、今日も見事な四人同時KOだったよ』
『あの四人も相変わらずですね、見た目が綺麗でもあれじゃ……ちょ、だだから違うんだ!』
『また、携帯? 逆立ちって書いてあるね』
『……』
『え? 鈴木さん、やるの? 逆立ち』
『……』
『正座の次は逆立ちか。なかなか愉快な人だね、鈴木さん』
『ど、どうぞ、お気になさらず進めてください』
『なんか凄い絵面になってきたねー。まあいいや。それでここにいる、鈴木さんなんだよ』
『ど、ど、うも』
『大丈夫?』
『ま、全く、も、問題なしです』
『そうかー。そうは見えないけど、話を進めるね。それではみなさんお待ちかね、鈴木さんが撮影していた一部始終をご覧下さい』
『はい、これでおしまいです。ってなにこれ? 学舎半分くらい吹っ飛んでるよね』
『そ、そう、ですね。俺もこ、これを見たときは正直驚きました』
『大きいって聞いてたけど、あれはあり得なくない? しかもなんの予兆もなしにあんなサイズの竜とか。あんなのポンポン出られたらたまったもんじゃないよね』
『そう、ですね。ただ、今回の件は、ど、どうやら戦士の学舎にいた、初心者が、げ、原因らしいです』
『鈴木さん、逆立ち大変そうね』
『大丈夫、で……す』
『しかし、あの竜の原因が初心者なんてねぇ? ホントにありえるのかな? っと今日はここまでかな。続報が入り次第また、紹介するねー。鈴木さんもありがとうございました!』
『ど、どうも』
『あ、そうそう。ランニング中の初心者の女の子の隠し撮りは、あんまりよくないよ』
『いや、え? なにを?』
『いやいや、私もたまーに学舎の周りを走る、好みのセラルンダの男の子隠し撮りしてるからわかるんだけどさ』
『ち、ちが』
『あのアングルで、しかも竜が出る前からとかあり得ないからね』
『ち、違うんだ!』
『あ、着信』
『いやだあぁぁぁぁあああ』
『それではみなさん、また会いましょう!』
『違うんだあぁぁぁぁあ』




