15話 解き放たれたモノ達
……。
自業自得ではあるが。
なにか話ができすぎている。
「侘坐も気がついたか」
「はい、なにか話が出来すぎている気はします」
「多分それは間違っちゃいない。そもそもあの三人はあの会社に未練なんかなかったはずだ」
「たしかに、どこに出ても通用しそうではありましたね」
「違う違う。あいつらもセラルンダに来てるんだよ。しかも、会社の給料なんざ足元にも及ばないほど稼いでるらしい」
らしいか。
確定ではないが、あの三人ならありえそうだな。
「ここからは俺の想像だが。二階堂さんは、あいつらにいいように利用されただと思う」
「すぐに退職する為にですか?」
「ああ。あいつらのやってることを、まともに引き継ぎしようと思えば最低でも一年はかかる」
確かに。
あの三人の仕事量を考えれば、最低でもそれくらいの時間はかかる。
「まあ、無理やり辞めるってこともできたんだろうが、後腐れがあると面倒だと思ったんだろ」
起訴だなんだと騒ぐ輩がいるのは目に見えているしな。
「だから、面倒事を起こしそうな二階堂さんを利用したと?」
「さあな? 全ては俺の想像だ。本当のことはあの三人だけしか知らないさ」
だが、自分達が辞めるだけなら、そこまででよかったはず。
「ですが、なにも辞めさせるところまでいかなくても」
「二階堂さんはな、あの三人や俺達のことをやたら馬鹿にする人でな」
「?」
「お前ら氷河期世代は従順な犬だ、何を言っても文句の一つも言わず、逆らわず、しっぽを振って頷くだけだってな」
……。
「っと無駄話が過ぎたな」
「いえ、久しぶりにお話できて、楽しかったです」
「そうか。なら再開ついでに、俺が軽く街の案内してやろうか?」
「それはとても嬉しいのですが、祭壇で神父様に戦士の学舎に行くように言われていまして」
「うーん、神父様か。なら学舎の方にも既に連絡がいっているかもしれないな。学舎の場所はわかるのか?」
「簡単な地図はいただきました」
「そうか。そこの大きな道をまっすぐいった所にある目立つ建物だ、すぐにわかると思うぞ」
「わかりました。ありがとうごさいます」
「ああ、それじゃあな」
「失礼します」
従順な犬か。
従順でもなんでも、そこにしがみつかなければ仕事もなかったからな。
次が無いと思っている人間が、無駄に不評を買うことはしない。
仕事を失えない。
ただそれだけだった。
時代に強いたげられ、氷河の下に閉じ込められた混沌、か。
確かに、自称神の言うとおりだ。
折角解き放たれたのだ、俺も自由に生きてみるか。