16話 一嬢三姫
この道を真っ直ぐか。
あそこに見える、大きな建物がそうか?
人だかり?
なんだ?
「おい、烈火の炎嬢と凍壊の冷姫がやりあってるぞ」
れっか?
とうかい?
やりあう?
「燃えるか凍るか今日はどっちが先だろうな」
「よし、見に行こうぜ!」
燃える?
凍る?
進む先のようだし、見ればわかるか。
赤い髪の女性と青い髪の女性。
この二人がそうなのか?
「だからそいつはアタイが貰うっていってるんだ!」
「はあ、勝手なことをおっしゃらないでください。早い者勝ちですわ」
何を争っているんだ?
あそこにあるのは何かの屋台?
「ふん、どうせアタイ達が言い合った所で解決なんかしないんだ」
「そうですわね」
「拳で決着つけようか!」
「望むところですわ!」
喧嘩っ早いにもほどがあるな。
それともセラルンダではスタンダードなのか?
「オレのうたをきけー!」
地面がえぐれた?
今度はなんだ?
「おいおい、嵐波の風姫も出てきたぞ」
「というか、あの人何しに来たんだ?」
「さあ? なに考えてるかわからないのは、いつものことだろ」
「それもそうか」
……。
またすごい評価の人間だな。
「おい! それはアタイのものだって言ってるだろ! 横からかっさらっていくんじゃないよ!」
「? でも名前が書いていない」
また別な奴がきた。
「マジかー、黒滅の雷姫も出てきたぞ」
「一嬢三姫揃い踏みか。これはちょっと危ないかもな」
「ちょっとで済めばいいけどな」
いちじょうさんき?
揃い踏みということはあの四人のことか。
しかし危ないってのは?
「まあいいさ。みんなまとめて焼き付くしてやるよ!」
「やれるものなら!」
「オレのうたをきけー」
「振りかかる火の粉は払う」
空の色が変わった?
何かへんな感じが。
「また、でかいフィールドになったな」
「これ、野次馬もかなり巻き込まれるぞ」
「俺達も含めてな」
「念のためだ。大事なものは使い魔に持たせておこうぜ」
「だな」
フィールド?
使い魔?
一体何が起こるんだ?
携帯に着信?
いや、アプリケーションが起動してる。
私闘空間への参加確認?
参加しない場合はフィールド外に出される?
どういう事だ?
は?
時間切れの為、強制参加?
ダメだな、全くわからん。
「焼き尽くしてやる!」
今度はなんだ?
!?
赤い髪の女性から炎が!?
「その、程度の炎で!」
!?
青髪の女性から氷?
炎と氷か。
水蒸気のおかげで前が全く見えないな。
なかなかギャラリー受けの悪い組み合わせだ。
「オレのうたをきけー!」
風?
なんて生易しいものじゃないな。
水蒸気が霧散したが、一緒に何人か吹き飛んだぞ。
「……」
落雷?
……。
四人がいた周辺のギャラリーが、みんな吹き飛んだ。
「さすがにあの四人が同時に暴れると、凄まじいな」
「だな。あれはないわ」
「まあ吹き飛んだ奴等も、危ないのはわかってただろうしな」
「対策済みだろ」
「一種の祭みたいなもんだしな」
「踊る阿呆に見る阿呆ってか?」
「そうそう、同じ阿呆なら踊らにゃそんそんだ」
「それなら」
「躍りに行きますか!」
神父様は大忙しになりそうだな。